【GAME50-4】遂に判明! 早瀬ハルのPAS!!
――早瀬ハルによる異能力によって、見透かされた桐山剣の戦略に、唯一の死角あり!
手札・デッキを読まれたならば、【プレイヤースキル】で欺きゃ宜し。デッキトップのカード名を悟られたなら、開き直って己から強引に捻じ伏せて、地雷の爆破をガードする。……前回のを読めばなんとなく枕語りも分かることでしょう。
てなわけで、カード地雷の《サモントラップ・エクスプロード》の罠を破った桐山剣。この常識を覆すファインプレーでダメージを完全防御された事により、余裕ぶっこいていた早瀬ハルの表情も焦りで歪む。
「私が2発目の《サモントラップ・エクスプロード》を仕掛ける事を読んで、このような形で破るとは。改めてお見事な御手前で、桐山剣さ――――」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ゴメンよプニュゥゥゥゥ!! 俺の為に命張って護ってくれてよぉぉぉぉぉ、俺絶対勝つからなああああああ!!!」
( 人 の 話 聞 け よ )
早瀬ハルの苦し紛れな称賛もガン無視な程に、地雷のダメージをゼロにした《ミラクルボール・プニュ》の犠牲に大泣きの剣。1枚のカードが墓地に送られただけの話ですが、ここまで愛情を持たれてはプニュも墓地ゾーンで照れてる事でしょう。
かくして、剣のHPも1000のままで敗北の危機は免れたのですが、まだまだ油断してはいけない。
(地雷はまんまるユニットに邪魔されましたが……、まだ私のPASが見破られた訳ではない。たかが一手分だけ延命されただけに過ぎません……!)
等と申すように、早瀬ハルのパーミッションデッキを動かす大核・彼女の正体不明なPASが桐山剣に悟られてないと知るや知らずや、残された隠し玉の温存に早瀬の白々しい笑みは消えていない。
―――――この三行後から、桐山剣が論破するまでは。
「……早瀬さん。もしかして俺が、貴方のPASがどんなのかまだ気付いてないって思ってません?」
「!?」
これには早瀬のフェイクな笑みも再び歪み始めた!
「……な、何を仰るのやら……そう断言する根拠が何処にあるのですか?」
当然早瀬もここぞとばかりに白を切る。
これまでの決闘にて何度も、かつ露骨なまでに繰り出してきた剣の手札・デッキの順番を的中させた早瀬のPAS能力。
流石の剣も、何度かこれにやられれば疑いを掛けざるを得ない。だがプニュの防御に至るまで、それを打破する方法と、その能力を明確にさせる為の証拠が必要だったのだ。
そして今、剣が地雷の防御に成功した事によって、彼の早瀬のPASに対する確信的な根拠に繋がった。果たしてそれは如何なものか?
「早瀬さん、貴方は何回も自分のPAS能力を“只の勘”って嘘を貫き通したでしょう? そいつが裏目に出て、俺にその主張とは食い違った“違和感”を覚えさせたって訳っすよ」
桐山剣がゲーム中に過ぎった早瀬への“違和感”。それが剣が早瀬に懐疑的な姿勢を持って、地雷打破へ仕掛けるきっかけになったと言う。
「先ず《今日のカード予報》で《サラ・チャンドレイユ》を墓地に落とした時、あのカードはよく見たら好きなタイミングで打てる“アクションカード”だったのに、ドロータイムが来る前に即座に落としはった。
恐らくは早瀬さんの【守護霊のカーテン】による防御を超えるから、サラみたいな強ユニットを直ぐに落としたかったんでしょう。その前に《記憶抹消》で《ヴァルキリー・フレア・ドラゴン》を落としたのも同様に」
早瀬のプレイヤースキル【守護霊のカーテン】は防御に長けているが、AP300以上の攻撃は通常通りダメージを受ける仕組み。
一方で剣のエースカードの《サラ・チャンドレイユ》はAP500の大型ユニット故に、早瀬は戦闘ダメージを危惧して即座に墓地に落とした、となれば合点がいく。
「しかも早瀬さんは、その《今日のカード予報》の的中で得られるカード2枚ドローのアドバンテージが欲しくて、直様使いたかった。何故ならこの時はまだ、2枚目の《サモントラップ・エクスプロード》が無かったから。
―――それもこれも皆、俺のデッキカードの順番を分かっていたから出来た事、じゃないすか?」
ここまで推測出来るゲーム戦士が、今までこの小説に居たのでしょうか? 桐山剣のゲームウォーリアーで培ったゲームの年季が、冴える頭に経験則で発揮させていく。
「……そんなの、“もしかしたら”な推定論でしかありませんよ。私みたいなゲームの初心者がそんな出来すぎた技術が為せる事など、奇跡とかまぐれでしか――――」
「『奇跡』、『まぐれ』。そんなアホみたいなプレイを本当に導くのが【ゲーム戦士の異能力・PAS】なんすよ」
一癖も二癖もあるゲームライターが、どっかの政治家のような未練がましい言い訳を繰り返す。そんな焦れったい攻防にケリを着けるべく、剣は更に深く真相を暴きに出ていく。
