【GAME51-5】オリジンロード踏破! 出口無き迷路の結末!!
――いよいよオリジンロード攻略もクライマックス。
何しろサブタイトルにも書いてますからね、長引かせないで一気に決着を付けちゃいましょう!
「……だそうだ。蒼真、語り部のリクエストにお応えしてダンジョン最大レベルで迎い入れてやれ。【シャドウ・D】大幅増員だ」
「了解しました」
何て思った途端のその矢先。私の語りに便乗したのか、管理側のWGC司令室ではゲームマスターの一文字蒼真が、モニター操作によってオリジンロードのダンジョン設定を変えた。
黒尽くめアバター【シャドウ・D】の、夏季アルバイト増員キャンペーンだ!!
▶▶▶ NEXT▽
―――さて、代わって舞台はゲームワールド・オリジンロード。
その中で桐山剣が、ひょんな事から見つけた隠し空間の祭壇を見つけた事により、ゲームワールドに聖剣は《GXキャリバー》以外にも存在する事を知るのだった。
「《呪われし龍滅魔剣 ―BMクーガ―》、《妖星砕けし神通剣 ―TMソハヤ―》、《閃光の輝く剣 ―CAソーラス》……すげぇや【オリジンゲームワールド】で戦ったマンドラの聖剣が全部飾られてら!」
「お、オリジン……!?」
「お前アホか! デタラメ言うて俺様たちをからかっとんのか!?」
桜も服部のあんちゃん達も、夢物語のような話を信じようとはしなかった。
それもその筈、剣が証言した【オリジンゲームワールド】は、彼を含めたシャッフルオールスターズ全員のみが、奇妙な因果で導かれて挑んだ平行世界のゲームワールドなのである。
《GXキャリバー》の石碑に書かれていた『マンドラ・チャンドレイユ』という名も、剣がその平行異世界で、聖剣とみのりを掛けて真剣勝負を行ったログも残っている。その詳しいお話は………
全部話したらそれでまた一話終わっちゃうので割愛。
剣は彼女らに分かりやすく説明してる所ですが、我々はスピンオフ作品の【ゲームウォーリアー外伝】で読んで確認しましょう。……宣伝になっちゃった。
「さーて、これからどう攻略するか? 多分祭壇を出た途端に【シャドウ・D】とバッタリ、なんて」
「冗談じゃねぇ! ここまで来てタッチアウトされたらギャラがどうなんねん!」
「しかし、可能性は十二分にあります。どうしますか……?」
祭壇に入った時点で罠だったのか。それぞれに交錯する後悔と強まる警戒心。
しかしここでも屈せず、何とか攻略の光明を掴もうとする剣の眼は諦めていない。
「……仮に俺がオリジンロードを突破して、そのまま最後の試練に突き進む設定だとしたら、俺はカードもPASも使わずに万全の状態で挑みたい。
こんな事言うのもおこがましいと思うかも知れへんけど、桜と服部のあんちゃんの力を貸してほしい」
そんな剣の願いに、二人の答えは直ぐに出た。
「何を分かりきった事を仰るのですか。私は剣さんの使命の為ならば、どんな事にも御力をお貸しいたしますわ」
流石誠実な桜さんは分かってるぅ! そして服部のあんちゃんはというと。
「癪やが俺様もそれに賛同したるわ。ここで犬死にしたか無いからな。手下もいるし」
力を貸すお願いに二人共イエスなのに、こうも理由が違うとなると人間は実に面白い。剣も協力の承認を得た事で晴朗の笑みを浮かべる。
「桜はえぇとして、あんちゃんもやるって決まったら一秒たりとも油断すんなよ。突破したいなら本気で挑んでくれ!」
「分ーってらぁ。だがお前の試練の応援まではせぇへんぞ。失敗したら嫌という程お前を罵ってやるから覚悟しぃや」
「上出来。ほんじゃ協力の誓いを込めて、握手!」
剣の差し出した両手。左手に桜が添えるようにか細い手を握り、右手にゴツい服部の手が触れようとしたが……
「ドアホ! ライバルが簡単に握手を申し込むか!!」
「……あ、そ」
ホントにあんちゃんってば、素直じゃないですねぇ。
▶▶▶ NEXT▽
再び舞台は、WGC司令室。
ゲームマスター・蒼真がモニター越しで剣たちの様子を、目を離さず監視していたのだが……
「……動きましたね」
「桐山剣の人望が、二人のゲーム戦士を利用したか」
利用!? それは語弊があるでしょう本宮社長! あの人達はね、剣さんの事を信頼してですね……
『オラァさっさとカード使えや! ユニットとか要らんもん出すな、ちゃんと働けボケェ、はっ倒すぞ!!』
『テメェマジで覚え、痛っ、ケツ蹴んな!!』
………あれぇぇ〜〜?? 思ってた展開と全然違う。
剣さんが服部のあんちゃんをボロクソに使いパシリしてる!!
