【GAME55-11】サザンクロス・禁忌の円陣!!
2022年、今年最後のゲームウォーリアーです。
作者が色々あり過ぎて後半垂れた分も含めて、今年も御愛読頂いた全ての読者の皆様に『ありがとう!!』を贈ります。
それでは今回もごゆっくり、【勝って兜の緒を締めよ】です!!
――サザンクロス幹部・イプシロンのジーナと、ガンマのガクルックスとのアメイジング・クロスデュエルモードを制したレミと史也。
超弩級の雷撃を食らった彼女達は一旦気絶しながらも、レミの手厚い処置によって直ぐに回復した。
「あ、アンタ達……!」
先に目が覚めたジーナが、鋭い目つきでレミ達を睨み付ける。
「あぁ、待って待って! 先ずは落ち着きましょうね。あたしは無理矢理WGCへは連れて行かないわ。そんな気ゼロだし! どうどう、ニンジン食べる?」
レミちゃん、幹部はウマじゃないんだから!
「………別に抵抗なんかしないわよ。敵のアンタに手当されたから、ビックリしただけ。情けでも持ったつもり?」
「あたしは別にアンタ達の事を敵だとは思ってないよ。それにゲームで傷付いた人はほっとけないもの」
それはまさしく、親友のみのりに影響されたもの。レミもまた慈悲深いゲーム戦士に成長していた。
「そんな事よりも! 早く倭刀くんと穂香ちゃんを返して! 四半期もずーっと湖の下に居るんだから、こればかりは絶対に開放して貰うからね!!」
「四半期って何? ゲーム始めて54分しか経ってないじゃない」
3ヶ月以上に及ぶ更新でも、一時間も満たない時間で進むゲームウォーリアーの時空間である。
「分かってるわよ。少し待ってなさい。ガクルックス!」
「うむ。元はと言えば、私達が貴方達の仲間を不意打ちで人質を取ったのだ。責任を持って回収しよう」
等と言ってる間にも、早う行け!と思った読者の皆さんは急かさない事。ガクルックスは再び黄泉の湖を潜り、湖中深く沈んだ倭刀と穂香を閉じ込めた酸素カプセルごと引き上げる。3ヶ月越しのサルベージだ。
「貴方はそうでなくても、沈めた大森穂香と池谷倭刀は恨んでるでしょうね」
「……ううん、ジーナと一度二度は戦ったとしても、穂香ちゃんと倭刀くんも、これくらいで人を恨んだりはしないよ」
「……それ程に、仲間の事を信頼してるのね、小むす………畠田レミ」
「信頼してるってか、穂香ちゃんは不幸をおっぱいの糧にするくらい芯強だし、倭刀くんはこの状況でもソシャゲやってそうだから。
―――変なのばっかなの、あたしの仲間は!!」
「…………大したものだ」
▶▶▶ NEXT▽
―――史也さえも感心してしまう程に、シャッフルメンバーの胆力は、本当に凄まじかった。
穂香は1時間近くも地底湖深くに閉じ込められたにも関わらず、PASの力を高めた精神統一によって命に別状は無し。
対して倭刀は元来の生命力の強さ故か、本当に余裕綽々にソシャゲで野球ゲームで暇潰してたそうな。……確かに変人揃いというか、極限を超えたゲーム戦士は怖いもの知らずになるのだろうか?
湖から引き上げた二人を、急いでレミはコードレスのコンパクトドライヤーで穂香の身体を乾かし、史也は倭刀にバスタオルで覆って体温調整を図る。
「……事情は大体把握出来ました。先ずはレミちゃん、助けてくれてありがとう。それと史也さんも、彼女の事をサポートしてくれてありがとうございます!」
「気にするな。参謀の気まぐれと思ってくれれば良い」
穂香からの礼にもクールに応える史也。
「こっちも沈められたお陰でSランク選手が手に入ったぜ、オリッ◯スの山本由◯!」
倭刀さんは少しはレミちゃんを労いなさい。てかアンタ、オリッ◯スファンだったの?
