【GAME48-3】桐山剣のウィークポイント!!
―TIPS―
今回の『アメイジング・ダンジョンモード』では
ダンジョンとは違ってレベルやHPの初期化は無し。
現在のレベルとHPの数値でスタートし、魔物を倒せば
経験値も獲得してプレイヤーレベルが上がることも。
(……この設定あまり活かせてないような)
――桐山剣が『限界突破迷宮』にて聖剣の所有権解放クエストに孤軍奮闘していた同じ頃。
ゲームワールドオンラインを管理するWGCの総本山、東京のド真ん中に位置する超高層ビル【ディメンション・ターミナルビル】の中央階、司令管理室にて開放クエストの様子を見守る二人の男。
それは誰かと尋ねれば、ゲームの指揮や調整を担う『ゲームワールドマスター』の資格を持つゲーム戦士・一文字 蒼真と、恐れ多くもWGCの代表取締役社長の本宮マサト若社長ではないか!
「社長、桐山剣のクエスト開始と連れの者を最深部への移動も無事完了しました」
「御苦労。では今のうちに次のミッションの準備に入れ。フィールドと対戦相手のチェックだ」
「了解」
流石世界の中心を動かすゲームワールドの管理機関のトップは今の現状に満足せず、次の段階に移る為に蒼真という男に行動を促した。
しかし、超多忙な若社長自らが剣さんにGXキャリバーの所有権を賭けたクエストを発注するなんてどういう風の吹き回しなんでしょうね?
「何も興味本位で企てた事では無い。あの聖剣GXキャリバーは、ゲームワールドをも動かす力を持った大いなる秘宝【G-パーツ】の一部であったものだ。意思を持つ聖剣が彼を所有主に選んだとしても、それに相応しいかどうかを判断するのは私の役目だ」
そうでした! 実はあの聖剣は、前作『極限遊戯戦記』のアメイジング・ウォーズにて訳あってシャッフルや立海、更に穂香のお父さんとの三つ巴になってまで奪い合ったゲームワールドの大いなる秘宝・G-パーツが、アメイジングカードとして実現した姿。
悪しき魂を消し去る聖剣とて、使い方を間違えれば電脳世界の破滅をも呼ぶ強大な力を持つ。そこで本宮社長は、桐山剣が聖剣を持つに相応しいか見極めるべく、特別な解放クエストを課せさせたのだった。
「それに転送場所の『限界突破迷宮』に拘ったのも、意味があっての事で?」
「無論だ。彼処はかつて桐山剣の祖父、桐山矛玄がPASの進化を求めた末に辿り着き、前人未到の全踏破を成した場所だ。このゲーム時代の歴史に大きな痕跡を残した祖父に、孫が出来ない事など無い。私はそう見込んで此処を戦場と指定した」
何やら無茶苦茶な根拠ですが……本宮社長が申すには、ゲームワールドの歴史に名を刻んだ祖父の特訓場所であった『限界突破迷宮』を、今度は孫の剣にも挑戦させようという魂胆だ。だが決してその道程は甘くは無いと断言しよう。
「この前のサバイバーモードの活躍から新システムの発展だけでなく、データに纏めて桐山剣の長所・短所も徹底的に調べる事が出来た。ここは鳳凰堂孔雀の功績と認めざるを得ないが……これからゲームはどう動くか、お手並み拝見だな」
今やゲームウォーリアーの大核となりつつある16の少女にしてWGCの副管理者・鳳凰堂孔雀が開発した『アメイジング・サバイバーモード』の施行により、決闘システムにも応用発展の兆しが見えつつある現在。今回のクエストでも、そういった新要素をダンジョンに導入して桐山剣に挑戦しようという訳だ!
「桐山剣、君自身が望む“切り札騎士”とやらになりたくば、己の持つ弱点を克服する所から始めるのだ。ウィークポイントを知り、自分の長所を見つめ直したその時こそ進化の一歩! さぁ、思う存分抗うがいい!!」
桐山剣の活躍を手ぐすね引いて期待する本宮社長。果たして彼の弱点、ウィークポイントとは何なのか。それを確かめる為に閑話休題!
▶▶▶ NEXT▽
――変わって舞台は『限界突破迷宮』の最深階・B20F。
ここでは先にゲーミングネーターによって転送されたみのりと桜が、剣の帰りを待つ。待つといっても何もしないのは退屈と思ったか、本部から支給された俯瞰型のモニターにて剣の活躍を遠くで見守っている。
まぁでも、みのりさんと桜さんは剣さんの実力を特に知ってますからね。余程な事は無い限りは彼女が心配するなんて事は無いでしょ――――
「「心配〜〜〜〜(ですわ)〜〜〜」」
……ありゃ、何という分かりやすいリアクション。どうしたんですかお二人共!
