【GAME3-1】掛かって来いやライバル共!!
▶▶▶ NOW LORDING...CONNECT!▽
「――久しぶりだな、桐山剣。 またこの電脳世界で会えることを待ち焦がれていたぞ……!!」
――――この男、立海銃司。 アバター名は『バスター』。
まるで悪魔にでも取りつかれたかのような威圧的な眼差しと、銀色にたなびく長髪。更に西洋の貴族が着こなすスーツは、血塗られた真っ赤な色が眼を刺激させる。そして彼の魂を表すマグナム銃のPASの色も赤……!
剣が情熱に燃える烈火の赤ならば、銃司は執念に燃える紅蓮の赤。
切り札騎士が光なら、地獄のガンナーは闇。二つの魂で織り成すプレイヤー相対性理論。それが見事に相対した時、二人の間では自他も認める【好敵手】の関係が出来るという……
彼にとって唯一の好敵手である銃司に出会った剣は、それを待ち侘びてたかのような素振りで挨拶を交わす。
「……おぅ、久々やな銃司。 遊戯貴族がこんな街で彷徨くなんざティータイムの時間か? それとも俺と……決闘か?」
「残念だがどっちも不正解だ。立場はどうであれ、同じプレイヤーとして戦場に立つ戦士たるもの礼儀は弁えねばならん。貴様のような好敵手なら尚更だ」
「そりゃどうも、御丁寧に……」
だが貴族とはいえ、挨拶だけで終わる輩じゃ無いことを剣は分かっていた。後に長話に入るだろうと煙たがる剣は、東の風にのって受け流そうかと思った矢先……
「――あ、銃司様! こんな所に居られたんですか!!」
白銀の三つ編み、そして清み渡る水色のメイドドレスの裾を上げながらいそいそと駆け寄るメイド姿のアバター。
彼女のアバターネームは『クロノ・チェリー』。 その実体は立海遊戯戦団の時空を司る侍女、時実 桜(16)であった!
「あら……? 貴方達はもしかして、シャッフルオールスターズの皆さんですか?」
桜は剣達のアバターを見ると同時に、互いにPASを確認した上で本人であることを確かめた。
「あぁ、桜も元気そうやな」
「桜ちゃんお久し振り~!」
「やはり、皆様もお久し振りです」
桜も確証した所で笑顔で最敬礼の御辞儀を交わし、銃司に日除け用の日傘を頭上に指した。
「すまんな桜。――ところで、貴様は8つのオーブの事は知ってるか?」
話の話題は大体予想していたが、剣も「来た……!」と言わん顔で構えていた為、返す言葉は予め決まっていた。
「……あぁ、最強プレイヤーを決める『幻の決闘場』へ導く宝珠の事やろ? それがどうかしたよ?」
「ではこれが目に入るか――?」
「――――!!!?」
その時剣達の表情は驚愕の極致に達した。
銃司の手元に取り出したるは、赤いポーションと見まごう程の透き通った真っ赤な宝珠だった!!!
(やっぱり野郎が先を越しやがったか……!!)
剣はオーブから銃司へ目線を移したと同時に、嫉妬にも似た悔しさも徐々に沸き上がった。
プレイヤー間の情報網からしても最初のオーブを手にいれた者は現時点で0。これを察するに銃司達が最速のオーブ獲得者となった訳だ!
「……それで? お前のしたい話は自慢だけか? それとも俺らにオーブのヒントでも分けてくれんのかよ」
「馬鹿な! 貴様ら平民に興醒めさせるものを与えるほど立海は甘くないわ!!」
これの裏を返せば『ゲームの楽しみが減るから言わない』にも等しい言い方。それにライバルに塩を送る程、彼らは情け深い感じでも無さそうですしね。
するとジリジリと銃司は剣へと詰め寄り、終いに零距離で剣の顔に圧を掛けながら囁いた。
「――――そんなに俺に追い付きたいか? ならばゲームに挑み勝利を重ねてその態度を示せ! さすればその道も切り開けるだろう。俺は退屈と弱さで立ち止まるプレイヤーは大嫌いだ。
一年前のアメイジングウォーズで勝利に浮かれてる暇があるなら、せいぜい貴様自身の魂を磨き続けるんだな!!!」
銃司の閻魔の炎を連想させるような視線は、戦いを望み、頂点を目指そうとするプレイヤーの底知れぬ執念を感じた――!!
最強を目指す為には妥協も、打算も、中途半端な気持ちは要らない。 銃司の本気に剣は既に敗北を味わった感触を覚えたのだった。
「……俺が言いたいのはそれだけだ。余計な時間を使わせたな。――行こう、桜」
「はい。それでは皆さん、私達はこれで失礼します」
桜は剣達に一礼し、銃司は真っ赤な装束を背にして古風な街並みを去っていく。
そして途方に暮れ茫然と立ち尽くす剣の心中は、再び好敵手と出会えた事への高揚と、己の栄光を阻む大きな壁として今後も対峙する事。
そんな二つの想いが交差し、その丈を思う存分1つの言葉にして剣は腹の底で叫んだ――!!
「――――――銃司ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッッッ!!!!!!!!!!」
剣が叫び終えた頃には、銃司達は光の粒子と共に別のエリアへ転送された後。剣の好敵手に対する叫びに秘めたものは何であろうか、それは本人にしかその真意は掴めないものであった。
「何か銃司くん、凄い気迫だったね……」
「あぁ……僕らが話し掛ける余裕すら無かったよ」
今回全く台詞無くて空気になりかけたレミと槍一郎。そして残念ながら次のゲームの出番も殆ど無い。
「「そんな哀しいこと言わないで(泣)」」
……こりゃちょっと酷だったかな?
「剣くん、勿論このままで終わる訳には行かないでしょ?」
みのりは剣の横から鼓舞を掛ける。しかしそこまでしなくても、剣の決意は既に固まっていた。
「当たり前だろ……! このままアイツに良い思いばっかさせられねぇぜ、ドンドンゲームやってくぞ!! そんでオーブを絶対ゲットするんや!!!」
「そうこなくっちゃ!!」
最強プレイヤーは悔しさを心の棚にしまい、それを糧にひたすら先に進んでいく。剣に立ち止まってる暇など無い!! ゲームをやり尽くし、道を切り開くのだ!!!
「さぁ、ゲームもライバルもどっからでも掛かって来いやァァァァァァァ!!!!!」
▶▶▶ NEXT▽
――さて剣達の決意を他所に、オーブの出所を探すべく別行動を取っていた倭刀、穂香、豪樹のチームはというと……?
「――ねぇ倭刀、どうしてあんなクエスト頼んじゃったの?」
「いや、金に目ぇ眩んでつい……」
「あのな、クエストも仕事も報酬が高いほどそれなりに骨折るもんなんやぞ?」
皆は息は切れ切れ、女神の穂香でさえ苦言を言いたくなるほどスタミナが物を言う作業に没頭していた。どんなクエストかと言うと……?
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GWクエスト レベル10
『失われたゲームを求めて……!』
依頼人:テーブルトップシティ南西・住宅街出身『イワン』様
報酬:クリア賞金3万円
アメイジングカード ランダム3枚
内容:このテーブルトップシティに深い眠りに付いているという幻のボードゲームをプレイヤー達のお知恵で復活させてくんなまし!!
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どうして序盤からキツそうなクエストを頼む羽目になったのか? それは次回のお楽しみとして取っておくとして。
剣達とはまた違ったゲーム展開へ、読者の皆様を誘いましょう。――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