「……ね、言った通りでしょ?」
「こんなのを人質にしたアタイらが馬鹿だったわ」
自分の身が危険な為に起こした行動が、色んな面で愚かだったと思い知らされたサザンクロス幹部。
ようやく水攻めのケアも終わった所で、穂香が真っ先に質問する。
「一つ確認をしたいのですが……貴方達二人は、デルタのデクルックスとは無関係であると。地底でサザンクロスの宗教活動を禁じられたが為に、WGCに追われる身になったという解釈で宜しいですか?」
「他に紆余曲折はあるのだが、我々に限ってはそういう事だ。そして……その罰として裁かれた印が、これだ」
そこでガクルックスが自分の左腕を見せた途端、穂香は驚いた。
「……!! 腕に魔法陣!?」
「我らサザンクロスの長、シャーロット・ジョーンズ様のPASである【南十字星】の加護を受けた我々が、信教活動の禁止と共に、その力をこの魔法陣に封印されたのだ。このせいで我々は、地底とゲームワールドの一部以外の行き来する事が出来ない」
ガクルックスは左腕に、ジーナは首筋にうっすらの浮かぶ紫黒の禍々しい円陣。これが彼女達の自由を奪い、数年間魂を巣食われるような違和感に蝕まれていた。
「この呪いを掛けた者が誰かは忘れたが、こればかりはPASの力でも解呪は不可能だ。デクルックスでさえもこれには破れなかった」
切り札のPASでさえも破らない呪縛、これにはブレーンの史也もシャッポを脱ぐ状況だが……?
(サザンクロスの長は、私の家族が居た超次元空間に葬られた……ならば、その異空間の粒子と、家族の遺伝子を継いだ遺伝能力『GNA』を持つ私なら……!)
サザンクロスの禁忌に触れた八方塞がりの呪縛を解けば、テロを起こした張本人であるデクルックスを止めることが出来る。そう思った穂香は、その光明を導かせた!
「その魔法陣、私に見せて頂けますか? もしかしたら解呪出来るかもしれません」
「え、姉ちゃん!?」
「穂香ちゃん、まさか七色のPASを使う気じゃ……?」
大森穂香のPASは、父・賢士朗を始めとする大森家の家族と、超次元空間の異質なパワーを遺伝子に組み込んで誕生させた特殊なPAS。
家族の遺伝を力に変える特異能力『GNA』の力、これをゲームにではなく、呪縛されたガクルックスの解呪に使おうというのだ!
「……な、何をする!?」
「このまま力を抜いてて下さい。今から魔法陣を、私のPASで解呪させます!!」
ガクルックスの左腕を両手で掴む穂香。その両手を一点に力を集中させ、彼女の魂に宿る七色の波動を呼び覚ます。いざとなったら魂を込めろ!
「―――――はぁッッッッ!!!!」
PAS発動と共に開放された虹色の強大なエネルギー、そのパワーをガクルックスに蝕む魔法陣に大量注入させ、邪念に満ちた魔力を無力化させようとする。
だがその魔力は、平凡なPASに通じないのも道理。穂香のPASを持ってしても、呪縛の円陣消滅には至らない!
「無茶だ! 無理やり干渉してしまったら、君の方が危うくなる!!」
「大丈、夫です……!!」
懸命に歯を食いしばり、解呪に臨む穂香の苦悶の表情。それを見て倭刀も黙っちゃいられない。
「ね、姉ちゃん! 無理すんな!! こうなりゃ俺………も……?」
加勢に入ろうとする倭刀を静止するは、史也と、意外にも冷静なレミであった。
「ここは穂香ちゃんの力を信じましょう」
「うむ、さすれば不可能の先にある結論が見えるというもの」
早速、ゲームの成果が表れましたね。
「もう、少し………ッッ!!」
そして穂香の方は、七色PASのパワーが優勢となり、徐々に左腕に憑いた魔法陣が縮小されていく。そしてとうとう……!
「はぁぁあぁああああッッッ!!!!!」
レインボーGNAパワー、最大出力!! 超次元空間の粒子を注がれた魔法陣は、その勢いから完全に制圧され、ガクルックスの左腕から消滅していった!
