【GAME38-7】流れる過去への後始末……!!
――戦い終えて、まだ半透明なドーム状のVRフィールドが消滅して間もない時。
ギガント鹿賀に勝利した筈の池谷倭刀は、勝ち誇る事も喜ぶ事もせず、真っ先に地面に身体を伏して土下座の準備をしていた。
そう、倭刀が起こしたシャークトレードの本当の精算である。
「……ゲーム戦士の皆さん。一年前、愚かにもこの池谷倭刀は多数に渡りシャークトレードを行い、皆様の闘志の結晶であるカードを騙し取り、誇りを踏み躙った事を心からお詫びします!!
―――本当に、すみませんでした!!!!」
地面に顔全体が埋まるほどに、目一杯頭を下げる倭刀。そして彼の近くには、
『もっと深く頭下げろ、倭刀!!!!』
聞き覚えのある野次が倭刀の耳からかなり近い方に聞こえた為、一旦下げた頭を上げると倭刀は驚いた。
「剣さん!!!? どうしてこ、うぶッッ?!!」
今まで決闘に精一杯で、横に立っていた桐山剣や、立海銃司やみのりが来ていた事に全く気づかなかった倭刀。だが見上げた倭刀の頭は再び剣の腕で強制的に下げさせられた。
「俺からも謝らせて下さい! コイツのトレードは俺らシャッフルの責任です!! すみませんでした!!!」
「ごめんなさい!!」
倭刀の両端に剣とみのり。仮にもシャークトレードの被害者であった二人も一緒に周囲の人々の前で頭を深く下げて謝罪した。
「なんでですの!? 何で剣さんもみのりさんも一緒に……謝んのは俺だけ――」
「カッコつけんなボケ!! 俺らチームなんやから当たり前やろ!!」
「謝るなら一緒に謝ろう! 皆一緒に!!」
剣とみのりの恩義にこの上ない申し訳無さと感謝に倭刀の目が潤み、それを隠すように再び倭刀は地に伏せて頭を下げた。
「「「すみませんでした!!!!!」」」
それを見た人々は……
「あ、いや、そっちこそ……」
「俺らも言い過ぎたってか……」
「…………」
「行こうか。これ以上言っても気まずいし……」
「あぁ……」
皆に許して貰えるかどうかは倭刀が気にする事では無かったが、彼らの予想とは裏腹に、これ以上の関与は自分にも宜しくないと感じたか、そそくさに倭刀達から立ち去る。
しかもその殆どが同じ行動を取り、残ったのは倭刀達と遠くで見守っていた立海銃司。そしてようやくノックダウンから立ち上がったギガント鹿賀。
「………やっぱり、こんなんじゃ許さねぇよな。鹿賀のおっちゃん」
「いや……操られてたとはいえ、皆は自分の取った行動に罪悪感を感じて距離を置いたのだろう。心の整備が付くまではそのままにしておく方が良い」
「そうか……?」
ギガント鹿賀も決闘から回復した所で、一枚のカードを倭刀に手渡す。
「約束のカード、《シャイニング・フレイムドラゴン》だ。太陽を体現させた君ならきっと使いこなせるだろう」
「本当にいいんすか……?」
「良いのだ。わたしはこの地底で暴動を犯した身。新ゲームのシードも剥奪されるだろうが、そういった意味でもわたしは再出発をする。せめてこのカードを君に手渡して役立ってほしい。大事なお姉さんを君がしっかり守ってあげなさい」
「………分かってるぜ。この太陽龍、絶対使いこなしてみせる――!」
倭刀の決闘の報酬は、レアユニットカード《シャイニング・フレイムドラゴン》!
