【GAME47-6】従者どもの意思……!!
――漆黒の忍装束に身を隠しながらも、心は夕焼け茜色。デクルックスの不穏な動きにも屈せず、鍛え上げた知能と根性で見事決闘を制しました忍野龍牙。
起死回生の甲斐あって、命狙われていた同胞の井鷺瑞希も救うことが出来た。ゲームに勝てれば何も文句は言いようなし、潔く負けを認めたデルタのデクルックスは、ようやく決闘のダメージから回復して立ち上がった。
「あ~あ、負けちゃったか。悔しいけど楽しかったよ☆」
気の抜けた割にはそれなりに快感も味わえたようで満足している様子のデクルックス。ドSは敵を痛め付ければ快楽の域に達すると言いますが、本当のようだ。
対戦相手は命狙われ、死ぬ気でやってた事など全く気にも掛けずに。
「……そりゃ、よー御座んしたね」
とは、龍牙の捨て台詞なり。
(ともかく、勝つには勝てたけど……今回のゲームアンティじゃ結局アイツを野放しにする事になるのよね)
瑞希が言うには、幾ら龍牙が勝ってもデクルックス自身は成敗出来ない状況となっている。
早い話がこのゲーム、獲物となっていた瑞希の代わりに自ら差し出した龍牙の命を奪うか否かを決めるだけ。結果は龍牙が勝利し、そのアンティ代償としてデクルックスが取引に出したアメイジングカード1000枚を貰えるおまけ付きの交渉でありました。
「そういう事や。負け惜しみはその辺にして、大人しくアンティを寄越しな」
「勿論だよ。ゲームのルールばかりはちゃんと守んないとね」
人間としての範疇としてはとっくにアウトなデクルックスでも、ゲームに関しては律儀な男。大型のアタッシュケースを取り出して、龍牙の元へ確かに受け取られた。
(指名手配犯を取り逃がすのは勿体無いけど仕方ないか……。命あっての物種、それに他の人のカードを奪い返しただけでも良しと思わないと)
掴み取れた勝利に何とかポジティブに受け入れようとする瑞希。……でも相手が相手ですからねぇ。どうもキナ臭いな、きな粉は信玄餅食ってると良く溢れますな。
「作者地元の山梨ネタは置いといて、そろそろ僕帰っていい? あんまり長居すると色々と怒られちゃうし」
指名手配犯が、何を午後6時の門限気にする小学生みたいな言い方してるんですか。
「あぁ、さっさとサザンクロスんとこの母ちゃんに甘えてきな」
龍牙さんもボケに乗るんじゃないの!
「じゃ、そーゆー事で! まったね〜♪」
ご機嫌有頂天のデクルックス。ホントに無邪気な小学生気分でスキップしながら立ち去ろうとした、その時!!
「オイ小僧、俺様からの忘れ物受け取りなぁ!!!」
――――ビュッ、ガツン!!
「あがっ……!??」
何と!? 龍牙は背を向けたデクルックスの隙を突いて、地底空間に転がっていた野球ボール並みの石を投げつけ、彼の頸髄にクリーンヒット!!
その衝撃にデクルックスは脳震盪を起こして倒れ込む、良い子の皆さんは絶対真似しないでね!!
「な、何を……!?」
「もうゲームのアンティは終わってるぜ。神妙に御縄に頂戴しな、デルタのデクルックス!!」
―――ガスッ、バキッ! グシャ!!
