【GAME47-5】偽りの太龍・成敗！！

　

「あははは！！ 変な人だねぇ、乱暴な癖して責務を果たすとか言っちゃって！ アンタ本当は忍者じゃなくて騎士なんじゃないの？」

「いーや忍者だ。何処ぞのアホみたいな騎士と違ってすぐ手ぇ出るし、卑怯だし、時たま女から『死ね』言われる癖ある嫌われものだぜぇ？」

　――さぁ、このダーティな決闘も今回がラストですよー！

　ゲーム戦士は命掛かってる時が正念場だという概念に縛られていますが、まさにギリギリの状態でも刃を敵に向ける闘志は変わらない龍牙。

　ターゲットは太龍デクルックスただ一人。殉じるつもりなど毛頭なし、狙った獲物は必ず狩る……！！

「龍牙……、本当にデクルックスに勝てる見込みがあるの……？」

「あぁ、そこはえぇ加減安心しとけよ眼鏡嬢様。次の引き次第……だが勝てる見込みなら、ある」

「ふーん………」

　何時までも倒れる気配のない龍牙、それでいて未だにほざかれる減らず口。ヘラヘラ笑っているデクルックスの表情も一瞬殺意が籠もった。

「じゃやってみなよ、クズ同士でどっちが強いかハッキリさせてみろよクソ忍者」

『アンノウンカード・スキャニング』

　喧嘩腰の割にはまたしても身を隠すアンノウンカードをセットするデクルックス。しかし表情からしてあちらもキレている感じがしますが、それもフェイクなのかマジなのでしょうか！？

「精々気は緩めない事だね。分身は四体居てもこっちには火球も弓もある。この布陣崩せるかなぁ！？」

「言われんでもやってやるよ。出来なきゃ俺様の刃は鈍ら以下って事だ。仲間守れん奴に刃を持つ資格は無い。………俺様は違うがな！」

　さぁ今度こそ正真正銘偽り抜きのラストドロータイム！ 忍装束の黒の裏に染まった血で汚れたその手に、栄光を掴み取れるか忍野龍牙！！

　《ＣＡＲＤ ＤＲＡＷ》

「……………………」

　―――カードスキャンブレスにてドローカード確認。一瞬の沈黙、明かりも陰りも無き無表情。そのポーカーフェイスの裏に隠された真意は、そのカードが鍵を握る……！！

「お前の蓄積ＥＧは④、もしここで裏返っても大したステータスじゃねぇだろうなぁ？ 答え合わせしてみっか！」

　と、龍牙は装備した《シノビウェポン・手裏剣》を持って遠方の敵目掛けてシュシュっと投げる。ターゲットは先程スキャンしたアンノウンカード！

「破壊されたくなきゃとっとと正体見せろや！！」

　さぁ、そのアンノウンカードの正体は！？

「………確かにＥＧはこれじゃ足りないよ。でも、

　―――解除コストは手(・)札(・)全(・)部(・)だけどな！！！！！」

　手札全部！！？

「これが最後のアンノウンカード、【竜巻の使者―ハリケーン・キッド―】だ！！」

　◎――――――――――――――――――◎

　＜ユニットカード＞

【竜巻の使者―ハリケーン・キッド―】EG:⑧

　AP:600 DP:600 AS:10

　属性:黒 ユニット/インセクト/ワーム

　効果:［アンノウン］解除/自分の全ての手札

　を墓地に送る。

　このカードの［アンノウン］状態が解除された時、

　フィールド上の相手のカードを全て手札に戻す。

　◎――――――――――――――――――◎

「フィールド除去でなく、バウンス(跳ね返し)………！？！」

「そう！ これでユニットはおろか、手裏剣も忍刀もみ～んな手札に戻してやるのさ！！」

　アンノウン状態から解除された竜巻を呼ぶ《ハリケーン・キッド》は、その姿を表しただけで北も南も分からぬほどに逆巻く竜巻を呼び起こし、フィールドの盤面をひっくり返す超威力！！

　これには風小僧仲間の寒太郎も又三郎も出来れば関わり合いたくないと吐露する程に、気性の荒いハリケーン・キッドの風は龍牙のカードをも根こそぎ一層させた！

「酷い……！ 武器もユニットも皆手札に戻されちゃった……！！ もう嫌――――！！！」

「テメェ……まだ隠し玉持ち構えていたんか……！！」

　さしもの龍牙も解除コストが自分の手札を全部捨てるなんて要素は考えつかなかったでしょう。瑞希も絶望の淵に上がっては落とされ、上がって落とされの繰り返しで、情緒がおかしくなりそうな域に達している。

　しかも最悪な事に、全体除去の《ライブプレデター・ワーム》とは違って、風を吹き起こした《ハリケーン・キッド》は現状フィールドに留まっている！！

「どーーーだ！ これで陸も空も全部僕が制圧してやったぞ！！」

　そして刻はまもなくデクルックスのＰＡＳスキルの火球が飛ぶ！！ 分身で稼ぎは出来るとも弓にユニットの攻撃も続けば最早持たない！ 今度こそ終わりか！？

「分身も本体も全部殺してやるよ。どーせアンタは、口だけ達者の忍者なんだからよ。――――ＰＡＳスキル火球で逝っちまいなあああああああああッッッ」

　デクルックスの火球の飛礫が、龍牙目掛けて発射した……その時！！！

『ツールカード、【盾代わりの枷】！！』

　―――ガシッ！！

「しっかり俺様を守ってろ竜巻のクソガキ」

　何と不思議な事か！ 火球の対象が龍牙から一転して、デクルックスのユニットが対象となり、火球を代わりに受けて消滅していった！！ これこそが《ファクト&フィクション》で手に入れたツールカード・2枚目の起動だ！！

