【GAME42-3】旅立つ切り札騎士と緊急ミッション!!
――翌日の朝……といっても地底ですからお天道様の代わりに人工太陽の輝きが朝を知らせています。
そんな地底空間から地上の空へと仰ぐように、ゲーム戦士は旅立つ。
「ほんじゃ皆……行ってくる! くれぐれも裏プレイヤーなんぞにくたばったりすんなよ!」
アンダーグラウンドを後にし、地上経由でゲームワールドオンラインに向けて出発しようとするのは、ご存知桐山剣。Gパーツのカードを手に入れるための所有権獲得クエストを受注するにはゲームワールドに向かう事、そして万全のコンディションで戦う為に地上に帰るのだった。
「剣さんに言われんでもそーしますよ!」
「どうかお気を付けて……!」
「ワイらは心配せんでえぇから、思う存分気張りぃや!」
「あたしも……頑張るから!」
仲間達の声援を受けて、剣は俄然とやる気になる。そして最後に物申すは剣の好敵手、立海銃司。
「あのGパーツが、貴様にどれほど魅了されたか俺は知る由もないが、まだこの俺に抗う魂があると知ったからにはその門出を祝う権利を与えてやる。
――――俺も貴様と同じだ、互いに己の弱さを知り、その限界を超えた先で……また逢おう」
「俺はお前を退屈させるつもりはねぇぜ。Gパーツ取って戻っても強さ変わらんかったら、俺からお前をシバいたるからな」
「……上出来だ!」
そして減らず口の叩き合いが終わった拍子に二人の拳がガツンッ……と鈍い音を立ててぶつかり合う。これぞ宿命のライバル、好敵手の証として互いの健闘、並びに決闘の誓いを示したのでありました。
――薄暗く足場の悪い鍾乳洞が並ぶ険し道を歩きながら、振り向きざまに愛しき仲間へと見えなくなるまで手を振り続ける桐山剣…………と、みのりと桜。ってあるぇ!!?
旅立ったのは剣さんだけじゃないの!?
「知らなかったら時間巻き戻しゃ良い話だろ」
あ、そっか。私は語り部兼案内役でしたね。ならば倭刀の言うとおり物語の時間をグルグルグルっと遡って見てみよう!
▶▶▶ PLAY BACK▽
――時は前回の話が終わった、その一分後まで遡る。
「Gパーツをゲームワールドで手に入れるにしても……地底にもGWギアを接続するアクセスポイントはありますよ。地上に出る事は無いと思いますが……」
穂香の言うには、ゲームワールド内で行われるクエストへ向かう際に転送する場所を地底ではなく、地上に一旦帰って転送する事に手間が掛かるのではと考えていた。それに対して剣。
「さっき孔雀のロリっ娘が言ってただろ。地底でも治安が危ぶまれて物騒なのに呑気に転送してたら裏プレイヤーに狙われかねないと思ってさ、やっぱお天道様の下でゲームするのが性に合うみたいだしな」
「んじゃ、剣さん一人でゲームワールドに向かうんで?」
と、意外にも慎重な道を選ぶ剣に倭刀が単独で向かうのかと聞いたところ、意外な答えが飛んだ。
「うんにゃ、俺は……」
「―――ふわぁッ?!」
「みのりと一緒に行きたいッッ!!」
と、どうするべきかお悩み中のみのりの横で馴れ馴れしく肩寄せてバディで行く事を決めた!
