【GAME34-2】アンダーグラウンドの人々!!
―TIPS―
本来地底空間・アンダーグラウンドは、人口増加やゲームによって経済が左右される格差社会の影響により、資金も土地も不自由した者が入る第2の活動地として設立した。
当初は例としてゲーム貧困区域や、ギャンブルに大敗した廃人らが多く住んでいたが、後に複雑な事情を持った多くの人々も移り住むようになったらしい。
――現実世界の地下にして地底。時代の波に呑まれた者らが追いやられた区域【アンダーグラウンド】へとやってきた倭刀・穂香・豪樹のシャッフルゲーム戦士。
今巷ではアンダーグラウンド出身と言われている“裏プレイヤー”らが、裏ゲームなる殺戮遊戯を迷惑千万にも執り行う故に、表地上の人々は脅威・忌み嫌われる意識を持ち始めた時。
それを煽り立てるかのように、ネット記事やらマスメディアやらは『アンダーグラウンドは危険な区域!』なんて記事を書いては、人々に警戒と不安の煽りを促してるようなんですが。
見ると聞くとでは、大いに意識が変わっていくもの。と云うのも……
「なぁツッチー、このネット記事観たか? 酷ぇ風評被害やったな!」
「全くやであんちゃん! 『サザンクロス』とかいう過激派の組織に入ったモンが、ワテらとこまで悪モン扱いしとるさかい、商売上がったりですがな」
「これでまた裏出身の人達が被害受けるとなると、ホントにやるせないですよ!」
……えー豪樹さんがまた井戸端会議をする前に、私が新キャラの解説を。
――豪樹の昔からのよしみでコテコテの関西弁を使う商人が、土屋将司さん(20)。主にレトロゲームを主流とした古物商を営んでいます。
――そして女性の方は、レミと同じポニーテールの水谷由香さん(22)。
実は彼女、豪樹が経営するゲームジム『ビッグウェーブ』でインストラクターをしている上、前作『極限遊戯戦記』でも第36話に一度だけ出た事もあり、約1年半振りの再登場だ。覚えてた読者の方が一人でも居たらスゴイですよ。
この御二方が、地底空間・アンダーグラウンドの出身で時折表に飛び出して、社会貢献をしている豪樹さん縁のゲーム戦士なのだ!
「ちょ、待ってくださいよ豪樹さん! そこのコテコテ商人はまだしも、ビッグウェーブんとこの水谷姉ちゃんも地底空間の住民だったんか!?」
「そんな話、私達一言も聞いてないですよ!?」
アンダーグラウンドから出てくる真の情報が余りにも膨大で、尚且知り合いもそれに関わっていた事で更に気が動転する倭刀と穂香。そうとなればと、豪樹はこれらの詳細を洗い浚い説明した。
「それは、お前たちに変な偏見を刷り付けない為にワイが内緒にしたんや。
今こうして地底への信憑性が殆ど無い記事に踊らされて、アンダーグラウンドが危険だとか、そこに住む住民は皆性根悪い奴ばかりだとか決め付けて、ワイのジムで働いている水谷君が働けなくなったらどうする?
彼女の優しい所は、ジムにいつも通っているお前らや剣達が一番知っとるやろ」
当然その問いには、激しく主張する倭刀と穂香。
「勿論ですよ! 水谷さんがトレーニングで積極的にフォローしてくれますし、私とても助かってますもの」
「そんでトレーニング終わって毎回スポーツドリンク奢ってくれるし……剣さんも他の仲間も、水谷さんの事を恩義に思ってますって!」
このような信頼関係が築かれて、例え水谷が地底出身であろうとも決して卑下しない倭刀と穂香。水谷は手を取り会釈しながら感謝した。
「ありがとう倭刀くん、穂香ちゃん。そう言ってくれるとホントに嬉しいわ。でもね、私はともかく他の裏から出稼ぎしてる人達はやっぱり裏出身ってだけで、差別される事もザラにあるのよ」
「世知辛い話やで。見てみぃ、ワテの面も豪樹のあんちゃんみたいに怖い顔やさかい、裏出身っての隠そうにもお客さんが勘づいて逃げてまうんやで。不公平でっしゃろ!?」
土屋の坊主頭に大きなゴーグルを外した途端に豪樹と同じくして溢れ出る強面の威迫。
これには二人も「確かに……」なんて思いつつもどう返せばいいのか、困ってしまった。
「ワイはガキの頃にダチの誘いでアンダーグラウンドに初めて来てな、こうしてツッチーや水谷君と会うて『良い奴に裏も表も関係ない』って分かったんよ。だからその縁もあってコイツと時々飲み行ったり、水谷君をジムに雇ったり出来た訳や」
それを聞いて倭刀と穂香、裏の住民にも良心的な人の関係を知り、アンダーグラウンドへの警戒はいつの間にか薄れていった。
「でもまぁ、君等の真っ直ぐな眼ぇ見て、あんちゃんの教え子らはごっつ良ぇ子やて直ぐに分かったわ。
これも何かの縁や、裏の第一友好人物として仲良うしようやないか! ワテは土屋将司、『ツッチー』と呼んでくんなはれ。宜しゅう!」
「ちょっと! 二人の第一友好人物は私ですよ土屋さん!!」
