【GAME34-5】地底激震!集うヤベェ奴ら達!!
――さぁ皆さん、地底空間・アンダーグラウンドでは今、新ゲームと新たに現れたゲーム戦士の襲来で揺れに揺れています。しかしこれは、ほんの予兆にしか過ぎません。
変わりゆく世の流れに敏感なのが我々一般の者であるのならば、逆に案外鈍感なのはお偉方の方でしょうか。早い話がこの地底空間、B1・B2の層より更に深く進んだ先のB3層にて、過激な裏プレイヤー達の面倒を見ている頭領・親方なる者が縄張っていた。
丁度そこにて、何やら地底に用事を担いで訪ねてきたWGCの御役所さんと話しているのがその頭領。……いや頭領というよりは女将さんだ。
「―――では取り交わしの通りに。アンダーグラウンド・B3層の代表者として、WGCの契約内容を御確認、目を通して頂いた上で署名と印鑑をお願い致します。大山様」
「はいよ。……そうかい、遂におっ始まっちまうのかい」
畳の香り漂うお屋敷の和室にて、何やらWGCと契約を交わしている様子の御二方。スーツ姿の御役所に対し契約を受ける側は花魁と見まごう雅な着物。片手には筆に対し、もう片方の手には一升の酒瓶。
彼女こそが血気盛んな極道……いや極道は言い過ぎですね、B2層の裏プレイヤー達の見るついでにアンダーグラウンド上層の治安を握っている地底の若女将・大山杏美(32)。
彼女肌身隠さず一升の酒瓶を携える程の酒豪故、裏プレイヤーの面々からは【酒呑姐御のオオヤマさん】と慕われてるんだとかとか。
しかし一体、WGCと何を契約していたのでしょう?
「上のB2層に隠れ住む指名手配の裏プレイヤーは少ないですから。我々WGCと地上のゲーム戦士達も、貴方の領域であるB3層で暴れさせる事は致しません。そこはどうぞ御安心の程を」
「その割には、あたいらが奴らに手ぇ出したら云々かんぬんと気に食わない条文も並んでるじゃないか。ちゃんと確認してサインしてやるんだ、見逃すとは思わない事だね」
どうやら地上と地下との人々との安保を図るべく、まず地下の女将である大山と条約を結びに来たらしい。
しかし流石裏の女将さんは豪放な風情とは裏腹に抜け目も無い。雑誌と見まごう程に膨大な契約書の紙の束を一語一句逃さず確認するうちに、違和感にも気付いていた。
「……ほら警戒すれば何とやらだ。ここ、この前の話と違う事が書かれてるじゃないか。私は嘘は大嫌いだよ。説明してもらおうか?」
裏の女将は凄みあり、役人さんをもたじろぐ威迫を魅せながらじっと睨みつける大山さん。
「は、はい……何しろB2層の裏プレイヤー達がここ数日連として裏ゲームを企んでは迫害を起こしている故、それもあって若干条約の追加と変更があったのかと」
「またサザンクロスに唆された連中かい。……まぁいい、もう一片じっくり読ませて貰うよ」
大山さんは同胞意識のある裏プレイヤー達が、サザンクロスに勧誘される事は宜しく思ってはいないようだ。こういった第三脅威の団体絡みで安保も複雑になっている現実。大山さんはそれら関連の条例を目を細めながら熟読した。
「……しかし意外な事で。裏プレイヤーを束ねるアンダーグラウンドの女将である大山さんは豪放な方とお聞きしましたが、私めはこのような文書を読むのは苦手かと思っていました」
御役所さん、それは間接的に単細胞と言ってるのと同じですよ?