「………それでは何でしょう、この平凡なゲームライターの私に、PASが覚醒されていると仰るのですか」
「知ってましたよ。早瀬さんの初対面から既にPASの波動が出てましたもの。昼ドラみたいに凄くドロドロした感じの!」
そうなんです。桐山剣のようにPASを覚醒したゲーム戦士は、ゲーム内外関係なく対戦相手から発するPASの波動を読み取ることが出来るのです。
「だがゲーム前で感じ取れるPASの波動は“色”だけ。本人の本性・本質を示す“形”は、実際にゲームしてPASスキルを発動させるか、ゲームに対する強い意思に反応して形が胸の奥から実現化される」
これではPASの正体はゲーム実戦、或いはPASを発動させてクリアーウィンドウに表記されなくては判明が出来ない。実際早瀬はPASの発動を記すクリアーウィンドウのログが何も無いのだ。
「………でも俺はこのゲームで、一瞬だけ早瀬さんのPASの波動が強烈に強まった瞬間を見てもうた。
それはズバリ、俺の切り札カードの《ヴァルキリー・フレア・ドラゴン》を除外させる為に使った【記憶抹消】の発動処理の時!!」
皆さんは覚えてますか? 【GAME49-4】の時、《記憶抹消》効果でヴァルキリーを探すために剣の手札・デッキを確認していたのを。
その時に早瀬はまじまじとデッキの中を見ていた事、並びにブレスの自動シャッフルでデッキを混ぜていた最中に早瀬が、『拷問を最大の快楽と称する女狐』になってた事を。早い話が超ドSな眼をしてたって事よ!
「あん時の早瀬さん、自動シャッフルの時にチラッと顔見てたら『出る小説間違えたんかな』って思ったくらい顔怖かったっすわ。
それに反応したんでしょう、貴方の灰色のPASが無意識に波動を強めて、その奥に隠れていたPASの形も俺にはハッキリ見えた!」
隠されたベールを剥ぐ瞬間が近づいてきた所で、改めてお聞き致します! 剣さん、早瀬ハルの隠していたPASの正体は、なんですかッッ!?
「早瀬さんのPASは、手札のみならずデッキ内のカードの順番も全て記憶する大容量記憶装置! 色は灰色、形はズバリ【HDD】だ!!」
「――――!!」
(…………大したものだ。一瞬のゲームプレイで具体的にPASと戦略の手口を暴き出すとは。大当たりだ)
ゲームマスター・蒼真さんからの正解が出たということは、遂に桐山剣の手によって暴かれた早瀬のPAS! 色は灰色、形はHDDという無機質なアーティファクト型PASの持ち主であった!!
「………そこまで主張するのは結構なことです。しかし仮にもそれが当たったからと言って、この状況を覆せるというのですか。デッキの全てを見透かされてる貴方が!」
ここまで言っても、早瀬から強情な口が飛ぶとは穏やかじゃないですねぇ。しかしそれを超えていくのが、3年間主人公を努めている桐山剣さんの実力があってこそ!
「その通りやで、Gのおっちゃん! 手札もどーせ悟られてるし、それも超えるなら………コイツだ!!」
◎――――――――――――――――――◎
・桐山剣のプレイヤースキル
【リロード・リセット】発動!
自分の手札を全てデッキに戻し、
シャッフルしてデッキに戻した枚数分
カードをドローする!
◎――――――――――――――――――◎
続けて登場、剣のプレイヤースキル・パート2! 6枚の手札を全てデッキに戻して、普段なら再びブレスによる自動シャッフル機能で混ぜるのだが………
―――カチャッ
「!!?」
何と、桐山剣は自分からブレスに装填していた赤いデッキケースを抜いて、中の40枚ほどのカードの束を取り出した。
「……なんの真似ですか。デッキケースをブレスから外すなんて」
「別に俺はゲームを諦めてないすよ早瀬さん。自動機能でカードを混ぜてもどーせPASでバレるんすから。ここは一つ、PASなんかでもバレねぇ“最高のシャッフル”を魅せてあげますよ!」
「最強のシャッフル……、私を欺くための手品を魅せるつもりなら、それこそ懐疑的行為として反則になりますが?」
自分も似たような事したでしょーに!! しかしPASの能力であれば文句が言えないのがこのゲームの辛さ。しかしそれでも乗り越えてきた桐山剣の勝負強さ。
それを今度はチーム名に相応しき“シャッフル”で魅せようと言うのですから、芯の強さはお墨付きか!
「――――切り札騎士・桐山剣。これよりゲームの正当なルールに則り、【史上最強のシャッフル】をこの聖地にて、御披露致す!! いざ、尋常に………参るッッッ!!!!」
切り札騎士道とは、極限を示すことと見つけたり! 果たして“史上最強のシャッフル”は、PASを超えることが出来るのか!? ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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