「…………わ、私の魔法陣が……解けた………!!?」
「これ、で……もう、大、丈夫……です、ね…………くぅっ」
PASの力を最大限使い果たした穂香。その負担と湖に沈められた際に体力を消耗していた故か、尾羽打ち枯らすように膝にへたれ込んだ。
「大丈夫、穂香ちゃん!?」
「無茶しやがって、何処の切り札騎士に似たんや!」
切り札騎士って、それは剣さんしか居ないでしょうに。
「平気よ……ちょっと目眩がしただけ」
そんな穂香の額には大量の汗。明らかにキャパを超えた体力の消耗であったが、強情な彼女らしい活躍であった。
「嘘でしょ? 本当にあの呪縛が解けたの!?」
「あぁ、憑かれたような違和感が殆どない! 開放されたんだ!!」
ガクルックスの眼に光が戻り、希望を見出した様子。信じられない光景にただただ驚くジーナ。
「どうして、あの人達の呪縛を解こうなんて思ったの? 穂香ちゃん」
「地上では宗教の理念に反しない限りは、宗教活動を特に禁じてはいない。レミちゃんに教えられて、私はサザンクロスも混じり気のない純粋な宗教だと思いますし、それで私は解呪させて、もう一度宗教活動させようと思ったんです」
「そっか……でもジーナはゲームワールドを一度襲撃してるし、多少の罰は受けるだろうけど……」
「大丈夫ですよ。きっと鳳凰堂孔雀さんやWGCの皆さんは分かってくれますよ! それでまたシャーロットさんの意志を継ぐことが出来たら、彼女も本望だと思います」
「…………!」
本当にそうであろうか……?と、我々の中には不安も残るでしょうが、レミがジーナ達を許したように、穂香も理不尽な呪縛を解き放つ事を“正義”と捉えた。
それぞれにある正義が交錯するとき、いつか本当の真実に繋がることになるのかもしれません。
そして彼女達の優しさが、あんなにやさぐれていたイプシロンのジーナに変化を見せた。
「…………穂香、レミ。こっちがこんな事頼むのもなんだけどさ、出来ればデクルックスの呪縛も解いて欲しい。アタイはまだ解呪しなくていいから……」
「………えぇ?」
「どうしてそんな事を……?」
「前にゲームワールドの『パズルファクトリー』をアタイが襲撃したのも、デクルックスに関わった事がきっかけだったの。その後はテロらしい事はしてない。彼に同調しても、悪事がエスカレートするばかりだし……」
う~む、あの【GAME15】でジーナがパズル工場を襲った理由がうやモヤのままでしたが、やはりデクルックスに関わった故の言動でしたか。
「お前、私に黙ってそんな事をしたのか! 何でまだデクルックスに拘ってる?」
そしてガクルックスさんには黙っていた。それは言える訳無いですよねぇ。
「止めておけ、奴の呪縛を解き放ったら地上でも殺戮を起こす。そうしたら解呪してくれた恩人の彼女達にも被害が及ぶんだぞ!?」
「でも……でも! アイツも開放できれば、少しは改心だってするかも知れないじゃん!!」
「するわけが無かろう。あんなサイコパスに……」
やはりサイコパスなのは周知承知なんですね。
「待って。もしかして、デクルックスも訳ありなんじゃ……?」
「いいや、あの狂人に至っては全身真っ黒の大罪人。モンスターにも匹敵する。奴の狂った裏ゲームで裏表の人々がどれだけ犠牲になったか。人の泣き叫ぶ面と血を見るのが最も楽しみな奴が―――」
「ガクルックス!!!」
質問したレミでさえも絶句してしまう程の極悪人・デルタのデクルックス。
鳳凰堂孔雀や、WGCが目の敵にするサザンクロスの真の姿を知った事で、本当の核に近づきつつあるゲーム戦士。
その詳細を知るのはたった数名。サザンクロスの幹部の証言が確かならば、その真実を歪める何かが、何処かに存在するという事。
―――知らず知らずのうちに展開された、裏と表のゲーム戦士同士の戦い。その終止符を打つ瞬間も、もう直ぐそこまで来ているのでした……!!
【GAME53〜55】に掛けて長きに渡ってお送りしました長期戦ゲーム。本日を持ちまして終了と同時に、2022年のゲームウォーリアー最後の更新とさせて頂きます!
――本年のゲーム、これまでッ! またお会いしましょう、2023年ッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽
〘オーブ・ビッグゲーム計画プログラム【LABYRINTH】、始動準備中……!!〙
▶▶▶▶ NEXT GAME WARRIORS ▽
レミ達がサザンクロスの真実を知ったと同じ頃、上のB4層ではシャッフル・豪樹と立海・シェイパー兄妹が、外道格闘集団『奈落道』の拳士との勝負を繰り広げていた!
その時、三色の獣の魂を持つ新たなゲーム戦士が、豪樹達の前に現れる!!
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今年も御一読頂き、ありがとうございました! 来年もゲームウォーリアーをお楽しみに! 良いお年を!!




