【GAME36-3】黒すぎた末路……!!
――TIPS――
【ゲーム戦士・プレイヤーステータス】
☆――――――――――――――――――☆
・ネーム:sabre (サーブルズ・シェイパー)♂
・プレイヤーレベル:45
・ジョブ:『フェンサー』
・PAS:【サーブル】
[プレイヤーステータス]
・アクション:S・シューティング:A
・ロールプレイ:A・タクティクス:A
・スピード:S・ブレイン:A
・ハート:A・ミュージック:A
・ラック:S
[プレイヤースキル]
・【ニードルスティング】【クリティカルの心得】など
[エンブレム]
・『ブロックス』フランス公式大会優勝
・『ゼルダの伝説時のオカリナ』100%クリアなど
☆――――――――――――――――――☆
――鳳凰堂孔雀らWGCに復讐を仕掛けた小原恵美。
対して鳳凰堂は、破格の条件としてゲームを用意し、そいつにクリアすれば友人の河合麗子をWGCの管理者の座から復権する約束を仕掛けた。
本邦初公開のゲームワールド転送ヘッドギア【GWギア】が、反旗を翻さんとする小原の頭部に装着される。
「今から小原さんには『特別エリア:D-666』に転送させて頂きます。貴方はギアにアメイジングのカードスキャンブレスをセットして、右モジュールの送信ボタンを押して転送して下さい」
「何だよ、ゲームってのはアメイジングをやるだけかい。ならば事更やらな総長が廃るってもんだ」
威勢を張るのは結構だが、乱暴者にも五分の疑いあるようで、未知の器具を恐る恐る触れながら送信ボタンを長押しした。
「――ダイブ・オン!! 『TRANSFER』!!!」
その刹那、ギアから浮き上がる水色の電脳回路が脈打つように起動され、小原本人は生気を吸い取られたかのような抜け殻状態になった。奴の全神経が電脳世界へと誘われゲームワールドへと転送された証だ。
第三者から観ると、椅子に座られたまま転送していった小原の様相にサスペンスドラマのような既視感を覚えたが、我々もこれを利用する際には誤解されそうで複雑な感情が浮かんだ。
……しかし、俺たちが笑ってられるのはここまでだった。
「……小原さんが無事ゲームワールドに転送成功された模様です。会場の皆様方はメインステージのモニターにて転送の様子をご覧下さい」
鳳凰堂がステージの巨大モニターに注目を集めると、画面が一転し遠隔でゲームワールドのエリアの様子が映し出された。
そこには転送後の感覚に慣れずに戸惑う小原の姿と、廃墟のような風化寸前の建造物が並び、昼下りの時刻だからか陽の光が直線に指す情景であった。
「――小原さーん、聞こえますかー?」
『……あぁ耳元から聞こえてるよ、ネコ撫でしたお前の気味悪い声が』
「……先方に1枚の光るカードが見えますか?」
小原の前方、一直線300メートル程離れた先には煌めく1枚のアメイジングカードが。
「ゲームは至ってシンプル。あちらにあるカードを取るだけで貴方の親友の河合麗子さんは、私と代わってWGCの管理者に返り咲き。無論その責任は私が全て請け負います」
……舐められている。誰もがそう思えた単純ゲーム。しかしそれを転じて真っ先に無理ゲーであると理解したのは史也兄だった。
「……銃司、見てみろ。あの建物に隠れた銃口」
「――! ……成程、末恐ろしい奴だ鳳凰堂孔雀め」
俺も史也兄に促され確認し、改めてドス黒さを思い知らされた。
廃墟の影・隙間から覗くのは、最大級の20ミリ口径を誇る大型ライフルの銃口。それも数百のスナイパーが小原を狙わんと構え筒の状態。もし視界に入れば……標的は跡形も無く消える。
それを小原が気付かない筈も無い。無限の殺傷力は直面せずとも気配でその威圧に察したのだろう。
(は、嵌められた………!!!)
