【GAME29-6】やっぱり私、未熟者……!?
――はい、一旦決闘から舞い戻りましたMr.Gで御座いますぅ。
さて、3on3の決闘も中盤に差し掛かった所。やはり序盤でのHP削減が苦しかったのでしょうか、立海のメイド時実桜が最初のリタイアとなりました。
残されたゲーム戦士は桐山剣と弥風綾乃の二名。
しかしこう見てるとどうも綾乃の方が戦力は上がらない、更には何やら自信にコンプレックスを持っているようですが……彼女に一体何があったのでしょうか?
決闘の続きを語る前に、まずは綾乃を中心とした回想で推察して参りましょう! ――ではッッ!!
■■■■■■
――今現在より遡ること5年。
ここは宮城県仙台市青葉区、その区の名の通り町並みには初々しく生い茂った青葉の木々が、生きとし生けるものに安らぎを与える場所であります。
その青葉区では日本でも特に有名と言われる場所が御座いまして、何を隠そうこの地は【独眼竜】と呼ばれ後世に名を語られる武将にして仙台初代藩主『伊達政宗』公を含めた伊達家3代の霊屋、“瑞鳳殿”がある場所でもなのです。
――それから時は流れて『超次元ゲーム時代』。
現代とゲームで共有された近未来になりますとやはりここでも新時代に浸透させた新たな武将……もといゲーム戦士の誕生へと突入する訳なんですが、ここ瑞鳳殿でも例外では無かった!
この歴史的建造物や資料を保有するに当たって、瑞鳳殿にも公益財団法人なるものが設立され守られていますが、伊達政宗公の加護の元で、弱肉強食なこの時代に新たな戦力を蓄えるべく仙台発のゲームチームが結成された。
――――それが、『瑞鳳旋風堂』、このとき同時に入団した弥風綾乃は12歳の頃であった。
「今やゲームが世界を変える時代となった今、我々伊達政宗公の霊屋を護る使命から、再び戦う時が来たのだ! ――独眼竜の霊幻の元に集いしゲーム戦士の集い【瑞鳳旋風堂】結成だ!!」
――結成時の『瑞鳳旋風堂』のメンバーは3名。
まずチームの団長は意外にも女性、男勝りで姉御肌のベテランゲーム戦士『伊達神奈(22)』。何とこの方伊達政宗の直系の末裔なんだとか。それ故に身体もしっかりしてて尚且胸も大き
――――バシッ!!!
……ごめんなさい。
次はその神奈の親友にして大の伊達政宗公ファンと自称する所謂オタクのヒョロヒョロな眼鏡男、『松代光照(22)』。こう見えてもこの瑞鳳殿の公益財団法人の代表者なのだ。
そして弥風綾乃はと言うと、特に二人との繋がりは無いが同じく伊達政宗公に憧れを持った事で、神奈から直々にスカウトされた唯一人の愛弟子だそうで。大きな理由は彼女に秘めたPASにあるらしい。
「さて結成したは良いが今の我々ではまだ実力不足だ、早速だが綾乃には稽古を付けとかなくちゃ」
「ちょ、ちょっと神奈! 自分から引っ張っておいて直ぐにこの娘を特訓する事無いでしょに!? せっかくなんだから瑞鳳殿から政宗様の加護を与えるとか」
「いえ、私は何時でも稽古を付ける覚悟は出来ています。神奈さん、宜しくお願いします!!」
「……ありゃー、この娘スッゴい真面目だよ。JKになったらめっちゃ美人になるねこりゃ」
政宗公のファンらしからぬ邪念が出てますよ光照さん。
「その粋だ、大成するにも最初が肝心だからな。私の御先祖様が見守るこの地なら否が応でも鍛錬は付くだろう。初陣に相応しき実力で万全に挑もう」
(政宗様の霊屋で『戦国無双』したかったのになぁ……)
「光照、『戦国無双』は他所でやれ。御先祖様に失礼だろう」
「うん、バレてたね☆」
――と言うわけで瑞鳳旋風堂、結成から今日にかけて期待を背負った弥風綾乃の鍛錬に日々を注ぐ事になった。
『ゲームワールドの大凍結』、『ブラックヘロン事件』、『ゲームワールドオンライン閉鎖』などの事件にも関わらず、ただ己や期待を背負った未来のゲーム戦士の育成を独眼竜政宗の霊幻を加護に叩き込んでいった。
▶▶▶ NEXT▽
――――それから、5年の月日が経った。
綾乃も今や17歳、年頃のJKとなり身も心も引き締まって身なりだけ判断しても立派な巫女装束がよく似合う程に成長した。
――巫女の服の中からはち切れんばかりの胸、キュッと絞ったウエスト! あぁこんな事なら毎日瑞鳳殿に通っちゃうな〜♪と思わせてしまいそうな容姿端麗な美人さん!
