【GAME35-1】アンダーグラウンド最深部・霊鳥殿!!
――天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずと言いますが、活動する場所までは言われてはいない。
現実世界に2つの居場所、地上の者と地下の者。住めば都とどちらも生きるチカラで平穏を手にするが、納得いかん者も当然居る。
両者の縄張り争い、仁義なき戦いがもうすぐ始まろうとしていた……!!
―――『オープン・ザ・ゲート』!!!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
――ここは現実世界の地下空間・アンダーグラウンド。
激動の超次元ゲーム時代において変わりゆく世の流れに、住む場所やらもゲームで追いやられた総人口の1/10が移住し、今に見ておれと独自の開発・技術力を結集して薄暗がりの地下を都に変えた。
言うなれば発展途上の成り上がり旧都と言うべきでしょうか、このアンダーグラウンド。
そんな旧都の発展で賑わう地底空間。しかし地下には層がある故、活気的なのはこの地下一階、B1の層のみ。
そこから更に層を深く入って2、3、4、5、6と階段方式で降っていきますとこれまた魔境の地と言うのでしょうか、ド素人が向かおうものなら即死必須の未知の域。何が潜んでいるのか分かりません。
そして最深部のB7層、マントルもスレスレに行くんじゃないかの危険MAXな層に何があるのか。ちょいと皆様方にお魅せしますとまたまた驚き!
―――世の中魔境の先に卑怯……いや卑怯じゃないや、秘境があったもんだ!!
薄暗がりの地底に金銀と神々しく輝く立派な御殿、横の幅はまるで鳳凰が翼を広げたような雄大さ。あの京都で見たような、世界遺産の平等院を思い出すような感じですな。
――――平等院、鳳凰……??
そうです。実はこのアンダーグラウンドの最深部にはもう一つの平等院鳳凰堂。
というのも、ここは随一の勢力・権利を持ちつつあるゲームワールドの副管理者兼アンダーグラウンドの総元締め、鳳凰堂孔雀が率いる『鳳凰超勇士』の本拠地がこの御殿。
人はこの御殿を【霊鳥殿】と呼ぶ――!!
▶▶▶ NEXT▽
「―――首尾はこんな感じでしょうか。まぁ細かい話は心見てくれれば分かるでしょう」
「えぇ、ご苦労様でした茜さん」
底の夜は地上よりも暗い、といいますが霊鳥殿の中は煌めく灯り。現在午後9時頃を回るところ、孔雀率いるゲーム戦士一同は総本山の霊鳥殿に帰還したかと思いきやここでも客人あり。
その相手は、WGCの防衛管理職者の凪原茜。
GAME30にて剣・桜・綾乃と、ムーンリバーバンドの激闘を確認した彼女は、そのゲームを仕掛けた張本人である孔雀に近況報告してきたのだ。
「龍牙さんの思い込みではなく、桐山剣さんの双魂は戦うことも守る事も両方において一流の本質……助かります。お陰で大変良い情報を得られました」
「御主人にも理解を得られたようで……こちらも感謝だ」
この件で孔雀にも益々一目置かれるようになった剣。心無しか因縁関係にある龍牙も、彼の強さを認めてくれたようで嬉々としている。
「それにしても孔雀さんって意外と野心家なんですね。再編成される予定のオフィシャルプレイヤーのリーダーを、槍一郎さんでなく弥風綾乃さんにしようだなんて」
「……綾乃さんは責任感が強く、PASの力も備わった素質あるゲーム戦士です。名将『独眼竜・伊達政宗』の御加護を得た組織の貢献に付いて、我々鳳凰堂の協力関係にあるのですから、これ以上の逸材はありません」
オフィシャルプレイヤーの体制も、責任に押しつぶされるような愚策が多数あった故か、新体制を迎える上では孔雀も有力な者を携えて、大改革に乗り込む意気込み。
更に改善された安全保障を目指す為に、孔雀は弥風綾乃をこの上なく信用しているようだ。
「もう二年になるんでしたっけ? アンダーグラウンド出身のゲーム戦士でした貴方がWGCに抜擢されて、相当他の方からの反発もあったんじゃありませんか?」
「そんな戯言は馬耳東風。口煩い老輩が風習理由に声を抗うのなら、私達は新しい波を起こして飲み込んでしまえばいい。改革命はその冷徹な覚悟も必要です」
うーん……そこには何か黒いものを感じますが、それぐらいの冷たさと非難上等な覚悟は、上に立つ者には必要なんでしょうかね?
