【GAME36-5】紅蓮の遊戯貴族・リミットブレイク！！

　

　――凄まじや、唐紅色の大山女将のＰＡＳ！！

　業火の如し波動が地底に波打ち、波紋となりてギャラリーの者共を圧倒する。

　これには立海サイドの史也とシェイパー兄妹は脚を踏みしめて、波動に吹き飛ばされまいと精一杯踏ん張る。

「ぬにゅにゅ……！ なんてＰＡＳの波動ですの、あの鬼のオイランってば！！」

「こんな凄まじい殺気に満ちたＰＡＳは初めてだ！！」

「……良く眼に焼き付けておけシェイパー兄妹。日本のゲーム戦士は大(・)和(・)魂(・)、命をもかなぐり捨てる覚悟を持っている事を――！」

　進め鬼徹の炎の玉、手加減しません勝つまでは！

　大山女将の仁義を御神酒の酒乱の力借りて、放つは憤怒の鬼形相。眼は紅く煌めき、波動の幻影か額には鋭く尖った一本角。これで金棒一本叩きのめされれば、半殺し程度じゃ済まないでしょう！！

「覚悟は出来とろうな若造。私の10枚の手札でお前さんをシバく手は幾らでもあるさかいに……、即座に黙らせたるわ」

　ＰＡＳスキルを発動した事により大幅にアドバンテージを獲得した大山女将。宝札の内の1枚、何が飛び出すのか。

『ユニットカード、【ヴォルケーノタイタン】！！』

　◎――――――――――――――――――◎

　＜ユニットカード＞

【ヴォルケーノタイタン】EG:⑧

　AP:600 DP:600 AS:15

　属性:赤 ユニット/ジャイアント

　・能力:①このユニットが召喚された時、

　フィールドのユニットカード・

　ツールカードを全て破壊する。

　◎――――――――――――――――――◎

「火山口の溶岩から生まれた巨人は、召喚した際に場のカードを全て溶岩に溶かして破壊させる力があるんよ。――さぁ、お前さんの吸血鬼ユニットとマグナム銃を飲み込んだれや！！」

「くっ……？！」

　地底の層の天井に届くくらいの巨人の溶岩で型取られた巨手が銃司の《ゼータマグナム》と《ソウルテイク・ヴァンパイア》を包み、握りつぶすように消滅した！

「……伊達に高コストを要してないな。まさか武器も含めた全体除去能力とは……！！」

　これには勝ち誇っていた銃司もクールに感心しつつも、首を絞められたかのような焦燥にも駆られる。形勢はＰＡＳの力で容易に裏返してしまう。恐るべし魂の能力！！

「『酒呑童子』とは、能力もまた大胆にブチかますのか……！」

　クールに一驚するは立海参謀・史也。かつて越後国、今の京都は丹後諸島の付け根に位置する大江山にて、人をさらっては喰らう暴れ鬼として、源頼光に退治された事が様々な伝記に言い伝えられている酒呑童子。

　その因果と怨念が廻り廻って糸車、大山杏美の魂にＰＡＳとして宿り、傍若無人なまでの力を発揮させるまでに至った。

　そして今は、鬼以上に傲慢なＷＧＣ・鳳凰堂に友人への弔いも掲げながら、鬼神の如しパワーを発揮しているのだ！

「――どうえ、私(あて)のＰＡＳは？ お前はんも酒呑童子の糧にされとう無かったら、死物狂いで付いてこいや、下衆の青(・)二(・)才(・)が！！」

　変わりゆく盤面の形勢逆転、今度は銃司が大山に煽られる事になろうとは……！

　そんな銃司が鬼に罵られたその瞬間、彼の理性に張り詰めていた一本糸が、ブチッと切れた感覚に陥る。

「―――図に乗るな、外道極まりなしの鬼ヤクザが」

　銃司の眼、紅蓮の瞳孔が極端なまでに縮小していく。そして夢か誠か、周りを囲む白眼が充血して赤くなるどころか黒(・)く(・)、黒の魔眼となりて銃司に禍々しい波動が帯びていく…………！！！！

