【GAME6-9】レイドバトル決着!フィニッシュは純愛タクティクスで!!
――スピリットプレイヤー・ジンくんの切り札、《アーケードキング・ドットイーター》の攻撃は止まる事を知らず、今まで善戦してきた生き残りのプレイヤー達をドットイーターの大きな口でパクッと一口いただき、勝利への糸口を阻む。
「そらそら〜!! どんどん食べちゃえ〜〜!!!」
子供は調子に乗り出したら止まらない。ジンくんの攻撃コマンドが発動される度にドットイーターがまたもや大口開いてプレイヤー達を襲い掛かる! お前の胃袋はブラックホールか!?
「わ゛あああああああ!!!!!」
――パクッ!!
〔HP600→0 KNOCK OUT!〕
現在生き残りプレイヤーはみのり、槍一郎、穂香の3名になってしまった。直接的にシャッフル・オールスターズVSスピリットプレイヤーの勝負となったレイドバトルモード、生き残るか喰われるか……?
「くっ……なんて事だ、あのユニットが攻撃する度にユニットのステータスが半分になって思うように攻撃出来ない――!」
「これじゃブロックで自分の身を守る事もままならないわ……!!」
槍一郎と穂香が口を揃えてユニットの弱体化が痛手になっていることを身を持って感じていた。
槍一郎の《ライトクリスタル・ドラゴン》、穂香の《オーク・インカネーション》。2体のエースカードがことごとくステータス攻守100以下にまで減少してしまい、これでは強固な盾も紙の切れ端と化す。
(それにドットイーターは攻撃やブロックをしてもその反撃ダメージを一切受けないから迂闊に攻撃しても犬死にするだけ……)
ドットイーターの恐ろしい所はユニット同士の戦闘で受けるダメージが無効になるというチート能力、一方的なパワーとユニット弱体化によって一気に戦場を制圧する。ドラゴンも大樹の化身もこれでは形無し。
もし倒すとするなら、カードの能力でダメージを与えるか破壊をするしかない!
(早く、早く私のデッキにユニット破壊カードが来てくれれば……!)
サポートカードメインのデッキを持つ穂香、相手ユニットの攻撃コマンドが下る前に、時間経過によるカードドローを待つ。
そんな中で彼女のカードスキャンブレスのモニターに【CARD DRAW:1】と、カードを1枚引ける事を表すウィンドウが。
「お願い――!! カードドローッッ!!!」
《CARD DRAW》
抜けば光の粒子が飛び散る居合のドロー、引いたカードを見るや否や即座にブレスにスキャンした!
『アクションカード、【デス・ブレイカー】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〔アクション・カード〕
【デス・ブレイカー】
属性:黒 EG:②
・効果:フィールド上のユニットを1体破壊する。
◎――――――――――――――――――◎
闇のエネルギーで深淵の闇へと誘うユニット破壊カード、温和な穂香姉ちゃんが持ってると違和感バリバリだが今の状況じゃ仕方なし。
「《デス・ブレイカー》でドットイーターを破壊します!!」
これで通ればオールスターズの勝利は確実に迫る所。―――だがその希望を阻むのはあの音声アナウンスだ。
『カウンター・レスポンス発動』
カード発動のタイミングを割り込み、自分のカードや効果で反撃を与える『カウンター・レスポンス』、発動させたのはジンくんだ。
「僕のドットイーターを破壊しようったってそうはいかないぞ!! アクションカード発動!!」
『アクションカード、【ミラージュ・ベール】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〔アクションカード〕
【ミラージュ・ベール】
属性:黄 EG:③
・効果:ユニットやマテリアルを1つ選択する。
選択したカードは30秒間他のカードの
効果を受けない。
◎――――――――――――――――――◎
ドットイーターのデカイ身体に薄透明のカーテンのようなものが包まれる。
これにより《デス・ブレイカー》の破壊エネルギーを完全に遮断され、破壊効果は無効となってしまった!!
