【GAME56-8】地底のお邪魔虫? チューブ・ラザーズ!!
――TIPS――
【VR格闘ゲーム・拳華成闘④】
拳華印輪とGWギアの力によって、プレイヤーの戦闘スタイルを創り出す『アバターカスタマイズ』が可能となる。
これを使うことによって、攻撃・守備力の増加や戦闘スタイルに合わせた独自の技を編み出す事も出来る。
ただし、中には違法改造データによって造られたアバターカスタマイズも存在するという。
――拳華成闘、雑兵無双から転じて事案発生であります!!
突如このB4層の地下からニュッと出て、舞ちゃんの足元を狙って首元に絡みついては、締め上げて悶絶させる恐ろしい展開……いや、場合によっては戦いの辞書が薄くなりそうな展開になっております!
「おのれぇ、下から出てきたという事はB5層から奇襲してきたのだな! 闘技場の地下から攻撃してくるとは卑怯な!!」
「このニュルニュルめ〜! 舞を離せーー!!」
同胞のピンチに、舞の首に絡みつく触手のような太い管を必死に解こうとする龍青と玲王。しかし足掻けば足掻くほど、舞は悶え苦しんでいる!
『ヌハハハハ、無駄じゃ無駄じゃ! ミミズの身体はな、頑丈な剛毛に覆われているんじゃ。それに絡み付かれたものならそう簡単には抜けぬわい!!』
年季がたっぷり詰まった昔気質な男の声が、この層の地下から聞こえてくる。そして彼がミミズの豆知識を教えてくれた。ということは……?
「貴様ッ、もしや【ミミズ拳使い・アスワム】か!?」
『そうじゃ、この地底空間の殺し屋にして奈落道の誇り高きゲーム拳士の一人! その見せしめにお前達の仲間を、ワシの『ワームグラップル』で葬ってしんぜよう!!』
「あぁ……ッッ、か、はぁぁああ!!」
ああ大変だ、舞が窒息寸前!! 玲王と龍青は渾身の力を込めて引き離そうとするが、アスワムの先端が曲がった鍵型剛毛が首を抉って、思うように抜けない!
「離せってんだよ、こんにゃろ〜〜〜!!!」
――――ガブリュッッ
「あだああああああああああ!!!!!」
あーっと!? 野生の知恵炸裂か! 玲王の丈夫な顎と歯でアスワムの触手を喰らいついた!!
あまりの痛さに地層をぶち抜いて、玲王達の居るB4層に上がっていった!
絞め地獄から開放された舞は、首を抑えて咳き込みながらも地底の薄い酸素をも命繋ぎで吸い込んで九死に一生を得る。一方で姿が顕になったアスワムの姿は全身土色、それにミミズ特有の体節ごとに隔壁の縞、両腕が触手で足も生えたミミズ人間そのものであった。
「嫌ゃゃあ゛ああ゛あ゛ああ゛!!!! 気持ち悪いですの〜〜!!」
おっとどうした? ギャラリー側のフローレン・シェイパーが恐怖に慄いております。
「まさか嬢ちゃん、ミミズ嫌いなんか?」
「そうらしいです豪樹さん……。フランスでも立海でもミミズは見た事無かったのですから」
「あんなの生き物じゃないですの!! フローレンの目に毒ですの!!!」
確かにフランスでミミズ見たという話は聞いたこと無し。ミミズを得体の知れない化け物と認識してしまったフローレンは、兄のサーブルズ・シェイパーの後ろでブルブル震えています。
そんな嫌いな生き物に移植された奈落道の拳士が不憫でなりません。
「そんな傷つくこと言わんでくれよ! ミミズは土壌改良に役立ってんじゃぞ、堆肥にも使われとるし!」
「そーだぞー、ミミズ食べればタンパク質たっぷりだぞー!」
「お前らは黙ってろですの!!!!!」
要らん事言っちゃ駄目でしょうに、玲王さん……あれ、何でアスワムさんまで説得側に付いてるんでしょう。
「まぁよい、嫌われてるのは慣れとるわい。だが仕留め残ったのは計算違いだったわ。ワシの極太ワーム腕を喰うなど、なんと世間知らずな!」
「うるせうるせぇ! 舞を苦しめた仕返しだ、今度はオイラが絞め落としてやる!!」
「わたしも加勢するぞ、玲王!」
舞ちゃんの仇討ちにと、玲王と龍青のタッグ前線突っ走る!
