【GAME45-10】さらば復讐の日々……!!
――残忍の限りを尽くす忍野龍牙の頭上に、降り注いだ隕石拳骨!!!
地底空間の女将・大山杏美が、万事休すに窮すれば通ずと言わんばかりに現れて、絶体絶命であったエンヴィー・小原達の前に参上仕った!!
「ぐ、く……! お前は……!!」
しかし龍牙もタフなもんだ、拳骨が鉄骨にも見まごう鈍い直撃を頭に受けたのに悶絶しながらも立ち上がる気力はアリ。意外と石頭なんですね。
「なんだいなんだい! 私の前から皆揃って消えちまったと思ったら、こんな所で乱闘かいな。勝手に地上モンに喧嘩売ったら倍返しされるって、あれ程言うとるやないか」
女将らしく気丈な構えには龍牙になど眼中無しの大山さん。それよりもこの広大な地底空間の中で、よくこの異常に気付いたものです。
「てめぇ……、コイツらを取り戻しに来たとしても他に探す場所が幾らでもあった筈だろ!」
「ソイツは、私の脚に聞いてみな。気が付いたら何かこっちに来とった」
偶然にしても奇跡にしても都合が良すぎる大山さんの動向。……はて、ちょっと前に“同胞を呼び寄せる能力”が発動してたような――!?
「………へ、へへへへははははは………!!!」
満身創痍に朽ち果てながらも、達成感に満ちつつ下衆い笑い声を放つは小原。と言う事は!
(コイツ……決闘前のPASで暴走仲間を集めてカードを積んでいたのは、大山を呼び寄せる為のカモフラージュか!!)
小原が決闘前で発動させたPAS【イバラキドウジ】は仲間を呼び寄せる能力が主。そのPASスキルに暴走仲間を呼び寄せてカードデッキを創り上げたのですが、それは仮の戦術であった。
小原は元々決闘に勝つ為に挑んだのではなく、負け前提且つ時間稼ぎに徹し、同胞を呼び寄せる波動を地底全域に張り巡らせて、親友の大山を此処に呼び寄せていたのでした!! “能ある鬼は角を隠す”とはこの事を言うのでしょうか!?
(こんな一匹狼タイプがてめーを犠牲に功をなす作戦に徹するだと……? 鳳凰堂からの情報と全然違うだろうが……!!)
それはズバリ、鳳凰堂側が裏プレイヤーを舐めきった結果が起こしたもの。地上からの理不尽を耐え忍び、同胞との絆を築き上げた裏プレイヤー達の底力は果てしなく深いのだ!
「さーて、小僧が舐めた真似しでかしたもんだ。どう落とし前付けたろか?」
「……はぁ? 落とし前付けんのはそっちだろ。元々そこのネチネチ女のエンヴィーと、その仲間達がサザンクロスに唆されて地上のモンに手ぇ出したんやろが。それがどーゆー意味か―――」
「粛清は、鳳凰堂の私情やろ?」
「……あ?」
「WGCが紙契約で地上と地底の仲保っとるんに、そちが普通に対応すりゃ私だって普通に対応するわいな。あとあれやで、ルールとか小難しい事抜きに……
―――私の仲間を散々痛ぶっといて、そのままで済むと思っとんのか。クソガキ風情が」
これは……大山さんガチで怒っておられます(震)。
指だけじゃ飽き足らず手ごと詰められるかというくらいに。龍牙さん、これは調子乗りすぎましたね。
「さっきの拳骨はお前さんへの警告や。もし今これ以上コイツらに何かしようもんなら、その時点で鳳凰堂を契約の守る価値が無い奴と見做す。―――契約や約束は、狡い事を為すための抜け道とちゃうで?」
――本来ならば、龍牙は何もせずに黙って立ち去るのが利口なやり方でしょう。しかし彼は根っからのクソガ……あ、違う。悪童であるからして。何も成せずに帰るのは彼の癪に触ったようだ。止せばいいのに一振り揺さぶる。
「……悪いが、このまま引いても鳳凰堂の沽券に関わるんでなぁ。エンヴィーを渡さねぇならテメーもここで―――」
ヴーーーーッ、ヴーーーーッ
挑発を仕掛ける龍牙の胸元から激しく鳴り響くプレイギアのバイブレーション。緊急事態と同様に強い振動音から反応せざるを得ない龍牙は、興醒めた面で殺気を解いた。
「……チッ、分かったよ。俺様の負けだ」
そーいえば前にも似たような展開ありましたね。【GAME10】の剣との初戦でしたっけ。
「……なんだい潔いやないか。そこだけは多目に見てやるよ。まぁ私の迷惑掛けちまった分はB2・B3層を代表して償う。鳳凰堂の娘さんにそう伝えときな」
「……………あぁ」
龍牙にとっては不完全燃焼な終わり方でしょうが、苛立ちは一旦抑えつつ、潔くB3層への入り口から即刻立ち去ったのだった。
「………さて、と」
だが大山さんの方はまだやり残した事が沢山ある。女将さんとしての責任は重大だ。
「分かってるよな、エンヴィー? それにキザンにターニャにギガントスのデカいのも。自分の犯した過ちは自分でケジメつけて償いな。私は何時までも待ってやるから」
「「「「…………………」」」」
キザン達はサザンクロスに勧誘されたとはいえ、裏ゲームを起こして地上の者に危険を晒した前科持ち。ましてやエンヴィーは、留置所からの脱獄も加えての二度の裏ゲーム加担。何時までの懲役・賠償かは分からないが、それでも大山さんは彼女らの罪をしっかりと償わせつつ、彼女らの帰りを何時までも待つ覚悟だ。
