【GAME45-7】絆深き同胞の危機を救え!!
――鳳凰堂孔雀からの刺客、忍野龍牙の決闘に破れた妬み嫉みのエンヴィー。最早逃げる術は全て消え失せ、今にも龍牙に拉致されようとしていたその時。裏の同胞達による救出劇が始まった。
サバイバーモードにて鳳凰堂孔雀の見せしめとして霊鳥殿に閉じ込められていた裏プレイヤー三人衆が、決死の覚悟でエンヴィーを助けに来たのだ!
「悪いな、鳳凰堂の狂犬ちゃんよ! 妬み嫉みのエンヴィーはあたいらが貰い受けるよ!!」
龍牙の背後にバルカン砲を押し付けて脅迫する『弾丸豪雨注意報のターニャ』、その隙を突いてエンヴィーを抱えて地底の天井に逃げ込む『辻斬りのキザン』。
そして龍牙の眼前には人間フランケンシュタイン『単細破壊坊のギガントス』。龍牙らにサバイバーモードで打ちのめされた雪辱に燃えつつ、エンヴィーを必死で守ろうと仁王立ちだ!
「………え、キザン!? それにギガントスにターニャまで! 何でアンタらが……!?」
心身ボロボロになり、一瞬だけ気絶していたエンヴィーはキザンに抱え込まれながらも
意外な展開に戸惑っていた。
「おっと今は逃げるが勝ち、三十六計逃げるに如かずだ!」
「オレ、エンヴィー守ル。“破壊”ガ生キ甲斐ノオレニダッテ、仲間ヲ守リタインダ!!」
「オラァさっさと逃げるぞてめーらーー!!!」
ターニャの掛け声と共に、総員決死の覚悟で逃走を企てた!
B7層の霊鳥殿、その処刑所にて監禁されていた裏プレイヤー三人衆。その際に鳳凰堂孔雀らによる大山組の交渉材料としてエンヴィーを拉致する話を聞きつけた彼らは、見張りの目を盗んで脱獄。
龍牙に攫われる前に自分達から攫うことに成功した。これなら決闘によるゲームのアンティには干渉しない!
地上のゲーム戦士達の絆は硬いことは言わずもがな、地底の裏プレイヤー達にも同じ事。様々な不安もある中で互いに助け合って生き抜いた者達の絆も、ダイヤモンド並に硬かった!!
「もぅ〜大山さんが好きだからって勝手な事してんじゃねぇよこのバカ女!! 大バカ〜〜!!!」
「ぐす、だって……だってぇ……!」
地底の暗がりを全力疾走しながらも無事を知り、安堵しつつじゃれ合うターニャとエンヴィー。
彼女らは互いに地上の窮屈なルールを嫌い、裏ゲームを仕掛けて混乱させた者同士だが、それもまた地底での面子を守りたい一心でやった事。その所業を許せとまでは言えないが、彼女らも彼女らなりの友情があった。
「百合ごっこは逃げ切ってからにしろ。とにかくB3層の大山さんの所へ行こう! あれなら鳳凰堂も手出し出来まい!」
「オレ、必死ニ頑張ル!!」
キザンもギガントスもB3層への逃げ切りの為に体力振り絞って駆けていく。
「―――――――逃さねぇよ」
当然ながら、そんな裏プレイヤーの逃走劇をみすみす果たす訳が無い龍牙。眼の瞳孔が開き、今にも襲い喰らうかの如くに飢えた狂犬が、苛立ちに身を任せて裏プレイヤー達を迅速の速さで追跡する!
「ヤバい! 追っかけて来たわよ!?」
「心配するな、あたいの特製城壁がその突破口を防いでる所さ。これで十分時間は稼げる!!」
エンヴィーが震え上がる程に追う龍牙を警戒するが、ここは仲間の頼もしさ。ターニャのPASによって入り組んだ遺跡群の狭い通路や建物を塞ぐ【城壁バリケード】を構築。遮二無二に突っ走る龍牙の移動加速を著しく停止させていく。しかし……
ガシャアアアアアン!!!
これは横暴な突破だ! バリケードの壁を憂さ晴らしの蹴り一発で破壊。装甲弾をも跳ね返す造壁をもぶち壊す狂犬の恐ろしさ!!
「エンヴィィィィィィィ!!!!」
「全然時間稼げてないじゃない!!」
「マジかよ、あのガキ化け物か!?」
時間稼ぎに罠を仕掛け、龍牙の邪魔をすればする程彼の苛立ちのボルテージが更に上がる。“凶暴につき触るな危険”の注意書きがあってもおかしくない!
「とにかく逃げ切るんだ! あともうちょっと、B3層に着きさえすればエンヴィーの事も守ってやれる! ……クソッ、神でも仏でも縋りたい気分だ!!」
エンヴィーを背負いながらも、忍者顔負けの身の軽さで龍牙と必死に距離を取り、その時間稼ぎにギガントスも遺跡の石柱や板を細い道に塞いでのD◯D戦法。ここまでやっても撒けない龍牙の執拗な追跡では、さしもの裏プレイヤー達も神頼みしたくなる程の絶望感だ!!