先ずは龍青、お得意の南拳宜しくカンフー拳やけん、なんて。正拳・烈脚との連鎖反応で翻弄させるも、両腕の触手が遠距離でも届く長リーチ。防御に徹せねばならぬ状況に龍青は思うようにダメージには繋がらない。
「だ、ダメだ。脚よりも長い触手のリーチが邪魔で、技が繰り出しにくい!」
「だったらオイラに任せろぃ!!」
仲間のピンチに、無鉄砲にもアスワムに飛び掛かる玲王。アスワムの触手腕を、自分の両脚で挟んで固定して、同時に親指を天井に向かせる形で相手手首を掴み、自身の体に密着させる。
これぞ格闘技における関節技の一種、『腕ひしぎ十字固め』であります。玲王がこのテクニックを習得していた事が驚きですが、詰めが甘かった!
「うぁあ!? 腕をすり抜けやがった!」
『馬鹿者が。ミミズには骨格が無いんだよ! だからサブミッションなど効くものか!』
だからってミミズ人間のアスワムもそーなの!?なんて思ってる貴方、実はそーなのです。
奈落道は強さを求める拳士の欲望を契約代わりに、その身を動植物の要素を敷き詰めたデータを移植させた改造アバターを造り上げるのです。これじゃ拳士というよりもショッ◯ー怪人でしょうか?
「改造データを使ってまで強くなりたいのですか、あの奈落道の連中は……」
「それはプレイヤー全員の課題やがな、サーブルズの兄ちゃん。不正行為をしてまで勝つか、それとも平等性を尊重してスポーツ精神を持つか。それが抑制出来なくなった成れの果てが、アレや」
それがミミズの要素を移植されるアスワム。後悔も太平洋に流して航海後先立たず、なんて。失礼しました〜。……おや? ギャラリーの豪樹さんが何やら考え事をしてますね。
(……おかしい。アスワムには【オケラ拳使い・ケーラス】という相棒が居たはず。引き摺り込んだとはいえ、タッグに加勢せんとなると……何かあるな)
アスワムとケーラス。二人揃って【チューブ・ラザーズ】のタッグ拳士なのですが、アスワムだけBHFに戦わせるのは何らかのナメコ、いや舐めプなのでしょうか? その違和に気づいたのは龍青達も同じでした。
「アスワム! 地底の殺し屋である貴様ら【チューブ・ラザーズ】には、あともう一人奈落道拳士が居たはずだろう!?」
「オイラ達に怖気づいたのかぁ? ビビってないで出てこーい!!」
等と喧嘩っ早い玲王は、もう片方も出せ出せと急かしております。見た目劣勢ですが、打算的に気にしないところもワイルドか。
だが対するアスワム、愚かしいとばかりにニタニタと不気味に笑っております。……笑うミミズ人間ってどうなんでしょうかね?
「お前たち、何か勘違いしているのではないか?」
「あぁ?」
「我々サザンクロスと手を組んだ奈落道が占領してるのはB4層ではない。その上も、既に心の友のケーラスが襲撃を終えた所だ!」
「何やて!?」
「御兄様!!」
「不味いぞ、彼処は確か……!」
豪樹とシェイパー兄妹がびっくり仰天、イカの唐天。B4層の上層に位置するB3層は、裏プレイヤーを管理する『大山組』の縄張る層なのであります!
そしてそのB3層では、一体何が起こっているのかと私Mr.Fが調べて見るならば……やややや!!?
地底に住む人々が、地面の中に埋もれている!! 両足だけ残して後は生き埋めの状態とは惨たらしい、犬神家の一族か!?
「ケラケラケラ……! アスワムは天翔道の奴らの囮よ。俺達の仕事は、力のない裏プレイヤー共と地上者を殺せと、デクルックスに依頼されたんでな……!!」
チューブ・ラザーズを雇った犯人を教えてくれた彼こそ、タッグのもう一人の奈落道拳士【オケラ拳使い・ケーラス】!
BHFはアスワムに苦戦する中で、一体誰がケーラスを倒すのでしょうか!? ――本日の試合はこれまで! マッチブレイクッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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