「あ、Mr.Gさん。心配するに決まってるでしょう!」
「今までの剣さんの動向から見て気づきませんか?」
え? 確かに剣さんいい加減だけど、ゲームに至ってはカッコ悪い所は特に……
「「彼は方向音痴なの!!!」」
方向音痴!? ……あ、そういえば!!
ココ最近の剣さんの様子を予習すれば、思い浮かぶは『リロード樹海』で壁ひっつき作戦で行こうとしたり、サバイバーモードでは迫るファイアウォールにトンチンカンな方向に走って死にかけたり。挙句の果てには地底空間帰りに大阪でなく香川に着いちゃうという醜態晒し。
如何に剣が抜群のゲームセンスと極運を持っていたとしても、行き先分からずの風来坊ではどうしようもない。これぞ桐山剣唯一にして最大の弱点であった。
「剣くんってば、近所の新世界でもよく寄り道ウロチョロする癖あるから、いつも目的を忘れてどっか行っちゃうんだもん。私が先導しないと学校にも遅刻しちゃうくらい」
「それは重症ですね……」
良く道に迷う人の特徴としては、方向感覚が無いのを前提として自分が通った道を記憶していなかったり、先程の剣さんみたいに寄り道して経路すらも忘れる等色々な起因があると思われます。
それを証拠に、剣はB1階の序盤の左へ一方通行の道を沿ってグルグル回っているだけ。これでは自分の尻尾を追い回す猫と同類だ!
「「情けない…………」」
▶▶▶ NEXT▽
みのりや桜が呆れ返ってる事など知ってや知らずや、剣は真剣そのもの。例の端の石壁に右手を添えてターっと行こう作戦で進もうとする。だがその壁が同じ所をグルグル周ってるだけとも知らず知らず。
(どうも変やな。さっきからスライムしか出て来ねぇし、倒した所でしょっぱい経験値とカードしか出さへん。……これもしかして迷ったか俺?)
やっと気づきましたか! これには初期地にエンカウントで彷徨くスライム達もようやく『あの方向音痴バカの相手から開放される!』と陰ながら思ってる事でしょう。魔物にまで言及される始末か。
(はぁ〜ぁ、だからローグライク苦手や言うたんや。新世界入り口から通天閣着くのに30分掛かるくらいの方向音痴やって、自分でも分かってる癖にさ。嫌んなっちゃうぜ)
剣さんは方向音痴を自覚していたそうで。だが唯一の落ち目故に今も尚迷い道フラフラしてる自分を見つめ直す程、落ち込む一方。余計に埒が明かなくなる。なんとか打破しようと手持ちのプレイギアやらプレイヤースキルやらで解決しようとしても見つからず。
ちょっと剣さん! 何の為に左腕に新アイテム着けてるんですか!?
「新アイテム……? あ、そうや!!!」
ようやく思い出した剣は左腕にセットした腕時計型スマートアプリ『プレイギアWATCH』を起動させ、無数のアプリケーションから記憶していた機能を展開させた。
「あった! 『マッピングコンパス』!!」
それはプレイギアWATCHのアプリケーションの一つ。予めフィールドの目的地をセットする事で、音声ナビゲートでプレイヤーを案内する優れもの。今の剣にぴったりな機能だ!
「よっしゃ目的地は……『限界突破迷宮・最深部』と!」
『目的地、セットしました。音声案内を開始します。――およそ30メートル先、左方向です』
「まるでカーナビやな。でも手に入れて良かったぜプレイギアWATCH!」
淡々とした音声アナウンスに従い、ようやくグルグル道から脱出した剣。大して進んでいないのに難所を抜けただけでみのりと桜は大歓喜。
更にスライム地獄も抜けたようで、コウモリやら何かよく分からない珍獣やらの魔物も出て来てバリエーションが出てきた所。ここからがRPGの面白くなる分岐点も超え、討伐しながらカードも回収する。そして……
「やった〜! やっと階段見つけた!! 完全勝利☆」
開始から20分、やっとこさB2Fへの下り階段を見つけた剣は歓喜の涙。ゴールでも何でもないのにエンディング感覚に酔い痴れてる剣に、プレイギアWATCHの音声ナビが一言。
『貴方、この音痴ぶりを察するに梅田駅で宝塚本線から神戸線を探すのに一時間掛かるタイプですか?』
「…………………………………はい」
マジですか。
▶▶▶ NEXT▽
――――そして、彼を待ち受ける深い階にて。我々は予想も付かなかったカードを目にする。
◎――――――――――――――――――◎
〈スペシャルカード〉
【コントラクトリング】
効果:このカードの発動後、
続けてユニットカードを召喚する事で
そのユニットは〘ユニットウォーリアー〙となる。
◎――――――――――――――――――◎
まさか、これは……!? あのサバイバーモードにて波乱を巻き起こした【ユニットウォーリアー】のキーカードでは!!? 限界突破迷宮の何処かに隠されたこのカード、果たして桐山剣は見つけ出せるのか!?
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