……結局邪念が出てるのは私の方でしたね。失礼しました。
「う……役はツーペア、フルハウス出来ませんでした……」
「なんだいまた引きに負けてしまったのか。こっちはスリーカード。私の勝ちだね」
シャッフルでの高橋豪樹と同様、ゲーム戦士の育成に長けていた伊達神奈は綾乃とポーカーで鍛え上げていた。
というのも綾乃のPASの特性から、ここぞの引きの強さを鍛え上げていたのだが、ここ数年その勝負運には見放されっぱなしのようでした。
「ごめんなさい。ここずっと運と引きが悪くて……」
いざとなったら魂を込めろ! ……と私が毎度言うように、心の強さと比例した勝負強さが物を言うゲームの世界。その勝負強さがどうしても発揮出来ずに落ち込む日々が続く綾乃。
(毎度ながらポーカーとかブラックジャックとか、話題のアメイジングもやってカードでの引きの強さをやってもどうして負けちゃう……。神奈さんが強すぎるまでは言わないけど、どうみても悪いのは自分の腕の方だよね……)
結成の時の威勢の良さは風と共に去ったのか、思うような結果を残せない自分がやるせなくなる綾乃であった。
「…………」
そんな消極的な綾乃の顔を見るや、何を察したか神奈は顔をしかめて白けた顔でこう言った。
「……綾乃、もうこれくらいにしとこうか」
「えっ……?」
「辞めだよ、ゲームの訓練はこれで終わりだ。これからはPASの修練だけやっていなさい。それとアメイジングの二つのカードデッキは『ドラゴン』の方は使うな。今の綾乃には無理だ」
まるで綾乃に愛想を尽かしたような言い方で故意か真か冷たくあしらう神奈。当然ここで引き下がる綾乃ではない。
「ま、待ってください神奈さん!! それでは私はゲーム戦士にはなれないと仰るんですか……!?」
「――――お察しの通りだ綾乃。お前はゲーム戦士になるんじゃない」
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――師匠であり瑞鳳旋風堂の団長である神奈への厳しい苦言は、彼女の脳裏に離れず、現在に至るまで己の自信が持てないまま桐山剣らと決闘に赴く事になった弥風綾乃。
また彼女を追い詰めるのは、決闘にて先に時実桜が脱落した事により剣と二人きりとなってしまった事。という事は、綾乃の責任が更に問われる事になったのだった。
「ちっくしょう……こうなりゃ桜の弔い合戦や。《未来の報酬》から受け取った3枚のカードから早速コイツを出すぜ!」
『アクションカード、【フィールド・リターン】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〈アクションカード〉
【フィールド・リターン】
・属性:無 EG:④
・効果:場に展開するフィールドカードを全て
消滅し、本来のフィールドに戻す。
◎――――――――――――――――――◎
これは以前もみのり&レミのバトルで使ったフィールドをリセットするカード。
これでMLBの《英気栄えし酒場》は消え、カード破壊防衛の効果は無くなった!
だがそれでも劣勢な剣らに追い撃ちを仕掛けたのは、MLBの長男・フルムーンのカード発動。とてつもないプレッシャーが二人を襲う!
「ようやく一人減りましたね……、貴方達に恨みなどは微塵もありませんが、フィナーレは決めさせてもらいます。第三の大歌龍によって!!」
『ユニットカード、【天鈿女命の大歌龍】!!』
海神と山祇、海・山と来たらば三匹目は“天”! それも『神楽』の起源と伝えられる舞いを披露した芸能の女神、天鈿女命の魂を宿した大歌龍ユニットが天界より舞い降りた!!
◎――――――――――――――――――◎
〈ユニットカード〉
【天鈿女命の大歌龍】EG:⑧
AP:500 DP:500 AS:15
属性:黄 ユニット/ドラゴン/レジェンド
・能力:[フライヤー]
① このユニットが墓地に送られる時、
全相手プレイヤーはHP500を失い、
その数値分自分はHPを回復する。
◎――――――――――――――――――◎
「やっぱり来やがったか、第三の大歌龍! しかもアメちゃんだか何だか大層なもん出しやがって――!!」
剣が暗示した通りの展開、アメちゃんはともかくアメノウズメの効果は敵全体のHPを吸収する能力を持つ。……最近吸収系のカードが多いですけれども!
もしこの効果が起動したらば、只でさえ膨大なフルムーンのHPが更に肥大する!!
……しかしこの時、綾乃の決意は固めつつあった――!
(時実さんは自分の能力を最後まで信じて破れていった……。まだ神奈さんからは認められてはいないけれど、私だってやれば出来るんだから! 勝負はまだ、終わってない――!!)
――激震する決闘に揺らぐ心。この修羅に再び綾乃に奇跡の女神は舞い降りるのか!? この続きは一旦下がって次回申し上げる事にしましょう!
――――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




