【GAME53-4】いきなり勃発! 地底湖の裏ゲーム!!
――地底空間・B6層、メインスポットの巨大な地底湖『黄泉の湖』。
位置的にもあの世に近いんじゃないかという所以から名付けられたクリアーブルーなレイクエリア。そこに潜入するは、裏プレイヤー討伐を目指すゲーム戦士達。
シャッフルオールスターズからは倭刀・穂香・レミ、そして立海遊戯戦団から史也の四人。
元は石灰岩の鍾乳洞だった洞窟が、地下水や地表水が溜まりに溜まって、このような神秘の湖が出来上がった事が主な原因。
謂わばこの湖は、地球の自然が賜った恩恵あっての事なのです。
そんなB6層の7割が湖で占めたこのエリア。四人のゲーム戦士は鍾乳洞の狭い足場や、人工的に作られた畔を道なりに進み、裏プレイヤーを探す。だが時には内輪話に花が咲く事も。
「……で、銃司くんはトンカチが原因で地底湖には行かなかった訳ね」
「レミちゃん、トンカチじゃなくてカナヅチ! 銃司さんが泳げないのにはちょっとした理由があるの」
「理由?」
前回、思わぬ所で好敵手・立海銃司のウィークポイントを知った我々ですが、剣よりも前に彼と親しい仲であった倭刀と穂香は、彼が何故にカナヅチになったのか知ってた様子。それを史也が説明した。
「5年前に立海家に二人を招いて、暫く交流が進んだあとに敷地の水泳場でナイトプールで遊んだ時の事だ。銃司と倭刀とで揉め合いの喧嘩をプールサイドでしてたんだが、不意にも銃司が足を滑らしてプールに落っこちてな。最悪にもその際に足をつったらしく、一瞬地獄が見えたほど溺れかけたんだそうだ」
それで水嫌いになっちゃったと……てかその原因を、作ったのが倭刀さんなんですか!? 貴方なんちゅートラウマを植え付けちゃったのよ!!
「あん時は銃司んとこのウォーターロール遊びたくて、それで殴り合いの喧嘩になったら、アイツをプールに落としてもうて……あの後穂香姉ちゃんにケツやら顔やら百叩きされたんよ」
「当たり前でしょう。銃司さんをあんな目に合わせたんだから。敵だったら半殺しじゃ済まないわよ!」
「ホンマ勘弁してください(泣)」
若気の至りと言うべきか、ガキンチョ同士の事故と言うべきか……良い子は真似しないでね。
「でも不思議な事ってあるものね。まさか倭刀くんと穂香ちゃんが前から立海と交流があったなんて」
レミはまだ知る由もない。倭刀や穂香に纏わる数多くの縁が、関東最大のゲームチームのトップとの交友を生んだ事を。廻る因果は糸車、秋風拭きゆく風車。
「今でこそシャッフルと好敵手関係みたいになっちまったけど、アメイジングウォーズが無かったらこうして手を組むなんて有り得なかったかもしれないしな」
倭刀は染み染みとシャッフルと立海との関係の変化に思いにふけるが、史也はそれに対して独特な主張を交わす。
「そうだろうか? 私は必然な結果だと思うがね。私にとってゲーム戦士というのは、興味を持った者に出会った時から奇妙な縁に繋がるものだと思う。―――銃司が桐山剣に惹かれるように。私も、そこの茶髪ポニーテールの娘に興味を持つようにな」
「……………………」
茶髪ポニーテールの娘とは、他ならぬ畠田レミの事。それを説いて無表情に史也の方を向き、彼女は無言のままで何を思うのか。
▶▶▶ NEXT▽
暫くして。B6層の探索に一時間以上費やす四人だったが、史也の小型ドローン等も使った多々の眼を用いても一向に裏プレイヤーの気配が感じられなかった。
「……静かすぎるわね」
「サザンクロスの幹部どころか、湖に魚の気配すらねぇ。見当違いだったんちゃうか?」
等と倭刀と穂香は敵の気配が全く無いこと、小原が提供した情報に多少の疑惑が浮かぶ。
「まぁ、幹部も住む場所は選ぶ。いつまでもこの湖に居るとは思うまい」
「だけど史也さん、このまま引き下がるのも癪だわな。もういっちょ探してみっかな。前方よーし、右良し左良しっと」
諦めの悪い倭刀は根気よく鍾乳洞の周囲やら天井やら目視で裏プレイヤーを探そうとする。
すると、何を思ったかレミが史也に質問を持ちかけた。
「史也さん。貴方のドローンって防水機能持ってるから湖の下まで観れるんてしょう? 水圧の耐久次第では何mまで潜れます?」
「あぁ、私のドローンだと水深50mまでなら偵察可能だ」
「ここの湖の水深、70mはあるって大山さんから聞いたことありますよ?」
「何……!?」
だがこの情報がわかった途端、レミの表情が青ざめる。更にタイミングの良いことに、史也のバイザーからドローンの敵反応が二箇所。湖の水深部から地上へと迫っていく!