故にここにも一人、待ち侘びていた親友が目の前に居て、再会を果たしたのだから……
「…………よぅ小原。随分遅い再会やったなぁ。待ちくたびれたよ」
「あぁ…………久々だな」
一年ぶりに再会した親友同士。願っていた展開とはかけ離れていたが、縛られていたわだかまりも決闘によって吹っ切れていたようだ。
「エンヴィー達の事、守ってくれてありがとうな」
「……へっ、良いって事よ。お陰で気分も晴れた。メッチャ疲れたけど凄く清々しいぜ……!」
小原の天井を見上げた顔には爽やかな笑顔。だが体力を使い果たした彼女は最早立つ力も残ってなかった。それを見兼ねた大山さんが小原の手を貸し、肩を組んでの二人鬼。
「我ながらカッコ悪ぃなぁ……あたい」
「アホ、それは自虐し過ぎや。仲間を守った勇気はテメーの誇りとして取っとき」
気質に誇りとデカいものを背負った者だけが分かる粋な友情。その様を見てエンヴィーも黙ってられなくなったか、大山さんの所へ駆け寄る。
「……あ、あの、大山さん………ごめん、なさい……! わた――――むにゅッ?!」
嫉妬転じてネガティブな事を口にしようとするが、大山さんによって口を摘まれるエンヴィー。
「ちゃんと罪償ったら、真っ先に私の所へ戻ってきな。寄り道は厳禁や。ご無沙汰序でに呑み会したるわ」
「でも……」
「美人に辛い面は似合わへんで? んな事してまで私はカミングアウトさせたない。ちゃんと面会には来るから、そん時にゃちゃんと聞くわ」
「…………うん…………!」
緑髪なびいて潤む眼のエンヴィー。思いを馳せるように握る大山さんの手を繋いで、閉ざした心の門を微かに開く。そして、小原も……
「なぁなぁ、大山」
「あ?」
「アメイジングカード、余ってんのあったらあたいに恵んでくんないか……?」
「……全然構わへんよ。じゃ私の知り合いにも声掛けたるわ。良いカード持ってんの知ってる奴から」
「………………悪いな」
良かったですねぇ小原さん。例え力が無くなったって、悪い奴から貰わなくたって、仲間の力がまた己を強くさせるんですよ……!!
(なぁんだ……。あたいが心配する事なんか、これっぽっちも無かったじゃんか――――!!!)
―――その後、裏プレイヤーの反乱者、エンヴィー・キザン・ターニャ・ギガントスは自首という形で再逮捕。最終的な判決はまだ未定だが、全員どんな結果でも受け入れる姿勢であった。
また小原恵美は、穂香との決闘の件もあって、特に罪は問われなかった。しかし本人は一部サザンクロスに関わった事もある為に、せめてもの償いに幹部の情報やら加担した経由など洗いざらい話すつもりだそうです。後見人は大山さんで。
かくして、裏プレイヤーによる地上への復讐は一先ず終結の一途を辿る事となる。――――日本酒の一升瓶に片手には盃、二人の鬼は怒りも忘れてほろ酔い気分。
▶▶▶ NEXT▽
―――さて、地底空間の裏プレイヤーの怒りもようやく収まったようで良かったですね〜! ……でも、これで終わりと思ったら大間違い。
先程誰かからの着信で龍牙は退却した訳なんですが、彼を止めたのは誰か。鳳凰堂孔雀さん? またはそのお仲間さん? いやいや別の人だったりしてと想像は広がるばかり。
しかしですね、それをピンからキリまで話しちゃったら、またまた字数膨らんで白けてしまうのが作者の長年の課題。
そこで、その詳細は次回まで割愛すると致しまして。龍牙の間ではまたまた良からぬ展開が待ち構えているのです。ではその“良からぬ展開”とやらを、一足先にクリフハンガー形式で説明するならば!
「―――それは、こーなるんだよっ☆」
えぇっ!? 貴方はサザンクロスの幹部『デルタのデクルックス』!!?
それに相対するは忍野龍牙と、同じく霊鳥殿の仲間で青髪の三編みに眼鏡っ娘。久しぶりだね井鷺瑞希! 最凶と最凶+αが対峙したと言う事は…………まさか。
「どーも、デクルックスでーす。鬼ごっこしーましょ★♪♬」
鬼ごっこの割には、滅茶苦茶殺気に満ち溢れてるのは気の所為でしょうか!!?
正しく『禁じられた遊び』か『危険遊戯』か!? サザンクロス幹部による宣戦ゲームが、龍牙達に襲いかかる!
―――本日は【GAME45/裏プレイヤー・復讐終焉】を持ちまして、読み終わり。また次回ッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽
▶▶▶▶ NEXT GAME WARRIORS ▽
誰が予想したか、時が来たか!?
鳳凰堂・忍野龍牙VSサザンクロス・デルタのデクルックス、アメイジングバトル勃発!!
龍牙の掲げる“歪んだ正義”とは……?
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