「まぁ、あながち間違っても無いけど、私はちょっとはお爺ちゃんお婆ちゃんには優しくしてほしいかな。ほら私ってばお祖母ちゃん子だったし」
茜さんがお祖母ちゃん子、因みに剣さんは根っからの御祖父ちゃん子でしたね。
「そうですね、世代の違いでそりが合わない所があるので難しい所ですが……過去の役人との敵対はこの件の決着が付き次第、善処させて頂きますよ」
「えぇ是非、オフィシャルは私もどうでも良いんでそこはお好きに。では私は次の仕事がありますのでこの辺で」
茜は地下用の転送装置でこの場を去り、奇妙な野望とドライな願望が絡み合う役員同士の報告はこれで終わった。
「……あの猫被り役員も食えねぇ奴だ。敵対相手と呑気に情報交換たぁ頭こんがらがるわ」
「勿論、茜さんが私への悪い感情は無くはありませんよ龍牙さん。あの子は本宮社長らWGCそのものを守っている。大人で結構な事です」
孔雀は心が見える故、茜がどんな本音で自らに構え出るか既に分かって交渉に乗り出していた。おそらく茜側もそれ覚悟で来たのでしょう。
優秀なビジネスパートナーである龍牙に隠し素振りなフェイクも交えながらも孔雀は話をする様を見て、羨ましそうに見つめていたのは同じメンバーの『青鷺火の瑞希』。
「……ねぇ真奈、孔雀様ってば最近仕事の話はいつも龍牙さんにばっか話すよね」
「龍牙さん怖いけど頭いいからねー、わたしよりも色んなこと知ってるもん」
ミズキの傍らで話すのは新ゲーム戦士! 前回でもちょくちょく名前が出ていた『真奈』という彼女御本人。
黒のボブヘアーにゴシックドレス、とにかく黒がベースなロリっ子。名前を鴉越真奈(16)、別名【ヤタガラスのマナ】だ!
「マナはあんなの居て悔しくないの?」
「なんで? わたしにおしごとの話されても『ぬー』ってなっちゃうから悔しいって感じにもならないよ。でもエネルギーの事なら何でも知ってるよ!」
どうやら嫉妬じみたミズキよりも、マナは頭悪いのを開き直った上での純粋無垢な性格のようだ。ピュアと呼ぶには聞こえが良いが、多少自虐気味だ。
だが己のアイデンティティは理解していて、自分がどんな仕事に適しているか分かってるという事はある意味、
「適材適所ね……」
「ぬ? てきざいてきしょって何??」
……ちょっとお勉強が必要ですね。真奈さん。
「じゃ孔雀さま、わたしたちは部屋に戻りますから! おやすみなさ~い」
「えぇおやすみ瑞希、真奈。お疲れ様。――さて皆さんも龍牙さんも、もう遅いですから今日は仕事の話はなさらないで下さい。無視で通しますから」
「はいよ」
▶▶▶ NEXT▽
――変わって霊鳥殿の孔雀の個室。
ボディガードの意味合いで龍牙も同行する中、個室で待ち受けていたのは御殿に張り詰めている緊張を一気に緩和させる子供達の声。
「あ、孔雀姉ちゃんだ!!」「お姉ちゃん帰ってきた!」「おかえりなさ〜い」「お姉ちゃん抱っこして〜♡」「わたし肩たたいてあげる!」「じゃぼくおっぱ……無いじゃん」「そういう問題じゃないスケベ」
「――ただいま皆。お姉ちゃん今帰りましたよ」
――人は決して外見だけでは見られない個性がある。鳳凰堂孔雀も然り。個室に帰るなり彼女らを出迎えてくれたのは5,6歳程の未就学児達。ざっと数えて十数名。
異様な空気漂う霊鳥殿だが、孔雀の個室だけ一転して保育園か学童クラブか、或いは託児所に早変わり。
子供達からお姉ちゃんとして慕われている孔雀は、対面するなり直ぐに彼女の元に子供達が抱きついてスキンシップ。仕事の疲れも子供の笑顔は何よりも癒やされる。至福の一時だ。