一方桜さんの方は……あら、ちょっとお待ちを。
「ハァ、ハァ……んっ……」
先程まで凛々しくも気丈な振る舞いを見せていた桜さんでしたが、迷路に戻った途端に疲弊した表情と荒い吐息が、彼女の体力消耗を物語っていた。それにはちゃんとした訳があった。
「無理しすぎたんだろ桜! ゴメンな、二度も三度もPAS使わせちまって!」
実は桜、みのりが拉致される直前に『時間・停止』、オリジンロードにて時空を捻じ曲げる『トリック・ディメンジョン』と二度使っていた。
最後には祭壇から【シャドウ・D】の気配より最も遠い所へワープさせる『テレポーテーション』と三度に渡ってPASスキルを使った桜。
幾度のゲームで鍛え上げた彼女のPASも、能力の使用過多によって疲労困憊の域に達していたのだ。
「い、いえ、これしきの事で……剣さんが無事であるなら、私は……!」
「俺如きの男に“命を捧げます”ってか? 自己犠牲に振り回されてちゃ、大好きな銃司様も守れねぇぞ!!」
「……!」
同じ状況下でここに銃司が居たのなら、彼も剣と同じ事を言ったのだろうか?
眼前に立つ栄光に執念を燃やし、側にある絆を何よりも尊ぶゲーム戦士の精神。熱血漢と傲慢の差はあれども、剣と銃司の根本は類似している事を桜は分かっていた。
だからこそ信頼出来た、護ってあげたい。意地を張りたくなるほどに剣の助けになりたいと思ったのだから。
「俺は銃司に、桜を泣かすなって言われとんねん。絶対桜とあんちゃん達を無事に脱出させて、俺のクエストを最後まで見届けて欲しいんや。立てるか?」
「そんな、それでは私が剣さんの負担に……」
「四の五の言うなッ!」
「あぁッ?!」
剣は満身創痍の桜を問答無用におんぶする。日頃ジムで鍛えた甲斐もあってか、年頃の女の子を十分に背負えてるではないか。
「ほら、俺にとっちゃ桜を背負わしても、何の負担も無いぜ。お前の遠慮も負担も肩に担げるくらいでなきゃ、切り札騎士の名が廃らぁ!」
だがしかし、そんな彼の足には若干の震えが来ていた事を、桜は背中から感じ取っていた。
(……ホント、意地っ張りな所まで銃司様に似てる)
そんな剣の温情を身に感じながら、それを恩義に感じる桜であった。
「ラブコメしてる暇ねぇぞ!! 俺様達はカードもPASの準備は出来てる!」
「桜さんを背負ってる分、俺たちも協力しまっせ!」
「てか我が桜様を背負いたい気分である!!」
服部のあんちゃん、それに子分のA太・B太郎も剣と桜のフォローに全力を尽くす覚悟だ!
「さんきゅ! そんじゃ、行くぞーーッッ!!」
剣の気合の入る掛け声を引き金に、服部率いる『伊火様』の行動が開始された!
「PAS、発動ぉぉぉおおおおッッ」
◎――――――――――――――――――◎
・服部詫摩のPAS【シーフナイフ】確認。
PASスキル『盗賊の七つ道具』発動!
ランダムなツールカード7枚を手札に!!
◎――――――――――――――――――◎
いざとなったら魂を込めろ! 超久々にご披露、服部のあんちゃんの盗賊ナイフのPAS。
その能力から発現されるスキルが、伊火様の三人の手札からカードが宿された!!
「盗人にゃ相応しい、逃げ足も受け取れや!」
あんた盗人じゃないでしょ、ボディガードでしょに。等と突っ込んだ所で服部あんちゃんのカードスキャン。
『アクションカード、【カミカゼダッシュ】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〈アクションカード〉
【カミカゼダッシュ】
・属性:黄 EG:②
・効果:味方プレイヤー全員は
『速度力』が3段階上げる。
◎――――――――――――――――――◎
「突っ走れぇぇぇぇぇッッ!!!」
走る走る、桐山剣御一行の韋駄天疾走!
《カミカゼダッシュ》によって速度アップした一同。服部率いる伊火様の三人は流石の動き、忍者かねずみ小僧か、すばしっこさが物を言う逃走者が迷路狭しと駆け抜ける!
