【GAME36-2】裏プレイヤーからの復讐!!
――TIPS――
【ゲーム戦士・プレイヤーステータス】
☆――――――――――――――――――☆
・ネーム:fleuret (フローレン・シェイパー)♀
・プレイヤーレベル:42
・ジョブ:『フェンサー』
・PAS:【フルーレ】
[プレイヤーステータス]
・アクション:A・シューティング:B
・ロールプレイ:A・タクティクス:A
・スピード:A・ブレイン:B
・ハート:S・ミュージック:B
・ラック:SS
[プレイヤースキル]
・【蝶の蜜集め】【虫の知らせ】など
[エンブレム]
・『マラケシュ』フランス公式大会優勝
・『ハイパーチェス』15連勝など
☆――――――――――――――――――☆
「全く、やっとあたいの出番かい。アンダーグラウンドのゲーム戦士を待たせるとは随分偉くなったもんだなWGCさんよ」
WGCの主催するイベントにて特別ゲストと称してステージに登場したのは、当時でもあまり見られなかった地底空間・アンダーグラウンドのゲーム戦士、裏プレイヤー代表格の小原恵美(30)。
「……光照さん。どなたですかあれ? 随分派手な衣装してますが」
「あー、ありゃ暴走族って奴だよ綾乃。ほら夜中にブンブンバイク走らす迷惑なの」
宮城の瑞鳳旋風堂の面々は、あまり暴走族に馴染みが無いらしい。
――大山が西の裏プレイヤー女将ならば、小原は東の裏プレイヤー女総番長と呼ばれていた。
というのも彼女は、関東では悪名高い暴走族『大原族』の総長でもあり、族を引き連れては東名高速やら公道やらに数百台のナナハンを走らせて、平民に恐怖を植え付けていた迷惑千万な奴である。俺もあの馬鹿共に何度安眠妨害させられた事か。
だがこの近未来、超次元ゲーム時代に学ランハチマキの典型的暴走族は……時代遅れを身体で表現してるようなものだった。
そいつがゲストなど、我々を楽しませるどころか修羅場になりかねん奴を呼んで何をするつもりか、俺は黙って拝見した。
「……おーおー、名誉あるゲーム戦士の観客がこんなに揃ってれば十分だぜ。約束はちゃんと守ってくれたようだな鳳凰堂」
「えぇ、当然の事をしたまで」
鳳凰堂が自ら暴走族の親玉を呼び出すとはどうもきな臭い。小原は鳳凰堂とWGCの本宮社長に物申したい事があり、それも兼ねてイベントに招集する事になったんだそうだ。――この時点でまさかとは思ったが。
「いい加減にしろよWGCのお偉いさん共。三年前の【ゲームワールドの大凍結】の事、役員を取っ替えて忘れようったってそうは行かねぇぞ?」
――“ゲームワールドの大凍結”。
電脳世界の機能が凍結停止し、そこに転移したプレイヤー達が帰還も出来ず、危険に晒されたという忌まわしき事件。要するに奴はその事件の被害者の一人という事か。
「麗子の親友までも消滅させ、長年ゲームワールドの管理に努めてた麗子自身も引きずり降ろして今はこのザマか。落ちぶれたもんだなWGC、もうあたしゃ我慢出来ねぇ。――ぶっ飛ばしてやるよ!!!」
読者の諸君にはピンと来ただろうが、麗子とはあのシャッフルの河合みのりの母・河合麗子の事。
どうやら小原は親友関係であった麗子と、その友人を消された事でWGCに恨みを買っていたようだ。その怒りに対して本宮社長は淡々と説明する。
「親友とは幽亜浩子の事か。彼女はゲームワールドの大凍結を引き起こした主犯。そして河合麗子はその責任を負って左遷させたまでだ。因果応報、当然の報いと我々は考えるが?」
「んな事知った事か。どのみちあたしがここに来た目的はただ一つ。―――WGCの代表取締役社長であるアンタを、叩き潰すだけだ!!!!」
その時小原は、懐の学ランに隠していた“ドス”と呼ばれる小太刀を抜いて本宮社長にその刃を向けた。
他のギャラリーなるゲーム戦士達は一驚したものの、ゲームでの修羅に慣れてる為か泣き叫ぶようなパニックは起こさなかった。
「殺しはしねぇよ、一片社長と鳥目女のデカい頭に血を流して、管理者の称号を再び返上させて貰う。ゲーム戦士のギャラリーがその無様を証明させてやんよ!!!」
……どーにも聞いてると復讐の仕方も単調というか無用意というか。俺には違う意味で命知らずと思った。
それを証拠に本宮社長、慌てず騒がず想いに更けて説得の手に入る。
「それで私と鳳凰堂を傷つけた後で、お前は何をする?」