「………うん、中々帰れなくてゴメンね。……あら貴方はお絵描きしたの、今度私に見せて頂戴。……貴方はまた喧嘩したのね、あの子は反省してるみたいだからちゃんと『ごめんなさい』しなさい」
孔雀は心が見えるため、何十人子供と相手にしてもその気持ちを読んで一斉にしつけも出来るようだ。こんな保母さんが居れば保育園の人数不足も補えそう、て言うのは保護者の意見か。
「……やれやれ、冷徹な役員がプライベートじゃガキ達の世話するお姉ちゃんたぁ。表向きしか知らねぇ連中が見たらビックリするだろうな。表じゃ評判良くて、裏ではガキに大人気ってか? 気持ち悪ぃ〜」
等と龍牙もブツブツ呟いた所で孔雀が言い諭す。
「……龍牙さん、信じてもらえないかもしれませんが。こちらの方が私の本質です。子供達の心は大人よりも純粋ですから、たとえこの子達がこの地底での孤児や捨てられた子であっても見捨てる事は出来ません」
アンダーグラウンドで育てられた子の3割は、荒れた治安と親の家庭崩壊等を原因に子供達をこの地底に置き去りにしたまま育児放棄するケースが多数出ている。
それを見兼ねた孔雀はその子達を保護して、鳳凰堂の財政を駆使して最低限の生活提供と心理士や保育士等も多数携えて子供達を守っているのだ。
鳳凰堂孔雀の野心の中には、こういった純粋な正義も隠れている。人と言うのは時として憎めない性質もあるのかもしれない。
「……ま、ガキ達の面倒も良いがあのミズキつー眼鏡のケアもしとけよ。ジェラシってるのか知らんが鬱陶しくてしゃーねぇ」
「それは瑞希と私の問題です。拾ったゲーム戦士にあの子が嫉妬する程仲が良くないとは私は思いませんが」
「だが事実だぜ。お前も大変やな、やたら道端に変なモン拾うなって母ちゃんから言われなかったか?」
変なモンってのは龍牙さんの事ですかね。自虐じみたジョークです。
「何を言いますか、拾いものはホコリ取ってから選びます。貴方よりも乱暴者や殺意のある人の方がよっぽど拾えません」
「ほぅ……とすると俺は乱暴者には扱われてないと仰る?」
「私が面倒なのはプライドが高かったり、偏見が激しい者の事を言うのです。そんなもの醜すぎてとても飼い慣らせません。――龍牙さんも、良い子の皆もそんな大人にならないようにしましょうね☆」
そんな皮肉めいた孔雀のアドバイスに子供達は何も知らずに『はーい!!』と良いお返事。……多少釈然としませんが。とそこへ……
―――RRRRR……
霊鳥殿の自宅電話に一通の着信。それを孔雀は子供を携えながら応答する。
「――はい、どうしましたか門番さん。はい…………なる程、忙しい時にとんだ大物が。そこは彼ら達に任せても大丈夫でしょう。……はい、また何かありましたら連絡を、では」
と言いながら孔雀は受話器を静かに落とした。
「何や、また仕事のトラブルか?」
「いえ、たった今B3層で面白い催しがあるそうで。門番がそのご報告で」
「B3……と言えば彼処にゃ総元締めの奴か」
「そこにとびきり傲慢でプライドの高い者同士が戦争を起こすんですって。―――極道女将と遊戯貴族が」
―――それ即ち、裏プレイヤーの総元締め・大山さんと、立海遊戯戦団の銃司が激突寸前まで来ていた事になる!!!!
とうとう来てしまった洋と和のヤバい連中ら!! ゲーム戦士達による仁義なき戦いは火蓋を切られてしまうのか、それとも静止するお利口さんによって事なきを得るのか!? その真実は次回に移すことと致しまして本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




