【GAME32-1】裏プレイヤーにリベンジ!!
裏ゲーム
黙って見ていりゃ
死傷者あり
遂に傍若無人なデスゲームにまでエスカレートした裏プレイヤーによる裏ゲーム。
どんな理由であれそれを行い秩序を乱す奴らを絶対に許してはならない!!
戦え池谷倭刀!! 主役のゲーム戦士は君だ!!!
『オープン・ザ・ゲート』!!!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
――ここは大阪・若者達の最先端の流行を発信し続けるカルチャーな町・アメリカ村。……と言いたい所なのだが。
ご覧ください、商店の建物らが崩れ去って残っているのは、瓦礫の残骸と辺りに散らばる死屍累々とした人々。まさに地獄絵図。
その惨状を生み出したのは他ならぬ、治安を脅かす脅威・裏プレイヤーグループと己に溜まった憂さや私怨を散らさんと裏ゲームに挑んだ緑髪の女、『妬み嫉みのエンヴィー』だ。
しかしこの場所、数分前までは土地をひっくり上げてピンボールなんて大胆な事をやっていた割には、今はいつもの真っ平らな土地。
早い話がこれは、裏ゲームを阻止せんと立ち上がった一人のゲーム戦士によるもの。
シャッフルオールスターズの『ドラゴン侍』、池谷倭刀の鬼神も恐れをなすPASの馬鹿力によって一旦の平穏が戻ったのだ。
あと残すは首謀者である裏プレイヤーのエンヴィーを成敗するだけだが、今は裏ゲームに巻き込まれた仲間の穂香と豪樹の安否を確かめるのが先だ。
「豪樹さん! 穂香姉ちゃん!!」
「倭刀ー! こっちよ!!」
「お前のお陰でワイら五体ピンピンやでぇ!」
シャッフル三人、互いに無事を確かめあって安堵し身体もヘタれる腰も抜ける。
一言二言の挨拶もそこそこに倭刀は一旦切り替えて、裏プレイヤー達の動向を確認しようとする。裏ゲームはまだ終わっていないのだ。
「倭刀、この裏ゲームを実行したエンヴィーは三角公園でゲームを操っていたわ」
「さっきのPASでどっかに飛ばされたかも知れへんが、そう遠くまでは行ってへん。攻めるなら今や」
それを聞いて倭刀、腰に提げた《轟竜刀》を握りしめて決意を固める。
「よっしゃ分かった! アイツらがまた戦力を固めんうちに、俺があの女成敗したる!!」
PASを発動したとて倭刀の怒りは収まる事を知らない。直様裏プレイヤー達に受けた怪我の処置を施して万全の状態にし、彼女の元へと突っ込もうとする倭刀。その様相に豪樹はある事を察していた。
「倭刀、まさかと思うが……一人で立ち向かおうって魂胆か?」
「……空気読むにしても尚早過ぎやしませんか豪樹さん。そのまさかでさぁ、俺は一対一でアイツと戦う」
「ちょっと待って倭刀! さっきの裏ゲームでPASも使ってるのよ!? 一度きりの切り札を使った状態で一人で戦うなんて――」
穂香姉ちゃんの静止を行う前に片手で振り払うジェスチャーをする倭刀。彼の覚悟は、新世界の時よりも強固なまでに硬かった。
「――穂香姉ちゃん、姉ちゃんが一番最初に俺の目標の事を言うたのにもう忘れたんか? 『桐山剣を超える』って目標! 俺だって、守られヤラレっぱなしじゃ沽券に関わんねん。
『俺だってPAS抜きの縛りで裏プレイヤー潰したった!』って胸晴れるくらいの事せな、俺は一生剣さんを超える事は出来ねぇ!!」
倭刀の真剣な眼に燃ゆる執念、その熱意が様子を見守る豪樹の心にも感化された。
「やれやれ、欲だけ達者だった坊やがこない立派な夢持つようになるたぁ、見直したで倭刀。――だが理想を超える事は並大抵の道やあらへん。一生モンになるのも覚悟で、お前は桐山剣を超えたいんか?」
「超えますよ、当然! 俺は剣さんも超えて、大事なもんも守って、その先にあるものを知りたいんすよ!!」
その心に一片の揺らぎ無し。それを確信した豪樹が教え子に推す言葉はただ一つ。
「……ほんじゃ、裏プレイヤー倒しに行ってこい! いっちょここらで漢になってやれぃッッ!!!!」
「はいッッッ!!!!!」
倭刀の背中をバァンと強く叩かれ倭刀、それが刺激となりて裏プレイヤー討伐の決意を完全に固め三角公園へと突き進む。その姿にさしもの穂香姉ちゃんも静止することすら出来なかった。
「何で一人で行かせるんですか豪樹さん……倭刀にもしもの事があったら――」
「なぁに、もしもの時があったらその時はその時や。だが倭刀はあんなもんじゃ死なへんよ。超えるもんも出来て、大好きなお姉ちゃん守るくらい欲強いアイツなら尚更や」
▶▶▶ NEXT▽
――漢は一人道を征く、漢は強くなる為に一人修羅の荒れ地を走り抜く。
倭刀の闘志は既に切り札騎士の剣や、神速の槍一郎にも匹敵するような、己だけのアイデンティティを確立しようとしていた。
それはこれから繰り広げようとしている決闘にて明らかになるだろう。
「エンヴィィィィイイイイイイイ!!!!!」
耳をもつんざくような倭刀の怒号の叫び、慣れ親しんだ風景やなんの罪もない人々を潰し粉砕した怒りは、放出しただけでは収まらない。
果たして『妬み嫉みのエンヴィー』は三角公園の何処で雲隠れしているのか隅々まで追い求めようとするが意外にも、彼女自らが倭刀の元に現れたではないか!
