【GAME54-4】絶え果てた希望、信者の復讐心!!
「……? 何よアンタたち、【超次元空間】の事で何か知ってる事でもあんの?」
イプシロンのジーナ、ガンマのガクルックスが信教する教団『サザンクロス』。
その教団の創始者であるシャーロット・ジョーンズは、サザンクロスにおける思想が人々に受け容れなかったばかりに、WGCによってゲームワールドオンラインの遥か彼方に追放されたという。
その最果てのエリアが【超次元空間】。だがその空間は……
「―――――消滅した」
「……………は、はぁ………!!?」
冷淡かつ辛辣にも似た史也の口から告げた、超次元空間の末路。それを聞いたジーナとガクルックスは絶句した。
「それは、どういう意味なのですか……? 超次元空間が消滅したとは―――!?」
「ふ、史也さん! そんなオブラートもジェラートも包まないでそんな事を……!」
あの、レミちゃん? ジェラートは包むもんじゃなくて舐めるものですよ! シリアスは通さないと!
「この場で濁しても何も解決しないだろう。……私が言ったままの理由だ。超次元空間は、その存在そのものの役目を終えて消滅したのだ」
▶▶▶ PAUSE▽
――はい、ここからはMr.Gがご説明しましょう!
時は遡ること一年前、物語で言うならば前作『極限遊戯戦記』の第四章、アメイジング・ウォーズの終盤戦に差し掛かった所。
そもそも【超次元空間】とは、ゲームワールドの天空エリアよりも遥か上空に偶然出来た電脳空間の裂け目から生まれた不毛の地。
数十年前に、シャッフルの大森穂香の父・科学者の大森賢士朗の手によって新たな公式エリアとして開拓しようとしたのですが……何しろ電脳世界の最果てに位置する無法地帯ですから、科学者一人だけの知識での開拓は無謀なものでした。
未だ穂香が生まれたばかりの頃には、両親と6人の兄弟が、その超次元空間の予想だにしない事態の連続によって消息不明に。
その後、父・賢士朗は家族を失ったショックとPASの暴走によって精神崩壊を起こした。
穂香の事も覚えていない程に発狂状態に陥り、その穂香に片棒を担がせるように立海遊戯戦団を利用する形で、ゲームワールドの大いなる遺産・Gパーツを強奪させて、超次元空間を開拓させようとしたが時既に遅し。
現状維持出来なくなった超次元空間は、賢士朗の最期と同時に、その空間諸共消滅していったのでした。
聞くも涙、語るも涙のこの物語の詳細は、実際に前作を読んで確かめて下さいな。
▶▶▶ NEXT▽
「そ……そんな馬鹿な……? では何か? 超次元空間に幽閉されたシャーロット様は、あのまま………」
「開拓しようとした大森賢士朗と、穂香の家族の全員が消息を絶ったのだ。言うまでもないだろう。………だが消滅寸前で、銃司が何かを察してたようだがな」
銃司が何かを察したというのは、次の証拠のシーンである。
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「――? 何や銃司、ボーっと荒野を見つめちゃって忘れもんか?」
「ん、あぁ……別に何でもない。ただの城主の想い更けだ」
「あ、そう」
(――――気のせい、か……)
銃司のPASに反応したものを頼りに、何かを感じていたようだが……その正体が何かはっきりしない内に銃司は気にかけるのを止めた。
※『極限遊戯戦記』第60話①~超次元空間・崩壊~より抜粋。
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―――この何気ない伏線が、2年以上の月日が流れて意外な所に繋がったのです。
あの時に銃司が、PASの強い波動によって感じ取ったものが、超次元空間に幽閉された何者かであるとしたら……?
