【GAME48-1】“シャッフル”という名の継承!!
――現代はあっという間に二月、又の名を“如月”。
ここ長い事龍牙とデクルックスとの汚らわしい……いや違う、誇らしい死闘を繰り広げましたがようやくこれが終結。
いよいよ今回からはお待ちかね、切り札騎士こと【桐山剣】の大試練!
秘剣・GXキャリバーを手にするべく特別なGWクエストに出陣するわけであります! みのりさんも桜さんも出ますよ〜
では張り切り万端、参りましょう!!
―――『オープン・ザ・ゲート』!!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
―――ここは現実世界・近畿の大核、大阪は浪速区。
ゲームワールドオンラインを筆頭に、現実と電脳世界での行き来が可能となったメタバースと共存するこの時代。それでも人と人との触れ合いを忘れず、情緒溢れる下町の風情を感じさせる町々。
そんな浪速区の住宅街にて、今どき珍しや瓦の屋根に檜香る木造建築の一軒家。何を隠そうこれこそ、ゲームウォーリアーの代表主人公・桐山剣の住処。桐山家のご住所。
家の中には御年70歳を迎える剣の祖父・矛玄も住んでいる。剣が出掛けている間もこの家を城として、アフターワークやら趣味やらに熱を入れつつ余生を過ごしている。現代ではあまり見ないIT・電気技術のプロフェッショナルじいさんとは、矛玄さんなり。
―――ピンポーン☆
「ん? 剣め、やっと帰ったか」
家のチャイムに反応し、長い事留守にしていた剣に愚痴を溢しながらも矛玄じいさんは玄関を開けて出迎える。だがその相手は剣では無かった。
「おぅ、紗由理やないか!」
「お久しぶりです矛玄さん!」
何と、桐山家のお客様は神崎紗由理。つまりは穂香の養母にして、伝説のゲーム戦士OGだ!
何を隠そうこの御二方、超次元ゲーム時代の黎明期を支えたクリエイターとプレイヤーの間柄、紗由理さんが初期のゲームワールドにて活躍し、矛玄さんは画期的なゲームを創生した人。
創る側と立ち向かう側との相対性から、いつしか親しい仲になっていたようだ。
「どうかね、ゲームワールドでガーデニングしているようやが繁盛しとるか?」
「えぇ、お陰様で。『オールグリーンガーデン』で育て上げた青薔薇が大変ガーデニングのプレイヤーに好評で」
メタバースの電脳世界で、青薔薇も作れるとは!
「今日は少しお暇が出来ましたので……、折角ですから久方ぶりに矛玄さんとお話しようと来ました」
「おぉそれなら好都合や。ワシも孫がおらんで退屈しとったんよ。ささ、上んなさい」
どうやら互いの孫と養子が、中々家に帰らないものだから世間話をしようという訳です。とは言っても、当の剣や穂香はそれぞれの使命を持って戦ってる訳ですから、決して遊びに行くとは違う事も御二方には分かってました。
―――矛玄じいさんが卓袱台上の湯呑み茶碗に軽く緑茶を注ぎ、紗由理さんはわざわざ持ってきた和菓子と一緒に思い出話に花が咲く。
「矛玄さんは観てましたか、地底空間で行われた『アメイジング・サバイバーモード』。うちの穂香が大活躍してましたよ!」
「勿論、新趣向にしては中々良い試合やった。まぁその穂香ちゃんに剣がやられたのはなぁ。いつも詰めが甘いねんな、仲間内に関しては」
現実世界では生中継で、あの『サバイバーモード』の激戦がネット・地上波で放送されてたようです。それに出場した穂香と剣の話題だけでも大盛りあがりの二人。何やかんやで剣と穂香が、とても親に愛されてるのが分かります。
「それにしても、知らない内に剣くんらのチームも知名度が上がりましたよね。去年までは単なる街の人気者から、あっという間に大阪を代表するゲームチームになっちゃって」
「ゲームワールドを二度も救って、剣も他の皆もゲームの一線の場で活躍してるからのぅ。……やはり血は争えんわい」
「…………そういえば、矛玄さんも40年前までは私と同じゲーム戦士として戦ってたんですよね?」
――――え!? 初めて聞きましたよその話!!
「大昔の話やがな! 今みたいなハイカラなゲームが無い時代にいただけの話」
ゲームが世界を変える弱肉強食の『超次元ゲーム時代』が始まったのは、近未来の時系列から見て50年前の話。そのとき矛玄さんは、日本国内初の公式プロゲーミングチームのエースとして活躍していたレジェンドだというのです。人に歴史あり。
――その時の矛玄さんが所属したチーム名は、【浪速シャッフル騎士軍】。ということは……?
