【GAME41-10】似ている奴ら!? 激突・龍牙VS倭刀!!
――いやー凄まじかった! レミと史也の頭脳短期決戦、軍配は畠田レミに上がりました!!
……さて今回も引き続き、白熱の激突勝負をお届けします。前回が頭脳戦ならば、今回は“肉弾戦”。身体と刃で混じり合う本気の闘い。
そう……池谷倭刀VS忍野龍牙!!
「オイあいつ……、龍牙にマジで挑むのかよ!?」
「いや違う、龍牙から倭刀んとこに来たんだ!」
「またキル稼ぎか!? どんだけ殺りたがりなんだ!」
等とポータルタワーの敗者の牢屋のゲーム戦士はこの対峙にギャーギャー騒ぎっぱなし。
何故に龍牙自らが倭刀の元へ、不意打ちもせず背後から狙いもせず、真っ向から面と向かって相手する事になったのか。我々には予測し難い所ですが、それは本人のみぞ知る事なのでしょう。
(龍牙が真っ向勝負を仕掛けた……、アイツまさか――?)
旧友である桐山剣は、彼の行動について何か気掛かりな事を感じたようです。
▶▶▶ NEXT▽
そんな話題を掻っ攫う龍牙と倭刀。彼らが対峙した場所は、中央から200メートル離れた東エリアの荒野。
建物群も障害物も無く、ただ風に吹かれて土煙のみが舞うホライゾンロードに佇む二人。非情のフィールドで何を思うか、忍者と侍のゲーム戦士。
「どーゆー風の吹き回しすか。忍者が忍ばず自分から推参たぁ、伊賀の御先祖様にどヤされますぜ?」
等と半ば冗談をかましながら、それでいて臆する事なく龍牙に話しかける倭刀。
「……俺ァよ、さっきからどーも調子狂いっぱなしなんだよ。お前と利害の一致で手ェ組んでからずっとテメェの事が頭から離れらんねぇ。テメェの超えたがってる剣以上にな」
「憎み足りない程潰したがってる剣さんより、俺がそんなに気になるんで? 普通の生意気な刀ぶら下げたゲーム戦士の俺が」
「そう、普通や。テメェが持つその個性が俺と似てんだよ」
「益々分かんねぇ。イカれるほどに殺意があるアンタが俺とどう似てんで――」
「その殺意も……失せちまえばテメェと一緒だ。ただのクソ生意気なガキ。似すぎるほどにな」
「………」
龍牙は、剣と絶交しやさぐれる前の自分と照らし合わせていた。礼儀知らずで生意気で、その割には悪知恵が非常に働き欲求不満。どれも倭刀と瓜二つ。
龍牙は暴力の衝撃に溺れた戦闘狂。倭刀は真っ向から憧れの桐山剣を超える為に強くなる正統派。
似た者同士とはいえ性根は平たく言えば『善と悪』。それを察した龍牙は苛立ちや嫉妬といった雑念を捨てて、ある決意をした。
【真っ向勝負で、奴とぶつかりたい】と……!
「自分でもグレてる面見せてるって分かるが、俺のPASはクソ正直らしくてよ。大抵相手の面見るとムカッ腹立つのが常だが、今は違う。そうさせたのはテメェで二人目だぜ、池谷倭刀ォ」
苛立ち性分の龍牙が、相手の面を見て腹立てなかったのは極稀な事。そうさせたのは倭刀と、何とチームの主である鳳凰堂孔雀のみだそうだ。
「……俺も知らん間に美化されたもんや、自他も認めるクソガキ風情がよ! んな言われたら俺も背を向けらんねぇやんか!!」
龍牙の真剣勝負の誘いに感化されたか、倭刀もその挑戦に乗る事となった! その覚悟の裏には、やはり桐山剣を超えたいという野心から促されたものである。
「クククク……! やはり侍だな。真剣勝負がお好きな性分なようで。……だが、受けたからには容赦はしねぇぞ!!」
やはり構えてました例の切り札。――いざとなったら魂を込めろ! 龍牙のPASが黒くギラリと光る!!
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【手裏剣】確認。
◎――――――――――――――――――◎
黒影色の手裏剣PAS。今まで変幻自在のPASスキルを魅せた龍牙であるが、果たして今回は……!?
「PASスキル発動! 【忍法・影分身】!!」
自他の漆黒の影を操る龍牙の能力。自分の影がPASの力で肥大したかと思いきや……何だこりゃ!!?
「龍牙さんの影が……実体化してやがる!!」
その名の通りの【影分身】!! 龍牙の肥大した影は彼そっくりのコピーとなり、それが四人に別れて本物交えて忍者五人衆ここに推参!
「……思ったとおりやな、忍者に真剣勝負は無粋って訳かい!」
「忍者に卑怯も帝京もねぇんだよ! それも超越してこその最強ってもんだろうが、オラァまだまだ行くぞ!!」
更に追撃のカードスキャン。本物の龍牙は5枚ものカードを纏めて発動させる。
『カスタム・ツールカード、【サツキクナイ】【雷長槍】【爆裂火器】【煉獄クサリガマ】【シュリケンランチャー】!!』
ありゃりゃこりゃりゃと飛び出したるは忍者の五つ道具! クナイに槍に火器玉に、クサリガマに手裏剣掃射銃!! 本物は銃に加えて既に構えた《闇黒の刀・ムラマサ》を持っての重装備。
「さぁ倭刀、テメェが土壇場で魅せた覚醒PASを、俺にも魅せてみろや!!!!」
やはり倭刀と真っ向から挑みたかったのは、ギガント加賀の決闘で覚醒した双龍刀のPASを見たかったのでありました。それならばそのリクエストにお応えして……いざとなったら魂を込めろ!