巨大な鹿賀の手に授けられた一枚の札は闘志みなぎる戦いの後であるからか、やけに熱い熱気が籠もっていた。そして―――
「倭刀!!!」
倭刀の元に呼びかけるはデジャヴな展開、姉貴分の大森穂香が心配そうな顔で駆け寄った。
「穂香姉ちゃん! あれ、エンヴィーと裏プレイヤーは!?」
「ごめんなさい、サザンクロスの幹部らしい人がPASを使ってエンヴィー達と一緒に逃げられちゃったの。六人も囲んだのに……」
幹部というのは他ならぬ、『デルタのデクルックス』のお兄ちゃん。しかし六人のゲーム戦士の包囲網を作っても逃げられてしまうとは末恐ろしい方です。
「そうだ、姉ちゃんゴメンな。俺が余計な事したばかりに―――」
「謝んなきゃいけないのは私の方よ。倭刀……!」
すると穂香、倭刀の手を握り締めながら、込み上げたものが溢れるように彼女の眼に大粒の涙の雨あられ。
「私……さっき剣さんに怒られて、思い返して、ずっと倭刀の事優しくしすぎて、それで苦しい想いしてきたんじゃないかって思った。私の事庇うあまりに痩せ我慢して.シャークトレードまでさせておいて、私ってば口だけで結局は全然倭刀の気持ち分かってなかった!
倭刀は私に傷付けさせない為に、守りたい一心で必死で戦ったけれど……もうそんな事しなくていいから………ッッ!! 私は元気なままの倭刀でいて欲しいの!!!」
「姉ちゃん……」
「倭刀は倭刀のままでいい!! でもせめてこんなカッコ悪い私でも、倭刀のお姉ちゃんでいさせて………!!!」
姉の号泣に倭刀も貰い泣き。たとえ血が繋がっておらず、ゲームの仲で繋がった仮染の姉弟であったとしても、守りたいものが確かに二人にはあったのだった……
「倭刀くん。穂香ちゃんにも私にもシャッフルの皆にもそうだけど、一番謝らなきゃいけないのは剣くんじゃないの? チームの責任背負って、倭刀くんと一緒に謝ろうって決めたの剣くんなんだよ」
みのりも優しく諭すように、剣にも謝罪をするよう倭刀に促した。
「ホンマすんません、剣さん……」
「……正直言ってさ、俺は倭刀の事はクソ生意気で、大層な事言ってる割には精算も済ませねぇで、どうしようもねぇ後輩や思ってた。
でもさ、お前はそれを悪いって分かって人の痛みを知ってPASも進化させた。お前はお前の魂の枠を超えたんや。本気で凄い事やり遂げたんやでお前!
―――倭刀は、桐山剣を超えるんやろ? だったらメソメソしてねぇで、一緒に強くなろうや!!」
シャッフルオールスターズ・リーダーに恥じない桐山剣の本音。それを目標としていた倭刀にとって、身近にいる筈なのにそれでもまだ遠い。魂の器の違いを思い知らされたのだった。
「ほら、倭刀くんも穂香ちゃんももう泣くのやめ! ハンカチ貸すから涙拭いて!!」
「穂香ちゃんムギューする?」
「なんや倭刀、太陽の男が貰い泣きか? まだまだ生意気やなぁ!」
みのり、レミ、豪樹と仲間達が皆二人の元に駆け寄り和気あいあいに触れ合う。それを立海の銃司・桜・史也、そしてシェイパー兄妹とも傍観し、銃司が呟く。
「………結果がどうなろうが、好敵手の仲柄で奴等と協力するつもりだったが。やはり池谷倭刀は、シャッフルオールスターズの仲間で生きる方が一番なのかもしれんな」
――そして剣は再び倭刀の元へ。
「格好良かったぜ、お前の太陽の魂! 俺もウカウカしてらんねぇな。なんせお前の目標なんだしさ!!」
「………やっぱ敵わねぇや、剣さんにゃ――――ッ!!!」
貰い泣き転じて嬉し涙。倭刀の心の奥に空いてた隙間が信頼する仲間達によって、ようやく埋められた。そんな気がしたのでした。
……しかし、ちょっとだけ整理しなければいけない事がもう一つ。
「WGCの者です!! 先程地底空間・B1層にて暴動が起きたと聞いて駆けつけました!!」
何と遅れて馳せ参じたのはWGCの派遣護衛部隊と、ジョーカーカード的存在・鳳凰堂孔雀!!
