【GAME37-2】力と欲に駆られた奴!!
――TIPS――
【ゲーム戦士・プレイヤーステータス】
☆――――――――――――――――――☆
・ネーム:リーフ(大森穂香) ♀
・プレイヤーレベル:44
・ジョブ:『魔導師』
・PAS:【マジックワンド】
[プレイヤーステータス]
・アクション:A・シューティング:A
・ロールプレイ:S・タクティクス:S
・スピード:B・ブレイン:A
・ハート:C・ミュージック:B
・ラック:C
[プレイヤースキル]
・【エレメント・タクティクス】【属性变化】など
[エンブレム]
・『ソロモンの鍵』完全制覇
・『ポケモン不思議のダンジョン』
うんめいのとう 制覇など
☆――――――――――――――――――☆
――地底空間・アンダーグラウンドの街並みは、新ゲーム開催に向けてゲーム戦士達があちらこちらに探索で出向いてごった返し中!
そんな中でシャッフルの倭刀ら一同も、遅れを取らぬと行動に出るが、そこで現れたのは新たなゲーム戦士・綾小路 優。
「ホンマに久々やな優……! お前随分雰囲気変わっとるやないか。何か大阪全域でゲーム大会やら活発に活動してるって聞いてたけど、何か中学あんまし行ってないって聞いたぜ?」
この新たなプレイヤーに反応したのは倭刀。というのも、彼と優は大阪の『大波中学校』に在学している先輩後輩の仲だった。
倭刀は今年に入って剣らの通う『天童学苑高校』に入進学した為、暫くは会えなかったのだが地底の街並みでこのようにバッタリ再会。一年にも満たない月日ではあったが、倭刀にとっては彼のその劇的変化には驚いた。
「……まぁ、僕も色々あったんですよ。倭刀先輩」
槍一郎や剣には後輩として見られる倭刀が、彼を前にして“先輩”とは。ちょっと違和感がありますね。
「それよりも僕が注目したいのは穂香さんです。一年前のアメイジングウォーズで、倭刀先輩とヤンキー騎士らと一緒に異次元の神を倒したって、僕は感激したなぁ!」
「いえそんな……でもヤンキー騎士じゃなくて、桐山剣さんっていう『切り札騎士』や、皆さんがいたお陰です」
そこは修正するんですね穂香さん。
「とにかく二日後の新ゲームで戦えるなんて光栄です。当日は宜しくお願いしますね」
「えぇ、こちらこそ!」
穂香と優、律儀にゲーム前の硬い握手。流石互いに礼儀も弁えていられるゲーム戦士の鑑。
是非見習いたいものではありますけれども……ちょっと待って下さいよ、何やら陰湿な匂いがしてきませんか……!?
「ところで穂香さん、確か神を倒したきっかけを作ったキーカードがあるって話を聞きましたけども、……確か緑属性でEGが①の鳥みたいなカードで――」
「もしかして、《ブルーバード》の事ですか?」
「そうそう《ブルーバード》だ!! 僕そのカードを是非見たくて見たくて……今そのカード持ってます?」
……どうですか皆さん、何か話の筋が合わない気がしませんか? 何故カード見たさに優自らが現れ出て来たのか、それにまだゲーム開始まで二日もあるのに、彼等を待ち構えてかのような出方。
色々ツッコむ所がありますが、倭刀だけがそのきな臭さを感じ取っていた。
「えぇ、構いませんよ。ちょっと待ってね」
そこで倭刀、穂香がデッキケースを手に取り出す前にササッと何やら細工を仕掛けた動作を見せるが、穂香はおろか優にも気付いていない。
その細工時間は、僅か0.005秒に過ぎない。ではその小細工プロセスをもう一度見てみても、時間の無駄なのでそこは省きましょう。
「えーと何処かしら……あ、あったわ」
◎――――――――――――――――――◎
〈ユニットカード〉
【ブルーバード】EG:①
AP:100 DP:100 AS:5
属性 緑 ユニット/バード
・効果:[フライヤー]
①このカードを攻撃する代わりに
EGを2加えることが出来る。
◎――――――――――――――――――◎
50枚のカードデッキから取り出した1枚、緑のカードフレーバーの《ブルーバード》。しかしどことなくレア特有の加工も無い感じがしますが、気のせいでしょうか。
「ありがとうございます! うわぁ、これが《ブルーバード》なんですねー!! ………でもこれ、再録されてレア修正されたノーマルの《ブルーバード》なんですね」
(ノーマル……?)
穂香はどことなく疑問を持ち始めて間もないその刹那。何を考えたか優、急に懐からジッポライターを取り出し、それをカードに近づけて……って何する気!!?
「――――こんな再録カードを宝物扱いするとか、バカじゃないの?」
――シュボッ!
ジッポライター、着火! 可燃性の紙で出来たカードに火が移り、あっという間に黒い灰に変えてアスファルトの地に踏みつけられた!!
「な………!?? なんて事をするんですかッッ!!!!???」
なんて事をするんですかッッはこっちも言いたい!!
