【GAME31-3】裏へと繋がる地底空間!!
――ここは流行の発信地、欧米の雰囲気漂う若者達の町『アメリカ村』。
この小さな町で治安を脅かす裏プレイヤー達が影を潜んでいる事を知った穂香、倭刀、豪樹の三人はそれを阻止せんと突入した。
ゲームへの欲に唆された倭刀とは別行動を取られたものの、後残った穂香と豪樹は黙々と使命に全うする。
……とは言いましたが、腹が減っては何とやら。食欲には逆らえず三角公園のテーブルにて二人の手の元にはクレープにたこ焼き、頰張っての張り込み探索中。
「ところで豪樹さん。調べ物してて何か裏プレイヤーの情報とか掴めたものってありますか?」
「まぁぼちぼちやな。裏プレイヤーの極悪非道ぶりが束のように記事になってるのと……そや、ちょっとおもろい資料掴んだんや。ちょっと観てみぃな」
豪樹のプレイギアから穂香に見せたのは、一件のアプリニュース記事。
現代と同様に客観的な内容で信憑性には欠けてるが、意外な所から情報が得られる故に侮れない。さてその内容とは、
「……【裏プレイヤーの入口・地下空間の深層に迫る】――?? 地下空間って何ですか?」
「別名【アンダーグラウンドエリア】。ゲームに縁の無い人々が、土地も名誉も隅に追いやられて行き着いた地下の街や。穂香ちゃんらみたいな良い子には縁の無い所よ」
――この超次元ゲーム時代、電脳に異世界を作るだけでなく人が人の下に世界を作ったそうだ。
【アンダーグラウンドエリア】、それは現実世界にてゲームでの実力に取り残された下層階級な人々が、ゲームによって家も名誉も財政も無くした先に行き着く溜まり場のような所なのです。
ゲームの実力だけで、名声も財産をも一掴みしてしまうこのゲーム好きによっては夢のような時代ですが、逆にゲームが苦手な方にとっては、決して良い世の中とは言えません。
これぞ格差社会と言うべきか、理想と謳われているこの時代でも、一部の者からすれば地獄と言っても過言では無いでしょう。
そんなゲームでの敗北者、即ち『時代に淘汰された者達が住まうアンダーグラウンドエリアから裏プレイヤーが生まれ、上流階級ら諸共復讐の時を待つ。』だとかなんとかで故意に煽るのも記事の決り文句か。
「しかもコイツぁ、全国各地にパイプを繋げるように広がってる。最早日本の地底ネットワークや。そのアンダーグラウンドの人口を計算しても総人口の1/10はそこに住み着いてるって話や」
「そんなにですか!? ……幾らゲームに負けて行き場を無くしたからって、太陽も拝めない地底に住むなんてあんまりだわ」
記事を一読した穂香は虚しさ噛み締め一言呟く。人はモグラじゃないんだぞ!とか言う問題じゃなく、人を不自由な場所に追いやるのが同じ人である事。そして【強者が正義だ】という矛盾した価値観に怒りも覚えた。
……とそこへ、三角公園のテーブルで佇む穂香と豪樹の垣根の陰に隠れている眼鏡の男が一人。
どうも何か怪しいな、きな臭いな。……え、きなこ臭い? それは私がきなこ揚げパン食べたからですよ。
と冗談かましてる隙に眼鏡男は、徐にプレイギアを出して連絡をし始めた。
「……シャッフルオールスターズの高橋豪樹と、同胞を潰した女・大森穂香を確認」
『……やはり来たかゲーム戦士の犬が。裏ゲームの邪魔された恨みは晴らさでおくべきか。ゲーム開始前に始末してやる』
「襲撃地点は?」
『街頭ビジョン“RIVIA”、そこでお前が囮になって奴らを誘き出せ』
「――――了解」
どうやら奴め裏プレイヤーの偵察員だったようですな! 任務を実行すべく音もなく三角公園から離れた眼鏡男は街頭ビジョン『RIVIA』へ移動し、手元の爆竹に火をつけて地面に設置して数秒後……
――――パパパパパパンッッ!!
