【GAME33-6】“考え抜く”チカラ……!!
◐AMAZING MIDWAY RESULT◑
☆〔倭刀 HP400 手札2枚 EG:⑥〕
・ユニット:なし
★〔エンヴィー HP350 手札6枚 EG:⑤〕
・ユニット:《暴食のジェラシウス》
・パーマネント・ツールカード《執念栽培促進機》
「……『桐山剣を超える』だとか、『テメーのデッキを信じる』だとか。あんだけ自分で暗示して戦ってたくせしてあれだが、陳腐やなよく考えりゃ。ムズ痒くなってきた」
一瞬の気の緩みによって引き起こされた、形勢逆転からの大窮地。
懸命に己の力量を信じ、目標である桐山剣を超える一心で逆転を信じていた矢先。何を気付いたか白けた顔で平然と立ち尽くす倭刀。
「剣さんの引きがヤバ過ぎる、妬ましすぎるから俺だって、てか? 俺がそんな大したキャラじゃねぇ事くらい元から分かってた癖に。本当自分がアホらしく思うわ」
あれ、何か……今までの倭刀さんらしくない悟り方ですね……?
「そう、今までらしくなかったんよ。剣さんみたいに熱血漢でもなく、槍一郎先輩みたいにクールな優男でも無いんや。俺が“池谷倭刀”である故の個性ってヤツは」
……ど、どういう事ですか?? 作者でもなく貴方自身がキャラの確立を言い出すなんて。
我々第三者も思うに、剣や槍一郎は類稀なる気質を持ったゲーム戦士。簡単に言うなら才人のような存在。
剣のような切り札をその場で出すような能力を個性とし、槍一郎のように経験を積み重ねた事を力量とするのなら、凡人にとっては立つ土台が違うのかもしれません。
「そこや。その土台と同じになろうとした時点で高望みだったんよ俺は。危ねぇとこやった、ガーディアンやられてまた同じ過ち繰り返したらホンマ俺終わってたわ。こんなん成長とちゃう……!」
「……何ブツブツと独り言を。火力ブチ込めば勝ちなんでしょう? 一応アメイジングの時間止めてるんだからさっさと進めなさいよ」
意外にも律儀にブレイクタイムでゲームの時間を止めていたエンヴィー。裏プレイヤーとしての礼儀か、それかこれこそが慢心というものなのか。
「悪いなゲーム止めちまって。もうこの際ハッキリ言う、俺は自信無い。――だから俺はこの刹那一瞬たりとも気を抜かずに最善を尽くす事に決めた!! だから後1分ぐらいゲーム進めるの待ってくれや!!」
ブレイクタイムの要求!? これまた倭刀さんらしくない事を、どーなっちゃってるんでしょう?
「……まぁ良いわ、今のうちに悪あがきでも何でも考えときなさい」
そしてまたこれエンヴィーも律儀な事! 勝ちを握ってる上で彼女もどのように妬み殺すか、考える時間が作れて効率良いと考えたのでしょうか。
――しかし今回のゲーム、ピックアップポイントは倭刀の思考展開。
PASは使用不能、プレイヤースキルも3つのうち2つは使用に時間が掛かり、手札は2枚。
展開する術に限りがある状況で倭刀は発達途上の脳内、左脳右脳をフルに神経を尖らせて突破口を見つけ出す。
(確かにアイツの言う通り、次のドローで火力引きゃ勝ち。そんで俺の手札には温存した《先達サムライ》と、ずっと言わんでブラフ立ててたがエースカードの《ダークフォース・ドラゴン》が眠っている!)
だが火力を入れるにしてもエンヴィーのHPは350。生半可なダメージでは仕留められない。また強大なユニットの《ダークフォース・ドラゴン》を召喚するにしてもエンヴィーのユニット群の前では多勢に無勢。
プレイヤースキルも登録した3つのスキル、【刀は己の魂】【居合斬り】は現時点で再使用は難しい。残されているのは【憤怒の一撃】という詳細は不明のスキル。
だがこの時倭刀は、今の持ち札と能力に頼る選択は取らない事を決めていた。
(――それ以外の方法、ドローカードで火力を引いた時以外の展開で、1/100でも勝ち幅を広げるんや。自分の得意戦法だけじゃない、俺が勝つ為の道は一本だけじゃ無いんだ――――!!!)
“勝ち幅を広げる”。運任せの思考放棄に走らず自分の持てる力を駆使して未曾有の戦略を掴む事。これが倭刀が決した勝利への決断!!
それを意志を固めるに至る決定打となったのは、一年前のアメイジング・ウォーズ。前作『極限遊戯戦記』の第46話にて立海の史也・奈々子とのタッグバトルの後での出来事が彼を動かしたのでした。
今回のゲーム、二度目の回想シーンですよ!
