【GAME45-4】嫉妬の先に募る後悔!!
――時を戻して一年後、即ち現在の地底空間・アンダーグラウンドB2層。
事態をもう一度説明するならば、WGC並びに鳳凰堂孔雀の命により、ゲーム戦士達を揃えて裏プレイヤーを退治しようとしている所。
今の所解決したのは、シャッフルオールスターズの大森穂香が、B5層にて決闘を行い成敗……というよりも、穂香の懸命な説得によって小原恵美を悪事から手を引かせた事のみ。
では残りのゲーム戦士達はどうなっているのかと尋ねるならば、この後の展開が物語る訳であります。
「―――おっかしいな、この辺りかで大森穂香とその他エトセトラが居ると思ったんだけど……」
荒れ果てたB2層を、金かコネかで釣って同行しているモブのゲーム戦士と共に探索しているのはそう、只今絶賛反抗期中のショタ黄金虫・綾小路優ですよ! まだ穂香さんらに確執を持ってるみたいですね。
「うるさい! 僕はあのサバイバーモードでドロップアウト出来そうな所を大森穂香に邪魔されたんだ。この裏プレイヤー討伐で絶対手柄立ててやる」
なんてまぁ、器の小さい逆恨みなんでしょうね!
「それよりも優さん、あっちの方にも探しましたけど誰も居ませんでしたよ? もしかしたら更に深い所へ行ったんじゃないすか?」
モブさんその通り! もう既に穂香や裏プレイヤーの小原はB5層に辿り着いており、既に決闘も終わって一件落着した所。今更来た所で何しに来たのって話ですよ! おっとそれは優さんにはナイショですよ。
(正直、三流の実力には信用はしてないけれど……大それた裏ゲームを引き起こす奴らがあっさりと痕跡を残すとは思えない。少し行動が遅かったか)
生意気この上ないですが、これでも優はサバイバーモードのβテストを制したゲーム戦士。頭の回転に至っては中3の割に冴えてる方でした。
「とにかく、もう少し探るよ。こんなお手柄のチャンスをみすみすあいつ等に渡してたまるもんか」
(チェッ! サバイバーモードで逃げようとした人が良く言うよ)
(でもどーせ協力するなら穂香さんのが良かったかな、あの姉ちゃんおっぱいデカそうだし)
「なんか言ったか?」
「「いえいえ何でも御座んせん!?」」
モブさんも考えてる事は我々と同じでホッとしました。そんな名誉に貪欲な優に対し、その欲を利用しようとしていた御方が彼に接近してきた。
「貴方は……もしかして綾小路優さん? こんな所で何をなされているのですか」
「へぁ!? あ、貴方は、鳳凰堂孔雀さんじゃないですか!!?」
うわビビったぁ!! ……もとい、優の前にひっそりと姿を現したのは畏れ多くもWGCの副管理者・鳳凰堂孔雀じゃないですか!
「孔雀さんこそどうしてこんな無法地帯に一人で……?」
「奇遇というものですよ。たまたまこの辺りで探索する貴方達の姿を見かけて。恐らくは裏プレイヤーの痕跡をお調べになってるのでしょうが、その必要はありません。既にこの層は探索済です」
「本当ですか!?」
これぞ鳳凰堂が指揮するWGCの組織力というものでしょうか。……しかし、そんな孔雀が事もあろうに優に接近するとなると、また何か企んでそうな予感が激しく感じられますよ。ねぇ?
「それにしても感心です。討伐指令から直ぐに前の裏ゲームの原因を突き止めようとするその行動力、積極性に溢れてますね優さん」
「えっ!? いやぁ〜、それほどでもありますけど!」
やれやれ、優さんってば煽てに乗られちゃって分かりやすい!
「しかし、その意気を消沈させて申し訳ありませんが、裏プレイヤーを牛耳っているサザンクロスの幹部・デルタのデクルックスを追うのは諦めた方が良さそうです」
「どういう事ですか?」
「この地底空間のウエストOSエリア以外の別の裏プレイヤーの情報も確保するべく、是非とも優さんにはその中心に立って欲しいと思い、私自らが馳せ参じたのですよ。―――貴方は未来のゲーム戦士を担う英雄なのですから!」
……あのー、私だけですかね? 物凄ッッく胡散臭く感じるのは。読者の皆様もそう思います?
(確かにここらに裏プレイヤーは居ないみたいだし、ここは孔雀さんの意を立てて名声を取るのが効率が良さそうだな)
ダメですねぇ、私欲に眩んで勧誘に疑惑すら持っていませんよ優さんってば。
「分かりました。僕らも孔雀さんに付いていきます」
「えぇ、是非ともお願いします」
孔雀の優しい笑顔の裏では、例の“孔雀の眼”による読心術が行われている事も知らず、優は欲の誘惑に誘われるように孔雀の元へと付いて行ったのだった。ご愁傷様……
「あのー、Mr.Gさん?」
ふぇ!!? 何でしょう!?