「なんて事…………!」
今のカード発動で穂香の手札は残り1枚、これを消費してしまうと《オーク・インカネーション》がステータス変動で消滅してしまう。最早成す術無し。
「カード被っちゃったけど、お返しだよ!!」
続けてジンくんのカードスキャン!
『アクションカード、【デス・ブレイカー】!!』
「――――――え??」
まさかの展開に穂香は愕然とした。ジンくんの手札に既に穂香のユニット破壊カードが隠されていた!! 事態の反転、オウム返しか!?
「《デス・ブレイカー》の能力でおっぱい大きい魔法使いさんの《オーク・インカネーション》を破壊!! そのままドットイーターで攻撃だ〜!!!」
「…………もう、私はここまでみたいですね。残念です」
ドットイーターへの攻撃ブロックを予測しただけに、その直前での破壊は非常に痛い。カードゲームによって状況把握が敏感なプレイヤーはカードの発動処理が行われる前に己の詰みを悟るという。
《デス・ブレイカー》の破壊処理が終わり、続いてドットイーターの攻撃が迫るなか、穂香は叫んだ。
「二人とも、後はお願いします!! 必ずオーブを手に入れてください!!!」
みのりと槍一郎、二人の生き残りに送る鼓舞の断末魔。そして……
――――パクッ!!!
〔リーフ HP400→0 KNOCK OUT!〕
ハンドルネーム『リーフ』こと穂香がやられた! これでプレ残るイヤーはみのりと槍一郎を残すのみ。しかし巨大ドットイーター相手にどうする事も出来ない!!
(クソッ、こんな時にカスタムツールもアクションカードも来ないなんて……ツイてない――!!)
勝負時にツイてないときは主張せずに構えるのが利口だが、生き残り二人の中ではどうしても相手には不運な所が目立ってしまう。
みのりの事が気になるジンくんはとうとう槍一郎に攻撃の矛先を向けた。
「行けードットイーター! 今度は気難しそうな槍のお兄さんを食べちゃえ〜!!」
「気難しそうって……しかたない、《ライトクリスタル・ドラゴン》でブロック!!」
現時点でドラゴンのAP/DPは100以下を下回り、ユニット同士の戦闘も雲泥の差でドットイーターのコールド勝ち。
――ところがジンくんの無性にも不満そうな顔が気まぐれな戦況を大きく揺るがせる。
「……何かお兄さんとやっても面白くない! 心の中で仕方なさそうにやってるの、僕の分かるんだからね!!」
「なっ――!?」
スピリットプレイヤーは挑むプレイヤー達の心の内も読めるらしい。前々から槍一郎がゲームを業務的にやり遂げる所から強者を始めとする他のプレイヤー達に反感を買っていたが、それが今度はジンくんの機嫌を悪くさせた。痛恨のカードスキャン!!
『アクションカード、【業炎の玉】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〔アクションカード〕
【業炎の玉―ブレイズ・ボール―】
属性:赤 EG:④
・効果:プレイヤーまたはユニット1体を対象にする。
それに500ダメージを与える。
◎――――――――――――――――――◎
ジンくんの掌に浮かぶ巨大な火球、それがスピリットプレイヤーが心無い挑戦者への憤りを表すようにも見えた。
「僕、イヤイヤ付き合ってるようなお兄さんとは遊びたくないよ! あっち行けー!!」
怒りのブレイズ・ボールが槍一郎目掛けて投げ込まれた!!
「……またか……僕に、僕に何が足りないって言うんだ――!!!」
――――ズドォォォオオン!!!!