人様のカードを破るのも御法度だが、燃やすとは何たる暴挙!! たちまち穂香の緑の眼に溢れ出るは大粒の涙の雨あられ、ゲーム戦士残酷物語!
「なぁに怒ってるのぉ? 良い顔じゃん、涙も滴る良い女ってさ! たかが紙切れ1枚2枚燃したくらいでさぁ!!」
「ふざけないで下さいッッ!!!! このカードは剣さんや仲間に貰った大事な……グスッ、あぅぅ……!!」
穂香が顔を真っ赤になるまで大泣きになるのも無理は無い。あのカードは1年前のアメイジングウォーズで剣らに貰った大切な……あぁ〜こんな事語ったってカードは戻らぬ、悔しやなぁ〜〜!!
「ちょいと姉ちゃん、Mr.Gも落ち着けって! んな事で怒ったって綺麗な顔にシワ付くだけやで。本物のカードはここにあるぜ」
「倭刀まで何を……………え???」
と、そこへしゃしゃり出た救世主! 何と手品かミラクルか、そこには本物の《ブルーバード》!!
「さっきの燃やしたノーマルレアの《ブルーバード》はツッチーさんから貰った替え玉よ。こうなるんじゃねぇかと思ったが、案の定ぴったしカンカンやったな」
「……チッ、すり替えてたのか」
ザマァみろ黄金虫〜!! 本物の《ブルーバード》はカードイラストにきらびやかなプリズム加工が施されたスーパーレア。剣らシャッフルの絆を表すカードは地底の中でも一際輝く。
「あぁ良かったぁ……ありがとう倭刀!」
「むぎゅッッ」
企み暴いて穂香の巨乳に押し付けハグされる倭刀はある意味一石二鳥であった。羨ましか。
「……何だよ、普通の先輩風情が相変わらずヤケに勘が鋭いんだから。槍一郎先輩のマネっすか?」
「雰囲気変わったお前に言われたかねぇ。成金を鼻に掛けてた黄金虫が、見ねぇ内にカメムシみたいな臭い奴に成り下がったのが、俺にはハッキリ分かったんよ!!」
「皮肉にしては酷い言い草ですねぇ。少しは穂香さんみたいに人を信じてみたらどうすか僕みたいなのでも?」
あの優さん、説得力って言葉分かります?
「貴方みたいに悪意に脅かすような人は、私とて信じたくはありません。一体どういうおつもりですか?」
「決まってんでしょう、新ゲームでの宣戦布告ですよ。このゲームを制して、頂点と賞金を手にするのはこの僕だ。貴方みたいな有名人になんか渡すものか!」
――実はこの優さん、大阪の至るゲーム大会を数々制しただけでなく、新ゲームの【アメイジング・サバイバーモード】のβ版・選考大会にて優勝をした形跡も持っています。といっても、名を残す前から金持ちのボンボンがまた賞金稼ぎとはどれだけ強欲なんでしょうかね。
「俺らは別に賞金とか目当てじゃねぇが、んな事言いに来るのもおかしいやろ。……まさか他のゲーム戦士にも同じ事してるんちゃうか?」
「……僕はね、アンタ達シャッフルオールスターズが大阪周辺の人気を掻っ攫ってるのが我慢ならないんだ。その頂点に立つに相応しいのは僕だって事を、この新ゲームで証明してやるのさ」
それって小も……(咳払い)、いやともかく厄介な相手である事は確かであろう。
「そんなに白黒つけたいなら、今ここで決闘するか? 俺がいつでも相手になるぜ」
などと倭刀は血気盛んに優を誘い込む。
「そんな喧嘩の成敗しに戦いはしないですよ先輩。僕が欲しいのは栄光、それに補う力と名声だ。僕はゲームに勝ち進み、多額の賞金と栄誉を全部独り占めしてやるんだ!!」
うーん……何というか、15の青二才が掲げる欲望にしては何分小さい物を感じますが。当然そんな欲まみれの男子に挑発に乗るほど、二人もわざわざ決闘に乗り込む気にはならないでしょう。
「……ホントに変わっちまったな優。そんな腐れ根性でどの面下げてお前の姉の元へ向かう気なんだか」
「なんでバカ姉の名が出るんですか。そんなのと一緒にして欲しくないですね」
「………そうかい。分かったからさっさと消えろよ、鬱陶しくてしゃーねぇ」
「そういう事らしいですね。じゃお二人さん、また新ゲームで。邪魔しましたね」
ホントに邪魔した優は黄金虫もといカメムシもとい、ゴキブリの如く素早く立ち去ったのでした。
「……あんなのに負けたくない。あの子にゲーム戦士のトップを立たせては駄目、戦う力の入れどころを間違っているわ」
「同感や穂香姉ちゃん。こりゃ新ゲームとやらも波乱が起きそうだぜ……!」
早くも前途多難な波が倭刀らに押し寄せるアンダーグラウンド。
新ゲーム開催までトラブルは起きてほしくないと願う倭刀と穂香は、心配で呼びかけた豪樹らの元へ何食わぬ顔で駆け寄り、再び地底の街並みの探索を続けるのでした。
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




