【GAME45-6】裏プレイヤー・万事休す!!
――忍野龍牙が、満身創痍のエンヴィーを霊鳥殿に連行させようとした真の理由。鳳凰堂の傘下であるB1層にて裏ゲームを起こさせた責任を問う為にエンヴィーを人質にしようと考えた。
このままではエンヴィーを慕う大山杏美ら裏プレイヤーの仲間も只では済まない。そう思った彼女は必死の思いで抵抗し、龍牙からのアメイジングバトルにも受けて立った。だが………
PASの力も尽きたエンヴィーが、龍牙と戦った所で一目瞭然。かといって戦いの様子を全カットというのも寂しいので、終盤だけでも説明するならば。
『カスタム・ツールカード、【嫉妬の底力】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<カスタムツール・カード>
【嫉妬の底力】EG:①
属性:緑 装備:ユニット
・効果:①このカードを装備したユニットは
AP200アップと[貫通]を得る。
②このカードが墓地に置かれた時、5秒後に
持ち主の手札に戻す。
◎――――――――――――――――――◎
これはエンヴィーが倭刀と闘い、猛威を震わせたキーカード。貫通効果とAP強化の装備に加え、墓地に置かれてもまた手札に戻るしつこいカード! それを龍牙はこう対処した。
『カウンター・レスポンス発動。――アクションカード、【金縛りの術】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<アクション・カード>
【金縛りの術】EG:④
属性:黒
・効果:プレイヤー1人を対象にする。
対象となったプレイヤーは30秒間
カードの発動・攻撃・移動は出来ない。
◎――――――――――――――――――◎
「はぅ……ッ?!」
《嫉妬の底力》でユニットを強化させた途端に全身が石のように固くなったエンヴィー。《金縛りの術》で硬直させた龍牙は追い打ちをかけるようにカードを連続発動させる。
『ツールカード、【次元の連鎖進撃】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<ツールカード>
【次元の連鎖進撃】EG:③
属性:黒
・効果:相手フィールド上のカードを
1枚選択する。そのカードとデッキから
同名カードを除外空間に置く。
◎――――――――――――――――――◎
「『嫉妬の底力』を除外しろ」
「―――!?」
エンヴィーのユニットに装備された《嫉妬の底力》が墓地ではなく除外空間に追放。しかもそのカードの手札回収能力は墓地にある時に発動するもので、除外空間に置かれた3枚のカードは、どうあがいても回収が出来なくなった!
「し、嫉妬のコンボを……根元から断つなんて……!!」
それで無くてもエンヴィーは《金縛りの術》で束縛されて逃げる事もカードを出す事も出来ない。それをいい事に龍牙は我が物顔でヒタヒタと音も無く忍び寄り、首を回しながらどう倒そうか舌舐めずりだ。
―――バキッッ!!
「あぁっ?!!」
えぇ!? 女であるエンヴィーを容赦なく蹴ったよこの人!!
武器カードは装備されてないが、パンチやキックといった物理攻撃なら50ダメージは通るこのルール。それを承知でゲームを良い事に、渾身の力でエンヴィーを蹴り倒す龍牙。更に彼の非道ぶりは止まらない、エンヴィーの胸ぐらを掴み上げて……
「トロクセェ事してんじゃねぇよ、ネチクソ女……!」
―――バキッ! ゴスッ、ガッ!!
嫉妬ばかり垂れ流しネチネチ性分のエンヴィーに内心頭に来てたのか、顔面目掛けて渾身の拳で殴打する龍牙。早い話が顔面パンチ、良い子は絶対に真似しないでお願い!!
「ッ…………!!」
更に龍牙はこれでもかと、エンヴィーを仰向けに押し倒したかと思えば、片脚を腹に乗っけて虫ケラでも見るかのように綺麗な顔が崩れた彼女を嘲笑う。
「俺達が妬ましいんだろ、お前ぇ……! もっと俺様を妬ませろや、楽しませろやこの雑魚がぁぁぁぁぁ!!」
ドカッ――――!!!
