【GAME57-2】本日公開! 天翔道流ゲーム拳・新流儀!!
――さて、今回のゲームの主役・シャッフルオールスターズは高橋豪樹の登場によって、鉄拳の火花飛び散る闘いの火蓋が切られようとしているのですが。
「くぅっ、このサーブルズ・シェイパー、立海のフェンサーの名に掛けて遅れを取るものか! フローレン、付いてこれるか!?」
「勿論ですの、御兄様!」
『英雄は遅れてやってくる』という言葉がありますが、その英雄よりも遅れて、足場悪し天井狭しな溶岩で出来た通路を勇み行く立海はシェイパー兄妹。一足先にB3層へ向かった豪樹に続こうと、必死に整備皆無な地底ロードを登って行くわけですが……どーにもスタミナが思うように追っつかない。
「ひぃふぅ〜、やっぱり地底道は険しいですの。まだ頭がキーンと痛い感じが……」
「大丈夫かフローレン? やはり先程のダウンが響いてるのか」
「い、いえ! さっきよりは全然動けますの御兄様! ただ体力が……」
地底の気圧変化に適応出来ずに、一度は倒れたフローレン。豪樹の手当と地底肉まんを食べた事によって回復はしたものの、やはり地底の険しさには弱音も吐きたくなる。
「ふ~む。足腰を鍛える溶岩道、体幹鍛えの高低差、低酸素運動。地底を歩くだけでもこれだけのトレーニングが養えるとなると……これは立海の体力強化訓練に使えそうだ」
「……いきなり何を仰ってますの、御兄様?」
「いや、近いうちに我々のチームの強化トレーニングのアイデアを出せと史也様に言われたものだから。ココを採用させようかと」
「こんな修羅場でよくそんなポジティブな話題が出せますのね、御兄様……」
立海遊戯戦団の中でも、クソ真面目……もとい誠実な性格の兄・サーブルズ。今まさに彼らを阻む壁をも訓練の一環と考え、明日への課題に繋げる所は素晴らしい程の努力家精神と言えるが、フローレンから見ればドン引きものである。人間考え方は十人十色の百色鉛筆、なんて。失礼しました。
▶▶▶ NEXT▽
「やっと着いたぞ!!」
「もう疲れたですの〜!」
やっとこさシェイパー兄妹が目的地に着いた所で、舞台は地底空間・B3層。占領された地底グルメ街道の賑やかさは微塵にも残されていない暗闇の空間。
闇に慣れない眼を凝らして、我々は奥を覗いてみるならば……あららら、これはいけないぞ。
裏プレイヤー逆さ埋めの墓標が立ち並んでいる! そんな悪趣味演出を企てたのは他ならぬ、チューブ・ラザーズのオケラ拳使いのケーラスだ。
「これは酷い……! 『一敗地に塗れる』ということわざを最近覚えたが、頭から地に埋めるとは教わってないぞ!」
「しょーもないボケは言わなくて良いですから。それより御兄様、あれを!」
ツッコミ上手のフローレンが指差す先には、天井狭い層に埋め尽くされた横長の屋敷。これこそ大山杏美率いる『大山組』の総本山。
その中には、大山と親友の小原恵美が立て籠もり。それを見つけたケーラスは脅迫に乱入、あわや危機一髪かと思いきや。
駆けつけた高橋豪樹に壁ドンならぬ壁メリ。屋敷の壁目掛けてケーラスの頭を剛腕でグワシと掴み、めり込ませるという彼女も胸キュンどころか血の気が引く荒業を、シェイパー兄妹は目撃した!
