【GAME45-2】交差する裏プレイヤーのエゴ!!
――さて、ここからは一旦海藻サラダ……じゃなかった、回想シーンに入りますよ。悪役側である裏プレイヤーにも、我々に同情の余地がある場面が御座いますからね。
“勧善懲悪”なんて綺麗事は存在しませんこの作品!
一体何処に本当の正義があるのか、是非じっくりと読んで自分の価値観と照らし合わせて考えて下さいませ。ではっ!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
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――今から一年前の地底空間・アンダーグラウンド。
人々との人情が滲み出つつも、時代に淘汰された空間、そのB3層に昔ながらの手押し屋台が一軒――――
『『『だーーーはっはっはっはっっ☆☆☆』』』
ちょ、ちょっと!? 開始早々へべれけにバカ騒ぎしてる人物がありますか! 裏プレイヤーの女将さん、大山杏美さんに呑み仲間の皆さん!!
『何らいアンタは? 私らの回想シーンに土足で入り込むじゃないよアホゥ』
呂律が回ってないじゃないですか大山さん。まぁ過去話の垣根を突き破って乱入した私も悪う御座んしたけれども。
『まぁ良いさね、こんな楽ひぃ宴も無いってもんやさかい、そこの語ってる講談師の兄ちゃんも一杯やっか?』
いえ私は結構です……。随分まぁ出来上がっちゃいまして、アンタら相当呑みましたね?
『んなこたねぇべやな!!! ワシゃここらの酒ぇ3升ばか呑んだだけだべやしかしぃ。……オイ何で兄ちゃん分身してんのや? 忍者かお前』
『アホかお前かて何かびろーんと顔伸びとるで、ゴム人間か、10人仲間集めに海原行くんか!』
3升は呑みすぎぃ!! てかアンタら揃って幻覚見えてますよ!!? 現実に戻ってぇ!!!
……てな具合で何でか、回想シーンなのに時空を超えて、語り手と登場人物との掛け合い漫才していればその時。私に代わって酔い潰れの大山さん一同を抑えようとする人物が一人。
『アンタらいい加減にしなさいよ、呑み過ぎ。あと大山さん口元汚れてるじゃないの』
その人物は何と、美人なのにネチネチ嫉妬に喧しい『妬み嫉みのエンヴィー』ではないか。地底空間で唯一親しみを持つ大山さんだけは、ツンデレよろしく面倒見が良いオカンになって
『うっさい語り手。妬み殺すわよ』
……何で私ってば喧嘩売られやすいんでしょう?
『全く皆してダラシないわね……私先に帰ってるから』
『あーいよ』
裏プレイヤーを束ねる鬼の魂を持つ大山女将とて、酔えば陽気な御姐さん。呆れ返るエンヴィーを見送って、再び手にした盃を口にしようとすれ…………あれ、どうしました大山さん。
『…………ヤベ、気持ち悪くて養老渓谷リバースしそうや』
『ぅぷ、ヤバイヤバイヤバイうちも戻すて!! ちょ、便所無い!? 便所ォォォ!!!』
…………え、待って。何で私のとこに?? ちょ、待って!!? 私の尺台は便所じゃないですよ!!!? ――――あ。
「「「ぶるぉぉぉええええええええええええええええええええええええええ」」」
ギャーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
※小説とはいえ、お見苦しい所をお魅せした事をお詫び申し上げます。by 慶
▶▶▶ NEXT▽
……………………あ、場面変わってます? あの、ちょっと気持ちが落ち着くまで待って。お願い。(超落ち込み中)
―――――はいっ!! 気持ち切り替えまして、さっきの茶番は読んでいません、無かった事に致しまして!!!
代わって舞台はB3層の『やさぐれ橋』という下は河辺の橋の上。先に屋台から帰ったエンヴィーもまた、大山さんに酒を勧められて相当呑んでいたようで、時折千鳥足のフラフラで橋を渡る。
『全く、アイツらのバカ騒ぎのお陰で全然お酒が抜けないわ』
等と愚痴にはしながらも、心の底では大山さんや仲間と呑めて気持ちが軽く、無意識に鼻唄までしちゃってる。暗闇の夜に美人が出歩けば不審者に狙われやすいがここは無法の地底空間。元々変人揃いの地底に慣れてるのか、エンヴィーには用心は要らない心配か。
………と思いきや、橋の向こう側にて何やら人の居る気配が。
暴走族のような白の装束に白鉢巻が夜の暗がりでも良く目立つ。何を隠そうそのお方は、大山さんの古くからの親友であり暴走族『大原族』の女総長、小原恵美ではありませんか!