「貴方私が出るたびにビビったぁとか、私に色んな陰口言ってましたよねぇ??(超威圧)」
ひえええええ!!!! 後生です孔雀さん許してええええ!! 早い所場面変わって、早く!!!
▶▶▶ NEXT(FASTING)▽
はぁ、はぁ……!! ひゃぁ怖かったよぉ……! 背筋冷え切ってるし、ホントに恐ろしい人ですよあの人!!
「……ぁ、はぁ、はぁ……っ、く……ッ!」
……おや? 私と同じように息を切らしている方がいますね。というよりもあちらの方が疲労困憊、命からがらで必死な息遣いです。ちょっと様子を見るならば。
「もう、ダメ……、PASの力も使い果たした、歩くだけでも辛い……」
何ということでしょうか、B2層の遺跡エリアにて、石柱にしがみつきながら必死で動こうと足掻いているのは『妬み嫉みのエンヴィー』ではありませんか!!
「のんびりなんてしてられない……早く、B3層に帰って……、大山さんの所へ帰らないと……!」
―――思えばエンヴィーも、一年前の鳳凰堂に入れ知恵をした裏切りから、サザンクロスの裏ゲームに加担したのを機に散々な事だらけでありました。
アメリカ村での裏ゲームから、倭刀との決闘にも破れて警察に逮捕。その後脱獄はしたものの、デクルックスに唆されて第二の裏ゲーム、ギガント加賀ら地底空間の人々らも巻き込んだ嫉妬の決闘も、穂香達ゲーム戦士に阻止。
その後で小原に力を与えるべく、PASのエネルギーを分け与えた直後に龍牙によってサバイバーモードに転送。ゲーム戦士達に三度も決闘を挑まれ敗れる始末に、既に彼女の心身はボロボロであった。
何とか自力でも慕っている大山杏美の元へ戻ろうと、必死に身体に鞭を振り、B3層へ戻ろうとするが……
(……………今更帰った所で、私に何が残ってるの?)
今までエンヴィーが背負った片棒の重さからか、必死に動こうとする足が急に止まった。
(私は今までに孔雀に反抗する為に裏ゲームを二度も仕掛けた。絶対に彼女は私を許さないわ。そんな私がおめおめと逃げ戻った所で、大山さんや他の皆に迷惑をかけるだけじゃない!)
嫉妬の禍々しい圧から、勢い任せに反政行為を行ったエンヴィー。今更その後始末に責任を感じても、時既に遅しであった。
「私、今まで何やってきたんだろう。大山さんや小原に償いたかったのかしら。もう妬む気にもなれないし、訳わからなくなってきたわ……」
遂に自暴自棄にまで陥ろうとしていたエンヴィー。口先では『自分の意志で』裏ゲームを仕掛けたつもりでいた彼女だが、結局はサザンクロスや鳳凰堂に良いように掌で踊らされて利用された操り人形でしかなかった。“軽率”以外の何物でもありません。
自分の立場すらも曖昧になってしまった彼女は、その傍らで自分が忌み嫌っていた『弱い者の立場』の意義も理解するようになった。
「……今まで私は、妬みとか嫉みにひたすら耐え続ける奴の事をずっと見下してた。大した知性も能力も無い外れ人間が、努力ばっか積み重ねて足掻いてる事すらも無駄と決めつけてたけど。
―――それって物凄く難しくて、相当覚悟がいる事だったのね……」
その者とはズバリ、エンヴィーと二度も鉢合わせたゲーム戦士の池谷倭刀の事ですが、弱い立場であった彼も含めて弱者を見下していた彼女は、現に都合の悪い事から逃げるようにPASを暴走させ、結局は堕ちる所まで堕ちていった。何という皮肉か。
「……いけない、疲れて弱気になってるわ。今は一刻も早く帰らないと――――」
「よぉ、お嬢ちゃん。地底の遺跡に一人でえっちらおっちら歩いて、歴史紀行かぁ?」
「!!? あ、アンタは……!!」
……………これは極限に不味い事になっちゃいました。鳳凰堂孔雀の懐刀(取り扱い要注意)、黒影の忍者・忍野龍牙が来ちゃいましたよ!!!!
あ、コラコラ!! 誰ですか香典持ってきてる人は!!! エンヴィー宛ですか!? 失礼千万ですし死んでませんよまだ!!
「アンタも失礼よ」
……仰る通りで。
エンヴィーに待つのは処刑か制裁か? それとも別の何かか? 気になる目的はまた次回。――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




