【GAME25-5】お前は独りじゃない!!
――夢か幻か、アイスバーンマウンテンの中腹に轟き木霊した爆音の如き叫び。
丁度体力の限界と共にPASの嵐バリアが消滅した所に、槍一郎の耳にそれが届き、再びそのPASは息吹を上げた!
「危なッッ」
間一髪意識を取り戻した槍一郎は、既の所で霧氷輝龍のレーザーに当たる寸前に反射神経を研ぎ澄まして綺麗に避けた。これにはブリザードクイーンも苦虫を噛む。
「チッ……だ〜れ、こんな氷山に山彦感覚で叫んでるのは?」
ホントはそんな騒がしい輩を始末したい所だが、決闘中は相手に背を向けられない。そんな苛立ちを隠せない雪女に対し槍一郎は、
(やっぱり幻聴じゃなかった……やっぱりあれは剣の声だったのか……?)
▶▶▶ NEXT▽
怒涛の叫びは果たしてホントに剣だったのか? その発生源を私の釈台モニターでチャチャッと調べてみたら……大当たり!!
「〜〜〜ふぅ! スッキリしたーー!!」
自分の内に貯めていたものを全部声にして吐き出した剣の姿、それもアイスクライマーのコンドルの足に捕まって空中で叫んだ為に槍一郎に聞こえていたのだった。
だがしかし、何時までも足に乗っかってるゲーム戦士を連れて飛べるほどコンドルも寛容な鳥ではなかった。
「クエーーーー!! 訳)うっせぇんだよクソガキいい加減降りろや目ン玉抉るぞボケカスぅ」
……どうでも良いけど口悪いなこのコンドル。
遂に痺れを切らしたコンドルは、纏わりつく剣を情け容赦なくパッとその足を振り払って突き落とした。
「わ゛あああああああああ!!!!」
「きゃあ!!」
――BUNP!
頂上付近にて待っていたみのりの近くで落とされた剣。幸い積雪がクッションになって大事には至らなかったが、頭から突っ込んだ切り札騎士の様はまさに犬神家のアレであった。
「剣くん大丈夫!?」
即座に足から引っこ抜いて剣を助けるみのり。
「っ痛ぁ〜、乗鳥拒否だよあの手羽先め。まぁ言いたい事言えたし許してやっか」
「やっぱり槍くんへの激励言い足りなかったのね。剣くんらしい! でもこんな山奥で声届いたのかな……?」
「まぁ届く届かないは別にして、風の便りで俺の声がどっかで伝わってくれりゃそれでエエよ。―――【離れていても俺たちはお前の味方だ】ってな!」
「………その想い、槍くんに伝わると良いね! それなら私も封書で叫んどけば良かった!」
「大丈夫やって、俺が6人分一片に声にして送ってやったから! 近くにいる事だけが友情じゃ無いんやからさ!!」
……いいえ剣さん、みのりさん。
貴方たちの魂を込めた叫びは、しっかりと槍一郎さんの元に届いていましたよ―――!!
▶▶▶ NEXT▽
――対してそれを受け取った槍一郎。先程まで寒さも余ってネガティブな思考に駆り立てられていた彼の脳裏に、ある言葉が思い浮かんでいた。
それは槍一郎が試練に出掛ける前夜に、剣に言われたことであった。
『―――俺さ、ずっと考えてた事があってな。俺は槍ちゃんが試練に負けても、諦める結果になっても絶対に責めないって決めてんねん。それは槍ちゃん自身の問題だからな。ただ……自分に負けんなって念は押しとくぜ。
――槍ちゃんが後悔しないように、槍ちゃんらしいゲームをしてくれ!!』
「……………僕は、“自分らしく”って言うのがよく分からないけど……」
剣だけではない。みのりも、倭刀も、穂香も、レミも、豪樹も。
皆が槍一郎を想い、互いに助け合って何者にも寄せ付けない強固な絆を紡ぎ合っていった。あぁ廻る因果は糸車、明日へと廻るは風車……!
「―――大事な仲間に支えられて現在がある事は、胸が熱くなる程に分かる! せっかく自分でやろうと決めたゲームなんだ。ちょっとくらい頑張ってみるよ、剣ッッ!!!!」
ゲームで繋がった絆はたとえ離れようとも、その仲間が槍一郎を引き離さなかった!
――彼はもう独りじゃない。天野槍一郎、今ここに復活の嵐を吹き起こす!!
(…………風の向きが変わった――!)
場の空気に敏感なブリザードクイーンは、槍一郎の変化にいち早く気づいたようだ。丁度ゲーム展開でも互いに時間経過の1枚ドローが許され、槍一郎はその引いたカードに反応を示す。
「……よし来た!! 僕はもう1枚、パーマネント・ツールカードを発動する!!」
『パーマネント・ツールカード、【異次元誘導ホール】!!』
カード発動と共に上空から歪み出た異次元ホール。これが霧氷輝龍の背後に現れたと同時に、龍諸共ホールの中で飲み込まれていった!!
「何ですって……!? こんなにも容易く除去カードが――!!」
◎――――――――――――――――――◎
〈パーマネント・ツールカード〉
【異次元誘導ホール】
・属性:青 EG:④
・効果:①このカードが場にある間、
フィールド上のユニット1体を対象に
除外空間に送られる。
②このカードがフィールドに離れる時、
除外したユニットはフィールドに戻る。
◎――――――――――――――――――◎
「『除外空間』は墓地とは異なった追放区域。これなら墓地蘇生で干渉も出来ない! これで霧氷輝龍の凍結地獄は破られた!!」
この世に明けない夜と止まない吹雪は存在しない。剣からのエールは、槍一郎にゲームへの運までも分け与えたのか!? 明らかに槍一郎のPASから溢れる覇気は先程以上のものとなっている。
「さっきまでお人形さんだった坊やが、まるで雰囲気がガラリと変わった……縛られた糸がプツリと切れたかのように。あの山彦の主がお前を変えたと言うのなら、その者がそんなにお前の大切な存在だとでも言うのかしら?」
「大切……いや言ってもそれは綺麗事だよ。アイツに……剣に負けただなんて言う事になったら悔しいから!! それとお前もいい加減、変な遠慮してないで掛かってきたらどうだい?」
「…………遠慮?」
「僕がオフィシャルプレイヤーだった真槍の息子なのは事実だし、今更変える事なんか無理だし、大凍結で氷山に追われる事になった責任は僕にもある。だったら僕がその後片付けをしておかなきゃ!
―――お前、魔力有り余ってるんだろう? だから僕がその全魔力諸共吹き飛ばして、四年前のリベンジゲームをクリアしてやる!! 天野槍一郎、風力の途切れない唯一つの大嵐PASでね!!!」
何と今まで謙遜で通してきた槍一郎が、ダイ◯ン紛いの冗談交じらせて初めて敵を煽り立てた!! 良くも悪くも剣の影響に違いない!!!
「―――――面白いッッ!! 私は初めてお前というゲーム戦士を気に入ったわ!! ならばお望み通り骨の髄まで全て味わえ、死者をも凍る雪女の極寒地獄を!!!!!」
――さぁ来た、さぁ始まったぞ大勝負!! もう寒さなんかクソくらえ!!
熱い魂の槍を掲げて、四年越しの雪辱を雪掻き序でに果たしてくれ!!
―――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




