【GAME26-2】“心の恩人”を救え!!
――TIPS――
【プレイギアの通信機能】
万能スマートフォン・プレイギアは現実世界内の着信・LINEメールなどは勿論の事、ゲームワールドと現実世界の間でも着信を取ることが出来る。
ただし現実世界同様に圏外扱いされる区域もゲームワールドに存在する為、連絡時は注意が必要だ。
――変わって舞台は現実世界。
ちょくちょく変わって移動ばっかしで私もくたびれますが……再び現実世界に戻ってみるならば、場所はお馴染みゲームジムのビッグウェーブ。
「……はっ!! 剣くん!!?」
まるで悪夢から逃げ出すようにガバっと意識を取り戻したみのり。頭にはゲームワールドに転送用ヘッドギア【GWギア】が。
早い話が、前回アイスバーンマウンテンの上空に忽然と現れた『ワープホール』から逃れる為に、緊急でログアウトしたと言う訳。
御覧の通りにみのりは間一髪離脱した事で現実世界に戻ってきたのですが、片や一緒に同行し隣同士で転送していた剣は未だにゲームワールドから戻っては来ておらず、意識空っぽの抜け殻状態のまま。
「やっぱり、ワープホールに飲み込まれてしまったんだわ……」
突然のアクシデントで、王道のバディが引き離されてしまった剣とみのり。
急いでプレイギアで剣の安否確認と連絡を取ろうとするが、圏外もしくは着信エラーで応答が取れなかった。
このまま彼の無事を祈る事しか出来ないのかと思ったがしかし、ここで何もしなければヒロイン兼主人公の名が廃るとみのりは、プレイギアを取り出して迅速に応援を頼む為に連絡した。その相手とは……
RRRR……ピッ。
「はい、時実です。……何か御座いましたかみのりさん?」
立海遊戯戦団のメイド、時空を司るPASを持つ時実桜!
GAME22にて、みのりを接点にシャッフルオールスターズとの間接的な協力に同意した立海は、城主の銃司の命により桜を送り出す事になったのですが、動きが無い状態でメンバー全員バスター・キャッスルで待機していた所でありました。
「桜ちゃん、剣くんがアイスバーンマウンテンで発生したワープホールに飲み込まれてしまったの! そっちで何処に飛ばされたのか分からないし……お願い、剣くんを助けて!!」
「……分かりました。調べて参りますので今暫くお待ち下さい。」
真剣な口調で頼み込むみのりに桜は即座に了承した。そして彼女の横には立海の参謀長・大門史也が、大型コンピュータで調査探索真っ最中だ。
「アイスバーンマウンテンでのワープホール発生時刻は午後1時13分、不吉な時刻だな。その吸引エネルギーに吸い込まれたプレイヤーは約30名、その中でロングソードのPASを持つ桐山剣の飛ばされた先は……よし、ここだ」
ゲームワールドの何処かのエリアより打ち上げた立海印の衛星マップから、剣のPASエネルギーを元にマーキングさせた目印を頼りに、史也はコンピュータからその位置を正確にキャッチした。かがくのちからってすげー!!
「みのりさん、剣さ……いや切り札騎士の居所が分かりました。場所は『アドベンチャーフォレスト』の森の最深部・リロード樹海です!」
「リロード樹海……? そんな場所聞いたことがないわ」
みのりが知らないのも無理はありません。何しろその樹海は本来は正規の方法では行くのが不可能な場所であり、行く為には特定のゲームをクリアする事と、アイテムを手に入れなければ入れない所。
というのも、踏み入れた途端にプレイギアでの通信は圏外で遮断され、進めば進むほど迷いやすい最難関の迷宮区域とも言われているのです。
「そんな! それじゃ剣くんは……」
「心配は要りません。私のPASは時間だけでなく空間も操る能力があります。私もリロード樹海に乗り込んで、切り札騎士と一緒に脱出すれば現実世界に戻れます」
桜は生まれながらにPASの影響から時空を司るという特殊な能力を持っていた。
立海に仕えるメイドでありながら、そのチート能力で城主をお守りしていた桜の実力。今回は初めて立海以外のプレイヤーに、その力を使おうという訳なのです。
「……それじゃ剣くんの救助、桜ちゃんにお願いするね!」
「お任せ下さい。約束は必ず果たしますわ」
滅多に感情を出さないが、約束には命を持って責務を果たす義理堅い心を持つ桜。
対する立場でありながら、みのりとの約束を誓い合って着信は切断された。いよいよ彼女の出陣の時だ。
「……好敵手を助けるだけで随分やる気のようだな桜。これから親愛なる城主から離れていくっていうのに」
などと半ば皮肉にも似た感じで桜に話しかけるは参謀長・史也。
「いえ、私は銃司様の命で休暇を貰っただけの事。何も切り札騎士の事が心配で向かう訳では――」
「お前が桐山剣の事を気に掛けてる事など、銃司も私もとっくに知っているが?」
「……………何故、そうだと思うのですか?」
「一年前のアメイジングウォーズでお前と剣との決闘で、明らかにお前の心境が変化した。それ以来戦争が終わっても時々ボーッとしているのを奈々子から聞いてな。――お前、桐山剣の事を惚れたんだろう」
「なっ!? 史也様まで何を仰って……!」
……ははーん、ナルホドね!
