【GAME35-3】類は時して決闘を呼ぶ!!
――アンダーグラウンドにて、貴族と極道との道譲り!
しかし互いにプライドが高すぎ血の気も多すぎで、相性最悪の同属が戦争寸前の危険域に達そうとしていた!
己のプライドを守らんと通せん坊、それを頑なに守ろうとするは極道は大山組の女将・大山杏美。
そのプライドをも退けどけと言わんばかりに、強行突破を図ろうとする傲慢な遊戯貴族・立海銃司。
これらの戦争を回避するには至ってシンプル。裏プレイヤー率いる大山組の縄張り、B2・B3層からの即刻退去ただそれのみ。互いの面子を守り合う唯一かつ良心的な手段だ。
(確かに語り部の仰る通り……仁義を貫き通してまでここを守護している大山組を、我々が敵に回すのも馬鹿げた話。大分タイムロスにはなるが今に始まった事ではない。諦めて別ルートで穂香達のいるB1層に行くのが得策だな)
等と参謀らしく史也は知恵を働かせて理想のケースを作成し、それを実行・成功への順路を組み立てる。
これを回避したとして、シャッフルに合流する前に出来る限りこういった地底での裏情勢を知るべきと、智謀らしき案も浮かび上がる。そして史也は交渉に乗り出した。
「ならばこうしよう大山組の諸君。私達は君達の意に従うとして、その代わりに対価を頂く。君達裏プレイヤーの持つ情報を」
「却下ッッッ!!!!」
……もう皆さん、前回の時点でご察しでしょうが。参謀の交渉をも打ち破る、傲慢城主の拒否宣言。
「弱者が道を開けるのが俺の道理だ。つまらん事をゴチャゴチャゴチャゴチャ言う前にさっさと俺の前から退かんか、指詰め極道共!!!」
やはり血のように赤く染めた城を携える城主に交渉は皆無か。脳筋な上方に尽く計画を崩された史也はとうとう頭を抱えた。
「史也様、どうしたのですの!?」
「何処か具合でも悪く致しましたか!?」
「頭がすこぶる痛い」
シェイパー兄妹、史也さんにバファ◯ンでも飲ませてあげなさい。
「何だい結局聞いちゃくれないのかい。私は出来れば穏便に事を運ばせたかったんだけどねぇ」
極道の女将に穏便の言葉が出るのは意外ですが、勿論それに違和感を持ったのは他ならぬ傲慢城主。
「……穏便、か。変わり果てたな、仁義に命を賭ける極道ともあろう御方が。お天道様を拝める地上で散々好き勝手に大衆の中でのさばって天下を気取っていた輩が……所詮はガラクタ山の大将か」
……あらやだ、何か不穏な空気が流れてきましたよ。
「……煽ってるとこ悪いね。私もこの時世で仁義の他に色んなもん背負っちまった立場さ、もう好き勝手暴れられるような身分じゃないんよ」
等と時代の流れに託けて挑発には乗らんと自称する大山さん。しかし城主はそれを止める筈が無い。
「ならば俺が落とし前とやらをつけてやろうか? 指詰めるなんざ生温い、立海流のロシアンルーレットでNOも言わさず楽に黄泉へ逝かせてやろうか。己の面子を保ちたい一心で説得なんざ、都合の良い列強種が居たものだ!!」
「人の話聞いてるか若いの? 私ゃ裏の奴等の為の面子を守りに徹してるだけだ、貴族との喧嘩なんざ更々……………あ〜、そう言う訳かい」
と大山さんは頑なに説得しようにも埒が明かないと悟り、次第に銃司が挑発する意図を理解し始めた。
「アンタ、この私とガチ喧嘩したくてウズウズしてんだろ? んなガキの喧嘩に乗せられるもんやないと分かっちゃいるが、こうもしつこいとねぇ……!」
「単細胞がやっと気付いたか。祭りと喧嘩が華と謳う極道が属の敵相手に何を躊躇っている? 俺は遊戯貴族だ。強さをこよなく愛し、絆を尊ぶ誇り高き種だ。
―――お前ら嘘が大嫌いな極道よりも、魂に誠実で真っ当に生きるこの俺を舐めるなクズ共!!!!!!!」
―――この時銃司は故意かクソ正直か、極道が一番嫌いな【嘘】というコンプレックスまでも踏みにじった。
極道の本質を抑えてまで守る面子そのものが偽りだと、銃司に罵られた大山さんの心の何処かにプツンと音を立て、その刹那に吹っ切れた。
「―――――アッッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…………!!!!!!」
地底に木霊する大山女将の豪放磊落な笑い声。それはここ数年魅せなかった清々しい笑い、その威迫はあの酒呑童子にさも似たり。
「アンタ中々面白いやないの、気に入ったよ!! 逃げも隠れもせず真っ向から私に喧嘩を売るなんざ何年ぶりだろうねぇ、ワクワクしてきたわ! ――――だが!!!!!」
刹那に大山女将の眼光に放つは鬼の形相。これには生半可なゲーム戦士の殆どが卒倒して口から泡吹くまでに恐ろしい威圧を放っている!!