「そんなに俺の魂をぶつけ合いたいなら……受けて立ったらぁ!! ――PAS発動、【双龍刀】!!!」
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【双龍刀】確認。
・PASスキル【光と影の二刀流】発動!
カスタム・ツール《闇黒龍刀》《閃光龍刀》を装備!!
◎――――――――――――――――――◎
オレンジのPAS波動から分裂し、太陽からもたらされる光と影の刀が、再び倭刀の掌棚どころに宿った!!
PASも開放し二人は既に臨戦態勢。双龍刀と、忍者の道具三昧との対峙で火花を散らす!!!
「ヅェェエエエエエエエエエエ!!!!!」
奇声を上げて飛び出すは龍牙の影、その手には小柄なクナイ二刀流。それを倭刀の近くで振り回し近接勝負に出るが、倭刀はそれを刀で弾いてブロック。
だが一つを交わした所でまた脅威の影だ、背後には槍に鎖鎌、更には足場には火薬たっぷし火器玉がコロリ。
―――――ドォォォオオオオン!!!!
これでは余りにも多勢に無勢か。流石の倭刀とてこの猛攻には傷を負わせ………いや! 倭刀にダメージエフェクトは出ていない、彼は無傷だ!!
「おるらぁぁぁあッッ!!!」
攻撃時の隙を突いての横一文字、グルリと円月に掻っ捌けば、槍・クナイ・火器持ちの影は一掃撃破!!
「……そうか、白い刀の方の防御バフと無敵効果か」
「それも分かってた上で五体に分けて、波状攻撃を仕掛けたんでしょ龍牙さん?」
太陽の双刀、伊達じゃない。白の刀は防御極振り、黒の刀は攻撃極振りの極端三昧。
しかし、さっきの一振りで呆気なく倒れた影を見て、倭刀は察し付いた。
「分身はその名の通り分け身を意味する。って事はだ、おそらくそのPASを使うって事はそれなりのリスクが伴ってる筈。
――多分HPを五等分に折半したかな。 分身が呆気なくやられたんじゃ、合点は行きそうだしな?」
―――シュバババババババッッッ
その時、図星を突かれて龍牙の理性が切れたのか、眼光の瞳孔が見開いて、無言のまま手裏剣掃射銃の大連射。
それを倭刀は右往左往に回避し、接近するクサリガマを持った影にもバク宙・側転・大開脚ジャンプとアクロバティックに避けながら冷静に対処する。侍なのに忍びより軽やかな動き、倭刀も運動神経抜群だ!
「テメェ、やりやがるなッッ!!」
「どうすか龍牙さん! 剣さんに執着せんでも、強い奴はここにもまだ居るって事に、ワクワクしてくっしょ!?」
「…………ほざけッッッ!!!!」
っとここで本物龍牙、手裏剣から一転してムラマサの刀片手に倭刀へ急接近!!
それを倭刀は刀で鍔迫り合い、だが背後にクサリガマの影が不意打ちを狙う。
「危ねッ!」
――ヒュッ、ザシュ!!
緊急しゃがみ回避しクサリガマの一振りを交わす倭刀。ここで本物龍牙に一発蹴りをぶつけて強制に距離を開かせ、一気に背後の分身を片付けた!
これで本物龍牙ただ一人残すのみ! これで正真正銘の一対一、真っ向勝負!!
「……クッ、クハハハハハハハハハ―――!!!!!」
圧倒的な倭刀のPASの強さに気が触れたか? いや、己よりも超越した強さを目の当たりにして、恍惚この上なく興奮の極致に達した龍牙!! そして――――
「トドメだアアアアアアッッッ!!!!!!」
斬ッッ―――――!!
此の時遅く彼の時早く、龍牙が上段に振りかぶった刀よりも真っ先に斬り裂いた倭刀の二刀双龍が、この一騎討ちに決着を付けた……!!!
〔忍野龍牙 HP200→0 KNOCKOUT!〕
キルリーダー忍野龍牙。池谷倭刀のPASを前に、遂に倒る!!!!!
(……やっちまった。俺が、剣さんよりも先に龍牙を倒しちまった!!!!!)
口には出さないが、倭刀の奥底に湧き上がる快感と興奮が、その勝利したエクスタシーを物語っていた。対して敗れた忍野龍牙は、
(…………孔雀は気付いてたんかな。俺が剣を執着しすぎていた事も、俺の知らない内に上には上のゲーム戦士が居ることを思い知らす事も……何やねんこの下剋上はよォ、退屈がぶっ飛んじまうわ!)
意外や意外。戦い敗れてブチ切れるかと思いきや、清々しい表情は龍牙。自分が一番卑下していた筈の倭刀の戦いぶりに一片の悔い無し。立ち上がって勝利した倭刀に自分から握手を交わす。
「おおっ!?」
これにはさしもの倭刀も潔さに驚いた。
「……しゃーないわ。今回はテメェの事をバカにし続けた俺の負けや倭刀。……精々精進し続けろよ。ここで満足したら凡骨扱いに逆戻りと思え」
戦闘狂へのまさかのリスペクトに呆気にとられる倭刀。そして、彼もまた、その真意に心を打たれる。
「龍牙さん………アンタ、やっぱ良い人じゃないすか。乱暴者だけど」
「黙れボケ、殺すぞ。………まぁそれは、また今度にな」
そして感無量の表情を残し、龍牙は強制転送。デスボックスを残して退場した。
「――――龍牙さん!! 心躍る決闘、ありがとうございましたァァァァァ!!!!!!!」
ゲーム一戦、心開くはゲーム戦士。
倭刀と龍牙の間に、我々では想像出来なかった微かな絆を感じたこの一戦。
散った龍牙の無念も背負って池谷倭刀、最後まで生き残る事は出来るのでしょうか!?
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




