【GAME46-2】獲物は誰だ!?
――地底の暗がりに突如襲う剛弓の矢! 鳳凰超勇士のゲーム戦士、龍牙・瑞希を襲うは不気味な影。
サザンクロスの幹部『デルタのデクルックス』が、裏プレイヤーから標的を変えて純真な笑みをも殺気に変えて、自ら馳せ参じたではないか!
「アイツがサザンクロスの幹部の一人……! 何でコイツが、B2層のド真ん中に出向いて来てるのよ……!?」
瑞希も強がってはいるが、デクルックスの殺気に恐れを為して声も震わせて驚いている。
「裏プレイヤーである小原の勧誘にミスって、退散したと見せかけて次の機を窺ってたんだろ。そのチャンスもとい獲物が、俺ららしいぜ」
デルタのデクルックスにとって、エンヴィーや小原ら裏プレイヤーを手玉に取るのは、鳳凰堂孔雀の同胞を討つためのエサでしか無かった。
これも孔雀の命令として警戒していたかは定かでは無いが、嫌な予感がドンピシャに当たって、恐れるどころか思惑通りの展開にニヤける龍牙。
「ミスったってのは語弊だね、あれは予備の策さ。僕らの目的は裏プレイヤーの連中と鳳凰堂らを潰し合う事にある。あんたらが欲突っ張らせたお陰でWGCの犬も居ないしねぇ。中々良いアイデアでしょ!」
それを満面の笑顔で言う所が今どき言葉で『サイコパス』の片鱗を覗かせてるのですが、それも自覚してるのがデクルックスの怖い所。殺生行為をも厭わない愉快犯の末恐ろしい一面だ。
こうなると乱暴者だが頭が切れる龍牙とて、心理戦に持ち込もうとしてもブラフが邪魔になるばかり。
(簡単に言えば“何処まで本心か分からねぇ”って所か。見た所孔雀はおろかWGCにも姿を表してない素振りらしいが……狡猾な点で評価すれば、俺様以上に経験値が高いのは確かだろうな)
悪賢さに対して経験則が強みを言う。このようなタイプを老獪と呼ぶんだそうです。
若くして悪事に染め抜いた悪玉は何度も地上のお偉方に挑発をしては出し抜くセンスに富んだデクルックス。龍牙も悪賢さに長けた方だが、環境と経験の差が彼の警戒心を強める。返り討ちにしたくても並大抵では敵わない事を龍牙は既に悟っていた。
「ど、どうすれば良いの……? 私やアンタの力で敵う相手じゃないよ……!」
「んなビビっても始まらねぇだろ。寧ろワクワクしねぇか、いきなりの大物を仕留められるチャンスだってのによぉ……!」
怯える瑞希に対して喧嘩上等の龍牙。性格の相対性理論が出来た以上は当然揉め合いも生まれる。
「あんたバカ!? コイツにWGCの役員やゲーム戦士が今までどれだけ殺られたと思ってるの!?」
そうなんですよ、デクルックスらサザンクロスはゲームで殺生行為も厭わないテロリスト集団。そして彼自身もそれを恍惚に感じる愉快犯となれば、瑞希が怖がるのも道理。それでもソイツを討とうとする龍牙も異常ではあるが。
「イイねぇ〜僕は獰猛なゲーム戦士は好きだよ。じゃそのまま決闘のアンティでも決めよっか」
ちょっと!? 有無も言わさずゲーム決行ですか!? それでも龍牙は引く気ゼロの為、そのままアンティルールの決定に進んだ。
「安心しなよ、決闘相手のアンタを殺しはしないから」
おや、意外と穏便に……
「その代わり……僕が勝ったら青髪眼鏡は殺すね☆」
結局殺す事に変わりは無いんかいッッ!!!!
