【GAME42-7】角の折れた復讐鬼!!
「……お前ラがここまデ追いかけた理由が大体分かッタ。あの池谷倭刀とギガント加賀っツーゲーム戦士をハメて、裏ゲームのダシにしたのを根ニ持ってんだロ?」
裏プレイヤー・小原恵美がB5層に潜伏してる事を知った穂香と史也は、ツッチーの便利道具によって瞬間移動。ようやくここまで追い詰めた訳なんですが……
「その感情は無くはありません。しかしそれは主犯であるサザンクロスの配下にぶつけるもの。私は貴方を止めにここまで詰めました」
穂香をここまでさせたのは、裏ゲーム未遂の小原をこれ以上復讐に見を捧げぬよう制止させる事。小原と鳳凰堂孔雀との因縁は史也から聞いてはいたが、今は自分の成す事を専念したいのが彼女の本心だ。
「止めに来た、ねェ……。アタイをトッ捕まえて鳳凰堂のバカに差し出して、アンタはお手柄上げって魂胆カ?
ただでさえ頭がパー寸前ノアタイが裏ゲームとサバイバーなんたらに利用されて、疲労困憊のとこヲ楽に捕らエテやろうと踏んだか? ガキの癖して狡い手使うじゃねぇか」
などと半ば自虐的に穂香の思惑を当てようとする小原。裏ゲームの時から既にそうであったが、小原の眼は死んだも同然であった。それに対して史也も物申す。
「貴様は落ちぶれても関東じゃ“爆走の鬼”と呼ばれた女だろう。そんなつむじ曲がりな台詞が出るって事は、貴様自身がそう思っている証拠だ。違うか?」
「私達は捕まえも鳳凰堂さんに渡す気もありません。貴方を止めに来ただけなのです!」
それは小原自身が、望んで裏ゲームを引き起こそうとしたので無ければ、まだ贖罪の余地があると穂香が考えた事であった。幸いにもあの裏ゲームは倭刀のお陰で被害なく済んだ事もあっての事である。
「ウルセェ……! んな綺麗事並べて今更ゴメンナサイで収まると思ってんノカ!! WGCの犬どモガ、アタイの復讐の邪魔立てすんなら決闘で止めて見るんだな!!!」
と小原が懐から取り出したアメイジングのカードデッキ。だがそれは、裏ゲームの際にサザンクロスの幹部・デルタのデクルックスから前報酬で頂いたデッキなのではあるまいか……!?
「“取り付く島なし”とは言ったものだ。完全に鳳凰堂らへの怨讐に取り憑かれている」
「決闘も覚悟はしていました。しかし私もパニッシャープレイヤーの資格を持つ身。―――ここが私が、力づくでも止めてみせます」
「お前が臆せず挑むのも私の計算の内だ。物好きが一点集中しやすいもの、周囲は私が警戒しよう」
「お世話をお掛けします、史也さん」
おや、意外と穂香さんと史也さんって相性良いんですねぇ。面倒見が良い同士でウマが合うのでしょうか?
(エンヴィーにPASのエネルギーを分けて貰ったが、発動したら身も滅ぼすな。ゲームに没頭するくらいが精一杯……!)
小原は満身創痍な身体に残された余力を計算しつつ、穂香らを打ち破る前提で力はある程度セーブする事にしたようだ。
「――ほんじゃ、始めヨうか! ゲーム戦士の礼儀として一応お前の名前ヲ聞いてやる」
と、小原に言われて穂香は自然と名乗りを上げた。お待たせしましたシャッフル印の名乗り宣言!
「シャッフルオールスターズ、“新緑の魔導師”名乗ってます穂香ですけどぉ! 最近私の事を『みのりより人気無くね?』とか思ってそうなイメージ払拭に、私から一言ォ!
………ハッ、アカン、あかんて! 『前作終盤から登場とか、メンタルが弱い設定が悪い』は言い訳にならへん!! でもお淑やかである私は好き♡ 宜しくです!」
宜しくぅ!! って、穂香さんかなり個性的な名乗りですねぇ……
「……お、オゥ。威勢が良いのは分カッタ」
ほら元スケバンの小原さんも反応に困ってますよ!
「新緑の魔導師だかなんだか知らんが、マジシャン風情が鬼に勝てると思っテるなら、トクト後悔させてやんよ。衰弱してると思ってるなら尚更。―――奥歯ガタガタ言わしタンデヨ・ロ・シ・クゥ!!!!」
流石、本場は威迫も桁違い。挨拶も済んだ所で決闘のルールに従ってアンティの交渉。
穂香は勿論小原の制止のみ。となれば一方の小原は賭けの対象に自由が効く。
「アタイが勝ったラ……、お前のカード全てと、鳳凰堂孔雀への従いの断絶だ。アイツの名前聞くだけでも不愉快この上無いンダからな」
相変わらず対価の釣り合わない賭け。これに対し穂香は……
「―――分かりました。受けましょう」
「……何かね、ここの登場人物は無茶振りが基本ステなのかね?」
それがゲームウォーリアーの代名詞みたいなものですから……ハイ。
「しかしそこまで賭けを誇張するなら、私も考えがあります。私が勝ったらサザンクロスとの協力を止めて頂きます。宜しいですか?」
「……それにしちゃ温過ぎるが、それで良いなら受けてやるぜ」
決闘で成立したアンティルールは絶対。相当な事が無い限りは決裂する事は無いが、この内容に史也は不服な様子で。
「あぁ、見た通りの分が悪い賭けだ。穂香も引き止めだけで良いのか? 勝っても何も得はしないのだぞ」
「いいえ、間接的ですがサザンクロスの戦力強化を防げます。……目の前で我を忘れて誤った道を行こうとする人が居るのなら、尚更引けません」
それは一年前の自分と、自分の為に身を挺した父の面影が被ったからなのでしょうか。
即ち今穂香の眼前に立つ小原恵美は過去の自分。同じ過ちを犯してはならぬという戒めと、己を超える意味でB5層にて立ちはだかる――!!
「覚悟だけは一人前ダナ……! だがアタイの復讐を阻もうもノなら、骨も残さず粉々に轢き殺してやんよ!!」
「やれるものならやってご覧なさい! この世にはナナハンでも砕けないものが存在する事を、ここで教えて差し上げます!!」
……それでは、久々にあの台詞でゲームを開始しましょう!
――――ゲーム戦士達よ、覚悟は……出来たかッッ!!?
「「アメイジングバトル! READY!!」」
『――――START UP!!!!!』
二つのカードスキャンブレスから放たれたVRフィールドが周囲を包み、穂香と小原の決闘が膜を開けた!
この開始の刹那、穂香は心の内に秘めたるPASの共鳴から、小原のPASの色とその形を知る事となった。
「――! あれが小原さんのPAS……!!」
彼女の胸に秘めたPASの波動は土色、そして奥に隠された形は錆びついた大型二輪。派手なデコレーションと改造されたエンジンが特徴的だがそれすらも廃れていた。
……これが小原のアイデンティティの象徴とすれば、自ずと彼女のデッキのタイプも明らかになる筈。
さてこれより次回、穂香は裏ゲームをどのように制するのか、しおりはそのまま! ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




