【GAME48-5】相棒はまんまるボール!?
――ま~る描いて♪
お腹もまんまる、お顔もまんまる、挙句の果てには手足も顔の横に付いてる耳までもまんまる。それは何かと問うなれば。
「【ミラクルボール・プニュ】だぁ? そんなユニット聞いたことねぇよ!」
『プニュニュ〜〜♡』
何の因果か手に入れたユニットウォーリアー召喚用腕輪の『コントラクトリング』を手に入れた剣。今回のダンジョンモードでは自分の知恵を使って、魔物であるユニットから直で装着させるという荒業に出たが……
不運にも足元のカードにスッテンコロリンして、丁度近くでぼーっとしていたプニュにリングがスッポリと入ってしまった。そんなこんなでこのまんまるユニットがユニットウォーリアーとして契約されたんだとさ。めでたしめでたし。
「めでたくねぇわ!! 俺ワイバーンを契約したかったのにさ! こんなんありか!?」
『プニュ?』
そんな諸事情聞いたところで、純真なプニュにはなんのこっちゃな話。更に運の悪いことに、この騒動がワイバーンユニット《遺跡を守る翼竜》達の耳に入り、剣達を見つけては殺気立てた眼光で、上空から襲いかかるではないか!
「グワァァアアアアアアア!!!!」
迫りくる翼竜の牙、急降下する敵の群れ! 剣は咄嗟にその標的ポイントからプニュを庇うように緊急回避のサイドロール、アクションゲームの回避技さながらにエスケープして体制を立て直す。
「気づかれちったか! しゃーない、プニュはどっかへ隠れてな。こっからはお子ちゃまには目に毒な戦闘シーンの―――」
『プニュニュ!』
するとプニュは意外にも、避難しろと剣の命令も聞かずにブンブン丸っこい首を降ってワイバーンの前に仁王立ち……いやいやフワフワ浮かんでるから仁王浮かびが妥当か。
『プニュプニュ、プニュニュ!』
「え? “一緒に戦う”ってのか!?」
『プニュ!!』
剣さん!? プニュの言葉分かるんですか!?
「なんとなくや。よーしそこまで言うなら信じるぜ、俺のユニットウォーリアーだからな。行けぇプニュ!!」
『プニューーーーー!!!』
手のひらボールサイズのプニュが剣を守るべく突撃ぃ!とばかりにまんまるボディで体当たりしようとした途端、
―――ガシッ
ワイバーンの鉤爪に鷲掴みされて、プニュちゃん巣までお持ち帰り。
『プニュニュ〜〜〜〜!!!!(大泣)』
「わ゛ーーーッッ、俺の相棒を取るな畜生ォォォオ!!!」
“畜生”と言うべきは、戦力の無いプニュを突撃させた剣さん、アンタの方だよ!
▶▶▶ NEXT▽
どーにかこーにか、ワイバーンの群れは剣が自ら撃退し、プニュのお持ち帰りも何とか阻止出来たようで一安心。危うく主人の前から拐われると思ったプニュも半ベソかきながら剣の懐にすりすりしつつ甘えるばかり。
『プニュンニュニュ……』
「“ごめんなさい”って言ってんのか? いや俺こそごめんなさいや。危険な目に会わせちゃって悪かったよ。戦うだけがユニットウォーリアーちゃうもんな」
サバイバーモードの一件から、ユニットウォーリアーは“共に戦う相棒”というイメージを持っていた剣だったのですが、ちょっとだけ勘違いをしていた。それは剣のようなゲーム戦士も、ゲームワールドの生物であるユニットも、皆それぞれの意思を持っている事。
カードゲームのように自分が配下を命令すれば、無視せずに100%戦ってくれる仲間と思ったら大間違い。プニュのように身体が小さくても主人の為に戦おうとする勇敢さはあっても、敵には全然敵わないタイプもいる。
ゲーム戦士とユニット、相棒で結ばれたからには守られるだけではいけない。時には己も誰かを守る為に知恵を巡らせ、戦い抜くスキルを磨かねばならないのだ。
――――キュルルルル……
「仮想空間なのに腹減るって感覚はどうも慣れねぇな」
ローグライクゲームをやった事がある皆さんは良く聞く要素でしょう。『お腹が減ってきた……』とウィンドウが警告すればそれはお食事の時間。
ダンジョンの中に落ちているパンやらグミやらを保管して、空腹時に食べればお腹が膨れるってあれですよ。誰ですか【道端に落ちてるパン食うの不衛生】って言う人は!!
「その点もこっちじゃ解消してるみたいだぜ。飯もカードになってる」
◎――――――――――――――――――◎
〈ご飯カード〉
【鉄火丼】
焼津直送のマグロの赤身とコシヒカリの
絶妙なる相対性理論! 満腹率70%の効果。
※事前に刻み海苔とわさびは付いています。
◎――――――――――――――――――◎
召喚すればご飯が出てくるカードなんて、このゲーム以外あるんでしょうかね。とにかくこのカードをカードスキャンブレスに装填すれば、
『ご飯カード、【鉄火丼】!! 美味いよ』
丼に大盛りのご飯にマグロの山、ご丁寧に箸も付いて新鮮産地直送で鉄火丼召喚完了! これなら消毒スプレーを掛けられないし、不衛生にはならない……のかしら?
「どっちでもえぇやん、俺の大好物用意してくれるだけラッキーだぜ。いただきま――――」
いざとなったら口を開けろ!と勢いに大口開けて鉄火丼を喰らおうとする剣の横で、
『プニュ〜〜〜〜☆☆☆』
つぶらな瞳にキラキラ輝かせて鉄火丼を食べたそうに剣を見つめるプニュ。これには剣も食うのを躊躇わせた。
故意に丼を横に反らせばプニュもそれを見つめ、また反対に丼を反らせばプニュはまた見つめるばかり。左に右に、下に上に、はたまたプニュの間近に近づけて驚かしてもプニュの誘惑は止まらない。もう駄目だ、欲張っては良心は痛むばかり。
「………分かったよ、一緒に食べようや!」
『プニュ〜〜♡』
丼の器にカスタムツールのソードで真っ二つにして、剣とプニュで器ごと半分この鉄火丼を仲良く頬張った。プニュにはわさび醤油の味は早いかなと思った剣だったが、意外にも大人の味に耐性のあるプニュは満面の笑みで米粒残さず平らげた。
『プニュニュッニュニュ〜〜♪』
「“ごちそうさま”か? 良かったよ、満足してくれて」
剣はプニュに半分鉄火丼を分けた為、ステータスも35%しかお腹を満たせなかったが、残りの半分はプニュの笑顔で満たされたようだ。
幸せそうなプニュのほっぺを剣はつんつんとつついたり、頭を撫でてみれば風船のようにプニュプニュしてて良い感触。プニュもくすぐられた感覚でこそばゆいリアクション。
(……成程な、コイツをユニットウォーリアーに契約してのはアクシデントじゃねぇや。寧ろ“守ってやりたい”って気持ちが湧いてきた。―――守ってやるよ、プニュもみのりも、俺の好きなもん全部!)
『……プニュ?』
「お前の事気に入ったよ。このクエスト終わったら俺のデッキに入れてやる。あ、ペットでもええわ!」
『プニュプニュ』
「“ペットはヤダ”? 照れんなよ」
――――最深部到達まであと13階! プニュを相棒にクリアなるか桐山剣!! 本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




