【GAME52-5】天地を揺るがす異界の騎士の進撃！！

　――ＧＷクエスト・ラストバトルに衝撃走る！！

　愛しのヒロイン・みのりちゃんの身体を乗っ取って、桐山剣に敢然と立ち向かう異世界のゲームワールドの女騎士『ウルカーヌ・ヴァルカⅦ世』。

　500年の怨みで剣たちのゲームワールドに生き残り、その精魂のみで戦う彼女が霊幻の力によって発現したカードデッキは、なんと相手のカード召喚エネルギー『ＥＧ』を奪い取る特殊なデッキであった！

「何ということ……、ＥＧを奪い取るデッキなんて今まで聞いたことも御座いませんわ！」

「そりゃメイドちゃん、あの類のカードはまだ市販には出回ってないからね。この前の早瀬ハルさんのパーミッションデッキも同等」

　困惑する桜さんを他所に、後見人でありＷＧＣの治安防衛管理長の茜さんはお気楽な態度。

　何しろ今回のＧＷクエスト、一般発売を控えている新カードを、前回の早瀬戦や今回のウルカーヌ戦で実戦投与してるんですから。

　ＷＧＣにとってはカードのデータも取れて、剣さんの実力も垣間見れて一石二鳥と言う訳。お偉方はこんな所にちゃっかりしてるんですなぁ。

「オイ待て茜さんや。呑気そうに見てるのは結構だが、あんなパワー不足なデッキなんかで剣を倒せる見込みがあんのか？」

　等としゃしゃり出てきたのは服部のあんちゃん！

「……というと？」

「ＥＧばっか減らしても、結局は時間と共にまたエネルギーを溜めるのがオチやろ」

「それに、剣さんのデッキはＥＧの軽い騎士ユニットによる人海戦術にも長けています。服部さんの言い分も理に適うと思いますが……」

　ＧＷクエストの達成を願う桜と、剣を何処の馬の骨か知らない相手に倒させまいとする服部。それぞれ思惑は違えど想いは一つか。そんな二人に茜は、

「う～ん……二人共、まだ彼女のデッキの真髄を見抜いていないみたいだね。

　ＥＧを奪う利点の中で、相手の出処を挫くだけじゃなくて、決着へ向けた戦いのペースを相手に越されない為でもあるの。それが何を意味するかな……？」

　意味深なヒントを与えて、怪しげな笑みを浮かべる茜。あざとい顔して彼女も隠れたＳなのか……？

　▶▶▶ NEXT▽

　さて、ギャラリー陣の話も終えた所で本題。

　召喚するはずだったユニットカードを、ＥＧ消失によって召喚不能となり、再び手札へ戻された剣。

　茜が仰ったように、枯渇している剣とは逆にウルカーヌは順調なＥＧの蓄積。それにサブタンクとも言えようパーマネントの《エネルギーウォール》によるＥＧ供給によって、彼女のＥＧは既に⑧に達していた。

「あらあら、ロクにカードを召喚出来なくて苛ついているのかしら？ 切り札騎士」

「……へっ、この俺を煽るにはまだ早すぎるだろ？ 《太陽の騎士》でダイレクトアタック！」

　ＥＧは枯れているが、剣には頼もしいユニットあり！

　ウルカーヌはHPを削らせまいと、《ファイティングブレード》片手にユニットに応戦するが。

　―――斬！！

「ぁうっ……！」

　〔ウルカーヌ HP2000→1750〕

　騎士はそれより素早い瞬発力でそれをかわし、見事ウルカーヌにファーストダメージを取った！

「あっ、《太陽の騎士》！ 今度はそっと攻撃してな？ 身体はみのりだから丁重に扱えよ」

　やはり親友の身体に攻撃は、剣の良心を痛めるもの。何とか重傷にさせるのは止せと懇願する主人を見て《太陽の騎士》は大弱り。

　ともあれ、序盤にして先手を取った剣。あとは大幅に差を付けられたＥＧを、どのように対処していくかどうか……？

(……駄目や、まだ③しか溜まってへん。騎士ユニットは出せるけど、俺のデッキにあるＥＧを増幅させるパーマネントか何かが出ないと。アイツにデカいユニットとか召喚されたら対処出来ひん！)

　冷静な表情の裏に、焦りの湯気が立ち込める剣の心情。

　ウルカーヌは既に⑩以上のＥＧを溜めているが、大型ユニットはおろかアクションカードによるカウンターも、ツールカードも出してこない。不吉な構えだ。

　《ＣＡＲＤ ＤＲＡＷ(カードドロー)》

　とここで、やってきました30秒に一度訪れるデッキから1枚引けるドロータイム。

　引きの強さは神級で有名な、剣の宝札は……？

(流石に今は引けないか！)