「何よそれ……!?」
「オイちょっと待てや、戦うのは俺様だろうが。幾ら忍者と言えども、他人を盾に闘う程俺様は腐ってねぇぞ」
そりゃそうですよ龍牙さんは外道じゃなくて、乱暴者なだけです! そこは弁えてますから。
「フォローになってねぇぞ」
「別に標的がどっちでもアンティは変えないから。とにかく僕は、アンタらが苦しむ所を見るのが楽しいからね〜」
「アンタ……ッ、本当にイカれてるわね……!!」
だが瑞希の激昂が飛んだ途端、デクルックスの眼の瞳孔が見開き、殺意の念が増した。
「―――戦う牙を無くしたゲーム戦士なんざ、幾ら吠えた所で悪をも劣るんだよ。戦う術の無い奴が“死”を悟り、ソイツに刃を向けた時の極限の恐怖感! それを観るのが凄く快感なんだよおぉおぉぉおおおおおッッッ」
ゲームウォーリアー史上、最もゲスいゲーム戦士だぁぁぁぁぁ………(絶望)
(なる程、指名手配される訳だ。他のゲーム戦士やシャッフルの奴らも動員させた孔雀の気持ちも分かるわ)
乱暴者ですら冷静になり、若干引く程にゲスいデクルックスに対して龍牙の答えはこうだ。
「悪趣味話はそれくらいにしろ。アンティに戻すけどな、俺様はそいつに承諾は出来ねぇ。確かにこの眼鏡は鳳凰堂孔雀のメンバーだが政策には無関係だ。巻き込むな」
「え……!?」
やはり仲間意識はあるのか、龍牙はアンティの対象である瑞希を庇い、別案を龍牙から持ち出した。
「代わりと言ってはあれだが、例えば“俺様が勝ってもお前を討伐はしない”。それならメリットデメリットも対等になってる。これなら納得するか?」
「別に良いけどこれじゃ妙に釣り合わないなー、……じゃこれならどう?」
と、今度はデクルックスがプレイギアの転送コードからアタッシュケースを取り出した。
「このケースにはWGCやゲーム戦士から奪い取ったアメイジングカードが1000枚入ってる。もし僕に勝ったらこれを報酬としてアンタにあげる。そんで僕が勝ったら、アンタの命とカードを根こそぎ頂くよ。眼鏡っ娘は見逃してやるからさ、これなら公平でしょ?」
……貴方、“公平”って言葉知ってます? カードよりも重い命までもがアンティ対象になってて天秤に乗らないんですが。
しかもこの取引は龍牙にとってかなりのリスクが伴う。殺害されるは勿論の事、鳳凰堂から直伝されたカードデッキもデクルックスのものになってしまうからだ。
決闘の要となるカードを敵に奪われる事は、最悪なケースとなる引き金と化す。龍牙はかなり迷ったが、瑞希を守る為にはやむを得ない選択であった。
「………分かった、呑むしかねぇか。それでアンティにしてやるよ」
「ちょっ、アンタ正気なの!? 余りにも不利すぎるわよ!!」
こんな無茶苦茶なアンティを出されては強気だった瑞希とて最悪の結末を想定してしまう。しかしこれは仕方のない事。瑞希本人が、龍牙の枷となっているのだから……
「何をしょぼくれてんだ眼鏡先輩。俺様は奴の思うがままにアンティに乗ったんじゃねぇ。ちゃんと策はあるからよ、まぁ楽しみに待ってなよ……!」
「……………?」
修羅場にそんな事を言われても、瑞希には何のこっちゃな話。
なにはともあれ、もうゲームを前に対戦相手に背を向ける事は出来ない! いや向けるつもりも毛頭無いだろう。彼らは文字通り殺る気マンマンだからだ!!
「………“戦う牙を無くしたゲーム戦士”。確かにそんなん相手にしてもムカつくだけだが、俺様や剣みたいに牙じゃなくて刃を持った奴相手なら退屈しねぇか?」
「………は?」
「戦っても戦っても飢えてる俺の手裏剣の魂。滅多刺しにするにはもってこいな獲物だぜ、青ビョウタンがよ!!!」
「面白い事言うねー、じゃさっさと殺ってみなよこの僕をさ!!!」
殺気ギラギラ暴言は飛ぶ飛ぶ、こんなダーティーなマッチに誰がした!? いよいよ開幕ブラックデスマッチ! ――――準備は、出来たかッッ!!?
「「アメイジングバトル! READY!!」」
『――――START UP!!!!』
本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