「何って……麗子を管理者に戻すって言ったばかりだろ」
「戻すと言うからには、この時代の課題を改善する手段があるのかと聞いてるのだ。変わりゆく時代に沿った政治方針を打ち立て、提示せん事には管理者の席を戻す事は不可能だ」
「そんなの………麗子が適当に打ち立てりゃイイ話だろうが、馬鹿か?」
―――さて、馬鹿はどっちの方だろうか? 読者の諸君とてもう理解は出来てる筈だろう。
そしてそんな小原を見かねた本宮社長は冷徹な眼を、鳳凰堂に向けて言い放つ。
「―――鳳凰堂、この者の始末は貴様に任せる」
「……承知しました」
この時本宮社長ははっきりと自らの口から始末という言葉が飛んだ。そして社長は会場から離れて立ち去っていった。
「………な、オイ!? 逃げんのかこのクソ社長!!!」
立ち去る社長を追うように小原はドスを片手に突き刺そうとするが、
「い、痛ァァァアアアア!?!!」
その手は鳳凰堂によって差し押さえられ、彼女のか細い手からは想像出来ない物凄い力でドスは地面に落とされた。
「……小原さん。貴方も三下のチンピラみたいな真似は止めてくださいな。叩き潰すのなら私も対象に入っているでしょう?」
「……あぁそうだな、多少順番が入れ替わった所でやる事は変わらねぇ。お前もアンダーグラウンド出身なんだし、そのまま地底の底まで突き落としてやる」
「構いませんよ。それなら今の貴方に打って付けなゲームが用意されてるのですが……」
「ゲーム? なんだいやっぱゲーム戦士同士で正々堂々――」
「やるのは私とではありません。―――現在開発中の新型ゲームワールド転送ヘッドギア・【GWギア】を特別に一番乗りで装着させて頂きます」
「……は、はぁ!!?」
――我々ゲーム戦士が、電脳世界ゲームワールドに飛び込むのに使われる転送器具・GWギア。
それまで己の五体をそのままデジタルに転送され飛び込んでいた電脳世界、改善策として身体の危険などを配慮しつつ開発させたのが、身体ではなく全神経を転送させる用具だった。
現時点でVRゴーグルといったギアの道具は決して珍しくは無かったが、メタバースの世界を全く新しい感覚でフルダイブする体験を設ける為にこのイベントを期に先行公開させたのだ。
「このGWギアはこれまでのゲームワールドと同様に、頭部にセットするだけでメタバース、即ち仮想の世界を体感させる事が出来ます。貴方には特別に閉鎖されたゲームワールドのエリア一部へと転送し、そこであるゲームを行います。それにクリアすれば……河合麗子の管理者復任を約束しましょう」
「何……? いや、何か胡散臭いな。お前自らが用意したゲームなんざロクな事にならねぇだろうぜ。てめー自らが相手になってやりあったらどうだ!?」
好き勝手暴走してる族は、やたらに一対一の真っ向勝負だとかに拘るのは俺も知っていた。時に今は復讐の対象となっている鳳凰堂側にゲームを持ち込む事など、彼女にとっては舐められてると思われたようだ。
「あら、せっかくのビッグチャンスなのに。ゲームにクリアするだけで友人の名誉が回復するんですよ? ……それともあれですか? 貴方は『正々堂々』とか『真っ向勝負』とか条件付けないと張り合えない程に肝っ玉が小さいんでしょうかぁ〜!?」
故意か真意か、鳳凰堂のドス黒い何かを持ち出したかと思えば、人の神経を逆撫でて小原をゲームに誘い込んで来る。単細胞には持ってこいの典型的煽りだ。
「て、てんめぇ〜〜〜!!!? だったら受けてやんよお前のゲーム!! クリアして面目潰して後悔するなよ鳥目野郎!!!」
とうとう奴は敵である相手にGWギアを受け取り、ゲームを受ける事となった。
……もう俺には現時点で罠に嵌められているのが目に取るように分かっていたが、あの時見物した我々が何故事件と呼ぶ程に脳裏に焼き付いたのか。
――それはゲームが引き起こした末路が物語っていたのだった。本日のゲーム、これまで。
『おっ? 何やら銃司さんの語りも様になってきましたね』
どうも喋ってると調子が良くてなMr.G。気に入ったから回想後もずっと俺の語りで進めてもらう。
『それだけは止めてーーーー!!!! 次回で回想終わりですから私に取っといて下さいよ!!』
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