河合麗子の復権を掛けた一直線のロードに、オーバーキルのライフルが両隣合わせ。突っ走るにも無謀この上なし、更に最悪な事に小原のアメイジングデッキに、それを回避するカードが備わっていなかった。
(ふざけんな誰がやるかこんなクソゲー! 逃げてやる)
その時小原は手探りでこの処刑場から逃げようと、プレイギアからログアウトをしようとした。しかし……
『…………嘘だろ、ログアウト出来ない―――!!!!』
掛かった獲物を逃がすほど鳳凰堂は甘くはない。転送されたエリアにロックを掛け、小原を袋小路にして強制的にゲームをさせるつもりであった。
「……あら、どうしたのですか小原さん。もしかしてこの期に及んでゲームを辞めようだなんて思ってませんよねー?」
『お前頭おかしいのか!? こんな無理ゲー強要させて止めない訳ねぇだろ!!』
「――――河合麗子を復権させるなどという時代錯誤な考えを持った貴方が、大馬鹿だっただけでしょう?」
『!!!!』
罠の中に入った時点で手遅れ。鳳凰堂が小原恵美を呼び寄せ、口車に乗せて処刑ゲームに誘ったのはブラックリストに載っていた小原の始末をゲーム戦士の前で見せしめにさせる為であった。
俺や瑞鳳旋風堂らは知らなかった様だが、小原に対し良く思って居なかった他のゲーム戦士らはこの処刑に否定すること無くその様を見守る様だ。悪趣味。
「もう暴力や権力で翻弄する時代は終わったのです。貴方らに被害を被った一般のプレイヤーも、近いうちにその脅威と戦う時代が来るでしょう。
その前に貴方は私がそれを証明する暁として、ゲームに敗けてくたばってくださいな☆」
「てんめぇ……ふざけんのも大概にしろよオラァ!!! お前は今まで築き上げた権力も、ゲーム時代の歴史も全て変えて無かった事にするつもりか!! 培ったものを全て無意味にするのが上に立つ者のやり方か!!!!?」
「―――私にとって“無意味な存在”というのは、人の涙と悲しみを顧みず、いい加減に力だけ振る舞うような麗子さんと、お前の事を言うのです………!!!」
―――こころなしか俺はあの時、鳳凰堂孔雀の圧に押し潰されるような苦言の中に、何やらドス黒い怨念のようなものを感じた。
小原恵美に既に弁解も打破の余地すらも無く、八方塞がりの状態となっていた。
もう後は仮想空間で無様にゲームに敗れるしかないと悟った彼女は、心に底深い絶望と自暴自棄にも似た精神の崩壊を起こし始めたと同時に、我を忘れてデッドロードへと突き進んでいった。
『――――――――ガァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!』
怒り狂った野獣の叫びは、その直後に一斉砲撃されたライフルの爆音によってかき消されたと同時に、陽の光照らす地べたにそのまま尾羽打ち枯らした。
〔小原恵美 999999ダメージ! OVERKILL!!〕
カンスト級の射撃ダメージを受けた小原、その刹那に現実世界では。
――ビリリリッ、バンッ!! バリバリバリ!!!
装着していたGWギアがオーバーヒートの影響によって電流迸り、爆破音を立てる。その直後に映し出されたモニターからは映像は消え、GWギアの機能は停止した。
「……もう宜しいでしょう。外してあげなさい」
鳳凰堂が指示すると、役員は小原の装着していたGWギアを外す。
「「「…………!!!」」」
俺達3人はそこから現れた小原の様相に絶句した。
そのメットから現れた小原は両目の集点が合わず、虚ろになり、半ばヨダレらしき液が口から出て、明らかに失神していた。……いや、早い話がGWギアのショートと精神的ショックで脳神経をズタズタに引き裂かれたような廃人同様の無様な姿であった。
――その後、駆けつけた救急隊によって小原は精神病院に搬送された。負傷した理由を聞かれると故意に『GWギアによる予期せぬ事故』と鳳凰堂が片付けて事なきを得た。
……だがこの件よりもっとイカれてると思ったのがギャラリーのゲーム戦士達。
瑞鳳の連中はまるでこの結末を知ってたかのように呆然のする輩もいたが、中には下種者が片付いて清々した者や、パパラッチを装って記事を書く者も居た。
相手は暴力と迷惑の限りを尽くした族とはいえ、周囲はあからさまな悪意を感じさせる一景であったが、俺にとって印象的だったのが、事件を片付けた後で締めに語った鳳凰堂の言葉だった。
「ご覧頂けたでしょうか、ゲーム戦士の皆様方。今や時代は、悪行高き者をもゲームで制圧出来る時代です。特別な資格も家柄も無く、同じ土俵で脅威と戦い、勝つ事の出来る時代です。そう―――
………戦わなければ、この時代は生き残れませんのですから」
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「――――というのが、俺が目の当たりにした事件の全てだ」
立海銃司の、長ーーーーーーーーい語り回想はこれで終った。
満を持して本職の語りに戻った私Mr.Gが、傾聴していた大山女将の様子を伺えば、
「…………………」
何を思うか、沈黙が彼女の真意をグレーにさせる。
この惨劇に何を思い、その末に大山女将の意思を動かすのでしょうか……?
――本日のゲーム、これまでッッ!! ……あと銃司さん、三回分の語りお疲れ様でした。
「うむ、次は乗っ取るつもりでやるからな」
それだけは勘弁してくださいッッッ!!!!(泣)
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