「な、何で！？ 何で僕の《ハリケーン・キッド》を盾にしてんの！！？」

「――――調子乗りまくった、お前が悪い」

　◎――――――――――――――――――◎

＜ツールカード＞

【盾代わりの枷】EG:④

　属性:黒

　・効果:フィールド上の相手のユニットを対象に

　する。そのユニットは自分への攻撃を

　代わりに受けて、破壊する。

　◎――――――――――――――――――◎

　確か、同じような事をやって返り討ちにした外道が居たような居なかったような。

　それはともかくとして、デクルックスの思惑を思わぬ形で潰した龍牙。手札もユニットも消えた今、いよいよ例の切り札が発動される！！

「忍の心得を携えし十字の刃よ……今こそ我に使命を徹するべく、冷徹なる裁きを与えん！！ ――ＰＡＳ発動！！ 【手裏剣】！！！」

　―――いざとなったら魂を込めろ！ 黒い装束に隠された情熱の色、夕焼け小焼けの茜色の魂に宿した手裏剣魂！！

　◎――――――――――――――――――◎

　・PAS【手裏剣】確認。

　PASスキル【忍奥義・武芸百般大盤振舞】発動！

　デッキからカスタム・ツールカードを

　最大限装備可能！！

　◎――――――――――――――――――◎

　龍牙のブレスに装填された黒いデッキケースから呼び起こすは、おおっ！？ 忍者専売特許の武器の数々、手甲鉤、鎖鎌、焙烙火矢(ほうろくひや)と冴える道具のアラカルト。

　《シノビウェポン》の名の元に揃った忍び道具が龍牙本体のみならず、分身にも装備されて一気通貫ロイヤルストレートフラッシュ！ これさえ携えれば百人力！！

「………何だよそんなもの！ 武器揃えても所詮飛べない忍者は只の忍――――」

「忍びに不可能は無いぜ。最期の土産にそいつをよーく頭に叩き込みな」

　《ファクト&フィクション》搬入ツールカード、ラストのカードスキャン！！

『パーマネント・ツールカード、【浮遊武術】！！』

　◎――――――――――――――――――◎

＜パーマネント・ツールカード＞

【浮遊武術】EG:④

　属性:青

　・効果:自分、及び全ての自分ユニットは

[フライヤー]を得る。

　◎――――――――――――――――――◎

　武を極めし者は空をも超越する！ 永続効果を持つ《パーマネント・ツールカード》の発動により、龍牙やその分身に飛行能力[フライヤー]を習得した！ 天翔ける忍者、とはこの事なり！

「と、言う事は…………！！！」

　不安情緒に駆られていた瑞希とようやく笑顔の光が差し出した！ それもそのはず、ご覧ください！！

　忍び道具を装備した龍牙&分身がデクルックスを囲んで、仕置の準備に掛かっているでは無いか！ まさに忍者で忍者による忍者ファンの為のリンチだ！！！

「……ちょっと待って。まさか《ファクト&フィクション》で獲得したカード3枚ってのは……」

「あぁ、《浮遊武術》と《盾代わりの枷》と《闇の忍び道具調達》。全部ツールカードや」

　これで謎は明らかになりました。3枚の束にして二者選択で獲得するカードを選ぶ《ファクト&フィクション》のツールカードが全て発動された。

　あの時デクルックスが選んだ束が右(・)の方で無ければ間違いなく龍牙は始末されてた事でしょう！

「それにしては予定調和過ぎる……幾らこの小説がご都合展開主義とはいえ、何で僕が右を選ぶと思った？」

「簡単な話だ。―――お前が、【右翼主義者】やから。だから必要なカードを右に絞って選ばせた」

　そういう根拠！！！？

「支配階級に概念が凝り固まった連中は大体左を選ねぇ。鳳凰堂孔雀みたいな左翼大嫌い人間なお前が、左選ぶなんざ反吐出るだろうと思ってなぁ………！！」

　怖いもの知らずは心理においても怖いもの知らず！ デクルックスの悪の根本から分析し、推測し、こうして詰みの一手を狙い撃つ為に龍牙は最後の最後まで手札を温存し、王手のチャンスを伺っていたのだ！

　まさに外道だからこそ出来るエゲツないクレバー思考だ！！！

「…………アンタ、かーーなーーり、汚いねぇ……！」

「汚くて大いに結構だぜ……クヒャヒャヒャヒャヒャヒャッッッッ！！！！！！！！」

　―――天元突破。五つの忍が天を舞い、偽りの天龍に目掛けて暴力の限りを尽くす。

　刃で刻まれたかと思えば手裏剣に突き刺さり、鎖で首根っこを締め付け、奇麗な顔を鉤爪で引き裂く。そして終いには焙烙火矢を口元に投げ込んで…………

「―――――――――成敗ッッ」

　ドォォオオオオオオン！！！！！

　〔デルタのデクルックス HP0 KNOCKOUT!〕

　デクルックス、忍者の極道リンチに破れたり。太龍の姿は陽炎と共に消えていった…………！！

(…………良いねぇ、アンタみたいなゲーム馬鹿とやってる時が一番生きてる感じがするよ！ …………めっちゃ、ぶっ殺してぇえぇぇぇぇ〜〜〜☆★☆)

　▶▶▶ RYUGA OSINO WIN!!▽