決闘を仕掛けても、いまいち楽しめない龍牙のイライラはピークに達した。非道のダメ押しに龍牙は倒れているエンヴィーを止めに蹴り飛ばす。HPが残り僅かであったエンヴィーはゲームも実際の状況も既にノックアウト状態だ。
〔エンヴィー HP0 KNOCKOUT!〕
「………ぁ、かはっ……!!」
今にも血みどろを吐く寸前のエンヴィー。これも鳳凰堂孔雀から下された制裁なのか。それとも龍牙の八つ当たりなのか。そうでなくても最早彼女に抗う力など何処にも残されていない。
「………ったく、大人しくしてりゃこんなオプション付かずに済んだのによ」
最近見方が変わったとはいえ、本性の方はやはり凶暴で恐ろしい龍牙です。何しろ倭刀が辛勝した相手を、枯渇状態とはいえノーダメージで圧勝したのですから。
そして決闘に課せられたアンティルールは『大人しく霊鳥殿に付いてきて貰う』事。ここまで破れ果ててはもう抗う事は出来ない。それがゲームのルールだからだ。
「………つ、付いてくるのは、構わないけど無駄な事よ。私を捕らえた所で私達の女将にはなんの脅しにならないのよ? B2・B3層を仕切ってる大山組の長が、私の身柄一つくらいで交渉を左右される筈がないわ!」
「んな寂しい事言うなよ、お前一人でも大山杏美姐さんなら助けに来るだろうぜ」
「会ったことの無いアンタに何が分かるのよ!!」
「それを断言するのもお前じゃない。―――鳳凰堂孔雀御本人がそう断言したんだよ」
「――――!??」
「大山杏美は義理堅い女将さんだ。お前でも絶対に見捨てず、どんな無理難題押し付けようが絶対に守る。それも含めて全て掌握済なのが鳳凰堂様って訳よ」
「そんな………!」
エンヴィーは気付いていないが、鳳凰堂孔雀のPASは『孔雀の眼』を始めとする人心掌握術に長けた能力。更には地底空間をも知り尽くしている彼女が、B2・B3層を仕切っている大山杏美の心中その他諸々を知らない訳が無かった。
―――地上にて余所者扱いされて地底空間に追放されたエンヴィーを、大山杏美は何一つ嫌な所を見せずに受け入れた。
時代遅れな考えにも鞭を入れて、小難しいWGCの契約書にも目を通しながら二つの層の治安を守っていた女将。エンヴィーはそんな彼女を少しでも助けたかった。助けたかった、筈なのに。
自分の勝手な行動が、全てを崩す羽目になった……!
更にエンヴィーの脳裏に蘇るのは、一年前に鳳凰堂に入れ知恵した際に交わした口約束。
『今後とも私は、貴方方B2・B3層のゲーム戦士、並びに大山杏美さんの意志を尊重するよう務めさせて頂きましょう。――――我々にその刃を向けたりする事をしない限りは』
――――我々にその刃を向けたりする事をしない限りは。
我 々 に 刃 を 向 け た り す る 事 を し な い 限 り は。
エンヴィーの妬みが地上に向けられる事は避けられないと悟られたのだろう。鳳凰堂孔雀は既に、裏プレイヤーの負の感情をも掌握された時点でゲームオーバーであったのだ……!
「―――――ぅ、グスッ、ぅううぁぁあああぁぁああああ〜〜〜〜!!!!」
何から何まで全て彼女に踊らされていた事に気付いたエンヴィーの眼にボロボロと大粒の涙が零れ落ち、その悔しさは慟哭の叫びと化した。
「…………みっともねぇぞ、大の大人が泣き叫びやがって。いくら鳳凰堂でもお前や大山を殺しはしねぇよ」
おそらく鳳凰堂の交渉の中身は、B2・B3層をも霊鳥殿の傘下にさせて、これ以上裏プレイヤーに好き勝手させずに制限を掛ける事でしょうか。地底と地上の共存を野望に持つ鳳凰堂ならばやりかねません。
「……どうだろうな。殺しはあり得んでも……やっぱ追放かねぇ。それこそマントルか地核の近くに放り込むとか」
いや、んな事したら危険なゲーム戦士でも死にますよ!!?
「どっちにしても同じ事だろ。てめーも泣いてねぇでさっさと霊鳥殿に来い。アンティ違反で消滅したくなければな」
「い、いや……、来ないでッ!!!」
この場だけでも薄いなんちゃらが出来そうな展開、とか阿漕な考えをしている場合じゃない。
もうどう転んでもエンヴィーには霊鳥殿に拉致られる選択しかない、一巻の終わりにXYZとまさしく『最早これまでか』の文字が良く浮かぶ。
「誰か…………助けて………!!!!」
「さっさと来ねぇとブチ殺――――」
―――――ガチャッ
………その刹那だった。龍牙の背後に無機質な気配とセーフロックが解除される金属音が聞こえた。
「はいストーップ。動いたら有無言わさずにバルカン砲の雨が脳髄から降るぜー☆」
「………………はぁ?」
振り向けば、そこには大型バルカン砲を背負って構えるトリガーハッピーな女! サバイバーモードにてゲーム戦士に驚異を振るった裏プレイヤー『弾丸豪雨注意報のターニャ』じゃないか!!
そして再び前の方へ向き返せば、そこには弱りきった嫉妬女の姿はなし。
「え、ちょと、オイッッ!!!??」
獲物を見失った事に予想外の反応を示す龍牙。そのターゲットは前でなく、天井に居た!!
「悪いな忍者殿、妬み嫉みのエンヴィーはわたし達が頂いていくぞ!!」
天井の遺跡群にて、エンヴィーを抱き抱えているのは同じくサバイバーモードで見せしめにされていた『辻斬りのキザン』、更にボディガード役割で登場は『単細破壊坊のギガントス』だ!
「…………なる程、仲間の仇討ちってかぁ?」
「そーゆーこと! あたしら裏プレイヤーの仲間意識、伊達じゃねーぞ!?」
――――さぁ、果たして裏プレイヤー側の連携プレイでエンヴィーを救う事が出来るのか。悪側にも尊い絆あり、歪んだ正義と秩序で縛られた相対性関係に覆すのは果たしてどっちか!? ゲーム戦士は誰もが主人公、次回に笑うのは果たして誰だ!!?
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