そして剣、桜を背負いながらのハンデも追いつつも、服部に負けじの瞬発力と加速力で、踏破への希望を導いていく。
だがこのオリジンロード、入り口はあれど出口が一向に見つからない!
「……はっ! 剣さん、後ろ来てます!!」
「やべっ!!」
恐れていた事がとうとう起きた。大幅増員された【シャドウ・D】の群れが、剣たちの足音に反応してゾロゾロと後ろから向かっているではないか。
その数ざっと、100体ジャスト!!
「お前ら、抜かりないやろな!?」
「バッチリですぜ服部兄貴!」
「例のトラップ、事前にセット済みである」
物凄い勢いで追跡する黒尽くめアバターの群れが、足元のスイッチに気付かず押した途端。
『トラップカード、【スプリング・トラップ】起動』
ビョイイイ〜〜ンッッ
突如飛び出したバネが、シャドウ・Dの行き先を阻んで列を崩し、剣たちの距離を離す。片や別ルートでは。
『トラップカード、【ネットバリア】起動』
片や狭い通路に立ち塞ぐ網の壁。これを引き千切らない限りは通れない。
これが、修羅のオリジンロードを生き抜いた伊火様の実力。剣たちが駆けた通路に既にトラップカードを仕掛けた事で、シャドウ・D軍団の追跡を一時的に止めた。
「そっか、フィールドを対象にするトラップカードはシャドウ・Dでも干渉するんだ!」
「振り向いてる場合か! 急いで出口を探せ剣ぃ!!」
行く先々でトラップカードを仕掛けた伊火様だが、それでも数秒のロスタイムしか与えられない切羽詰まる攻防に、全員が焦燥の意を駆られる。
「くそぉッ、何処だ! 出口なんて何処にあるんだよぉぉ!!」
「剣さん……!」
焦り転じて憤る剣に対し、おぶさりながらも彼を心配する桜にはっとさせられた。
「焦ってる場合じゃねぇ……、ここで終わったら何も残らねえってのは分かってんだろうが、俺ッッ!!」
焦燥をぐっと抑えて、ただガムシャラに疾走して出口を探す剣。100体のシャドウ・Dの追跡をギリギリ超えながら、極限状態に達した剣の感情や如何に。
「絶対生き残ってやる。桜も、服部のあんちゃんも、みのりも救って聖剣も取ってやる! 嘘じゃねぇ、俺の限界はこんなもんじゃねぇ!!
―――窮屈なんだよこんな迷路ッ!! さっさと切り札騎士に、道を譲れええええええッッッ!!!!!」
憂さ晴らし序に、試練に対する剣の思いをぶつけた瞬間。難攻不落の迷宮に奇跡を巻き起こした!!
「剣さん!? 胸が……!!」
彼の胸中に宿る二つの波動。それは極稀に覚醒した赤い剣と白い盾の、双魂PASの波動であった!!
「そこかぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
紅白のPASの波動が光線となりて、違和感のある広がった壁に直撃。
当たったその壁からボロボロと崩れ落ちるとそこには、巨大な台形の門が出現した!!
「あった! 出口あった!!」
「急げええええええ!!!」
最早彼らの走りは火事場の馬鹿力か。自動で開く扉に合わせて、全身全霊の末脚でシャドウ・Dの群れから距離を離して、滑り込みセーフ!
シャドウ・Dは門の先には入れず、透明なバリアに遮られて獲物を捕獲することは出来なかった。
オリジンロードの出口門が閉ざされ、誰一人の脱落者もなく、全員でクリアしたのだった……!
「……これ、ホンマに俺の為のゲームだったみたいやな。服部のあんちゃん」
「ギャラ貰うって厳しい事やって、俺様今日は肌身持って思うたわ」
「なにはともあれ、助かった……!!」
このゲームは決して一人では立ち向かえるものでは無かった。身を呈して協力してくれた桜や、伊火様の一同の力があってこそ成し遂げたことであった。
それを一番身に沁みたのは、桐山剣自身であったのかもしれない。
さぁ長いこと繰り広げました、聖剣獲得権を賭けたGWクエスト。
オリジンロードを潜り抜けた先に待つ聖地が、桐山剣の最後の試練の場所。
そこに待ち受ける刺客、剣を待ち受けるゲーム戦士は一体誰か!?
《大いなる伝説の聖剣 ―GXキャリバー―》をこの手で掴み取れ、桐山剣! 次回【GAME52】にてラストクエスト始動!!
本日は【GAME51/オリジンロード逃走中】、これにて読み終わりで御座いますッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽
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次回もゲームウォーリアーをお楽しみに!!




