【GAME55-2】立海遊戯戦団・昔日……!!
――畠田レミ、覚悟完了! 無鉄砲な史也の策に乗った彼女の眼は活力に満ち、対する史也は彼女へのサポートに全力で徹するべく、脳内図書館の整理も固めていた。
今や二人は絆の線で繋がれた戦友。レミは改めて、自身を決意に奮い立たせてくれた史也に対し、敬意を示すようになった。
「史也さん、こうして身近で共に戦って思ってましたけど、本当に冷静で迷いが無いですよね。流石年季の詰まった参謀長って感じ!」
等と関心しっぱなしのレミ。かという史也は煽てに浮かれる訳もないどころか、険しい表情でそれを返す。
「……そんな事はない。私もここ数年でようやく学んだのだ。己の知性に自惚れ、中途半端に事を進めれば一生後悔するとな」
「後悔って……あたしにはそんな風には感じませんけど」
「だが私は過去に一生分の後悔を味わった。君とは好敵手の間柄だが戦友だ。知り合いの類であろうと何であろうと、中途半端な任務は……二度とするものか」
▶▶▶ PAUSE▽
――はい、一旦ここで本編はストップ! Mr.Gの話をちょっとだけ聞いて頂戴。
先程史也さんが申しました“後悔”とは何か。彼の所属する立海遊戯戦団にて起こった衝撃の事件は何かと答えるならズバリ、先代城主・立海丈の死。
四年前に銃司の暴走によって引き起こした城主の威厳高き自害。その時には既に史也は参謀として、この事件に関わっていました。
では、その事件を通して史也は何を後悔したのでしょうか……? 本日のメインイベント、四年前の城主自害の運命を左右する、ある記憶を辿っていきましょう……!
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―――先代城主・立海丈が死んだのは、超次元ゲーム西暦0047年の4月18日。
今回お送りする記憶は、その1ヶ月前に遡ります。
舞台はゲームワールドオンライン・バスターキャッスル、紅蓮色に染められたリビングにて。
『丈、やっと帰ったのか。こっちは喧しい一日だったぞ』
と、帰城する丈を渋い顔で出迎える若き日の史也。
『その割には有意義な時間を過ごせたようだな。俺の予感した通りだ』
『またお前の未来予知か? だったら一言言ってくれても良いだろう。また挑戦プレイヤーを所持金半減させる所だった』
丈と史也は、東京の大学にて知り合った親友の間柄。
本来立海遊戯戦団は、立海家の血統によって決められた者が、入団テストをパスしてチームに加入できるしきたりだが、史也に至っては丈が強引にスカウトし、参謀長として立海を支えていたのだった。謂わば彼らの関係は、腐れ縁にさも似たり。
それと、史也が申していた『未来予知』。これは丈が覚醒していたPASの能力の一つであった。
『俺の予知はそういう未来もあり得る事を予測するようなもんだ。俺の言葉で縛るよりも、お前には国立図書館並みの智力があるだろうに。別にゲームオーバーになっても所持金はまた湧いてくるだろう』
いやはや、銃司の兄という事もあって傲慢さは皇帝級ですな!
『あ、あの、丈さま。お紅茶が、入りました……』
そこへ入室し、紅茶の入ったポットとティーカップをお盆に乗せ、覚束ない足でテーブルに用意するメイドちゃん。当時12歳の時実桜、まだ見習いのロリメイドであった。
『おぉ、これは素晴らしい! このダージリンティーは俺の好きな銘柄ではないか。良く覚えられたな、偉いぞ桜!!』
城主に頭を撫でられ、この上なく嬉しそうな桜。そうですよね、肉親に無残に捨てられた彼女を拾ってくれたのは丈なのですから。親代りの彼から褒められる事は最大の歓びなのです。
―――しらーーーーー。
そして、それを冷ややかな面で眼差すのは史也さん。
『………丈、何で紅茶に炭酸の泡が入ってる。何で色が黒っぽいんだ』
え、ちょっと待って。それダージリンティーじゃなくて、コーラじゃね??
『何を言うか史也、たかがリプ◯ンをペプシンと間違えただけだろう』
『大間違いだろ。明らかにジャパンテイストなコーラだろそれ』
『これくらい良いだしょーに! 俺がコ◯よりペプ◯派なの知ってるだけマシだろ!!』
『やっぱコーラだろうが!!!』
……なんですか、この夫婦漫才は。
『あの、史也さまもいかがですか?』
『結構だ。私には専属の助手がいる。君はこのお茶目な城主に尽力を致せ』
というよりも史也は、コーラが苦手なんだそうで。
『……桜、ちょっと史也とお話があるんだ。少しの間席を外してくれるか?』
『かしこまりました』
まだ親愛なる城主の前とはいえ、緊張は隠せないが初々しく御辞儀をする桜はリビングを退室した。
『まだ桜も慣れてないが、いずれお前んとこの奈々子よりかは優秀なメイドにさせてみせるさ。見てなよ〜』
『孤児が立海の従者が務まるなど……無謀な事だ』
『何でそう言い切れる。人間なんて脳ミソを蓄えて知恵を付ける以外は皆同じ……千差万別な存在だろう』
言い方は様々ありますが、人間論にはこのように広く捉えつつも根本が同じと考える丈のような人もいるのです。
『前にオールグリーンガーデンで神崎紗由理に会って、ゲーム時代の情勢を聞いた。もうすぐ五十年になるこの時代にも、変遷期が来ているらしい』
“変遷期”とは、時代における移り変わり・変転を意味します。
電脳世界と現実を繋ぎ、ゲームワールドオンラインが誕生してから五十数年。最先端に挑むゲーム戦士達の歴史も、徐々に変化を見せようとしていた。
『もはやPASを持つ者だけが世界を制する時代も廃れてくるそうだ。今WGCの野党連中が、それを訴えようと必死らしい。―――何れは一般プレイヤーが強者を殺す時代も……あり得なく無いだろうな』
流石立海の城主ともあって、先見の明に長けながらも丈の眼には、渇望にも似た血走った闘志があった。
『……お前は何時から凡人に肩入れするようになった?』
『肩入れ? 下らん。俺は俺の成すがままに生きるだけだ。時代に翻弄され、地を這いつくばる弱者と一緒にするな。コンプライアンスに怯える愚者に真の自由を謳えるか!』
……何か心なしかコンプラ発言が多くなったような気がする、この作品。
『そんなお前でも、【立海】の名は固執するんだな』
『高貴なる遊戯貴族の血統である【立海】の名は俺の誇りだ。三下とは格が違う』
『だったら威厳保ちに親馬鹿……もとい城主馬鹿ぶりを少しは控えておけ』
『しょーがないだろ、桜が俺に懐くんだから従姉妹の娘みたいに思えてさ』
『その割には、血の繋がった弟の話は一回もしてないが?』
『………銃司か。アイツは俺を嫌ってる。慣れ合おうとしたら即殺し合いだ』
『私には――――兄であるお前と一緒にゲームしたいと思ってそうだが……?』
――史也の核心ついた問いに対し、丈はしばらくの間閉口した。
何しろこの当時の銃司は、強力なPASの力によって精神不安定な状態が続き、下手にゲームをさせれば暴走も有り得た程の危険な状況であった。
立海兄弟の複雑な愛情が、後に永遠の別れとなる自害に繋がるわけだが……実はもう一つ。
丈が史也に頼もうとした仕事。これが史也にとって、間接的にも一生モノの後悔を生み出すことになったのでした。その詳細はまた次回。――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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