「ちょ、ちょっと待ってよ剣くん! 私と一緒に行っても何も手助け出来ないよ〜!」
いきなり剣から行こうと言われても流石のみのりだって困ってしまう。特に力がある訳でもなし、応援するくらいしか出来ない。非力は自分でも痛いほどわかっていたのだが……剣にしてみればネガティブ思考自体が野暮な考えであった。
「まーた弱気な事言ってら! そんなん幸福が逃げてくぞ。気づいてないだけで俺らみーんなみのりに助けられてんだぜ?」
「……私、皆に何かしてあげたっけ?」
「みのりは一緒にいるだけでも俺達の元気と勇気を沢山分けて貰ってんだ、穂香がゲームで覚悟を決めたのも、倭刀がPAS覚醒したのも、みのりが応援してくれたり自分らしく最後まで頑張ろうとする姿勢を魅せたからやで」
「あたしもだよ! みのりちゃんにはありがとうって言い切れないくらい感謝してるんだから!」
シャッフルのメンバー全員が、みのりの勇気に感化されて強くしていった事に心から感謝していた。特にレミはこの上ない感謝が袋詰め状態。これにはみのりも……
「………皆してそんなに言われても、照れちゃうよ〜〜!!」
赤面になって慌てて顔を隠すこの可愛さよ。
「……ホントに私と一緒で大丈夫? 剣くん」
「まだ言ってんのかよ! 心配性やな。……ほんじゃ一緒に行ってくれたら、ヒソヒソのゴニョゴニョっと」
何やら剣がみのりの耳を借りて、耳打ちを交わした途端彼女の態度がガラリと変わった。
「―――ホント!? じゃ私も行く行く〜♪♪」
この変わりようには仲間一同きょとん。おそらくクエストの合間に何か企んでるんでしょうね、剣さんってば。その様子を見た立海勢も、銃司の気が変わったのかある提案を出した。
「待て剣。二人でクエストに向かうのなら桜を連れて行け。引き続き彼女には守衛を任せてもらう」
「あ? WGCからのクエストに行くのに桜も行かせるのか?」
「WGCが管理しているのならば、警戒は怠らん事に越したことは無いだろう。あっちにも鳳凰堂程では無いが癖のある雇いゲーム戦士も居る筈だ。参謀の史也兄が言うのだからそうしておけ」
そこまで銃司や史也が言うのなら剣も断る道理は無い。桜も心做しか剣らと一緒に向かいたい顔でこちらを見つめていては……切り札騎士が廃るであろう。
「滅多に外に出ない桜の課外授業として絶好の機会だ。共に連れてやってくれ剣。彼女の心を守った貴様なら容易いことだろう?」
「……分かったよ。ほんじゃ俺はみのりと桜のサンドイッチにでもなっとくわ」
「剣くんありがとう! だ~いすき♡」
「では剣さん、再び同行お願い致しますわ」
「分かったから貴様ら俺の前でイチャつくな! ステーキの味が甘くなるだろうが」
みのりは剣に抱きつき、桜も剣に近寄る姿はハーレムを想像させ羨ましいやらお節介が過ぎるやら。銃司も色気には弱い様子。
ともあれこーゆー訳で剣はみのりと桜と同伴でクエストに向かう事になったのでした。
▶▶▶ RETURN BACK▽
――回想終えて、いつの間にか三人の姿も見えなくなった頃。倭刀や銃司達は去る剣らを見送って想いに更ける。
「ったく、剣さんってば特訓まで大胆にする事ねぇだろうに。Gパーツ掻っ攫うなんざ……」
「でも倭刀は超える目標が強気で良かったって思ってるんでしょう?」
「……まぁな姉ちゃん。んで帰ってきて剣さんと勝負して勝てたら、俺は『Gパーツを持った剣さんに勝った男』とでも名乗っとくわ」
「そうこなくっちゃ!」
などと強くなろうとする剣に対し、未だに闘争心を高める倭刀に穂香は嬉々とそれを見守る。
そしてレミも去っていくみのりを見つめながら、今後の地底空間での戦いに覚悟を決めつつあった。豪樹もその様子に何を思うか無言の心理フェイズ。
「……しかし銃司もスパルタだな、お前を一番守ってあげたい桜を自分から放つなんて」
「何がスパルタだ史也兄。……桜には外界の者の心を知る必要がある。それを吸収していくには俺なんかより、剣が似合うと思っただけだ」
「フン、寂しがり屋め……」
桜を剣に明け渡した事に少なからずも未熟さに悔やむ一面を見せる銃司。出稼ぎに行った嫁を見送るお父さんの気分とさも似た
「誰がお父さんだゴラァ」
と、私Mr.Gに銃を向け威嚇する銃司にひぇえ〜!!と怯えたその時。
〜〜〜♪♪♪♪
各種バラバラに鳴り響くプレイギアの着メロゲームミュージック。レトロにオーケストラと一斉着信では喧しさも数十倍。
同時にメール着信が入り一同開いて確認すると……
「……【裏プレイヤー討伐・最新情報】――!!!」
それは鳳凰堂孔雀から一斉送信された裏プレイヤーの討伐情報であった!
□――――――――――――――――――□
【裏プレイヤー討伐・最新情報】
アンダーグラウンド・ウエストOSエリア付近にて
サバイバーモードで使用した裏プレイヤーが脱走。
見つけ次第直ちに捕獲を要請せよ。
対象者
・『妬み嫉みのエンヴィー』懸賞金200万円
・『小原恵美』懸賞金30万円
その他功績によっては追加の報酬
を与える可能性あり。
※尚殺意を向けた場合は正当防衛としての決闘を
認めるものとする。
□――――――――――――――――――□
「『妬み嫉みのエンヴィー』!?」
「小原……まさか」
「倭刀、この二人アンダーグラウンドで裏ゲームを起こした裏プレイヤーじゃない!?」
「アイツら、狙われてんのか……!??」
倭刀や穂香達が感じる不吉な予感、WGCと裏プレイヤーの攻防がもう既に始まっている事を感じさせる通知メール。これに対しゲーム戦士はどう動くのか?
あぁ〜良い所で時間となりました、――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




