【GAME31-4】妬み嫉みのピンボール!!
――TIPS――
裏プレイヤーによって開始される【裏ゲーム】。
その主な特徴は、カードスキャンブレスの内蔵CPUに入れる特殊なビットチップ『ウラ・アップグレーダー:EVIL』で違法改造して行う事。
このチップは現実世界で展開するVRフィールドの規模を広げたり、地形そのものを変換する能力も持ち、
チップの影響によるカードのダメージはリアルに身体に刺激、痛みを与える。
――何という悪魔の悪戯か、アメリカ村に直撃する裏ゲームの開始宣告!
「なんてこった……! 裏プレイヤーの野郎、アメリカ村の土地使ってピンボールでも洒落込もうってか!?」
運良く危害から逃れていた倭刀。くり抜かれた土地を傍観するならば、それは正しくリアルこの上ないピンボール筐体!
頂点の三角公園を『トップレーン』とするならば、中間のブルータスビルらの商店建物群は『バンパー』か或いは『ドロップターゲット』か。
その斜面はざっと60度、ピンボール筐体と呼ぶには余りにも角度が急だが、巻き込まれた人々を貶めるには充分過ぎる恐怖感。
でもホントにピンボールをやろうというのなら……ちょっとパーツが足りはしませんか?
だってそうでしょう、ボールも無いし、打ち返すフリッパーもスリングショットも無い。ただ土地をひっくり上げるだけじゃ様にはならない。
『ここの語りはピンキリまで喋んないと気がすまないのかしら憎たらしい……! そんなに確認したいなら魅せてあげるわ!!』
と、どっかの誰かが私の語りに癪に触ったんでしょうか? 憎み口挟んで1枚のカードをブレスにスキャンした。
『【ウラ・コントローラー】セットオン……!』
ブレス起動時に発する普段のカード起動アナウンスとは打って変わってノイズ響いて低音ボイス。これは裏ゲーム実行時のみに使用が出来る違法改造カード、【ウラカード】の発動エフェクトなのだ。
このウラカード、現実世界を一変して地獄の裏ゲームをグレードアップさせる!!
❨――――――――――――――――――❩
〈ウラカード〉
【ウラ・コントローラー】
サツイトオンネンタチコモルソウサデ
ウラゲームヲタノシムガイイ……!!
❨――――――――――――――――――❩
ご覧ください何とも禍々しいカードテキストか、手にした途端殺人鬼にでもなりそうな禁断の札。
それを躊躇いなく使う裏プレイヤーは誰なのか、まだベールに隠されている中でその者は召喚したコントローラーを握り、スタートボタンを起動した瞬間土地に劇的な変化が起きた!
「ボールにフリッパーが出てきやがった……! ヤベェな本格的にピンボール始める気だ!!」
《ウラ・コントローラー》の魔力でリフトアップ中の土地の底から銀色の鉄球、更に横には左右交互のフリッパー、斜め上にスリングショットとピンボールの三種の神器・3Pが現れた!!
「こんなもんどーやって阻止すりゃええんや……? 裏プレイヤーも何処にいるかも知らんし……」
この展開にどう動けば良いのか戸惑う倭刀、動揺と同時に仲間の事も気掛かりになっていく。と言ってる側から、
――♪♪(月風◯伝・マップBGM)
倭刀のプレイギアから新作を予定している名レトロゲームの着信音。その着信元は穂香姉ちゃんからだ。
「もしもし姉ちゃん? 今何処に居るん!?」
『倭刀? ゴメン、お姉ちゃんと豪樹さんはどうやら裏ゲームのフィールドの中に閉じ込められたらしいの』
「嘘やん!!? って事はあのピンボール台んとこか!?」
ここで初めて穂香と豪樹が囮の裏プレイヤー諸共ピンボール台と化した土地の中腹にて、横になっている建物にしがみつきながら、落とされまいと必死に耐えている。
倭刀も『鷹の眼』の称される程の遠視で、遠くから穂香と豪樹の姿が確認された。
「――居た! ブルータスビルんとこか!!」
『え、ひょっとして倭刀は空間の中に入ってないの?』
「さっきピンボール店でナン……いや偵察したのが運良かったらしい」
流石にナンパで振られて途方に暮れてたなんて、言うには恥ずかしい倭刀であった。が、穂香にとっては危機的状況を打破するきっかけを作ることとなった。
『……じゃ倭刀、お願いがあるの。新世界の時のようにこの裏ゲームを仕掛けている裏プレイヤーを探して私の代わりに止めて! 特徴は……豪樹さんが直に聞いてるわ』
と連絡する穂香の横目には、巻き込まれた裏プレイヤーから強引に首謀者を吐かせんと強硬手段で情報を出させている所だ。
「さぁ吐いちまえよなぁ、ワレ利用されただけで始末されるにゃ惜しいやろ? どーせ死ぬなら利用された犯人の捕獲に手を打つくらいせんと成仏せぇへんで。言わんならワイ直々にあの世逝かせたろかぁぁあ!!?」
「ヒィィィ、グッ、グルジイ……分かった、言う、言うからマジ死ぬから首ジメナイデ……!!」
これじゃどっちが悪人か分かりませんね……。これにはさしもの偵察裏プレイヤーの眼鏡男も、あれだけ弱者ぶって嘘八百してたのに、羽交い締めさせられてホントの弱者になっている。
「みどり……の髪、で……美人なんだけど性格がねちっこい女だよぉ!! 名前は『エンヴィー』だ!!」
『聞こえた? 倭刀』
プレイギア越しで白状させた裏プレイヤーの情報を聞いた倭刀は、一瞬硬直していた。
(緑の髪の美人……、まさかさっき俺がナンパした女とちゃうか???)