「私ゃね、お前さんの誇りの為思うて説得してやったさかい、それを勝手に曲解し無碍にしてコケにされるんわ自惚れも甚だしいとちゃいまっか若造ォ??」
キレて喋り方まで変わってらっしゃる!? 関西の方言だが、どっちかと言うと京都は京言葉に近い方か。
「ええよ、受けたるわお前さんの決闘。私は荒くたいし手加減は嫌いや。力強うて死にはっても恨むんやないよ!!!」
とうとう怒り心頭、逃げ道はもはや何処にも無い状況に恍惚の笑みを浮かべる銃司。
「やっと着火したな。極道は口よりも手先で説得するに限る。……史也兄、ここで止めようなんて興醒めな事はしないよな?」
「………もう勝手にしろ。お前はホントに核弾頭以上に危険なお荷物だ、全く」
はい、私も同意でございます史也様。
「「だ、だい……大丈夫なのですか(ですの)……!??」」
「それは私にも未知数だ。元々大山組は京都を代表する名高い極道、即ちWGCや鳳凰堂とも渡り合った輩が並大抵な相手では無いという事だ」
そんな相手と知ってか知らずか、煽り極振りに喧嘩を売った銃司。有り余ったパワーを出さんと奮起してはアメイジングの新型召喚機【ACS・マグナサモナー】、アサルトガン型召喚機を携えて決闘の時を待つ!
「では決闘の儀に従いアンティを決める。俺が勝ったらこの道を俺に譲れ。そして立海遊戯戦団の名を、その脳裏に刻み込むが良い!」
「じゃ私が勝ったら……それこそ極道の落とし前付けさせんとなぁ。両手両足の小指4本ずつ詰めてから退散しぃや」
おぅ……極道側らしき何というアンティか。思わず身震いする賭けに、まさかの倍プッシュが!?
「指詰めるならば俺は追加で貴様らの持つ情報とやらを一滴残らず全部吐いてもらおうか!!!」
「なら私も追加や、清酒『鬼ころし』一升瓶10本一気飲みさせて貰おか!! 死んでも責任は取らへんで!!!」
「良いだろう!!!」
良いだろうじゃないですよ!!!? 明らかにアウト終点なアンティに乗ってますよ銃司さん!!!
「ちょ……大山の姉御ぉ!! 幾ら情報を出せっても全部はヤバすぎますって、鳳凰堂も監視されてるのに!」
「いい加減にしろ銃司! 私達は穂香らの手助けに城を離れてここまで来たんだ、無謀なアンティに乗ってその後の責任はどう取るんだ!?」
「「勝てばどうって事ねぇだろうが!!!!!!!!!!」」
………モウワタシャシーランゾー……(白目)
「……バファ◯ン、また飲みますか史也様」
「いや、今度は正露◯だ」
極道VS遊戯貴族、もうどうにも止まらない乱暴者どもの決闘!
かたや棍棒、かたやアサルトガン。両者ACS印の新型召喚機を携えてVRフィールドを展開。半径200メートルの半透明な戦場が二人のゲーム戦士を包み込む!!
「ほな、始めましょか! 大山組女将・大山杏美、通称【酒呑姉御のオオヤマ】!!」
「――立海遊戯戦団・第21代立海城主・立海銃司、人呼んで【紅蓮の狙撃手】!!」
「「いざ、尋常に……! アメイジングバトル! READY!!」」
『――――START UP!!!!』
激闘炎上間違いなし! パワー全開のアメイジングバトルがいよいよ始まる!! 本日のゲーム、これまでッッ!!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