「何や!?」
「まさか、行きましょう!!」
爆竹の音を聞くや否や、ただ事ならぬと判断した豪樹と穂香。疾風の如く飛び去って、疾風のように街頭ビジョンの音のなる方へ辿り着く。
「オイ大丈夫か! 裏プレイヤーにやられたんか!?」
声を掛けるは豪樹、蛮声張り上げるも街頭ビジョン付近に返事はおろか人気も無い。
「……おかしいわ。誰も居ませんよ?」
「何や、この豪樹様を恐れて逃げたんか弱虫め!」
半ば豪樹は強さに自惚れつつも、丁度道端に落ちていた爆竹の残骸を見つけて拾い上げる。
見え透いた仕掛けが明らかに裏プレイヤーの仕業だと確信したその時、建物の陰で見つめていた男が一人。
「誰や!!?」
「ひ、ひぃいい!!? べ、別に私は怪しい者じゃありません!!」
豪樹の威圧に慌てふためく男は、さっきの偵察眼鏡男じゃありませんか!
そうとも知らずの豪樹と穂香、彼の嘘八百三文芝居に騙されて接近する。
「私たち裏プレイヤーを探してるんです。貴方はここで誰か怪しい人を見掛けたか、何かされませんでしたか?」
「いえ、いきなりの爆破で腰が抜けて何が何やら……あ、そうだ! 確かブルータスビルの所に逃げ込んだのを見かけましたよ」
「ブルータスビル!」
ブルータスビルとは、一旦街頭ビジョンから南に戻って三角公園の近くにある数々の店が並ぶビルの事。そこに裏プレイヤーが逃げ込んだと、怪しげな情報を漏らす眼鏡男。
「シャッフルオールスターズの面々なら安心だ! ここは私が案内します、さぁさ急がないと裏プレイヤーが逃げちゃいますよ」
眼鏡男は自ら先導してブルータスビルへと穂香らを誘おうとしますが、ところがどっこい。
「ちょいと待った」
その誘いにストップ、レスポンスを求めんと遮ったのは豪樹だ。
「見え透いた嘘は止めときな、ひょんひょろ裏プレイヤー。さっき爆竹を仕掛けてワイらを寄せ集めたのもアンタやろ?」
「な、何を根拠にそんな事を!?」
「じゃその胸ポッケに隠れた黒パスポートは何や!!」
それを指摘されて『しまった!』と顔を曇らす眼鏡男。実はこの黒いパスポート、先程申しました【アンダーグラウンドエリア】へ入るための証明パス。
という事は話の通りからすれば、高確率で彼が裏プレイヤーであるという事に繋がる訳だ。こうなったら解釈の余地はどんどん無くなっていく!
「私達をビルに閉じ込めて、始末しようと考えてたのですか!?」
「ったく裏は考える事も陰湿なこった! さぁ裏ゲームの事を喋るか、ワイの鉄拳制裁を受けるか、痛えの喰らいたくなかったら白状しちまいな裏プレイヤー!!」
乱暴にも眼鏡男の胸ぐら掴んで、無理やり吐かせようとする豪樹。
だがしかし――!!
『――――30分前のサプライズスタートだ。午前10時半、一足早いが裏ゲームを開始する』
ゲーム戦士の知らない所で通信電波が蔓延ったその刹那、豪樹らの周辺の空が急変して薄いベールに青空が包まれた。
そう、『アメイジング』によるVRフィールドが現実世界で展開されたのだ!!
――――ゴゴゴゴゴゴ……
「な、何や!? 身体の重心が傾いて……!??」
「豪樹さん!! 地面が……地形そのものが傾いてます!!!」
何とアメイジングのフィールド展開と同時に、三角公園を先端にした長方形200平方メートルの街並みが綺麗にくり抜かれ、橋が開くかのようにグググッ……っと斜面角度が上がる。その角度は60度!
建物や木以外の地面に張り付いていないテーブルや人は皆、駆け上がった斜面から叩き落されるか、壁にしがみつくのに必死だ。
そして幸いにもリフトアップから逃れて、その様子を丁度呆然と傍観していた倭刀がその異変をいち早く察した!!
「何やこれ……ピンボール台みたいやがな!!!」
傍から見れば長方形と角度で装った人工巨大ピンボール筐体!
裏プレイヤーの裏ゲームによる、恐怖の立体ピンボールが始まろうとしていた!! 本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




