【GAME44-5】知恵と力のプライズハンター！！

　――狙った景品は鷲掴み！！ ……なんて恋心ゲットみたいな乗りは置いといて。

『グラップルアーム』のＰＡＳを操る翔破のクレーン捌きはテクニックというよりは、アームの強さをグレードアップさせて、意地でも掴んでやろうと豪快に掴んで離さない。

　高難度のフィギュア景品を箱を潰しながらも一発で獲得、ゲットした景品の差からして桐山剣を圧倒した！

(確かに、フィギュア箱にライオンのぬいぐるみと来りゃシュークリーム二個取った俺なんか目じゃねぇだろうな。何かで挽回しなけりゃ……！)

　こうなったからには剣も闘争本能に火を付けた。未だ100円未満しか使っていない所持金で諦めるのは早い。店内に用意されている景品のラインナップから一回で狙えそうなものを狙う剣。そこで目に付いたのは、

(カプセルか……)

　それは特殊な筐体。上段・下段の二つの板が斜面のある坂になっており、上の方に真っ黒なカプセル達が突起によって転がるのを止めております。そこで動かすのがアーム一本爪・フック状のクレーン。

(そのクレーンで歯止めされているカプセルを動かして、両端のアウトゾーンを避けて落とせば獲得なんだが……カプセルの中に何入ってるかだよな)

　遊び心溢れる筐体、しかし不確定な景品と投下口の縮小と失敗のリスクも大きい。それでも剣はこれに焦点を当てた。百円硬貨をクレジットインしての起動。

「……っし、ココ！！」

　位置はカプセルより前、どっちかと言えば爪が稼働する所を利用して動かすのがセオリーだが、剣は爪(・)の(・)裏(・)を狙って、降下と同時にカプセルを転がさせた！ そしてそのまま出口へシュート！！

「カプセル取ったぁ！！」

　さて、肝心のカプセルの中身は……

「…………派手な色したスーパーボールやん」

　景品の質に難色を示す剣。一応みのり達にも「いる？」と聞いてはみたが、二人共首を横に振るだけ。ハズレを取ってショックを隠せない。

「チクショウ、次、次！」

　▶▶▶ NEXT▽

　翔破に遅れを取らんと奮闘する剣。クレーンで攻めるのではなくコチラは亜種と言いますかスコップ型・メリーゴーランド型等、中には『ラッキークレーン』と呼ばれるパワー強めの三つ鈎クレーンでカプセルを掴み取れる筐体でお菓子やらミニな雑貨等を獲得していく。

　特に剣の能力が問われたのが棒型クレーン。筒状の棒を操作するクレーンを細い隙間に通して壁奥の景品を押し倒せば景品ゲットのタイプ。スロットゲームの目押しが得意な剣はスレスレで壁の隙間をスルーさせ、先に待つバスタオルの景品を取った！

「まぁ量は妥当だよな。量(・)だ(・)け(・)は(・)」

　対して翔破はシンプルにクレーンでゴリ押しする。それも大型のぬいぐるみには首根っこを掴んで取り、箱状景品は包をボコボコにさせながら強引に取る。気づけば５個全てがその類でゲットしており、お菓子や雑貨で量を賄う剣とは圧倒的に差が見えていた。

(一回のクレジットだけで確実に取る翔破さんが余りにも強すぎる。それにゲットした景品が難易度の高いやつばっかやから、リードしようにも俺の実力じゃ一回で仕留められへん。何か良い筐体があれば……！)

　クレーンゲームは元々運や一手一手のセンスが問われるゲーム。アームの力で押す翔破に対抗するには、剣は持ち前の豪(・)運(・)を武器に戦うしかない。

　何か、ぬいぐるみやフィギュアにも負けない景品を取れる筐体があれば……と剣は願った途端、審判である神奈さんがある提案を出した。

「……どうもこれじゃ味気ないね。翔破に贔屓している感じだ。それなら……！」

　と、神奈さんが懐に取り出したのは何やら高額な箱。それで何をするのかと思いきや。

「剣、翔破！ ちょいと二人にビッグチャンスを与えてやるよ。私が指名する筐体にクリアした方からレ(・)ア(・)景(・)品(・)を私が奉仕するよ！！」

　その報酬なる箱の詳細を二人は確認するや否や、剣は驚愕した。

「――――！！！！ 嘘やん、【プレイギアＷＡＴＣＨ(ウォッチ)】！？」

　桐山剣が驚いたこの【プレイギアＷＡＴＣＨ】。実はプレイギア系統の最新作で、腕時計型のゲームをサポートする万能器具なのだ。

　スマートな腕時計なのに、内蔵電池は最大120時間使用可能。更に最先端のＯＳによってゲームをサポートするアプリケーションも５０種類用意されているゲーム戦士の為の腕時計！ また携帯のプレイギアと連携して、プレイヤーのステータスや健康状態をシェア出来る優れもの。

