【GAME44-2】うどんパワーだ! 香川ゲーム戦士登場!!
――ひょんな事から香川県に迷ってしまった剣達。
最悪にも所持金はからっきしで大阪に帰れずじまいかと思いきや、奇跡か誠か剣達の前に現れたのは、宮城を代表するゲームチーム『瑞鳳旋風堂』の主将・伊達神奈。
彼女らはチーム増強を目的に、日本各地にて名の馳せたゲーム戦士達をスカウトしようと香川にやってきた。そこで鉢合わせたのが剣達。これも剣の豪運の賜物か……いや、単なるご都合展開か。そこはゲームウォーリアーの毎度ながらの構成なので悪しからず。
というわけで今回も参りましょう、ぶらりゲーム旅in香川!
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――現在剣や神奈が居るのは、香川は丸亀市。
青く澄み切った海の景色は最高、更にこの市で注目すべきは、日本百名城にも選ばれているという有名なお城があるという事。
それが標高約66mの亀山に築かれた平山、木々で覆われた高い石垣の上に建てられた城『丸亀城』である。
「こりゃ高ぇなぁ、前にゲームワールドで潜入したツヨシ城より高いかな」
「あの時も私達石垣から登ったんだよね。この城その2倍以上ありそうよ」
かつて剣とみのりは【GAME14】にて『風雲ツヨシ城』を攻略した事がありましたが、この丸亀城はゲーム戦士如きに落とせるような城ではない。
「丸亀城をガキンチョ二人で落とせるもんか! この城の石垣は防御の役割だけでなく、芸術の域にも達する技術があるんだぞ。切込・打ち込みハギ、算木積みに野面積み、城郭石垣を築く技術が最高水準に達した時に作られた城には職人の魂も眠ってるんだ!! 石垣だけじゃないぞ水路の所だって」
どうやら神奈の付き添いの光照はお城マニアでもあったそうですね。オタク特有の長ーい話に付いていけない剣達はタジタジ。
「悪いな剣。うちの光照は根っからの戦国オタクでねぇ。アイツがどーしても丸亀城を見に行きたいって言うものだから、連れてきたらこの通りさ」
「私はお城好きですよ。お城はロマンありますから、洋とはまた違った和の名城をこの目で見れるだけでも光栄ですわ!」
等と言ってる間にも、光照は一眼レフカメラなんか持っちゃってスナップに明け暮れる。意外にも桜も城に興味があるようで眼をキラキラさせて一緒に写真取ってるんだから結構ミーハーなメイドちゃんです。
「……でもここに神奈さんの探してるゲーム戦士は居ないんでしょ?」
「その通り、完全に光照の付き添い。―――もうその辺にしときな光照、そろそろ例の場所に向かうぞ!」
「「………ショボン」」
光照さん、桜さん、また来れば良いじゃないですか。
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――さてここからが本題、神奈や剣が探し求めている香川を代表するゲーム戦士の居場所。
その場所は何と、丸亀の何処にでもあるようなうどん屋さん。庶民感溢れる食事処と来たもんだ。
「……もうお昼すか?」
「時間的にはそうだな。だがゲーム戦士がここに居るってのは確かだ。せっかくだから挨拶も兼ねて香川のうどん食べていくかい?」
「食べたいすけど、俺お金無くて……」
「所持金千円しかないってのもさっき小耳に挟んでたよ。ここは私の奢りさ、遠慮しないで皆で食べよう」
「「「御馳走様でーーーす!!!」」」
これぞ他者にちゃんと気を回せる良い大人の例。懐の深い神奈さんに感謝をしつつ、剣達は店内へ。
「いらっしゃい」
店の中で出迎えてくれたのは、店のご主人で腰が若干曲がったおじいさん。風貌からして四、五十年は店を構えていそうな年季も垣間見える。
「ご主人、先週連絡した瑞鳳旋風堂の伊達です。―――例の彼と会う前に、うどんを打ってほしい。ひーふーみーの、五人前だ。」
「はいはい、話は先刻から聞いておりました。うちの孫が名のあるゲームチームからスカウトされる時を楽しみに待っておりましたとも! 今お造り致しますので少々お待ちを……」
神奈がスカウトするゲーム戦士は、このお店の主人のお孫さんだそうで。ではその当本人は何処に居るのかいなと周りを見回しても人気は無い、と思いきや。
「翔破! お前の会いたがってた伊達さんとお客さんが来てるでぇ! とびっきり美味いうどん打ったってや!!」
『あいよー!!』
店の奥にある食堂から声が。恐らくあの奥にて調理する男こそが、神奈がスカウトするゲーム戦士に違いない。
「……翔破さんって言うんですか? 神奈さんが会いたがってた人ってのは」
「そう、名前を『石倉翔破』。剣や綾乃よりも一つ上の18歳だ。彼をスカウトしようと思った理由は、彼のPASが余りにも豪快でねぇ。私の肌に合うか確かめに来たのさ」
(豪快、つったって……どんな感じなんやろ)
神奈が人を選ぶのに一番重要視しているのはとにかく“豪快”で“伊達”な事だそうな。だとしたら信頼の力で凄まじいカードの引きを魅せた綾乃をスカウトした理由も、何となく繋がりがある気がします。
そんな神奈さんをもてなす為に造るうどんを待つこと数十分。ようやく出来上がったうどんと共に、遂に現れた『石倉翔破』なる男も食堂から姿を表した!