ゲーム後の憂さ晴らしか、やめたげてよぉ!と言わんばかりに殴る蹴るの圧倒的暴力で痛め付ける龍牙。忍者らしからぬフルボッコに瑞希はあ然。デクルックスは当然失神・気絶。そして……
ウ〜ウ〜ウ〜ウ〜
「こちらWGC特捜班の者です! ここに指名手配犯のデルタのデクルックスが居るとの情報に駆けつけました!」
「おぅ、丁度コチラで伸びてるぜ。ゲームで命狙われたから正当防衛でボコしたぜ。引導頼むわ」
「ご協力感謝します!」
ゲームウォーリアーお得意のご都合展開か、仕組まれたシナリオか。倒れたデクルックスに反応するかのようにWGCが警察との連携で組まれた特捜班の駆けつけにより、デクルックスはあれよあれよと言う間に連行・現行犯逮捕された。
「……ふぅ、デクルックスに襲われる5分前に保険で緊急通報させといて正解だったぜ。地底空間だから来るの余計に遅いんだよなここのサツは」
「(ポカーーーーーーーーン)」
こう連続で衝撃な展開が起これば、さしもの瑞希も何がなんだかさっぱり分からず。開いた口が塞がらないとはこの事なり。
「………龍牙、アンタ一体何してくれてるの……!?」
「何って、デクルックスボコして逮捕させた」
「そうじゃなくて!! これも孔雀様に指示された事なの!?」
「指示されたも何も、元々ゲーム戦士を総員させてまでデクルックスを確保したがってたのが孔雀なんやから、当たり前やろ」
確かにそうですけれども……、ちょっと横暴だったんじゃないですか? 龍牙さん。
「何言うとんねんな、Mr.Gも眼鏡先輩もどんだけデクルックスがヤバいか身に染みて分かったんだろ? アイツは生きる目的を知らないで、殺戮に快楽を覚えたサイコパスや。ここで確保せなどんだけの奴が犠牲になるか。……まぁボコボコにしたのはムカついたからオプション付けただけだがな」
そのオプションも一歩間違えれば犯罪になりますよ。
「何か腑に落ちないなぁ……」
「それに犯罪はもう一つあるぜ。アイツのアタッシュケースの中身」
アンティで獲得したアタッシュケース内の1000枚のアメイジングカード。一見何の変哲もないカードに見えますが、ところがどっこいしょ。
「全部コピーカードや。殺人だけでなく交渉詐欺も罪状追加やなこれは」
これは酷い。アメイジングカード1000枚は全て偽装させた偽物。報酬までも“正体不明”にさせるとは恐ろしいを通り過ぎてセコい。
「なる程な、こういう時の為に本物にゃ右下端に銀プリズムのシールを貼っとったんや偽造防止用に。えぇ勉強になるわ、面白えからコイツも持って帰ろう」
龍牙も変な所でポジティブですねぇ。
何はともあれ、同胞の瑞希も救えてサザンクロスの幹部を確保するという大手柄を立てた龍牙は上機嫌。しかし、もう片方は別。
「…………………」
龍牙に命を救われた瑞希。良い風に思っていなかった彼に対し決闘前と今とで心境は大きく変化していた。
(コイツ……デリカシー無いし、面悪いし、暴力的で加虐体質でヴァイオレンスだけど、私を守ってくれた事に変わりは無い。けれど………)
評価の半々は暴力で占められたが、それでも仲間を尊び彼女を守った龍牙に対し、瑞希はどうしても確かめたい事があった。
「あのさ龍牙……、私を守ってくれたのも、さっきエンヴィー達を追ったのも、全部孔雀様の命令なんだよね……?」
「あ? そうだって何遍も言わせんなや。でなきゃ何の為に俺様が命張ったと思てんねん」
「…………そっか……」
前者はともかくも、後者に至っても龍牙が言うには事実で有ることに半々落胆した瑞希。
幾ら地上の人々に危害を加えたとはいえ、同じ地底空間出身の者に手を加える事が瑞希にとっては信じ難い事であったからです。
「私ね、孔雀様は私や真奈を救ってくれた優しい人だと思ってた。陰で悪い事をしようだなんて、絶対にしないと思ってたのに……」
「アホか、こんな弱肉強食な時代に根っからの善人が社会変えられると思うなや。世の中汚ぇ奴揃ってまかり通ってんのによ」
それ以前に、正直だけでは社会に通じないのも事実ですな。残念ながら。
「確かにアイツは手段選ばねぇよ、俺様以上のドSだし。だがテメーの欲求満たしだけでWGCに入ったんじゃねぇ。じゃなきゃ俺様がアイツに従うか。お前らメンバーに負担掛けてるつもりはねぇし、何が不満なんだよ先輩は?」
