【GAME56-4】天翔VS奈落、再び!!
――ビーストハーツファイターズ、略して『BHF』の格闘ゲーム戦士。
玲王・舞・龍青、3人の格闘士の個性を知れば知るほど、彼らの実力もしりたくなるのが人間の性。
彼らが中心となって物語が進んでる今なら、もう間もなくそこに纏わるゲームも展開される、されていれば、されている時。しかしもうちょっとお待ち頂きたい。何故なら、
「ふにゃ〜〜、やっぱり肉まんだけじゃ腹いっぱいになんねぇや。おかわりとかないのか?」
「玲王ってばホント食いしん坊ね! ……でも今日は、あたしも彼に賛成」
「ここは一流グルメにも流通してる地底空間のグルメ街道だ。一品だけで満足するわたしではない」
腹が減っては何とやら。五体をフルに活用し力の限り戦う格闘士にとって、エネルギー補給も大事な鍛錬。食トレなんて言葉もありますからね。ましてや眼前に美味そうな香りと看板を目の前にして、尻尾巻いて帰るなんて勿体ない事は出来ない。
「そうくると思ったで! ワイもちゃんとキャッシュは用意してあるから、奢りや思うてドンドン食べ歩こうか!」
「おっちゃん、あんがとな〜!!」
最初の愛弟子と再会となれば、奮発してでも御馳走にしたい豪樹さんの親心。何とも微笑ましい限りですが……ちょっと街道の様子がおかしいわ。
「食べ歩きするにしたって……いつの間にか店のシャッターが閉まってますよ?」
「もしかしてもう真夜中じゃないですの?」
シェイパー兄妹が指摘する通り、B5層グルメ街道に人気は無く、シャッターはおろか看板まで降ろす始末。ならば豪樹や玲王達がプレイギアで時計を調べてみれば、時刻は午後の3時。おやつ感覚で肉まん食べたなら道理な時間。
「なんだぁ? 夕飯の準備でもすんのか?」
「それにしては、一斉に店を閉めるなんておかしいわ」
「台風でも来るわけじゃあるまいし」
などと玲王達も怪しいと睨んだところ、先程彼らに肉まんを奉仕した屋台主のおばあさんが、イソイソと店じまいしながら状況を教えてくれた。
「すまないねぇ、旅の御方。実はこの地底グルメ街道はな、あるチンピラ団体がここを縄張りにしたせいで、自由に営業が出来んようになっとるのじゃ」
「チンピラ……まさか、サザンクロスの連中か?」
「サザンだか散々だか何かは分からんが、店開いてる人から聞いた話だと、暴力を権力にして暴れ回ってるならず者の格闘士だと聞いたがな。確か……【奈落道】とかいう輩だったそうじゃ」
(奈落道……!!)
おばあさんが口にした“奈落道”。それは邪の格闘流派組織であります。
――強者プレイヤー達の武の象徴であるゲーム拳。存在は一つしか無けれども、星の数ほどに流派あり。
一つ、頂点を目指すべく天へ翔ぶ意味を込めて正々堂々な武術を鍛える『天翔道』。
一つ、勝つためなら手段を選ばぬ地獄行き寸前の外道な戦法を好む『奈落道』。これは【GAME11】でもこの下りはやりましたね。
その中で豪樹さんや、玲王達ビーストハーツが所属していた流派が“天翔道”、正義の格闘流派であります。
「豪樹さん、天翔道と奈落道って……?」
「どういう関係ですの?」
読者の疑問を代表して、格闘流派の歴史にシェイパー兄妹が代わりに問う。
「天翔と奈落は格闘術をゲーム拳として凝縮させた二大流派で、超次元ゲーム時代黎明期から、長いこと拳で争いあってる相対正邪の組織やねん」
「犬猿の仲みたいですね」
「ほんで鳳凰堂の姉ちゃんが公表した指名手配プレイヤーの中には、奈落道の幹部格闘士がおった」
豪樹とシェイパー兄妹の三人は、地底にてのさばる裏プレイヤーの討伐・確保の為にB5層に出向いていた。
WGCの鳳凰堂孔雀が提示した指名手配犯の中には、奈落道の中でも指折りのファイターの名が2名も提示されていた。
「豪樹さんも奈落道の拳士を狙ってたんですか?」
「いや舞、たまたまリストに入ってただけの話や。執着する気はあらへん。えーっと【オケラ拳使い・ケーラス】と、【ミミズ拳使い・アスワム】や」
「なっ……!? ケーラスとアスワムだと!?」
「知ってんのか、龍青?」
指名手配リストに載っていた裏プレイヤー拳士。特に驚いたリアクションを見せた龍青が、その詳細を語る。
「地底空間の極悪同盟としても名高い【チューブ・ラザーズ】というプロレスタッグコンビだ。反則上等の技と行為を繰り返し、正統のプロレスからも敬遠されたレスラーの風上にも置けない連中なのだ」
「格闘家相手にプロレスって……」
「まるで異種格闘技みたいですの!」
フローレンさんが言う“異種格闘技”とは、広義では異なった格闘技の競技者同士が何らかのルールの下で対戦する格闘試合の事。
例えば、1976年に当時プロレスラーのアントニオ猪木が、ボクシングのヘビー級チャンプのモハメド・アリと戦った有名な“世紀の一戦”も異種格闘技戦です。
そこから紆余曲折を経て、あの総合格闘技に進化を遂げたのですが……
「彼らは拳士である故、カードデッキは持っていない。だから貴方達が行っているアメイジングでは成敗出来ない連中なのです」
「そんな!? ではどうやって退治を……」
等と狼狽えるサーブルズに対し、やる気満々の姿勢を示すは赤いたてがみの玲王。
「そのための、【拳華成闘】だ!!」
筋が浮き出て、太くガッシリとした玲王の腕から魅せる腕輪。更に舞の足にも足輪が装着されている。
これこそVR型格闘ゲーム『拳華成闘』に使われる参加ツール器具【拳華印輪】である。
「この腕輪・足輪を付ければ、拳華成闘に参加できます。これによって五体に伝わる格闘ダメージを振動に変換され、生身の致命傷を受けずに五体を使って格闘ゲームを行えるんです」
舞が詳しく説明した通り。因みに頭部は、ゲームワールド転送や現実にてアメイジングのプレイにも使う『GWギア』を装着させる。これと拳華印輪と連動して、改めて拳華成闘に挑むことが出来るのだ。
「……でも幾らゲームだからと言って、相手が相手じゃ安全とは言い難いがな」
「どうしてですの?」
「――――奈落道の連中は、痛み苦しみを糧にする屑だからね……!」
既に龍青はおろか、玲王も舞も、己の拳を独自のスタンスで構えの姿勢に入っていた。それもそのはず。
グルメ街道の十字路の前後左右に、店の屋根に、層の天井にも。黒い格闘着と陰気な面の格闘士が玲王達を取り込んでいたのだから……!!
いよいよ次回は新ゲーム『拳華成闘』のプロセスを、ビーストハーツの激闘と一緒にご紹介! それと同時に乞うご期待!! ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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