「うるさいガキが、随分妬ましい事をしてくれたわね……!」
「何や、裏プレイヤーは往生際が悪いもんか思うたら、自ら出向くたぁ自首でもしようってか?」
「馬鹿言わないでよ。裏ゲームを台無しにしたアンタを八つ裂きにでもしてやらなきゃ、私の妬みも収まらないわ」
「なら俺だってお前に自首なんざ要求するまでもねーわ。俺は新世界とアメリカ村を潰した裏プレイヤーに雪辱を果たす、そして剣さんに近づく為に強くなれりゃそれでええ」
片や裏ゲームを潰された戦士への逆襲、片や成敗ついでに己の実力の糧として野望を果たす。
善と悪とで立場は違えども、互いに散らすは己へのエゴ。勧善懲悪とはいかないダーティーな意志が交錯する。
「あんたらゲーム戦士が私達裏プレイヤーの邪魔をするなら、どんな形であれ殺す気で始末してやるわ。特にアンタみたいなチェリーボーイには二度とお天道様を拝めないくらいにね!」
「何やと、クソ女……?」
止せばいいのに血気盛んな倭刀に余分なNGワード。だが倭刀もここはグッと怒りを抑えて冷静に保つ。
「……分かんねぇな、俺だって一端のゲーム戦士までは言わねぇがそれなしに実力は付けてるつもりや。俺がまだガキやからか? だがそこまで侮辱される筋合はねぇぜ、それともゲーム戦士が怖いんか?」
「そうね、ゲーム戦士は私達の脅威だもの。私だって怖いわ。――でも貴方は、一人でも裏プレイヤーを潰せたのかしら?」
「うっ……!?」
早くも倭刀のウィークポイント、新世界にて裏プレイヤーに惨敗した事をエンヴィーに指摘された。
「新世界で『キャノンボールの鉄』を成敗したのは大森穂香だというのも知ってるし、癪で妬ましいけど実力は認めるわ。……で、そんな裏プレイヤーに挑んでおめおめと負け恥を晒したアンタが、どうして私の邪魔をしてるのかしら?」
決闘の前の精神攻撃。ゲームバトルでは決して独特ではない展開ですが、ゲームウォーリアーも例外では無し。自分の意志の再認識も兼ねて倭刀は豪語した。
「決まってんやろ、俺は仲間を助ける為に戦ってんねん!! お前の裏ゲームで豪樹さんや穂香姉ちゃんを巻き込んだみたいに、他の裏が何してくっか分かんねぇからな!」
「あぁそう、立派じゃない。正義の味方らしく真っ直ぐな心掛けだわ。だけど……あんたみたいなガキが私を倒して主人公にでもなれるとでも思ってるの?」
そしてエンヴィーの妬み嫉みの禍々しいPASの波動が徐々に勢いを増していく……!
「普通のプレイヤーのなまくら侍が、我々裏プレイヤーの群とやり合える気でいるなら、妬ましさ通り越して腹ただしいわ!! 鬱陶しいのよ、私らを地に追いやって平然としているお前ら上流風情が!!!」
エンヴィーの眼の色は“緑”。しかし同じ色である穂香とは違い、彼女のは黒に近いほどに濃い緑。競合心において強い嫉妬感を意味する緑色はまさにエンヴィーのPAS色そのもの。
裏の世界【アンダーグラウンド】に追いやられた住民であるエンヴィーが表の世界のプレイヤー達に底知れない嫉妬を描き、裏ゲームを実行させたのだ!
(嫌な予感はしてたが……、裏の連中ってのはどーも人の思考も受け容れないような排他的な考えが過ぎらぁ。だったら尚更退くわけには行かねぇな――!!)
PASの凄まじさに怖気づく様子は一切見せず、寧ろ懐の《轟竜刀》を抜刀して戦う意志を顕にした。
「だったら今ここで魅せてやんよ。大森穂香同様にこの俺、池谷倭刀もこの世を仇なす裏プレイヤーと戦うに相応しいゲーム戦士って事をなッッ!!!!」
「やれるもんなら……やってみなさいよ!!!」
さぁいよいよ始まるゲーム戦士VS裏プレイヤーとの激戦! 明日よりは、三角公園にて繰り広げる真剣勝負に乞うご期待!!
「「アメイジングバトル! READY!!」」
『――――START UP!!!!』
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