「倭刀くん、穂香ちゃん!! ――――湖に近づいちゃ駄目!!!」
「「えっ……?」」
レミが腹底から出す必死の叫びも虚しく、湖から突如として盛り上がった水柱から大波を呼ぶ。
「きゃあああああああ!!」
「うわあああああッッ!!」
その大波は、勢い任せに倭刀と穂香を引きずり込み、湖の奥深くへと飲み込んでいく。
対して史也、レミは湖から陸までの距離は遠く標的にされなかったが、浸水していった陸には既に倭刀と穂香の姿は無い。
「―――倭刀くんッ、穂香ちゃんッッ!!!」
後に残されたのは、湖の激しくうねる水面。そして引きずり込まれて溺れかける二人の吐き出す泡息が微かに浮かぶだけ。
そんな中、湖の底では身動き出来ない倭刀と穂香が悶え苦しむ。そこへ獲物を確保出来てご満悦の裏プレイヤーの姿が明らかになった。その正体は……?
(あ、貴方は……!!?)
クリアーな青に浸透するかの如く、波に揺らめきながら遊泳しつつ、穂香と倭刀を更に底へと誘う銀髪とダイバーの服を着た草食系男子。まさか、彼もまたサザンクロスの幹部なのか……!?
一方では間一髪難を逃れた史也とレミが、未だ陸にて急変した様子を伺う。
「惜しかったな。あと一歩警戒を促さなかればえらい目に逢わずに済んだのだが」
「何を客観的に言ってるのよ!! 早く二人を助けないと――――」
「死に急ぎたいのか?」
「はぁ?!」
「私のドローンが敵性存在を二箇所察知した。一人は先程倭刀達を湖に落とした者、もう一人は私達を既にマークしている」
「まだ、この中に裏プレイヤーが……?」
気の動転から湖に飛び込もうとしたレミを静止する史也。この危険予知は四方八方に飛ばしたドローン群によるもの。
赤外線センサーが察知したもう一人の裏プレイヤーを炙り出すべく、史也はドローンの遠隔コントローラーを操作・作動させた。
「『アメイジング妨害型電磁パルス』実行準備。―――放出せよ!」
ヴゥゥゥゥゥンンンンッッッ
ドローン数機による特殊電磁波を繰り出す史也。これはアメイジングの戦闘モードになっている者の行動束縛・カードの一時的使用不可を促すEMPであり、史也を視点に北東の鍾乳洞の壁に待機していた裏プレイヤーの動きを封じ込めた。
「……ぁうッ、動け、ない……!」
その裏プレイヤーの詳細は、湖を遊泳する気満々の露出度高めなビキニ型スウェットスーツを着たカールヘアの金髪女性。何を隠そう彼女こそ、
「あ、貴方!? 『イプシロンのジーナ』じゃないの!!」
【GAME15】から久方ぶりの登場、レミと穂香をテトリス砲で苦しめたサザンクロス幹部の一人。『イプシロンのジーナ』ではないか!
では、倭刀と穂香を攫ったもう一人の裏プレイヤーとは……?
『――――大したゲーム戦士だ。この切羽詰まる状況下においても冷静に対処し、私とジーナの存在を感知するとは。高名な戦士とお見受けしよう』
その刹那、ザバァァーーっと水飛沫を上げて豪快に湖から上がってくる銀髪ダイバー。その姿を刮目して見るならば。これまた腹筋が割れた八頭身、並びに端正な顔付きがまたイケメンな事で。水に滴るいい男。
「何媚びてんのよこの語りは! それに貴方は一体誰なの!!」
友人を危険に晒されて怒り心頭のレミ。それに臆さず礼儀正しくお辞儀を交わして名乗りを上げる。
「―――私の名は【ガンマのガクルックス】。サザンクロス幹部の一人に過ぎません」
「……成程、小原からの情報は間違っていなかったか。そして『イプシロンのジーナ』との共謀という訳か。そして私達を狙った理由というのは……?」
「無論、このB6層を貴方達に汚させない為。―――立ち退く気が無いのであれば……裏ゲームは続行させますよ?」
既に裏プレイヤー・サザンクロス幹部二人による裏ゲームは実行されていた!!
湖の深い底に沈められた倭刀と穂香はどうなってしまうのか? ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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