　期待通りのカードは来なかったか、苦笑する剣の表情が物語る。仕方無しとドローカードをブレスに装填し、スキャン！

『ユニットカード、【稲妻の突撃兵】！！』

　◎――――――――――――――――――◎

　〈ユニットカード〉

【稲妻の突撃兵】EG:③

　AP:200 DP:50 AS:5

　属性 赤 ユニット/ナイト

　・能力:[スピードアタック]

　◎――――――――――――――――――◎

　長身の円錐槍を装備した華奢装備の騎士。それだけに特攻には長けており、突撃の為に命を掛ける騎士ユニットなり。

「《稲妻の突撃兵》は、召喚して直ぐに攻撃が出来る[スピードアタック]を持ってるぜ。そのまま二体の騎士ユニットで攻撃だ！！」

　二体同時に総攻撃、ウルカーヌは特攻する《稲妻の突撃兵》の攻撃を迂闊にも受けてしまう。

　だが《太陽の騎士》には同じ轍は踏まんと、前方に聳えた《エネルギーウォール》を盾にして、どうにか二連ヒットは避けた。

　〔ウルカーヌ HP1750→1550〕

「ふっ、騎士らしく先攻には長けているようだが……この様子では、お前の満足のいくスピードで戦えてはいまい」

「チッ……」

　剣が舌打ちをする所を見るに図星のようだ。

　未だ剣の手札も潤っているが、肝心のＥＧが足りていなければ思うようにカードが出せない。一万円以上無くてはロクに買い物も出来ない心境にもさも似たりか？

「ならば今度は、とびっきりの衝撃(インパクト)を味わわせてやろう。お前が二度とこの地に立つことが出来ぬくらいにな！！」

　遂に仕掛けてくるか、ウルカーヌの溜まりに溜まったＥＧを11消費してのカードスキャン！！

『ツールカード、【アースクエイク】！！』

　ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……！！

「な、何や！？」

　突如、決闘の聖域をも揺るがす大振動に剣やギャラリー達も驚愕の極地！

　◎――――――――――――――――――◎

　〈ツールカード〉

【アースクエイク】EG:①X

　・属性:赤

　・効果:[フライヤー]を持たない全てのカードと

　プレイヤーにX×100ダメージを与える。

　◎――――――――――――――――――◎

　アースクエイクは即ち“地震”。つまりフィールドにいる全ての場にあるカードとユニットにＥＧを支払ったX分のコストを払った分だけダメージが与えられる。

　それをウルカーヌは⑩も払ったものだから、このカードが与えられるダメージは……１０００！！！

「弱い奴ほど群れたがると言うが、お前の騎士ユニットがそれを象徴してるようなものだ。矮小(わいしょう)な雑兵如きに、我の身体を傷付けるなど虫酸が走る！ さっさとその大地に這い蹲り、地獄の果まで埋もれてしまえ！！」

　その時、ウルカーヌの手から地に放った衝撃波が振動とリンクし、フィールドに亀裂が走る。

　その亀裂は丁度剣と二体のユニットに目掛けられ、大地変動を起こした衝撃から物凄いダメージが与えられた！！

「うあああああああああああああッッッ！！！！！」

　〔桐山剣 HP2000→1000〕

　騎士ユニット全滅！ 更に早瀬戦に続いてまたしても桐山剣に、HPが半減程の大ダメージを与えられてしまった！！

　だが、《アースクエイク》は全対象のダメージカード。ということは剣だけでなく、ウルカーヌにも影響を及ぼす訳だが……

　ログによると《エネルギーウォール》は破壊された。だがウルカーヌへのダメージは―――――１ミリも入っていない！！？

「んなアホな！？」

「剣さん、プレイヤースキルです！！」

　桜に言われて、剣はもう一度ログを確認するならば。そこにはウルカーヌのプレイヤースキルの表記。

　◎――――――――――――――――――◎

　・ウルカーヌのプレイヤースキル

【黒炎龍の翼】発動！

　発動後、1分間だけ自分は[フライヤー]

　効果を付与する！！

　◎――――――――――――――――――◎

「……そうか！ 《アースクエイク》は［フライヤー(飛行能力)］を持ったプレイヤーを対象にしていないんか！！」

　等と理解した所で後の祭り。剣はこの衝撃で半分までHPを減らされ、あっという間にウルカーヌに逆転されたのであった。

「……実に浅ましいな、切り札騎士。それでもサラマンダーの魂を持ったマンドラと闘ったゲーム戦士か！？」

　天より蔑むような視線を差すウルカーヌ。その黒い眼から発する野望は、積年の恨みへの開放か。或いは快楽による渇望か……！？

　――本日のゲーム、これまでッッ！！

　▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