「ありゃ、こりゃうっかりしとったわ水谷ちゃん!」
和気あいあいと掛け合う水谷と土屋、その暖かみに惹かれて倭刀と穂香も快くその好意を受け取った。
「「はい、宜しくお願いします!!」」
▶▶▶ NEXT▽
――とまぁこんな訳で、早速アンダーグラウンドの住民と交流を深めあったゲーム戦士。
水谷から貰った小豆の風味漂う地底空間名物『アンダーようかん』を頬張りながら穂香は水谷と対談し、倭刀は土屋の仕入れたレトロゲームの品を眺めるなり「わーすげぇー!!」と感動の息が溢れている。
「しかし……水谷さんや土屋さんらみたいに良い人も居るのに、どうして裏プレイヤーはサザンクロスなんかに入って悪さを企てるんでしょう……?」
そんな中で、アンダーグラウンドの詳細を知りつつも、尚更裏プレイヤー達の動向に不安を隠せない穂香。そこで水谷が説明した。
「あのね、実はこのアンダーグラウンドはB1〜B7に別れた7階層の区域に分かれてるの。一つの空間に飽き足らずその更に下まで活動する粋を広げていったのよ」
「え、ということは地下7階まであるんですか?」
これまた意外。表の現実世界では空の上まで届くような高層ビルを建てるように、地下のアンダーグラウンドではマントルの限界域まで掘って活動する空間を広めたというのだ。地底だけに何という底の力。
「日本の各所に地底への入口を作っては居るんだけど、ここのB1層のような旧都へ行くルートが沢山あって、それで分かりやすく層を作って区分けされる仕組みになったの」
そして水谷がプレイギアからダウンロードされたアンダーグラウンドのマップを穂香が目を通してみると、これまた彼女も複雑な顔。
「なんて細かいルートなの……梅田駅の比じゃないわ」
また梅田駅を迷宮呼ばわりしちゃって!
「多分、穂香ちゃん達が戦った裏プレイヤーの連中はおそらくB2層の住民達ね。彼処の住民は特に危険なPAS使いや、表の人々を敵視している族的な人達が多いから、私達同じ裏住民でも立入禁止になってるのよ」
「……と言う事は、更に下のB3以降の下層区域はもっと……」
「そう、更に危険なプレイヤーが潜んでる」
どうやら記事で書かれていたことは、専ら嘘では無かったようだ。
しかし水谷らが住むB1階層の住民は、B2層の者よりも約二倍の人口を誇る。簡単に言うならばアンダーグラウンドの人口密度はグラフ的に逆三角形で、下層に行けば行くほど危険だが、人口は縮小される仕組みとなっている。
「だったら、そのB2の層まで警察やらWGCが駆け付けて、一気にしょっ引きゃ解決する話じゃねぇか?」
と、レトロゲームは目から逸らして話を聞いていた倭刀がしゃしゃり出る。だがその答えは浅はかに終わる。
「黒パスポートは警察もWGCも所有してる人は少ないのよ? それに仮に突撃したとしても、B2から下の層は縄張り意識が激しいから、下手すれば戦争だって起こる可能性も無くはないわ」
「それじゃ、手も足も出ねぇって事じゃねぇか!」
倭刀の提案もあっけなく崩れてお手上げ完敗。
「あ、でもね。表と裏とでの大っぴらな交流を促す様になったのは、ホント最近の事なの。確か穂香ちゃんが友達になる前じゃなかったかな……」
それはズバリ、一年前のアメイジング・ウォーズ真っ只中の時でありました。
「あの時は剣くんも豪樹さんも、皆大変な思いしてたからね。知らないのも無理はないか。まだ表の人を敵視する人は変わらないけど、これでも前よりマシになったのだけは分かって欲しいな」
「「うーん…………」」
――この時、倭刀と穂香は想い更けていた。
裏ゲームを通して戦った『キャノンボールの鉄』や『妬み嫉みのエンヴィー』のような地底空間の住民が、危険視する己のPASを制圧しつつ地下に住んでいながらも、その不満が爆発するようにサザンクロスに勧誘され、裏ゲームを引き起こした。
その起因の一つが、層のすぐ近くに表の人間が我が物顔で乗り込む様を見て、本心的に苛立っていたから……なのかも知れない、と。
「……あ、そういや。そもそも裏の住民と交流とか、行き来の自由を開放するなんて言い出したのは一体誰なんすか?」
「それは勿論、今をときめく鳳凰堂孔雀さんよ」
「「鳳凰堂孔雀!!?」」
再び耳にした『鳳凰堂孔雀』の名に驚く倭刀ら。更に……
「丁度貴方達の後ろに来てますよ?」
二人が振り向いた先に……鳳凰堂孔雀、御本人登場。
((ッッッ……………!!! ※訳:心臓止まるか思った))
二度目の不意打ち、並びに暗い地下でホラー演出な登場に声をも殺して驚く倭刀と穂香。
表住民と裏住民の共有を促したのは、WGCの副管理者・鳳凰堂孔雀であった!
何故の英断でこうなったのか、全ては次回のお楽しみに。本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