〔ゲイル HP500→0 KNOCK OUT!〕
空中スピード戦法で翻弄させHPをこそいでいった槍一郎もついにリタイア。
――――残るは河合みのり、ただ一人。
HPは3100、手札はたったの2枚。フィールドには丁度30体のユニットを従えている。
だが、APの低いガード型ユニットでは攻撃してもジンくんのHP3000には届きそうもない。
「――やっと、プリンセスのお姉さんと二人きりになれたね♪ PASとかプレイヤースキルが強くなくたって、お姉さんはこうして最後まで生き残れた。これは実力に入るんだよ、もっと誇っても良いんだよ!!」
……しかし、みのりは首を横に振りながらジンくんの励ましにも謙遜した。
「……ありがとうジンくん。でもね、これは実力でもなんでもなくて運が良かっただけだと思うな私は。
サバイバルで剣くんに助けられて、ここでは穂香ちゃんや槍くんや、他のプレイヤー達が頑張ってくれたお陰で私はここに立ってこられた。正直な事を言うと……助けられてばっかは、私はもう嫌かな」
彼女の本心は、フィールド外部で閲覧している剣や他の5人の仲間達、敢え無くリタイアしてしまった挑戦者プレイヤー達の胸に響いた。そして、ジンくんにも。
「せめて、まだゲームが下手っぴな私が勝てる方法を出すとしたら、今まで触れてきたゲームへの全ての知識、好奇心をこのカードに込めるしかない。だから…………」
『カスタム・ツールカード――』
みのりはスッと差し出すように、カードスキャンブレスの装填口に1枚のカードを入れてスキャンさせた。
「私の全身全霊の【純愛タクティクス】、受け取って!!!!!」
――――ガチャッ、ピキュュュュンッッ!!!
『【ビッグハート・パワーバースト】!!』
遥か彼方の天界の空から舞い降りた武器、それがみのりの手元に優しく受け取られた。その武器は、絆を尊ぶ者に与えられた桃属性最強のバズーカだ!!!
◎――――――――――――――――――◎
〔カスタム・ツールカード〕
【ビッグハート・パワーバースト】EG:⑦
AP:100×X PP:1
属性:桃 装備:プレイヤー
効果:自分がコントロールする
ユニットの数を『X』とし、その数×100の
AP分の無敵・回避貫通
バスター型ダメージを与える。
◎――――――――――――――――――◎
具体的に言うならば、この武器は1回限りのリーサルウェポン。自分がコントロールするユニットの数だけ攻撃力が上がる無限のカスタム・ツールカード。
みのりのユニットは30体ジャスト。それを100で掛け算して、30×100で合計は……
「AP3000、ジャストキル――!!!!」
ジンくんの顔が青ざめたと同時に、何故みのりがユニットを並べていたのか合点がいったようだ。
現在ジンくんの手札は1枚のみ。槍一郎や穂香にカードを使わせて、カウンター・レスポンスで対策を取られない為に手札を減らしておくことで確実に決めることをみのりは既に頭に入れていたのだ。
全ては、とびっきりの一撃をぶつける為に――!!!!
「……それスゴイや、これがお姉さんの全力なんだ!! ――でも、まだまだ詰めが甘かったみたいだね!!!」
何ッッ!? このカード1枚の状況でまだ戦況を覆せるとでも言うのか、ジンくん起死回生のカードスキャン!!
『アクションカード、【オーバーロード・デストロイヤー】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〔アクション・カード〕
【オーバーロード・デストロイヤー】
属性:黒 EG:⑩
・効果:相手のユニットを全て破壊する。
◎――――――――――――――――――◎
なんと単刀直入で凄まじい能力なのか。ジンくんは持てるEGを全て消費して全ユニット破壊の一掃カードを隠し持っていた!!!
「お姉さんユニットばっか並べてたから、おかしいと思って取っといたんだ! 切り札は最後まで持っているべきだよね〜☆
――それじゃ、綺麗にお掃除しちゃえええええ!!!!」
ジンくんの周りに放たれたドス黒い波動の渦が、みのりの並べたユニット達に迫る。凄まじい暗黒エネルギーを込めたビッグウェーブが全ユニットを地獄へと突き落とす!!!
「これでドットイーターでお姉さんを食べ続ければ、僕の勝ち――――――」
その時、我がの目を疑う予想外の光景にジンくんは硬直した。
本来ならば《オーバーロード・デストロイヤー》によってみのりのユニットは全て破壊され、完全にドットイーターに制圧されたままジンくんの勝利……になる筈だった。ところがどうだ。
30体全て、フィールドに留まっている!!!!