「俺達ゲーム戦士のリクエストに御誂(おあつら)え向きな最新器具が景品とは恐れ入ったぜ。それに……」

　肝心なのはそれを巡って神奈さんが指名するゲームのタイプだ。

「剣にはチャンスと思うであろう運(・)を重視した筐体、あれがそうさ！」

　神奈さんが指指す方向は何と、クレーンゲームの中でも特に運要素が試されるというピ(・)ン(・)ポ(・)ン(・)玉(・)型(・)であった！ 因みに筐体内の本来の景品はアニメフィギュアグッズである。

「カゴの中にはいっぱいのピンポン玉。それをクレーンで掬って、手前のたこ焼き機に当たりの穴を入れれば景品が手に入る奴や。完全に運ゲー」

　何しろクレーンで救ったピンポン玉を落とし、降下位置やバウンド次第で何処の穴に入るか分からない。しかも高難易である事を示す設定が……

「穴だらけの業(・)務(・)用(・)と来たもんだ！！」

　縦が６つ、横がなんと１２個の穴が筐体詰め詰めで設置された特殊筐体！ その中で当たり穴が一つ、中央の一番上の穴にセットされている。

　確率からして１／７２！ 当然一発クリアなどさせるつもりはサラサラ無い。挑戦するべきか。

「どうだい剣、一発逆転を賭けて、勝負受けてみるかい？」

「…………」

　同じく翔破もターゲットはプレイギアＷＡＴＣＨに定めていた。おそらく圧倒的な報酬の差を確実に拡げようと残りの硬貨を全て使い、仕留めようとしたのだろう。

「勿論お前もこれを狙ってるのなら、俺も独り占めはせぇへん。百円硬貨を一回ずつ出して交互に攻めるパターンでフェアにやる。それでえぇやろ？」

「………………」

　一旦無言で判断を慎重に決める様子の剣。プレイギアＷＡＴＣＨで攻めるか、別の景品を選ぶか……。その時脳裏に思い浮かんだのは、やはり親友の顔。

(……そーいえば、ココ最近俺、ちゃんとみのりに“ありがとう”って言ってへんな。俺の勝手でＧパーツの試練に連れて行ったのに迷って迷惑掛けちゃって。学校でも、ゲームワールドでも一緒に居ることが当たり前になっちゃって。

　―――もし、みのりが居なくなったら……俺に何が残る？ そうならない為にも俺はアイツに何をしてやるんだ……！？)

　人間、心を許せる友と共に生活出来る事は決して当たり前の事ではない。成長していくと共に、何れは別れを知る事もあるだろう。不幸にも永遠の別れになる事だってあり得るだろう。

　剣にとってみのりは、ゲーム戦士として全てを変えてくれた存在。かけがえの無い唯一無二の友だ。普段は勇敢を装ってても時に不甲斐無い所を見せることもある。それを叱咤しながらも彼女は剣の元に居てくれている。

　桐山剣も誇り高きゲーム戦士ならば、みのりに感謝の意を込めて、最高のプレゼントを贈ってあげたい……！！

「その勝負、俺も乗ります！！ 俺もアイツに、みのりにプレイギアＷＡＴＣＨをプレゼントしたい！！！」

「上等や……！！」

　男のプライドが交差する大勝負、狙うは神奈さん印のビッグチャンス・プレイギアＷＡＴＣＨ！！

(剣くん……？)

　熱気ギラギラと眼が輝く剣にみのりは何を思うのか……？ 力と知恵が飛び交う二人のプライズハンター、運に味方するのは剣か翔破か！？ 果たして宝は誰の者に！！？ ――本日のゲーム、これまでッッ！！

　▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