【GAME40-6】危険な交渉! 倭刀・龍牙 結託!?
――TIPS――
【裏プレイヤー・データファイル】
データNo.114『辻斬りのキザン』
サザンクロスとは関係は無いが、空手を鍛えていく内に己の手刀にどれだけ鋭利な切れ味を見せられるかという興味が湧き、終いには人を斬りつけるという快感を覚えてしまった凶悪犯。
空手の道着が白でなく真っ赤なのは、人の返り血を浴びまくった結果こうなったらしい。
――東エリアにて、池谷倭刀を中心に裏プレイヤー討伐の為に結集したゲーム戦士達。
しかし偶然にも同じく東エリアで様子を伺っていた忍野龍牙が、連合軍に急接近!
「あぁ言われんでも分かるわ、テメェら束になって裏プレイヤーを倒しに行くって魂胆だろ。それしか方法がねぇもんな?」
故意に連合軍を煽り立てる龍牙、それに対して何も反論出来ない状況のゲーム戦士。
何故なら今まで11名も撃破したキルリーダーである龍牙に対し、下手に刺激したらば自らも撃破されかねないと危惧しているからです。
「……テメェら俺様が怖くて何も言い出せねぇってのか? ……何か腹立ってきたなー。気に食わねぇからいっそ俺様が掃除でもしたる―――」
「――――アンタさ、俺よりも先輩の癖して“仲間に入れて”の一つも言えねぇんか?」
「…………あ゛?」
『最大の悲劇は善人の沈黙』と誰かが称したように、龍牙に臆して皆が黙っていたのがカチンと来た龍牙は例の如く暴力で片付けようとしたその時。そのやり方に物申したのが、池谷倭刀。
「……何や、お前は何時ぞやの剣の横にいた凡人か。てめーに指図される筋合いはねぇわ、失せろ」
「凡人で結構。だがアンタみたいなコミュ障のやり方じゃ物騒やから、こっちから単刀直入に言わせて貰う。―――アンタ、俺の連合軍に入ってくれねぇか?」
「「「「!!!???」」」」
これには仲間に入ったゲーム戦士達一同ビックリ仰天! 私だって驚きましたよ。あの倭刀が狂犬の龍牙に勧誘してるんですから!!
「………何故俺様を誘えると思った?」
「アンタも同じく劣勢の立場やから。11キルもしてれば奪ったカードでユニットウォーリアーを購入出来るくらい容易いアンタは、どーゆー訳かそいつを契約していない。恐らくは……アンタ一人で先立って、裏プレイヤーとやり合って返り討ちにされたんだろうな」
「―――!」
この時龍牙の殺気立った眼の瞳孔が開き、倭刀を凡人と見下していた事に反してこの思考の鋭さに一驚していた。
「……図星やろ。あとアンタが襲う時は、大抵獣みたいな顔で迫って来るって話を剣さんから聴いたことがあったんだが、俺らに近づく際にはそれすらもしなかった。大人数でも討てるほどのカードは持って無かったって事や。
―――つまり、アンタも俺と同じ。仲間が欲しいって思ってコンタクトを取った。違うか?」
まるで桐山剣のような勘の冴え渡り。二度も龍牙の心境を当てた倭刀に鶏冠に来たか、胸ぐら掴んでナイフのカスタムツールを片手に倭刀の腹部に突き付ける。
「……俺様の本心を当てて楽しいか? テメェみたいなガキが孔雀みてぇな真似しやがって、ぶっ殺すぞ?」
「殺すなら……俺よりも裏プレイヤーの方とちゃうか!?」
「んだと……!?」
大勢のゲーム戦士を差し置いて、倭刀に苛立ちの標的を向けた事に対し、同行していた時実桜がこの動機を読み取った。
(……読めましたわ。倭刀は龍牙さんに興味を持たせようとしている。私達を撃破されない為、意地でも同盟を組ませるにわざと挑発させる真似を――!)
シャッフルの中でも随一交渉術に長けている倭刀に悟った桜は、静止しようとするみのり達を抑えて彼の駆け引きを見守る。
「アンタも戦に冷徹な男なら、殺る標的くらい分かるやろ? この場で憂さ晴らしに俺を討つか、屈辱にもやられた裏プレイヤーに倍返ししてやるべきか! 今アンタが一番ぶっ殺してやりたいと思う相手は誰や!!?」
交渉に長ける割には余りにも物騒な駆け引きですが……倭刀は本気です。
龍牙を戦力に加えて確実に裏プレイヤーを討つ事を目的に、彼の性格や天秤の掛け方を緻密に分析してこのような賭けに出たのだ。そして、龍牙の判断は……
「………妙な気分や。急にお前の事がムカつかなくなった。あん時みたいにただ喧しいだけの青二才とはPASも心構えも一皮剥けてら。興味が湧いてきた」
その時、何を思ったか腹を突き刺していたナイフを解き、龍牙から倭刀らへの殺意は消えた―――!
「お前、池谷倭刀つったな? 組む組まないの前に一つだけ質問に答えろ。俺様を出し抜こうとする度胸は褒めたるがな、お前がゲーム戦士として、己を強くしようとするその原動力ってのは何や? 何処からその気力が湧いてくる!?」
その答えは既に、倭刀の魂から出ていた!
「――――俺は、桐山剣を超える男だッッッ!!!!!」
侍の刀のように鋭く、真っ直ぐな意思主張は波紋となりて龍牙の全体に鳴り響き、彼の奥底に眠っていた魂の個性に共鳴に似た感性を覚えた。
「………お前、面白ぇなぁ――! 仲間なのに剣を超えたいなんてどーゆー頭してんだか。いずれは俺様が剣を殺す事になるのに」
「剣さんはアンタなんかに殺されへん。それにここにいる皆も。同盟も裏プレイヤーを倒すまでの期限や、終わったら殺るなり好きにしろ。だがもしその前に仲間に手ぇ出したら、裏プレイヤー関係無しに真っ先にアンタを殺す!」
「……良いぜ。だったら精々、俺様を使いこなしてみるんだな」
握手こそ交わさなかったが、龍牙を同盟に組んだ事により真に迫った倭刀の覚悟。
狂犬を飼い慣らすだけでなく仲間を一人残らず守ると宣言。これには我々やゲーム戦士達もその意志に感銘を受けていた。
「……なんか倭刀くん凄い――! あの龍牙くんを仲間にしちゃうだなんて」
「この戦況にて互いに不足していた部分を交渉で補わせたのが成功の一因です。お見事ですわ倭刀……!」
みのりや桜も彼の交渉に称賛の連続。
しかし真に成功したと証明するには裏プレイヤーの撃破、並びに同盟チームを一人も撃破されずに勝てるかの二つの条件が達成されるかに掛かっている。
(なんとか龍牙を手中に収めた! こうなりゃ何としてでも、絶対裏プレイヤー討伐させたる……!!)
倭刀に並ならぬ重圧が伸し掛かる……!
▶▶▶ NEXT▽
変わって北・西エリアでは、倭刀の同盟とは別の交渉が行われていた。
『――――なんだ剣?』
「あ、銃司か? お前も裏プレイヤーの撃破に行くんだろ?」
『何を分かりきった事を抜かすか。貴様に言われんでも俺に楯突く者は真っ先に叩き潰すつもりだが?』
「じゃあさ………俺と組まないか?」
――またしても、このサバイバーモードの戦場に絆は生まれようとするのでしょうか?
五人の裏プレイヤー討伐に次々と動く者、或いは山の如し動かざる者とで溢れるゲーム戦士達。
いよいよ停滞の時を破り、激戦の幕が上がろうとしております! その様相はまた次回。本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