「ワシも剣にその話を良うしたからなぁ。多分アイツの頭にワシのリスペクトも込めとったんやろ。“シャッフル”の名前は誇り高き旗だ、ってな」
つまり桐山剣率いる『シャッフルオールスターズ』は、祖父の矛玄から継ぐゲーム戦士の魂の継承を意味してたとか……!? そうなると余計に矛玄さんの武勇伝を聞きたくますが、残念。まだそこまで語るには時期尚早なようで。
「正直、ワシは剣に感謝しとるんよ。ゲームを通じて仲間を作り、それを通じて荒んだ人の心を着火していった。相変わらず生意気やが、心意気は自慢の孫やで」
「それなら私も感謝してますわ。剣くんがうちの穂香も、穂香にくっついてた倭刀くんの心を救ってくれた。彼の剣の魂は、間違いなく矛玄さんに似てます」
遠く離れてもなお、桐山剣という存在は祖父や紗由理さんの心を動かす不思議な魔力があるようだ。ならば尚更親孝行はしてもらいたいものだが、今日もまた誰がために戦うゲーム戦士に休息は無し。
剣も穂香もその他の仲間に対し、矛玄さん達はただ健闘を祈るしか出来ない。だがその有志を見守る事こそ、彼らにとっては孝行なのかも知れない……!
「桐山剣はワシの誇りや! たとえ現実世界か電脳世界か何れかに居ようとも、この太陽の下の何処かで元気でやってるやろうて!!」
「――――――いや、その誇りがここに居るんやけど。じいちゃん」
「「わ゛ああああああああああああああ!!!!!」」
いきなりヌッと現れたのは桐山剣御本人! それと同行していた河合みのりに立海の時実桜がいつの間にか桐山家にお邪魔していた。てか剣さん、おじいちゃんを驚かす事するんじゃないの!!
「さっきから聞いてりゃ俺ん前で恥ずい事言ってくれちゃって。ここ一、ニヶ月マトモに出番無かったって言えなくなるやろが!」
いや言ってますよね、自分のメタい口から。
「剣! 帰るなら帰るって連絡よこさんか!! あーびっくした」
「剣くん何時から来てたの?」
「じいちゃんの『生意気やが、心意気は自慢の孫やで』んとこから」
意外と最近でした。
とんだハプニングがありましたが、改めてみのりと桜はご丁寧に御二方にご挨拶。地底空間のゲームを経て、香川からようやく故郷に帰ってきた剣達は、その一部始終を矛玄さんらに全て報告したのでした。
「……そう、穂香は裏プレイヤーの討伐にまだ地底空間にいるのね」
「で、剣は何しに帰って来たんだ?」
「俺、アメイジングウォーズで手に入れた【大いなる伝説の聖剣・GXキャリバー】の獲得クエストに行く。その報告をしに一旦家に帰ったんや」
「……そうか、あの聖剣を本気で取ろうという気になったんやな。うーむ」
その事を聞いた祖父は、何かを悟ったかのようにこう言った。
「それは己の欲望じゃなく、自分自身で“本当の強さ”を探す為に挑むんやな?」
「……………うん」
鋭い眼差しに真摯な顔。剣の真剣な姿勢に矛玄の心は動いた。
「ちょっと待ってなさい」
すると矛玄、彼の個室の物置をゴソゴソと探せば取り出して剣に差し出したのは、銀の鎖で繋がれた剣と盾のペンダントであった。
「これはな、昔ワシが『浪速シャッフル騎士団』で使うとった御守や。コイツを身に着けとると、心做しかヒラメキや勇気が湧いてくる。今のお前なら十分持つに相応しいと思うた。ワシからの報酬として受け取ってくれ」
「じいちゃん……」
「お前が本気で強くなりたい思うならば、お前の剣と盾の魂で、みのりちゃんや仲間を守り抜く切り札騎士になりなさい!!」
「―――――――おぅッッ!!!」
――何故に矛玄さんは、孫の剣に若きゲーム戦士時代の御守を授けたのか。
その様子を呆然と見つめるみのりと桜を尻目に、決意新たに再び家を出発した剣。疾風のように現れ、疾風のように去った浪速縁のゲーム戦士。
その真意は既に矛玄さんの心に握っていた。
「……矛玄さん。剣くんにあんな大事な御守を授けたのは、もしかして……?」
「おそらく剣自身も勘付いてたんやろ。クエストで強さを証明しないと時代に乗り遅れるって。
――――時代は進化に遅れた者を歓迎はせぇへん。ゲームは確実に過酷さを増すだろう」
その秘められた言葉通り、我々の予想を遥かに超えた猛者達が、桐山剣らに容赦無く迫ろうとしておりました……! ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




