【GAME35-2】貴族VS極道・強者どもの激突!!
――アンダーグラウンド、暗がりの地下へ住もうものなら灯りの一つや二つ、それ以上あっても足りないほどに光が恋しくなる地底空間。
しかし灯火ならまだしも、花火のような明かりを見たらばご用心。もしそれを地底で観たというのならば、それはゲーム戦士達の決闘の合図。
そして今、その決闘が行われるか否かの瀬戸際がこのB3層にて繰り広げられようとしていた! ――裏プレイヤーの女将と、遊戯貴族。同族嫌悪な者達によって……!!
「おやおや……ご機嫌麗しゅう。関西を中心にチンピラ共を牛耳ってたガラクタ山の女将がこんな地の底で出逢うとは」
「そっちこそ。アンタんとこの兄貴が死んでから興味は薄れちまったが、弟が今の立海家の城主になってたとは。面白いもんが見れたもんだ」
……えー、何でこのような展開に陥ってしまったのか。私が順々に説明していきましょう。
▶▶▶ PLAYBACK▽
――【GAME22】にて河合みのりの必死の頼みに感化されて、立海遊戯戦団も間接的にシャッフルオールスターズと協力する事に合意した銃司。
最初は様子を見て先にメイドの桜に出陣させ、樹海に迷い込んだ剣とコンタクトを取りましたが、その後で参謀の史也も自ら出動サインを出した。
彼曰く、『地底空間・アンダーグラウンドで私にやるべき事を行う時が来た』んだそうです。
当初史也は一人で地底に行こうとしましたが、銃司は退屈に痺れを切らして彼と同行すると聞かなかったそうで。傲慢城主に留守番なんて癪でしょうしね。
―――そこで地底に赴く際に銃司・史也に加え、護衛としてシェイパー兄妹のフローレン&サーブルズの四人で千代田区の片隅に設置されたアンダーの門へと向かった。
史也の地底に赴く動機を聞いたところ、丁度穂香と倭刀が警察署から地底の黒パスポートを手に入れた情報をいち早くキャッチし、そこで彼女らとコンタクトを取るために極秘で手に入れた黒パスを用意し向かったのですが、ただ一つ問題が御座いまして。
「しかし、どうやって史也様の御友人の穂香さんらと合流するんですか?」
「そうですの。彼女らは大阪の住民、東京側の私達には会うにも距離がありますの!」
等とシェイパー兄妹揃って不安になるのも道理。地底経由で東京から大阪までどう行くかと尋ねたところ、史也にはちゃんと答えが用意有り。
「実はな、地底空間の各箇所には転送装置が用意されているのだ。アンダーグラウンドの住民の技術を総結集したワープゾーン。これを使えば東京から大阪への地底内を瞬間移動出来る。我々はそれを利用して合流する」
表の人よりも裏の住民の方が技術力が高いとはこれ如何に。底意地の強い地底の住民が設置した転送装置が各箇所に置いてあり、中には東京を大阪を結ぶワープゾーンがあるのだという。これなら新幹線を使わずに交通費が浮きますな!
「別にケチしたくて使うんじゃない。行動時間の節約故だ」
時間は金よりも価値がある、とは言うように迅速な行動を心掛ける史也。当然銃司もかつての協力者であった穂香らと対面したくてうずうずしていた。
だが残念な事に、銃司の短気かつ傲慢な性格で先立った行動が、史也の計画を大きく狂わせる事となった。
「……ん、史也兄、転送装置だ。それに《東京→大阪》と看板に分かりやすく書かれてるではないか。よし俺が先に進もう」
と銃司は誰よりも先に渦を巻くパネルの転送装置に足を踏み入れようとしたその刹那、
「―――あ、待て銃司!! そこは我々の行く所とは別ルートのワープだ!!!」
―――ビシュンッ!!
……と、呼び掛けたが既に遅し。転送の後先、トランスファーの回路を駆けた青い弧線が残るだけ。そして彼が向かった先には……
「………おっと。歓迎するには殺気が強すぎるな下種共め」
「「「「なんだぁ貴様ァ………!!!!」」」」
どうやら銃司が踏み入れたワープ先は確かに大阪の地底なんですが、不運にも治安悪しと有名なB2層にダイレクト転送。悪名高い裏プレイヤー達に縄張りを汚されたと束になって銃司を始末しようとしますが。
「頭が高いッッ!! 遊戯貴族に対し気安く触るな無礼者!!!!」
……と史也達が遅れて転送された時には、裏プレイヤーは地獄寸前に落とされる程に銃司に返り討ちにされた。
その騒ぎを聞きつけた裏プレイヤーの女将、大山組の大山杏美が一升瓶片手に向かおうとした矢先、既にB3層へ突き進んでいた銃司らと直面したと、こういう訳なのです。
▶▶▶ NEXT▽
「随分長い説明だったな。また字数多くなるぞこれは」
「そんな事よりも物凄い殺気ですよ史也様。これが噂に名高い裏プレイヤー達ですか……!」
「あわわわ……こんなに沢山、それでも真ん中に立ってるオイランな服の女の人、すっごい怖いですの〜〜!!」
フランス人にも花魁の文化は分かるんですかね? しかしそれ以上に禍々しい殺気を感じ取ったシェイパー兄妹は慣れない空気にたじろぐ。
「怖いのも無理は無い。あれが日本でいう『ヤクザ』、暴力と仁義で名を語る極道の一種だ」
冷静に説明してる史也さんも史也さんでしょう……ヤクザなんて語るのも怖いんですから私だって!
