【GAME53-1】奇妙な因果はどこから来たか!?
――ゲームウォーリアーは群像劇。何が言いたいかと申しますと、物語やゲームを盛り上げてくれる主人公は桐山剣だけでは御座いません!
今回から舞台は、再び地底空間に移りまして展開されるゲーム戦士と裏プレイヤーの激闘。そこで戦いの新風を巻き起こす二人のゲーム戦士が大活躍する訳なのですが果たして、その二人とは一体誰なのでしょうか?
序盤はそのゲーム戦士にフォーカスを当てていきます。さて、今回の主役は誰だ!!
―――『オープン・ザ・ゲート』!!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
――世界はこの語り部を待っていた!! ゲームウォーリアーのナビゲーター・Mr.Gで御座いますぅ!
長らく展開しておりました、シャッフルオールスターズ・キャプテンの桐山剣。聖剣獲得を賭けたGWクエストも見事クリアを果たし、今後の活躍に期待が掛かった切り札騎士。
まだまだ彼の活躍を読みたい所でしょうが、一旦出番は保留。物語は未解決の展開がたくさん残されています。
WGCの副管理長・鳳凰堂孔雀から指令された地底空間に潜む裏プレイヤーの討伐。それに纏わる確執。そして未だ姿を現さない4つ目のオーブを守護するスピリットプレイヤーの存在。
こんなにやることがあるなら、出番を控えてる剣以外のゲーム戦士もさぞ戦いたくてウズウズしてる所でしょう。今回はそのチャンスがやってきました!
―――その主役となるゲーム戦士を紹介する前に、先ずはその戦士に纏わる回想を御一読下さいませ。……いや尺稼ぎじゃないですよ!? 今回のゲームのキーワードとなるヒントが隠されているとか、いないとか。
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――今から時を遡ること5年前。舞台は古き良き時代のゲームワールドオンライン。
『プレイヤーバザール』や『アーケードタウン』等のエリアの連なる地域よりも遥か北。海原を越え、大陸を越え、荒れ果てた荒野の先に天高くそびえ立つ紅蓮の色に染まる城が見えるでしょうか。
あれこそがゲームワールドの脅威の一つ、貧弱プレイヤーの恐怖と後悔を糧に我が物顔で立ち塞がる【紅蓮城・バスターキャッスル】だ。
何を隠そうこの城、シャッフルオールスターズのライバルチーム『立海遊戯戦団』を指揮する立海家の難攻不落の城。華麗なる一族……というよりは豪快なる貴族達が、この赤煉瓦の砦に覆われた城に住み、弱者達を恐れ慄かせている。
そんな威圧感の漂う立海家の屋敷に、二人の客人が招かれた。
『わぁ〜凄い本の数。まるで図書館だわ!』
『これ全部ゲームの資料かよ!? 漫画の一冊や二冊無いんかいな!』
その客人とは何と、若き日の池谷倭刀(当時11歳)と、大森穂香(当時12歳)であった。
以前穂香は、養母の紗由理の花園に侵入した立海の先代城主・丈と出会い、いつかはこのバスター・キャッスルに足を踏み入れる事を約束されていた。※GAME43参照。
あれから5年の月日が経て、丈の先見通りに倭刀と出会い、ゲームワールドで名を馳せていた頃。
ようやく穂香はバスター・キャッスルの入城条件を満たした事により、その約束を果たすことが出来た。
そんな彼女らに案内されたのは、古今東西のゲームの全ての資料が寄贈されたある変わり者のゲーム戦士の書斎室である。
書斎という割には、何処ぞの国会図書館並に資料は多く、天井は天界にも登りそうなくらい高い。
『史也様、初めてじゃないですか? こんな可愛らしいお客様が紅蓮城に来るなんて』
『そうか? ただ喧しいだけの小童だろう。仕事の邪魔になるからそこらの紙芝居でも読ませておけ』
青紫の軍人服に対し、ゴスロリメイド衣装という参謀長と秘書にしては余りにも個性に目立つこの二人。
彼らこそ、立海の参謀長・大門史也(当時17歳)と、その秘書の倉内奈々子(当時15歳)。特に史也からは、参謀らしく客人にも無情かつクールな所が際だつ。
『そんな冷たくあしらうような事を! あの子達は丈様から直々に招かれたお客様なんですよ?』
『だが私が呼んだ覚えはない。それをアイツが勝手に押し付けるとは、何を考えてるのだ』
傲慢城主らしく、強引に子守を押し付けるとは。流石銃司さんの兄である丈さんらしいですな。
『でも丈様仰ってましたよ。史也様ならあの子達の事を気にいるだろうって』
『それは丈の気まぐれによる偏見だ。我々が赤の他人の娘の面倒を見てるからそういう決め付けに繋がるんだ』
ここだけの話、“赤の他人の娘”というのはまだ10歳の時実桜さんの事ですよ。丈に拾われてましたからね。
子供には苦手意識を持つ史也ですが、仮にも穂香達は、このバスターキャッスルの入城条件をパスした数少ないプレイヤー。
多少は騒ごうとも、それなりの危機管理能力は持ってるだろうと史也は頭の中で推測はしていた…………と、言った側から。
『だああああああ!!? 何やこれぇ!?』
『や、倭刀!?』
早速にしてトラブルを引き起こしたのは倭刀の悲鳴!