「ダメ……! どんどんアイツとの距離が縮まってる!!」
「分かってる! あともう少しだ……!!」
曲がりくねり細道曲通りなB2層を超えて、いよいよB3層の階段が前方に見えた。この階段を降りれば追跡地獄は終わる。裏プレイヤー達に希望の光が見え始めた途端、龍牙も射程距離に入っていた!!
「行かせねぇよ……!!!」
龍牙は走りながら道端に落ちていた手のひらサイズの石を拾い、それを脱出直前のキザン目がけて投げた!!
――――ガスッッ
「がっ……?!!」
キザン、不運!! 龍牙の投げた石が鈍い音を立てて首に直撃、その痛撃から担いだエンヴィーを落とす程に急所ダメージを与えてしまった。
「い……痛、ぁ……ッ!!」
「き、キザン……!?」
しかしキザンは負傷した身体を奮い起こして意地でもB3層へ行こうとエンヴィーも連れて這いつくばるように前へ進む。階段までの距離はあと30メートル。この非常事態にターニャもギガントスも加勢する。
ギガントスの馬鹿力で彼を羽交い締めにし、それにバルカン砲で応戦しようとするターニャだが………
「邪魔すんな、つってんだろ!!!!!」
―――バキッッ、ドカッ、ガシャーーン!!
ギガントスの束縛を一瞬で解き、怯んだ所でギガントスの頭を掴み、その腕を一気に地面に叩き落としての脳天落とし。更にターニャのバルカン砲を蹴り弾いて、倒したバルカン砲をターニャ目掛けて投げ飛ばして破壊! 親父がブチ切れた直後のちゃぶ台返し以上に乱暴な!!
――最早彼を止める手立ては無くなった。後は満身創痍のエンヴィーとキザンの逃げ筋を完全に断てば、B2・B3層は鳳凰堂の手に陥る。絶望不回避だ。
「クソォ……! そこまでしてB2もB3層も欲しいのか冷徹政治家め……!!」
「……もう止めて、もういいから! 私のことなんか放っておいて逃げてよぉ……!!」
「んな事したら、大山の女将さんにどヤされるぜ。例えあの忍者に殺されようが自分がやるべき事を成せなきゃ……死ぬに死に切れんからよ!!!」
裏プレイヤー・決死のド根性!! キザンもギガントスもターニャも何度やられようとも這い上がり、龍牙の手足を縛ってでも彼女らをB3層に着かせようとしていた!
「……しつこいのはあんまり気分が乗らねぇな。さっさと退け!!!」
敵を妨害するやり方にしては強引かつ原始的なやり方。ゲーム戦士らしからぬ行動にエンヴィーも焦れったさを感じた。
「何してんのよ! 何でゲームで倒そうとしないの!? そうすればアンティでアイツを……」
「そしたら余計にアイツから逃れなくなる! あの狂犬が俺たちに敵う相手ではないんだ!!」
「だったら……、だったらあんな暴力を振るう奴なんか殺してでも――――」
「人のルール踏み外すほど、裏プレイヤーは落ちぶれてねぇぞ大バカ野郎ッッッ!!!!!!!」
嫉妬転じて、本当に人の道を踏み外しそうになる程の短略思考のエンヴィーにターニャ達は檄を飛ばした。
「幾ら鳳凰堂孔雀が気に食わないからって、地底の暮らしが圧迫してるからって、人として生きる上で絶対守るべきルールを破ったらそれでこそ元に戻れなくなるぞ!! ゲームに負けたって、共倒れに朽ちたって……『住めば都で気楽に生きろ』って大山さんが言ってただろうが!!!」
「………………ごめん、なさい………!」
間違いを犯す前に、謝る事が出来る事が如何に勇気の居ることか。短略的な割にプライドだけは高いエンヴィーが、ようやく同法の前で間違いを認めた。
しかしそんな中でもルール違反ギリギリに裏プレイヤーを痛め付けているのが忍野龍牙。悪に栄えた試しが無いという言葉がありますが、果たしてこの横暴な攻防を集結させる引き金は何処から引かれるのか?
▶▶▶ NEXT▽
「おぉ、何という事か。僕達が引き起こした裏ゲームを逆に出汁にして愛しきB2層を狙ってくるとは……! 悪いのは悪名高きサザンクロス幹部のこの僕なのに、このままでは嫉妬娘ら諸共懲罰房行きになってしまう。嗚呼、可哀想だなぁ〜〜〜!!」
うわぁ……白々しい演技! こんなんじゃ小学校の出張劇団でも雇えませんよ、心が真っ黒クロスケなデクルックスさん!!
「いーじゃない、僕は舞台演技興味無いし〜♪ 過ぎた事を気にし過ぎると脳みそ腐るから気にしない! 結局、弱者が一番のゴミって事だもんね〜。ね、小原さん?」
「………………」
――遺跡群にて追走劇を高みの見物で見ていたサザンクロス幹部『デルタのデクルックス』と、何の因果か彼の前に現れた『小原恵美』の二人がこの非情な戦いの結末の鍵を握っていた訳なんですが、その模様はまた次回までのお楽しみに……!
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