「全く面倒な事を起こしてくれたな……関西地区で名高い極道ゲーム戦士が、地下の用心棒をやってるとは……」
大山さんはB2層にてやられた裏プレイヤー達の仇を討たんと落とし前をつけに銃司らの元へ来たのだが、逆に銃司の方が血気盛んにそちらに向かったので好都合。
似た者同士が御対面という状況、無事な裏プレイヤー同胞も大山さんだけが頼りに仇討ちを願うばかり。
「大山組が一同で俺を出迎えとはなんと手厚い歓迎か。しかしな、俺は貴様らなどに興味は無い。さっさと道を開けろ下郎共、特に貴様のデカい図体が邪魔だ。ダイエットしとけガラクタ女将」
なんと命知らずで極振りな煽りだ……!
「まぁまぁ若いの、元気通り越して血の気が多くて結構だが少しは私の話を聞いておくれよ。私はねあんたらにこの道を渡す気はサラサラ無い。悪いんだが引き返してくれないかい?」
威圧が凄いが懐は広い大山の女将さん! 暴力ではなく説得で話に応じようとする辺りは銃司よりは断然大人。対してじ
「断る」
……私が語り終わる前に、二文字で片付けちゃった。
「俺は強者の分で制約やデメリットがつき纏おうと構わんが、『道を通るな』というルールは聞いたことが無い。特に無法地帯と言われるアンダーグラウンドなら尚更だ」
「……確かに。ここは荒くれ者の溜まり場である事は否定しないし、余所者の出入り制限なんざ、私の下っ端が勝手に決めつけたもんだ。
だが書類や憲法がそう書かれんでも種族としてのタブーとか暗黙の了解ってのは、貴族であるアンタらも分かってんだろう?」
「知らんなそんな肩苦しいものは。貴様ら下等物が勝手に決めたルールが遊戯貴族も縛る気か? ふざけたジョークだ、片腹痛いわ」
……なんか、銃司さんかなり荒れてますね。似た者同士故の嫌悪か、はたまた出番が無かった事の憂さ晴らしなのか?
「良い選択肢だが正解は前者だな。銃司は気まぐれで傲慢で好き嫌いの多いクソガキだが、それ以前に貴族と極道は相性が悪いのだ」
城主に対して随分思い切った評価ですね。
貴族と極道、同じ位の高い職でも東西とも和洋とも異なる。更に仁義やら絆やらとなまじ根の本質まで似てるのだから余計に気に食わない。
これを四字熟語に例えると【同属嫌悪】と言います。
「もっと言うとアイツらは『ゲーム戦士の中じゃ俺が頂点だ』って譲らないからな。嫌悪が険悪を呼ぶ最悪のケースだ……だが!」
「「ふ、史也様!?」」
と、ここで史也。何を考えたかシェイパー兄妹の静止も振り切って大山さんと銃司の間に割った。
「銃司、少しは譲渡しろ。私達の目的はシャッフルオールスターズとの手助けだ。仮にも彼らの本拠地である大阪で暴れたら、後々彼らの立場も危うくなるのが分からんのか」
「分かっているさ史也兄。だが譲渡はコイツらが先にしてからだ」
史也さーん!! 銃司全然分かってませーーん!!!
「これは、駄目かもしれん……」
あわわ……参謀の史也さんが折れたら戦争必須だぞ……! どないしょどないしょと私が慌てたその時。意外にも穏便な裏プレイヤーの一人が救いの声を差し伸べた。
「シャッフルオールスターズ……? あ、そーいえばそのメンバーの二、三人かB1層に居たような。ここB3層だから、また登って戻んないと」
「ほぅ、所在もメンバーの状況も知らんから鳳凰堂孔雀の元で直接聞こうと思ったが、手間が省けた」
アンタB7層までマジで行こうとしてたんすか!!? 改めて命知らずと称するに値する銃司は、この甲斐あって苛立ちも消えつつあった。
「ならばいち早くB1層とやらに向かってシャッフルメンバーの誰かに合うとしよう。史也、B1に繋がるルートは何処だ」
アンダーグラウンドの地底層は迷宮並みに複雑。史也の大容量プレイギアの万能マップのアプリを開いて、最短ルートを探ってみると。
「…………お前分かってて聞いてるよな? 丁度そこの女将さんが通せん坊してるこの先のルートだ。他を行くとその道の2倍以上時間掛かる」
「だからダメだって言ってるだろ。そうでなくてもアンタらの城主が上の層の同胞ボコボコにしてるからこのように大騒ぎしてんだよ」
ホントに銃司が余計な事しなければ……と悔やんでも仕方なし。
大山さんらの組は鳳凰堂は勿論の事、まだ未知のB4層以降の地底の連中とは無関係で通っており、争いは避けたい一心。
更に表のゲーム戦士に道を明け渡したとなれば、深部の層に舐められて面子が立たなくなってしまう。そういったトラブルを大山組が責任を持って対処すると同意する上で、先程WGCの役員と契約書でサイン会をしてたのだ。
「……つまり貴様らは、この遊戯貴族の俺に潔く立ち去れと……そう要求している訳か」
「私達の領域だけで良いんだ。強い戦士の奴等は尚更踏み入って欲しくないだけ」
「ふむ…………」
銃司、熱の入った頭を一旦冷却させて思考の意に辿る。
遊戯貴族の答え次第で、決闘か回避かどちらかが決まる。その解答は皆さん薄々勘付いてるとは思いますが、ごめんなさい丁度読み終わりのお時間。もう暫くお付き合いの程を、本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