「苦手でも読まなきゃいけない事もあるんだよ。これを見落としたら裏プレイヤー達皆の問題になるんだから」
裏プレイヤーの責任は女将である大山さんの責任。それをも大きく背負って掲げる威厳も住民達が尊敬される理由なんでしょうね。
(全く……会社の社長業務じゃあるまいし、裏の女将が契約書にサインなんざふざけた話だよ。……いや、それがゲーム時代の世の流れってものなのかね)
一般が時代の流れにいち早く気づくのならば、大山さんのようにアンダーグラウンドで縄張り名を馳せていた者が違和を感じて、初めて時代に取り残された事を気付く。WGCがゲーム時代の核として、組織を築き上げて強大な勢力をも徐々に制圧させていく。何ともシビアな世の中なのでしょうか。
そんな時代に残された寂しさをひしひしと感じながら、大山さんは黙々と条例を確認しては契約書に印をする。そんな最中に和室のふすまがバンッと開いたならば、矢のように飛び出て血相を変えて現れたのは大山の同胞即ち下っ端だ。
「―――し、酒吞の姐御ォ!! 大変なんです!!!」
「何だい、客人の前でみっともない。何があったんだい?」
「何があったとかの話じゃありませんよ!! ―――地上の、関東の遊戯貴族らがオレらのシマに襲撃したんですよ!!!」
「な、なんだって………!!?」
▶▶▶ NEXT▽
――関東の遊戯貴族といえば、そうです! 第21代城主の立海銃司率いる『立海遊戯戦団』のゲーム戦士。
銃司も含めて史也と、フローレン・サーブルズのシェイパー兄妹の四名が、東京側のアンダーグラウンドに繋がる門を通ってB2層に乗り込み、銃司一人でゴロツキ連中・血の気の多い裏プレイヤー達をボッコボコにした所で前回はこれまで、読み終わりでした。
それにしても……ゲームに破れてバタンキューな裏プレイヤーはざっと4、50人程。ちょっとやり過ぎてませんか銃司さん?
「ほらMr.Gにも言われてるぞ銃司。無闇に刺激して地下のプレイヤーと敵対されると面倒だろうが」
「分かっている史也兄。この遊戯貴族の俺がそちらから食って掛かったんだ、防衛による不可抗力で全滅させただけだ」
防衛による不可抗力にしてはオーバーキルなんですがそれは。
「しかし銃司様、我々初めて同行させて頂きましたが、この地底空間は初めて故、護衛に徹せれるかどうか……」
「何の用があるのかは分かりませんが、このフローレン、銃司様とお供になれて光栄ですの〜♡」
任務遂行に責任を担う兄・サーブルズと、呑気に城主の同行を喜ぶ妹・フローレン。こういったボディガード的な同行は今回が初。初陣とあっては互いの興奮も抑えきれない。でもどうして立海がいきなり地底に来たんでしょうか?
「銃司に関しては100%気まぐれだ。行かせろとうるさいから連れてきた」
「俺は河合みのりの心意気に評して地底に馳せ参じた。この城主の俺が動くのは道理だ。それ以外に理由は無いだろう?」
「だったら少しは私の指示に従え。付いてきた身分が勝手起こすとこっちが迷惑だ。切り札が勝手に出しゃばるんじゃない」
史也さん、貴方城主の意を買ってるのか注意してるのかどっちかにしません?
「『先手は切り札を出さない』なんてルールは無い。参謀の役に立つ城主とあらば、存分に楽しませて貰うぞ―――!!」
「やれやれ、先が思いやられる……」
――というような訳で、B2層の裏プレイヤー達を叩いて伸した遊戯貴族の振る舞いを聞いてしまった大山さんも、これには黙って見てはいられません。
これから遊戯貴族と裏プレイヤーの女将が相対する、言うなればヤクザと貴族との対峙、即ち超危険な戦いへと突入する手前まで来ている訳であります。
アンダーグラウンドで繰り広げる新ゲームを前に、続々と集まるゲーム戦士達。
色々とヤバい奴らも揃って触れたが最後、地底全土がハルマゲドンになるんじゃないかと、そんな壮大な妄想までも膨らみつつある所ですが。これから続々と展開されるゲーム戦士達の激闘・死闘、我々はその勇姿を刮目して読んでいきましょう!!!
―――本日はゲームバトルは無し。代わりに登場人物達の本音を探り合う“心理”のゲームでお送りいたしました。
【GAME34/ゲーム戦士・真相心理裏表】はこれにて、読み終わりで御座いますッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽
▶▶▶ NEXT GAME WARRIORS ▽
アンダーグラウンドにて、決して対峙してはいけない危険なマッチバトルが成立してしまった!?
立海遊戯戦団VS裏プレイヤー連合、危険な喧嘩が始まる――!!!
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