「……え、何で? 嘘でしょ!? どうしてユニットが破壊されないの!??」
ジンくんの描いた未来予想図が二度も崩れた事によってパニックに陥る。そこへみのりが語りかけた。
「慌てる事じゃ無いわジンくん。『切り札は最後まで持っているべき』って言ったのは貴方じゃない!」
〔フルル HP3100→100〕
その時みのりのHPが首の皮一枚繋げたギリギリに踏みとどまった事と、1枚温存してあった手札がゼロになった変化が垣間見えた。
つまり、みのりは発動直前に『カウンター・レスポンス』を発動していて反撃の構えを取っていた! そのカードとは……?
『アクションカード、【我が身に代えても仲間は守る!!】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〔アクション・カード〕
【この身に代えても仲間は守る!!】
属性:桃 EG:③
・効果:自分のユニットが戦闘ダメージや
カード効果で破壊される直前に、
自分のコントロールするユニットの数
×100のHPを支払う事でその数分の
ユニットの破壊を無効にする。
◎――――――――――――――――――◎
これぞみのりが決めた正真正銘最後の切り札。自分の身を犠牲にしてユニットを守る自己犠牲カード!
30体コツコツと出してきたユニットをHP3000のコストを支払いながらも全て守り抜いたのだ。なんと大胆な守護者、仲間を守る為なら命を削ることも躊躇わない不屈の精神力だ!!
「何でそこまで……」
「私が出したユニットは、努力とか経験とか、自分が強くなるために積み重ねたもの全てを表わしてるの。だからこの命に代えても無駄にはしたくない! 剣くんや、皆が繋いだ勝利への光は閉ざしちゃいけない!!
――だから積み重ねたとびっきりの【愛】を、スピリットプレイヤー・ジンくんに全てぶつけるッッ!!!!」
「プリンセスのお姉さん…………君って一体、何者なの???」
「――――ただのゲームが大好きな女子高生ッ☆ また縁があったら、一緒に遊びましょ!!」
闘いを経て、完全に吹っ切れたみのり。万感の想いを込めてバズーカのエネルギーを蓄積させて構える。30体分のユニットのエネルギーが、パワーバーストに宿る――!!
「……負けた! やっぱお姉さんの【愛】には敵わないや!! さぁ、その愛を僕に思いっきりブチかましてよ!!!」
――パワーバースト・エネルギー蓄積100%!! 発射用意!!!
「ハートフル全開・MAXパワー!! ビッグハート・パワーバースト、発射ァァァァァァァッッッッ!!!!!!!」
――――ギュァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
ピンクゴールドの特大波動砲がフィールドの遥か彼方、それもドットイーター諸共貫通してジンくんに直撃した!! 苦しむ事も、断末魔も叫ぶこともなく波動砲をまともに受けたジンくんは一瞬清らかで満足そうな顔をしていた。そして……
〔S.PLAYER ジン HP3000→0 KNOCK OUT!〕
〔RAID BATTLE MODE WINNER フルル!!〕
2つのリザルトウィンドウが大きく表記されたと同時に、アメイジング・レイドバトルモードの終了とプレイヤー側の勝利を認識させた閲覧プレイヤーの歓喜の嵐が流れた。
「わ……たし、――勝った、の、ね……!!」
全身全霊の力を使い果たし、目がうつらうつらになり疲労困憊の意を示すみのり。そんな彼女の目先に珠のようなものが現れた。
「あ……れは……、オーブ――――!!!」
何の汚れもなく、光沢で透明な結晶のようなオーブが一転、中からピンクのモヤがかかると共にオーブの真の姿を表した――!!
魂の一部、【愛】を表すピンク色のオーブ。その名も『ハートフル・オーブ』だ!!
途切れ途切れに意識が遠退くみのり。残った力を振り絞り、右手でオーブを差し伸べ掴み取った瞬間。
――――バタン……!!
事切れたようにみのりは倒れ、そのまま深い眠りへと誘われた……
▶▶▶ MINORI FIRST ORB GET!!! ▽