『何だい、誰かと思えば大山と最近つるんでる妬みの小娘じゃないかい』
『……誰よアンタ。会って早々失礼な』
この時はまだ小原は鳳凰堂孔雀によって精神崩壊をする前。従って目の輝きから尖りを魅せていてPASの方もギラギラの覇気を醸し出している。そしてこの時はまだ、エンヴィーと小原は初対面の時でありました。
『私は小原恵美。関東で暴走族をやってる『大原族』の総長さ。大山の方から話は聞いてるだろ?』
『…………いいえ』
とは否定したものの、不信感故かさり気なく嘘を付いたエンヴィーであった。
『まぁ聞かなくても良いさ、あたいは丁度その大山に用があるんだ。何処に居るか知ってるかい?』
『知らない』
またまた当たり前の様に嘘で誤魔化したエンヴィー。
『語り手がそう言ってるけど?』
てか小原さんまで何で私の語りに干渉してくんですか。
『……じゃあ言い方を変えるわ。アンタの態度が気に食わないから、私は居場所を言いたくないの』
『正直な奴だねぇ。でもアンタの後ろにいる御方は誰なんだい?』
と何をほざいているのかとエンヴィーは即座に振り返れば、奴が……いやいや、大山さんが後から来た。
『ふぃー吐いたらスッキリしたぁ☆ エンヴィー、やっぱ私も帰るから一緒に行こうやー』
そりゃスッキリするでしょに、私の大事な尺台に吐いたんですから(大泣) ……とまぁ内輪の話はともかく。キーパーソンの登場のタイミングの悪さにエンヴィーは頭を抱えた。
『よー! 大山久し振りぃ!!』
『……おやおやまぁまぁ! デカイ図体が誰かと思えば小原やないの!! どないしたんよ?』
数十年来の親友同士が久々の再会。大山さんにとっては嬉々としたサプライズだが、エンヴィーにとっては嫉妬の種であった。
『………ちょいと真剣な話でね。長話するとまた尺長くなるから語り部サポートで説明するよ』
―――はい、私を便利道具扱いして結構な事ですが御説明を。
早い話が皆様も存じておりますように、WGCの頂点に登り詰めている鳳凰堂孔雀と、二代目代表取締役社長・本宮マサト若社長を倒そうと無謀な事を小原は企んでいたのです。
『……じゃ早い話で私も言うけど、過激でヤバ過ぎやしないかい? それ』
と、大山さんは申しております。
『幽亜も鳳凰堂のガキに謀殺されたんだよ。あんなガキにやられるタマじゃない奴なのに』
『いや知らんけど、幽亜って誰よ?』
それは我々も誰よ?と言いたい所ですが残念、まだ説明する情報は追いついていません悪しからず。しかし小原にとっては同胞にも似た人物であった事は確かだ。
『つまり仇討ちって事かい。悪いけど私もここ数年で裏プレイヤーの世話やらで背負うものが出来ちゃってね。止めはせぇへんけど賛同は出来へん』
大山さんにとってそれが賢明な判断だったのかはさておいて、仇討ち以外にも小原には襲撃する為の動機がまだまだあった。
アメイジングウォーズからのWGCの改革によって社長が代わり、更には鳳凰堂も加わってからは地上の情勢がガラリと変わったそうで。ゲームでの実力至上主義に拍車が掛かっただけでなく、弱者をもゲームの戦力を付けて脅威から排除させる状態に進んでいた。
小原にとっては暴走族の立場からして、己を恐れる者が一人も居なくなる事に危惧していたのです。
『……ゲームでの強さが、アンタのような暴走族や、私のような極道のように力で捻じ伏せる者の存在意義が無くなる事が嫌。って所かい』
それが、ゲームに情勢を支配される時代へ変わった影響なのでしょうか。となると、古くから言い伝えられている神や幽霊ですらもゲームでなら倒せると錯覚し、何れは力こそが正義と考えるのではないか……というのは考え過ぎでしょうが。
『でも嘘とは限らないよ。地上を見れば一目瞭然さ。――――WGCが悪い方にルールでガチガチに縛られた世の中が、本当の自由と平和と言えるのかい?』
『…………うーむ』
この一理ある小原の考えに、大山も深く考え込んだ訳なのですが。小原は何故にこの後起こってしまったWGCイベント襲撃で、精神崩壊まで叩き落された結末に陥ってしまったのか?
実はこの掛け合いの裏では、大山も小原も気付かなかったドス黒い闇があったのです。その詳細はまた次回までのお楽しみに。
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