倭刀の察するにそのまさか!!
閉店中のピンボール店で立ち会った緑の髪の八方美人、別名『妬み嫉みのエンヴィー』とコンタクトを取っていた倭刀。
その真相を知り、愚かにも自分は裏プレイヤーにナンパしていたと知った倭刀は、メラメラと怒りが沸き上がっていった。
「……緑髪の女で、エンヴィーやな。オッケー、絶対シバいたる」
と低いトーンで応答し倭刀は無情にもプレイギアの着信を切る。そして叫んだ。
「――――出て来いやエンヴィークソゴルァアアアアアアア!!!!!!」
裏プレイヤーに自分の事を『チェリーボーイ』と侮辱された事に憤る倭刀。そして意外にも地獄耳であった今回の裏ゲームの首謀者『妬み嫉みのエンヴィー』が居た。
「誰かが私の事で憤っているようね。正義感ぶっちゃって妬ましい……! そいつら諸共粉々にしてくれるわ!!」
リフトアップされた土地の天辺、三角公園地帯にて高みの見物。そして手には《ウラ・コントローラー》を握っての秒読み体勢。
負の感情、妬み嫉みに刺激されたエンヴィーの裏ゲームがコールされる……!!
「【裏ゲーム・文化破壊ピンボール】、開始ッッッ!!!!」
地にて設置された巨大ボール、その下に敷かれた『ブランジャー』のバネによって聳え立つ土地を上がって発射された!
ボールは三角公園、頂点に舞い上がって自由落下した瞬間に、地獄の一丁目が開かれる。
――――ドカァァァァアアアアッッッ
フリーフォールで落下するボールは重さ3トン。それが重力で威力が倍加された事により中腹の建物は通過と共に粉砕破壊され、その衝撃で建物のバランスは崩れかかっていく。
これだけで終わるならまだ良かっただろう。だが絶望は落ちた先にあるフリッパーによってボールが跳ね返った時に訪れる!
――キィィイインッッ
鈍い金属音とフリッパーによって打ち返す衝撃の強さでスピードが増したボールは崩れかかった建物に再度直撃!
二度の衝撃で耐久度を失ったビルはまるで解体発破か大木を切り落とすかの如く横に倒れ込んで地面に激突。一瞬にして瓦礫の山と化す。
「これで文化を担う専門店が一つ消えた……! ファッションだか流行だか知らないけど、私の美貌に差し置いて訳の分からないデザインばっかり並べて、ウンザリしてたのよ!! あぁ妬ましい嫉ましい憎たらしい……!!!」
どうやらこの『妬み嫉みのエンヴィー』、自分の美しさに絶大な自信を持っている故にそれを上回る事をとてつもなく嫌う女のようで。
派手なデザインや色気づいたファッションにチラつき苛立っていた所で裏ゲームに招集され、自らが首謀となりてゲームを開始したのだ。
今回の裏ゲーム、目的は【範囲内の文化を売り出す建物を全て破壊する】事。自分より美しく輝く物を嫌うエンヴィーの悪趣味なゲームだ……!!
「野郎……自分だけ良ければ、他人も店も関係無いって事か? ふざけんな!! 俺が阻止してやる!!!」
個人的な怒りもありつつも正義一徹、仲間や人々を守る為に倭刀は戦う決意を固め、カードスキャンブレスを装着・起動させた!
◎――――――――――――――――――◎
・クサナギ(倭刀)のプレイヤースキル
【刀は己の魂】発動!
デッキから《轟竜刀》を呼び出し、
そのまま装備します!!
◎――――――――――――――――――◎
剣や銃司同様、倭刀もゲーム開始前から武器を携えて戦うスキルを発動。侍アバター特有の鋭利な刀を手にし、チャンバラ合戦何でも来いの体勢だ。
ならばリクエストにお応えしてご都合展開、倭刀を取り囲むは無数のゴロツキ、裏プレイヤー雑兵群。
「……やる気か、テメェら――!?」
さぁここからが倭刀のソロプレイ大一番! 首謀者エンヴィーを見つけ出し、裏ゲームを阻止する事が出来るのか!?
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