「豪樹さん!」
「それに大山と小原も居るですの!」
そして壁にめり込んだケーラスの顔を引っこ抜いて、胸ぐら掴んでメンチカツ、いやメンチを切る豪樹。スキンヘッドのゴリラ面を近づけられたら、幾ら奈落道の拳士とは言えども腰を抜かす。
「オケラ拳使いのケーラスってのはあんさんやな? 大山の姉ちゃんにヤキ入れる度胸あんなら、ワイと一戦交えてからにせぇや、あ゛ぁ!?」
強面豪樹の先制威嚇。ケーラスは顔を埋められたダメージを受けつつも、馳せ参じた彼を改めて認識し、一驚する。
「き……貴様は、“紫煙の格闘王”か……!? 何処へ雲隠れしたかと思えば、大山杏美の肩を貸すとはどういう風の吹き回しだ!?」
「別に大した理由はあらへんよ。元々大山とワイは10年来のマブダチや。小原とも面識がある。天翔道で修行するまでは、ワイもぎょうさんアホやりまくったチンピラやったからな……!」
闘いの前に再び豪樹の過去を見たり! 高橋豪樹が善の拳士道・天翔道に入門したのは7年前。18歳の頃までは、大山・小原と同様にゲーム時代に悪名を轟かせた不良ゲーマーの肩書を持っていた。
しかし粋がっていた彼にも、“若気の至り”と言うべきか。自業自得とも言うべき挫折を味わった。
そんな時に出逢ったのが人生の恩師であり、天翔道の総本山にして師匠となる拳士【マスター金剛】。
師匠との出会いで人生を変えた漢。一方で大事な矜持を守るべく、地底空間の女将と廃人になりかけた女将。辿った道は違うけども、忘れてはいけない“縁”がそこにはあった。
「せやったろ、大山? さっきはレミちゃんの事で一杯いっぱいになっとったが、ワイの顔を忘れたとは言わせへんで」
「……あぁ、忘れるわけ無いやろが。地底の貯蔵庫にあった酒一升瓶をパクって、チンチロリンやって負けたら瓶ごと一気飲み。思い出しただけでも胸が焼けるわ」
ホントにヤバいことしてたんですね……それを証拠に大山も小原も、苦笑いながらも懐かしさが溢れている。
「アンタが師匠に会うて大事なもんが出来たように、私にも小原や同胞と守るもんが出来た。形は違えど信じたもんを否定はせぇへん。……だが、こんな時代に取り残されたような私を何故アンタは助けようとするん? 昔の縁を取り忘れたような野暮な漢とちゃうやろ!!」
大山も地底空間に住む人々を管轄する懐の深い女将。対しシャッフルやBHFと実力ある弟子に恵まれたコーチ兼拳士。天地の差があれども、情けを掛けられるほど矜持は軟ではない。それは大山も、もちろん豪樹も同じ事であった。
「……今のワイは、お前らが可愛がった“畠田レミ”の先生や。勝手に落ちぶれたと思い込んでるお前らの事をレミちゃんは今でも覚えとった。それは彼女にとって、大事な人である証拠やがな。
―――教え子の大事なもんは、命に掛けても絶対に守らなアカン。助ける理由なんざそれで充分やろ!!」
私の兄・Mr.Gがいつも言ってました。『巡る因果の糸車、廻り廻って風車』。人と人が結ぶ縁は時を越えて、思わぬ形で巡り会うものでもあります。
シャッフルオールスターズのメンバー・畠田レミを通じて、不良仲間が再び合流し、地底の危機に参上仕った。それはご都合展開とは、また違った運命を感じるような縁でありました。
「ケラケラ……泣かせる友情物語だねぇ。んじゃソイツも纏めて地面に埋めてやろうか!!」
ケーラスの鋭利な爪、そこに宿る腕に付けたる輪は【拳華印輪】。対戦相手に見せ付けたならば、拳華成闘の幕開けの合図。
相対する豪樹もそのリクエストにお応えして、拳華印輪を利き手に装着し、地底に鳴り響くは決闘のゴング!!
「「武遊出陣!! 拳・華・成・闘ッッ!!!」」
『――――GET READY BURNING BATTLE!!』
GWギアと印輪のCPUが、音声認識で起動音を響かせたその刹那、大山組屋敷を中心に広がるVRフィールドの電脳空間!!
「格闘ゲーム・拳華成闘が始まったんだ」
「んにゅ〜! あの腕輪が無いからフィールドに入れないですのッッ!!」
ドーム型のVRフィールド、拳華印輪を身に着けていない者は入ることは出来ず、蚊帳の外にされたシェイパー兄妹と大山・小原。あ、こら! フローレンさん顔近づけても入れませんよ!
「良いのか? フランス娘が入りたがってるが?」
「漢の喧嘩に余計なもんは要らん。第一、お前を倒すのはワイだけで充分や」
そう言うと豪樹は、両手の紫グローブを脱ぎとって、独特のファイティングスタイルを構える。
太く雄々しい右手を横に、人差し・中指を広げて、足も大きく横に広げたワイドスタンス。空手の型にしてはバカに躍動を感じさせる構え。シェイパー兄妹がその型の正体を知っていた。
「豪樹さんのあの構え……カンフー、ですの?」
「いや……そのカンフーの中でもトリッキー、かつ諸刃の剣とも言うべき禁断の型。――――【酔拳】でもやるつもりなのか!?」
酔拳。それは酒の酔を力に変えて敵を討つ『酔八仙』という8人の仙人によって編み出した酒乱の拳。それを豪樹が繰り出す……と言っても、お猪口も酒瓶も無いこの層には酒もアルコールもありゃしない!
「馬鹿め! アルコールの力を借りてこそ、酔拳の力は100%出せるものだ。シラフで酔八仙の奥義を見いだせると思ってんのか!?」
等とケーラスは生半可な酔拳の構えに煽りを立てるが、豪樹の眼は真剣だ!!
「……シラフは序章だと思え。酒入ったら最期――――お前は骨も残らなくなる……!!」
これぞ、高橋豪樹が語る『天翔道流ゲーム拳』新流儀【遊酔仙拳】の恐ろしさなのでしょうか……?
『酒は飲んでも呑まれるな』の名の通り、拳の強さを表す警鐘か。それとも……?
その詳細は次回のお楽しみに! ――本日の試合はこれまで! マッチブレイクッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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