【GAME55-3】立海参謀長・踏み外した後悔……!!
『――――バスターキャッスルの地下室のセキュリティを改造しろ?』
『そう、最近銃司のPAS暴走の発症頻度もだいぶ激しくなっている。そろそろ更新も兼ねて、パスワード諸々を厳重にしてほしい』
丈の弟・銃司は、覚醒していた『マグナム』のPASの力が余りにも凄まじい故に、時に精神をPASに乗っ取られる程の不安定な神経を持っていた。
下手に過激なゲームをすれば、PASのエネルギーが銃司の自我を失わせ、発狂状態に陥る程に暴走を起こす。
これに危惧した兄・丈は、現実世界でのゲームを禁じ、ゲームワールドオンラインから紅蓮城・バスターキャッスルへの移動も地下室のみに制限させた。
『史也、銃司が俺の事を嫌ってるって言っただろ。考えてもみろ。アイツは精神病患ってるから、俺は10年以上も奴を家に籠もらせて自由を奪ってる。俺がその立場なら実銃持って殺したくもなる』
『分かってるなら少しは自由にさせれば良いだろ』
『駄目だ。仮に外へ開放して、発作で人を襲ったら誰が責任を取るつもりだ。暴走本能で人を殺め、逆に殺されでもしたら……少なくとも俺は、銃司がPASを制御出来るまで外に開放はさせん』
立海の城主として、銃司の兄として、背負わねばならない責任の重さは本人が重々知っていた。だからこそ心を鬼にして、弟を束縛してはいるが……理屈だけでは通らない難しい話である。
―――壮行してる内に、バスターキャッスルの最下階、即ち封印されし地下室の錠前へと辿り着いた丈と史也。
『なる程、相当廃れているな』
『パスワード、指紋認証、静脈認証と三重ロックを無視して、銃司が物理的に破壊しようとした結果がこれだ。ここはいっそ五重でも十重でも頑丈なのを頼む』
PASによって暴走した銃司の破壊力は、史也の独学で作成した強固なセキュリティシステムを崩壊寸前まで撃ち砕こうとしていた。
松明だけが頼りの暗がりの地下には、破壊しそこねた瓦礫の跡や、錆びついた鎖が散々に散らばっている。ゲームに飢えたPASが、禁断症状によって得た危険なパワーの発散の結果である。
『セキュリティは強化しておくが……銃司の症状が落ち着いたら、少しはバスターキャッスルの中も歩かせておけよ。私が彼の前を通るといつも寂しそうにしてる』
『………あぁ、善処はしておこう』
『約束だぞ?』
『ん………分かった、約束しよう』
立海は命よりも、絆や約束を尊ぶ遊戯貴族。釘つけられたかのように“約束”を口にした史也に、流石の丈もたじろいだ。それほど史也は、不自由な銃司に対して哀れんでいたのだろうか。
しかし史也も、城主に頼まれた依頼は最後まで徹する誠実な男。何一つ嫌な顔をせず、淡々と智力を用いて最先端セキュリティ技術のアップデートに勤しむ。ノートパソコンは彼にとって必需品だ。
『俺にはITやらパソコン技術は良く分からんが、いつ見ても史也の繊細な作業には頭が上がらん。精密なセキュリティを管理できるのはお前しかいないからな、本当に助かる』
丈が史也に立海遊戯戦団をスカウトしたのは好意だけの事ではない。ちゃんと彼の能力を認め、信頼に値する人物としてメンバーに迎えた。丈のカリスマが縁を呼んだと言うべきか。
『……そうだ、史也の自室にはパソコン技術とかゲーム攻略の本が結構あったな。それを銃司が学習して、史也の解除コードを破るとかしないだろうな?』
『気にしすぎだ。あの書籍に入ってる本は基礎知識に過ぎんものばかりだ。基礎をかじったところで高度技術には辿り着けもしない』
『……なら良いんだ』
史也さんはこう言ってはいますが……結果的には銃司が紅蓮城からの脱獄に繋がったという点では、所々納得する部分が見当たる事でしょう。
史也が人生で最大級に後悔するに至った伏線としては、銃司を含め、己の知恵より劣る一般人を見下していた事。
無意識にも自分の智識に、傲慢にも自負していた事も原因ではあったのですが……本当の後悔は、ここからだったのです。
史也の手によって、更に強固な仕様として七重ロック。ゲームワールドから採掘したオリハルコンの材料を投入し、ナンバープレートといったゲーム仕様のセキュリティも加わった“骨組み”の部分まで設計完了。残すはその内容となる“錠”の強度だけ。
(セキュリティ強度を強くすると、それこそIQ600以上の者でないと開かない仕様になる。何処ぞの改造人間にしか分からん牢獄になるが………
――――ただの精神疾患の弟を、こんな廊に閉じ込めるのは酷すぎる)
…………そうです。これが、大門史也を一生分の後悔に陥る事になった中途半端な仕事なのです。
PASの個性が激しすぎる故に、精神疾患扱いされる銃司を見兼ねて、丈の要望とは裏腹に甘さを出してしまった。
丈には無断で、IQ600から300に引き下げた地下室のセキュリティロックは、1ヶ月後に彼が凡人と油断していた銃司によって解除されてしまうのだった…………
※この悲劇の詳細は『極限遊戯戦記』第50話⑤〜⑦参照。
『……アップデート完了だ。これなら10年は持つだろう』
『済まない。毎度史也には嫌な仕事を押し付けてしまって。だが………
―――お前は立海遊戯戦団のブレインだ。史也の智識に敵う者は居ないだろう……!!』
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――それから四年の月日が経った。
立海の参謀長であり、誇り高きゲーム戦士である大門史也は、立海丈の死と好敵手達の敗北を経て至高の叡智を得た。
もう決して中途半端な任務は果たさない。そんな想いが深海の如し冷静沈着な参謀長の魂を着火させた。
それが今現在のクロスデュエル。一億枚以上のアメイジングカードの中の一枚を当てる。ゲームの知識が試される一発勝負に出た!
「覚えておくがいい、畠田レミ。ゲームチームとして果たすべき責務が甘かろうが、酷であろうが、覚悟の持たずに中途半端にする事が、ゲーム戦士として恥ずべき行為だ。
もし君が、強くなることを止めない気でいるなら……今から私の魅せるプレイを、その目に焼き付けるがいい」
「………………はい」
「―――立海遊戯戦団・参謀長、大門史也。これより現時点アメイジングカード総数、1248962468枚分の1枚を的中させる………!!!!」
最強のブレインゲーム戦士として、失った最愛の親友のチームとして、大門史也の思考フェイズが始まる! 次回、刮目して熟読せよ!!
――本日のゲーム、これまでッッ!!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