「周回遅れで廃れた種族風情が、――――この遊戯貴族の立海銃司に、ナニヲヌカシタァァァァァァアアアアアアアア！！！！！！！！！！！！！」

　◎――――――――――――――――――◎

　・ＰＡＳ【クリムゾンマグナム】確認。

　◎――――――――――――――――――◎

　いざとなったら魂を込めろ！！ 対して立海銃司は紅蓮のクリムゾンレッド、【クリムゾンマグナム】が煌めくが……何やら様子がおかしい。

　先程の真っ黒な眼といい、ＰＡＳの波動の色といい。紅蓮の色に黒く染まって、生々しい血(・)の(・)色(・)にも似たドス黒い赤を放っている！！

「――――イマ、俺ノＰＡＳハ限(・)界(・)ヲ(・)超(・)越(・)した。言わばＰＡＳの【リミットブレイク】！！ 貴様の糧になル前に、コノ俺の糧とナッテ貰おウ！！！」

　限界を超越したというよりは……ＰＡＳの凄まじい覇気の負荷によって、暴走ギリギリの粋に達している！！

　それを証拠に銃司の理性と狂気が、隣合わせでぶつかり合っているような言動だ！！！

　彼の内に秘めた“狂気”を開放してまでまで発動したＰＡＳ。一体銃司は何故に禁断の力を使うのか！？

「エエい、騒ぐな俺の狂(・)気(・)よ！ 喰らうなら儀式を済ませてからにしとけ！！ 行くぞ我が下僕、ユニット召喚！！！」

『ユニットカード、【不死の炎のケルベロス】！！』

　◎――――――――――――――――――◎

　＜ユニットカード＞

【不死の炎のケルベロス】EG:④

　AP:300 DP:300 AS:10

　属性:赤/黒 ユニット/ハウンドドッグ

　・能力:[リビングデッド]

　※この能力を持つユニットが破壊された時、

　能力を無効にした状態でフィールドに戻す。

　◎――――――――――――――――――◎

　二つの首を持つと言われる伝説の番犬ケルベロス。悪魔の力を借りた銃司にとっては下僕と呼ぶに相応しいユニットだ。

「今だケルベロス、あの火山木偶の坊をクライツクセェェェェ！！！！」

　獲物を狙って殺意キレキレに指令を下す銃司、ケルベロスの荒ぶる突撃に大山は迎え撃つ。

「……アホかいな、そんなステータスでタイタンに立ち向かうなんざ」

「慌てるなカウンター・レスポンスだ！！！」

　やはり隠し持っていた銃司の追撃カード、スキャン！！

『アクションカード、【タイタンの闘気】！！』

　◎――――――――――――――――――◎

　〈アクションカード〉

【タイタンの闘気】EG:①

　・効果:[カウンター]

　ユニットの攻撃・ブロック時

　①ユニット1体を対象に攻撃終了まで

　APを300アップする。

　◎――――――――――――――――――◎

　〔《不死の炎のケルベロス》AP300→600 破壊！！〕

　アクションカードにより大山のタイタンのDPと数値が並んだ！ 相討ちだ！！

「バカめ、我が下僕を甘く見るな！ ケルベロスの墓地起動効果［リビングデッド］発動！！」

　リビングデッド、即ち『生きている屍』を意味する能力。不死を象徴する蒼き炎に包まれて、破壊された筈の《不死の炎のケルベロス》が再び息を吹き返した！！

「……しつこいなぁ、死に損ないの犬が――！！」

「死に損ないは貴様の方だ酒呑童子。俺(・)の(・)狂(・)気(・)も貴様を殺りたくてウズウズシテンダヨ………！！！」

　――酒呑童子と悪魔、互いに本気を出す為にＰＡＳの魂を開放したこの決闘。

　地底空間にヒートアップする頂上決戦。魂に宿したその誇りがどのようにゲームを語るのでしょうか？

　この続きはまた一旦下がってまた次回、本日のゲーム、これまでッッ！！

　▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