『今更来たのかよ!?』と言う方も居ますが、何しろ地底空間はパニック、それにゲーム戦士でも解決に難があった事件ですから、WGCとてそう簡単に来るとは限りません。
「……とは言うものの、どうやらもう事態は沈静した様ですね」
そこで部隊に自ら名乗り出て自重したのはギガント鹿賀。
「わたしがむしゃくしゃしてやった。投げ飛ばす相手なら誰でも良かった。だから他のこの者達は許して欲しい」
「ギガント鹿賀さん!? 期待のゲーム戦士ホープが!!?」
そんな犯罪者みたいな主張しなくても……と言いながらもここは鳳凰堂孔雀、既にアクションは起こしていたようで。
「大丈夫ですよ加賀さん。今私の方で調査が終わりましたので。加賀さんを始め、一般市民や新ゲームに参加予定のゲーム戦士達は、裏プレイヤーの波動によって扇動されてしまった様です」
モブと違って鳳凰堂さんは仕事が早い! となると、逆に首を絞められる運命にあるのは……裏プレイヤーの方かもしれませんね。
「新ゲーム開催も控えてる中で、ギガント加賀さんのような有力なゲーム戦士を減らしては相手の思う壺です。ここは私の権利に従い、暴動行為は特例として不問と致します」
「かたじけない……」
ギガント加賀のお咎めは無し、二日後に控えた新ゲームの出場も撤回にはならず。これを聞いた倭刀達も彼に事なきを得た事でホッと胸を撫で下ろす。
「それともう一つ。シャッフルオールスターズと立海遊戯戦団の皆様方も、私は地底空間の代表として御礼をしなければなりません。特に池谷倭刀さん、暴走した皆様を守り抜いた事を心より感謝致します」
「知ってたのかよアンタ、でも結果はせやけど俺は別に……」
「私が称賛したいのは、貴方達ゲーム戦士の好敵手の枠を超えた絆です。裏プレイヤーはあらゆる謀略を駆使して、地上と地底の人々の共存を引き裂こうとする恐ろしい敵。
それを打ち砕く方法は、互いに認め合い力を結集する魂が不可欠なのです。それを証明した暁にこちらをお受取りください」
鳳凰堂孔雀はプレイギアに送信する素振りを見せ、数刻後にはその内容がシャッフル・立海の元に届いた。
《◐新ゲーム本戦出場確定のお知らせ◑
2日後にアンダーグラウンドにてWGC主催の新型ゲーム【アメイジング・サバイバーモード】の出場権獲得をここに証明します。詳細は――――》
「新ゲーム出場!? って事は……」
「本来新ゲームは書類選考・オーディションや、β版のシード権を獲得した方のみの出場でしたが、皆様は裏ゲーム阻止の貢献をしましたので、これも特例で参加を許可します。皆様、当日は御健闘を祈っています!」
これまた意外な因果応報、暴動阻止と地底空間の人々を救った成果が認められ、本戦出場を獲得したゲーム戦士達。
シャッフル・オールスターズからは桐山剣、河合みのり、池谷倭刀、大森穂香、高橋豪樹、畠田レミの六人。
立海遊戯戦団は立海銃司、時実桜、大門史也、フローレン・シェイパー、サーブルズ・シェイパーの五人。
外部からは水谷由香、土屋将司。以上13名がアメイジング・サバイバーモードの出場が確定した!!!
(予期せぬところで新ゲームの参加権を手に入れたが、相変わらず人の心を握るのが上手い奴だ。あれが一年前に裏プレイヤーを地獄に落とした人物と同一なのが不思議なくらいだ)
新ゲーム出場に浮かれる者達とは裏腹に、銃司は改めて鳳凰堂孔雀のカリスマ、並びに人心掌握のセンスに感心せざるを得なかったでしょうが………
彼女の満面の笑顔の奥に隠された本心では、ドス黒い悪意に満ち満ちていた――!!
『やってくれるじゃない、裏プレイヤーのクズ共。―――私の聖域での宣戦布告に、精々後悔しないで下さいねぇ?☆』
―――果たして、鳳凰堂孔雀の企みは如何に。
それはともかくも次回は、いよいよお待ちかね、期待の新ゲーム【アメイジング・サバイバーモード】開催を主軸に致しまして、ストーリー・展開致しますれば、皆々様も楽しみ私も楽しみ! また次回にお会いしましょう・ネクストゲーム!!
一先ずは【GAME38/池谷倭刀・覚醒】、本日で読み終わりで御座いますッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽
▶▶▶ NEXT GAME WARRIORS ▽
――いよいよ開幕、新ゲーム【アメイジング・サバイバーモード】!!
予想外の展開に、読者の皆様は付いてこられるか……!!?
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