廻る因果の糸車は、時にゲーム戦士達の運命を変える事はあれども、その裏ではこのような残酷な末路があるのかもしれません。
「あの時は、我々も生死を分かつギリギリの脱出だったから、それどころではなかった。あの虚無空間に放り出されては、恐らくシャーロット・ジョーンズはもう生きては――――」
「見え透いた嘘を付くな!!!!!」
淡々とサザンクロス創始者の末路を話す史也を遮るように、地底湖にジーナの否定と苦痛にも似た叫びが鳴り響いた。
「ふざけんじゃないよ……!! 超次元空間が消えただなんて、あのシャーロット様が、こんな呆気なく死ぬ筈が無いじゃない!!!」
「嘘吐いた所でお前達に利益があると思うか? 何だったら地上から来たゲーム戦士か、お前達が沈めた倭刀と穂香にでも聞いたらどうだ」
「ッ………!!」
史也さんの仰る通りと言いたい所なんですが……ジーナが否定するのも充分理解できる。
否定から怒り、更には神頼みという無謀な取引まで陥るという、あのキューブラー・ロスの死に対する受容段階に差も似たり。
それが、自分達の道を導く教示者・創始者の死に対するもの故に、その心情が非常に濃く表れていた。
「………そういう事なの。アクルックスの奴が何か様子が変だと思ったら……それを知ってて、アタイ達には黙ってたのか。―――――何やってんのかしら、アタイ達って……!!」
「ジーナ……?」
史也の言ったことが真実だと理解し、終いには己の成した事への無意味さに絶望するジーナ。そこには信教に対する無力と、理不尽な現実に対するやり場の無い怒りがあった。
「シャーロット様は、人の心を救う為に来日して頑張ってきたのに、勝手な理由で追放させられて……アタイ達はサザンクロスの思想を汚したくないから、この辛い日々を耐え忍んできた。……それがこのザマよ」
「……………」
そしてこのやるせなさ、どうしようもない寂しさが、次第に恨みの色を募らせて怒りに身を任せる。これが復讐心の怒りを呼ぶ色へと心変わりしていく瞬間である。
「デクルックスの言う通りかもね、こんな自分勝手な奴らと共存なんて、綺麗事にしか聞こえないわ! 今すぐ地上の奴ら全員を地底に叩き落して、シャーロット様を超次元空間に追放した奴らもぶっ殺してやりたい―――――!!!!」
「ち、ちょっと待ちなさいよ!!」
現実逃避に怒りで身を任せるジーナに対し、レミは困惑する。しかしそれは要らない心配であった。
「落ち着くんだ、ジーナ。やり場の無い怒りで我を忘れて誰に復讐する気だ? 第一こんな事をシャーロット様は望んでいたのか!?」
「だ、だって…………ッッ!!」
「私もこうなる事は覚悟の上で構えていた。ならば尚更、私とお前でシャーロット様が築いてきたサザンクロスの信条を継ぐのが、我々の役目ではないのか?」
ジーナの額には大粒の涙の跡。だが対するガクルックスは逆に乾いた眼に先に、熱い何かを迸らせながら彼女を説得する。彼もまた辛い現実を受け止めようとしているのです。
「……何よ、優等生ぶっちゃって。でも、一理あるわ。これからの事を考える前に、今やるべき事を果たさなくちゃ。―――――やる気出てきたわ。こんな所でWGCに捕まってなんかいられないわ……!!」
「私も―――――同意見だ!!!」
敵ながら見事な魂の支え合い! サザンクロス創始者の死を一時は受け止め、それを決闘の闘志に繋げていった。
「なんか相手が燃えて来ちゃった。史也さん、これも想定内ですか?」
「……まぁ、分かり切っていた」
「創始者ももう居ないのに、まだWGCに逆らうなんて。正気の沙汰じゃないわね……!」
等とレミが皮肉を注ぎ込んだが、当の二人には最早関係の無い事!
「うっさい!! 敵風情が、それも宗教でトラウマに遭った小娘ごときに同情される筋合いなんか無いわ!」
「さぁ小休止は終わりだ。覚悟しておけ、我々はサザンクロスの意志を継ぐために全力で抵抗する!!」
読者の皆さん、忘れてませんよね〜? 決闘途中のゲームは最後までやります当たり前!
ジーナ・ガクルックスが指揮するコンバインユニットの脅威、休んでもレミと史也のピンチに変わり無し!
さぁどうなる次回のゲーム続行、アクション増量でお届けします!! ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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