歴史に残る大激闘にて、剣と桜は一度アメイジングで決闘をしていた。
だが当時桜は先代城主・丈の死でショックを受けていた事、更に銃司の野望などの負担でひどく追い詰められていた。
そんな中で繰り広げたアメイジングウォーズの激闘で、凍てついた桜の魂を剣が溶かした。
初めて立海以外のプレイヤーに心を許した事から、桜にとって剣は“心の恩人”になっていたのです。※『極限遊戯戦記』第48話参照
立海の中では好敵手に尊敬なんて見せるものでも無いですからね。道理で『剣さん』と呼べなかった訳だ!
「ほらMr.Gにも言われたぞ。もう誤魔化しは効かん」
「…………えぇ、そうですわ。剣さんは敵である私を受け止めてくれました。立海の他に受け入れてくれなかった私を、あの人は心も一緒に守ってくれました。
――私の未来を変えてくれたあの人に一度、恩返しをしたいって思ったんです……!」
桜が内に秘めていた剣への想いを、初めて同胞に打ち明けた瞬間でありました。
「……だから、銃司はお前に休暇を与えようと思ったのだろう。事もあろうこの私に『桜が出発する前に渡しとけ』ってこんな物まで用意していったぞ」
史也が桜に渡したのは木編みのバスケット。その中には沢山のアップルパイ、桜の好物がぎっしり詰まっていた。
「わぁ……!」
「もう一つ銃司から伝言だ。『奈々子と瑠璃とシェイパー兄妹とで造ったパイも、“心の恩人”にお裾分けして来い』だと。……もう意味は分かるな?」
その意味を解釈した桜の表情が、少しだけ和らぎ一瞬だけ笑顔を見せた。
「ありがとう御座います銃司様、皆さん……! 時実桜、行って参りますわ!」
かくして、心の恩人・桐山剣に恩返しをすべく桜が向かうはアドベンチャーフォレスト最深部『リロード樹海』!
果たして剣は桜の助けで迷宮樹海を脱出する事が出来るのか、二人がこんな形で邂逅するに至るまでは、もう少し後の話になりそうです。
▶▶▶ NEXT▽
――またまた舞台変わって現実世界。桜の協力の甲斐あって一先ずは剣の事は一安心したみのり。
はてさて、相方も居ない中でみのりはこの後何をすべきかハテー?なんて考えている内に、次なる難題が彼女を待ち受けていた。
「……お、みのりちゃん戻っとったんか!! 丁度ええ所に帰ってきてくれたでぇ」
みのりと剣が転送に使われた個室に顔を出したのはここ『ビッグウェーブ』のオーナー、ご存知浪速のファイター・高橋豪樹だ。
「どうしたんですか豪樹さん?」
「どーしたもこーしたもあらへんがな! ここ最近レミちゃんの調子がどうもおかしくてな。ちょいとみのりちゃんの力で元気付けたってぇな!!」
「えぇ……?」
みのり、一難去ってまた一難。剣の次は今度はレミがおかしな事になってるらしい。
心優しい彼女に仲間の苦労背負ってエンヤコラ、実はこれが今回のゲームの始まりに過ぎなかったのですが……残念、丁度読み終わりとなりました。
また次回に持ち越しで本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