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――今から時を遡って約一年前。倭刀&槍一郎と史也&奈々子とのアメイジング・クロスデュエルモード終戦直後。メタ対策に仲間のカードを使って戦った槍一郎が改めてデッキを整理し始め、倭刀は慌てず騒がず先輩の準備が出来るのを待ってた時のこと。
……状況が分かんない読者の皆様は、今からでも前作を読んでおさらいしましょう。
「やはり見栄張ってタッグバトルにするよりも個別のデッキで戦った方が良かっただろうか、奈々子?」
「そうですね……Gパーツで創った新カードと、デッキの相性が芳しくなかったですし」
立海の参謀長・史也とその秘書・奈々子のコンビは、破れた事に悔やみつつデッキ構成・展開やらを反省し合っていた。
「何や、あんな激戦やっといて負け惜しみたぁ、参謀長ともあろう御方が見苦しいぜ?」
辛勝した癖に若干の嫌味口を吐く倭刀に史也は渋い顔で言い返す。
「……あのな倭刀、一度の負けでも我々には立派な糧になるのだ。そこを惜しんで戦術を見直さんでレベルアップなど出来ん。それに奈々子も私の為に期待以上の動きを魅せてくれた。となれば、唐突に企てた作戦を作った私に敗因がある以外他ならない」
史也と倭刀の話し合いの隙に、奈々子が「コーヒー淹れてきますねー」と一旦部屋を後にも戦いの隅々まで振り返り、自分にも厳しくタッグバトルの結果を分析する史也。
彼の分析による敗因は慢心、固定観念の傲りもあっての敗北がそのゲームの勝敗を分けたんだそうだ。
「……それってさ、俺らからすりゃ相手の強さを認めないように聞こえるぜ?」
「何を言うか、認めてなきゃお前達に勝ちを譲らんだろう。――では逆に私から問うが、仮に倭刀が銃司と戦ってそいつが絶望的な強さだった場合、お前は『相手が悪かった』と諦めきれるのか?」
「…………冗談だろ、意地でも最後まで足掻く」
「私は立海の参謀だ。己の知識・知力・博識な能力を駆使しあらゆる戦術を尽くして仲間を勝たせるのが役目だ。故に私は戦った相手が良くて負けたに過ぎん。お前がこうして私らに勝てたのは、隣に先輩の天野槍一郎が居てこそ。それは重々覚えておく事だ」
「んな事分かってらぁ。第一、俺はこの戦いで目的すら達成してへんし」
目的というのは、当時父によって共犯の枷にされた大森穂香をシャッフルオールスターズ総員で救う事でした。ただ今ひとつ史也の助言に納得がいかない感じの倭刀を見兼ねてか、史也はもう一つお節介を焼く事に。
「……倭刀、我々に勝ったサブ報酬として忠告だ。
――――『ベストを尽くす』とか『デッキを信じる』とか、『負けても悔いは無い』とか。ゲームというフィールドで戦うゲーム戦士は、そんな事を考えてはいけない。【論理的に勝つ事】を考えるんだ」
「…………論理??」
「頭を使うんだ。自らが駆使するカード、敵の持つカード、そしてフィールド状況にカードらがもたらされる情報……ゲームにおける全ての理論を利用する事。根性とか度胸は二の次だ。
毎回望むカードを引けるとは限らぬ。極稀な事だしそんな力に頼るゲーム戦士ってのは、何処か味気なくてつまらない者の事を言うのだと思う」
現実でも蔓延る架空カードゲームでの御都合展開、このゲームウォーリアーでも見られますが、それをも釘を刺しての史也の理論であった。……作者さん生きてますか?
「切り札は『引ける時は引けて、引けない時は引けない』だ。多分倭刀が尊敬している切り札騎士もそんな天性を持ちつつも、根本的な所は理解はしている筈だろう」
「……剣さんの事ですか」
「お前はそんな極運の男と同じように、運命に味方される性を持っていると確信は出来るか?」
「…………」
「悪いが倭刀も私も、そのような外逸れた戦いは出来ない。そしてどんなに力の差があろうとも、勝たねばならない時は必ず来る。その為にはどうするか、考え抜くしか無いのだ。
次に展開する札でも勝てるように、己の力量を駆使して勝ち筋を上げる。お前の持つ【龍刀】のPASが考え抜き見切る力を与えてくれる。一枚、一太刀でも勝ち斬る『普通のゲーム戦士』のスタンスを貫き通せ。
――――姉貴分の穂香に可愛がられるままが嫌なら、尚更だ――!」
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――ほんの些細なお節介の助言が、倭刀の魂を揺れ動かし、レベルアップへの兆しを魅せようとしていた!!
(……さぁ考えろ、考え抜け池谷倭刀! 俺の2枚の手札と、次のドロー来るカード、あと1つのプレイヤースキルでいつ・何処で・誰に撃つか!? 頭沸騰してもかまへん、精根尽き果てるまで考え抜けッッッ)
状況は絶望、出来る事はほぼ無し、それでも1%以上の勝機・ウィニングチケットを勝ち取る為の方法を掴むべく倭刀、無心になりて思考の深淵に飛び込んでいく――!!
―――倭刀・HP400・自分フィールド/手札のカード0枚・墓地に無数のカードの残骸……
―――エンヴィー・HP350・手札にカスタムツール2枚/ユニット一体待機/ブラフカード3枚・フィールドにAP500の《暴食のジェラシウス》・墓地に怨恨立ち込めるユニットカード・バスト83・ウエスト56・ヒップ84……いや、それは置いといて。
(俺のデッキは刀を納める鞘のようなもんや。そいつに納刀され、一撃必殺の抜刀を繰り出す一瞬のチャンスを掴む為に、どうすれば相手のHPを削り切れるか、耐えた時に俺が持ちこたえられるか!
火力なんざに頼んな、どんな絶望をも斬るドラゴン侍の真剣一太刀・一本勝負……、魅せてやるぁぁぁあああああッッッ!!!!!)
その瞬間……、倭刀は無意識に両目を閉じ、またしても居合抜きの構えの如しに腰を深く下げてデッキとブレスを納刀した鞘に見立てて腰に引っ提げ、利きの右手はデッキの上に添えての明鏡止水。
――カチッ……!
エンヴィーが水を差すまでもなく、倭刀自らが停止したアメイジングの刻を腰を下げた状態のままボタン一つで起動する――!
「……さぁ始めようぜ、ドラゴン侍・池谷倭刀、排水の陣――――!!」
――――本日のゲーム、これまでッッ!!!!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