「お待たせしました、香川名物讃岐うどん。『石倉スペシャル』で御座います!!」
石倉翔破、その姿は2メートル級の巨体にラガーマンを思わせるような強硬な肩の筋肉が見る者を圧倒する。
瑞鳳旋風堂では比較的華奢なゲーム戦士が多い中で、翔破のようなパワー型は欠かせない人材だ。
(成程、確かに豪快やな)
剣も納得し、早速にうどんを頂こうとする。特徴と言っても澄み切った出汁と極太の麺、その上に乗った薬味だけといったシンプルな造りだ。
「あれ翔破さん、揚げ玉とか卵はあらへんの?」
と半ば図々しくセルフ具を求める剣に翔破は言った。
「……アンタ神奈さんの連れかい? 見たところうどんの良さを分かっちゃいないね。この讃岐うどんはな、小麦粉と水と塩の繊細な配合の量、それと昆布にいりこの出汁が麺の持ち味を出すんや。先ずはその麺と出汁の味を御覧じてから決めるこった」
“いりこ”というのは、カタクチイワシを加工した煮干しの事。香川に隣接する瀬戸内海で取れるイワシが、讃岐うどんの個性を見出してると言っても過言じゃありません。と気になって剣はうどんの麺を上げてみると。
「ん、よく見りゃこの麺、半透明で光を通してるぜ! これ全部翔破さんが打ったんか?」
「当たり前よ! それが腰のあるうどんって奴や。食べれば疲れもブッ飛んで元気モリモリ精も付くで!! 論より証拠、さぁ召し上がれ!」
そう言われたからには剣達も食べない訳にはいかぬ、お腹も丁度鳴って食を欲した頃。手を合わせて会釈、早速に半透明に透った麺を勢いよくすすって、口元に運ぶなら……!
「―――――――美味ぁぁぁ……♡♡」
想像を超えた旨さに感動し悶絶する剣。そしてみのりに桜も。
「ホント! 麺がとても柔らかくて、優しい味がするね〜!」
「それに出汁も良く聞いています! 味が染み渡って心がポカポカ温まるようで、うどんってこんなに美味しかったんですね!」
殆ど洋食しか食べない桜ですらも絶賛する、恐るべし讃岐うどん。そして神奈も光照も、負けじと玄人的なレビューを交わす。
「シコシコした腰のある麺ってのは、グルテンを引き出さなきゃ腰は出ないもんだが、コイツは存分に出てる。良いうどんだよマジで!」
「うどんを打つにも相当パワーが無いと腰が生まれないからね。何で麺を打ったんだい、翔破?」
と神奈が申すならば、
「そりゃ勿論、自慢の剛腕です!!」
と袖を捲って翔破の二の腕を見せるならば凄まじや! 筋骨隆々のマッスルアーム、豪樹さんも真っ青の筋肉量。二の腕に筋肉が行くには中々時間が掛かるものだが、それを凌駕する翔破の腕。これには剣もびっくらこいた!
「どうだい坊主? 俺の腕も中々のものだろう」
と自慢気に魅せる翔破に剣は若干ムッとなって反論する。
「坊主じゃねぇやい! 俺はシャッフルオールスターズの桐山剣ってんだ!!」
(止めなよ、剣くん……)
喧嘩腰の剣に横で宥めるはみのり。何となく懐かしい風景。
「へーー! お前があの大阪で有名な桐山剣!? なんだってスカウトの日に来てるんかいね?」
半ば讃岐弁も溢れながら一驚する翔破、それに対して神奈が説明した。
「剣達は訳アリで私のスカウトを手伝いに来たんだよ。この香川で培ったアンタの実力を知りたくてね、それでその対戦相手に桐山剣を選んだのさ。―――私からの試練、受けてくれるかい……?」
迷った話は内緒の上で、剣との対戦を持ちかけた神奈に翔破は承諾した。
「神奈さんの推薦なら尚更受けますよ! この俺とて、この香川のうどんを食って力を蓄えた男。そのパワーが桐山剣にも勝る事を、ここで証明してみせましょう!!」
そして桐山剣も、
「こっちこそ! 美味いうどん食わせてくれた分の礼はゲームで返したりますよ!!」
交渉成立、ゲームの対戦を前に翔破と剣が堅く握手を交わしたその時。
ギュウウウウウウッッ
(―――――ッッッ!!!?)
握った剣の手から激痛が。と言うよりも翔破の手の握力が余りに強すぎて、剣でさえも屈する程のグリップ力に彼は驚愕した。
(なんつー握力やあの翔破って奴……!? それに何となく、アイツの手からすんごいPASの波動が出ていたような……?)
――剣も恐れた剛腕パワー、果たして彼と織りなすゲームは何か。そして翔破の秘めたPASの詳細は如何に!? ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