『史也様!? 本に何か仕掛けてたんですか!?』
『あぁ、侵入者及び窃盗犯始末用の本型トラップだ。不用心に書籍を読み荒らす無作法者の生気を根こそぎ取る仕組みだ』
始末用って言う分だけあって、余りにも物騒なトラップ! それにまんまと掛かった青二才な倭刀は、黒い邪念波動に拘束され、PASのエネルギーを吸収されて思うように身体の生気が奪われていく。
『ぐ、くるし……! ねぇちゃ………助け……ッッ!!』
『倭刀! その本を離しなさい、早く!!』
穂香からの声掛けに倭刀は本を離そうと試みるが、黒い波動の力は凄まじく、思うように彼の手から本が離れない。
『ダメ、だ……! PASも、思うように使えない……!!』
八方塞がりとはこのことか。そう言っている間に倭刀の体内の生気はみるみる失われ、終いにはミイラになる未来しか見えてこない!
『史也様!? このままじゃあの子死んじゃいますよ!!?』
『大丈夫だ。せいぜい十年程寿命縮むか、一生股間が勃たなくなるくらいだろう。死ぬよりマシだ』
その前に“男”としての本能は確実に逝っちゃうんですがそれは。
『駄目ですって! まだ思春期迎えてない男の子にそんな残酷な!! 助けてあげないんですか!?』
『勝手に私の部屋に上がりこんで、人の罠に勝手に足突っ込んだ馬鹿を何で私が助ける。私はそう甘くは無い』
『そんな無慈悲な……!』
我々はこの男を、血も涙もない冷徹な参謀長と一度でも判断したでしょうか。
強者だけが入ることの許される紅蓮城に招かれた子供二人。煙たがる態度は見せつつも、城主・丈の気に入った子の事を微かに気になりつつあった史也。
『……仕方無い』
史也はタンザナイト色のPASの波動を発生させ、トラップ本の機能を停止させようとするが……
『倭刀を離しなさいッッ!!!』
『ね、姉ちゃん!?』
ここで痺れを切らした穂香、勢いづいて本に取り巻かれている倭刀を強引に引き離す。代わりに彼女がトラップ本の餌食にしてやろうと、黒い波動で生気を奪おうとするがどっこい。
『んぬぬぬぬぅぅ………!!』
彼女の発展途上の胸元……(咳払い)、胸から忽ち立ち込めるは緑のPASの波動。その力強い色から解き放つ波動は本の邪気をも鎮め、力は力を持ってその本を制圧させていく!
(…………!)
幼い穂香から発するPASによって、トラップ本の機能は停止。その異端なる彼女の力の強さに、史也の顔に興味の文字が浮かんだ。
『うそ……あんな幼い子が、文也様のトラップを自力で止めちゃうなんて』
これには秘書の奈々子も一驚のち唖然。
そして罠から逃れた倭刀も身体の生気が戻り、渾身のPASを放った穂香は疲労困憊で膝を付いて倒れ込む。
『はぁ、はぁ……っ、倭刀、大丈夫……?』
『な、何とか……死ぬかと思った……!』
『もう、人の物取るときはちゃんと断ってからにしなさい!』
『ホンマゴメン……』
血の繋がりは無いが、書斎から溢れるは真の兄弟愛か。何とかトラップ本の魔の手から逃れて一安心の穂香と倭刀、変な事が怒らないうちに本棚に戻
『『み゛ゃああああああああ!!!!?』』
何という性悪な本か! PASに圧されて油断したと見せかけての不意打ちという小賢しい技で、今再び二人を餌食にしようとしたが―――!?
――――ピシュッッ
『『…………?』』
突如背後から放つ白線のレーザー、それに射抜かれたトラップ本は炎に炊かれながら消滅していった。
何が起こったかさっぱりな二人が後ろを振り向けば、そこには同じくPASの力で操作するドローンの粒子砲を放った史也の姿……!
『あ、あの……助けてくれて、ありがとうございます……』
『……ございます』
子供の二人にとっては威圧感のある史也に、おどおどしながらも穂香が先陣切って御礼を交わす。
それに対して史也は、笑顔も不機嫌な顔も見せずに無表情に、二人を見つめながら奈々子に指示した。
『……奈々子、直ちに高級茶菓子と紅茶を淹れてきたまえ。この子達の分もな』
『あ、はい!』
立海以外のプレイヤーを低能とし、無意識に見下していた史也の心情から、明らかに倭刀と穂香に興味に惹かれた。
―――彼自身の因果を、大きく変えた瞬間であった……!!
『私の名は大門史也。立海遊戯戦団のブレインだ。――――さて、君達の名前を教えてもらおうか? 非常に興味深い……!』
―――そうです、今回のゲームの主役は他ならぬ、大門史也。この冷徹な立海の参謀長が裏プレイヤーとの決闘に満を持して挑む訳なんですが……これだけじゃ味気無い。ニヒルな展開はゲームウォーリアーは多少合わない。
あともう一人、史也と共に戦うわけなんですが、それがまた意外なお方。
果たしてそれは誰か……と言いたい所なんですが、残念その続きはまた次回。一旦下がってお披露目致しましょう。――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