龍牙の意見にも一理あるが、瑞希には瑞希なりの孔雀に対する変化、そして不安が堪らなく増しているのが見えていた。
「……正直言うとね、私は地底空間の皆とは仲良くしていきたい。同じ故郷で助け合って生きてきた者同士が、派閥を持って対立したり敵対するのは嫌」
「また無茶言うな、ここは小学校じゃねぇぞ。話し合いで解決するなら世の中とっくに良くなってら。それで孔雀のやり方が嫌なら、このチームを辞めろとしか俺様は言えへんぞ」
「やっぱり、私がワガママすぎたのかな……」
瑞希のような図書委員タイプは争いを好まないようで。なんとか穏便に解決したい気持ちで一杯だったが、相手は闘争心に駆り立てられたゲーム戦士同士。更に積年の悔恨があっては、どうあっても穏便には出来ないだろう。
「じゃお前なんの為にゲーム戦士やっとんねん。初めて会った時は、大人しい癖して攻略本マニアな素振り見せてただろ」
あら、それは意外ですね。瑞希さんは攻略本マニア、とメモメモ。
「バラさないでよ恥ずかしい! てか凹ませたのは誰のせいよ……」
しかし意地は張ってはいながら、デクルックスに襲われる前の揉め事には流石に好き勝手言い過ぎたと思ったか、瑞希は深く頭を下げる。
「………………さっきはゴメン、龍牙」
「ケッ、無茶すんな瑞希先輩。俺様は先輩を凹ますほどにやり方が横暴やからな。嫌われて当然!」
それを誇りにするのはどうかと思いますが……龍牙さんらしいと言ったらそれまでよ。
「何よ、せっかく謝ったのに捻くれた返事して……」
「………まぁ捻くれさせたのは、俺様を取り巻いた大人のせいだろうがな」
…………え? 龍牙さん、今何を……?
「聞くな、流せ。だが捻くれた俺様を拾って、こうして戦いの場に立てる事が出来たのは孔雀のお陰や。直じゃ言いたかねぇが、感謝はしてる。――――心配になるのもわかるが、あんましご主人を困らせんなよ」
「……そんなの、アンタに言われるまでもないわよ」
根性曲がりが邪魔しているが、龍牙の魂には“信念”とチームに対する“誠実”が確かにそこにあった。
“盗人にも三分の理”とまではいかないが、彼にも屈折した心を持つようになったのには重大が理由があるに違いない。それを除けば、彼もまた真っ直ぐな魂を持ったゲーム戦士なのだ。
―――かくして、地底空間での連続した決闘・死闘の数々にようやく帰還の路を辿る龍牙と瑞希。未だ完全では無いが、複雑な情景で交錯していた心のわだかまりが解けていった瑞希は、俊足に飛び交う龍牙に必死について行きながらこう思った。
(龍牙……本当、良く分からない生意気な後輩。……でも、ゲームをしていて分かったことがある。
―――――アイツの振るった拳と蹴りは、理不尽な世への怒りなんだ。アイツも私と同じように、思うようにいかない世の中に必死に抗ってるんだ。
それを孔雀様が見込んで受け入れたのなら……もうちょっとだけ、信じてみよう。忍野龍牙というゲーム戦士を)
―――――そして、地底空間・B2層の古代遺跡の前にゲーム戦士達の気配は完全に消えた。
ただ薄暗く、太陽の光も差し込まぬ冷ややかな地に残されたものは何も無い。何も……………いや?
ただ一つだけ、デクルックスが装備していた剛弓と矢だけが忽然と残っていた。彼等が逮捕に夢中になりすぎて、武器の押収まで行き届かなかったのでしょう。
この剛弓が、後のゲームウォーリアーの物語にて大きな変化をもたらす事など、ゲーム戦士の大半はおろか作者以外の人々はまだ知る由も無かったのです…………!!
2022年最初の更新から二部に渡ってお送りしました龍牙VSデクルックス。その後半戦【GAME47 デクルックス死亡遊戯・後編】をもって終結、本日のゲーム、読み終わりで御座いますッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽
▶▶▶▶ NEXT GAME WARRIORS ▽
大変長らくお待たせしました! 桐山剣、秘剣【GXキャリバー】獲得の為、ゲームワールドにてGWクエスト開始!!
最初に待ち受ける対戦相手は、誰だ!?
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