【GAME25-4】そして、風が止む時……!!
◐AMAZING MIDWAY RESULT◑
☆〔ゲイル(槍一郎) HP900 手札3枚 EG④〕
装備:《トライデント》
・ユニット《聖なる泉の僧侶》《自然の工芸人》《氷塊》×7
・パーマネント・ツールカード《絆を紡ぐエール》《上昇気流》
★〔ブリザードクイーン HP1100 手札2枚 EG④〕
・ユニット《霧氷輝龍―グレイシャー・ホワイトドラゴン―》※カスタム・ツールカード《時間稼ぎの鎖》装備中
※《上昇気流》の効果により、全フィールドに存在するプレイヤー・ユニットは[フライヤー]を得る。
『パーマネント・ツールカード、【回復のオアシス】!!』
◎――――――――――――――――――◎
〈パーマネント・ツールカード〉
【回復のオアシス】
・属性:黄 EG:③
・効果:このカードが場にある間、
自分と自分のユニットは20秒に1回
HPを300回復する。
◎――――――――――――――――――◎
――強烈な猛吹雪、更には霧氷輝龍という脅威の中でも槍一郎は負けじとカードを展開していく。
新たにパーマネント・ツールカード《回復のオアシス》を出し、氷山の中に木々と水が湧き出る聖地を生み出す。
ホントはオアシスは砂漠にあるものだが、時間ごとにHPを回復するカードとしては『氷山に温泉』と言っても過言じゃなし。
(これで暫くは粘れる……!!)
更にフィールド上の《聖なる泉の僧侶》の効果でカードドロー、槍一郎も窮地からようやく持ち直してきた所。そこで今度はブリザードクイーンが疑問を持ち掛ける。
「……何が貴方を極限まで駆り立てるのかは知らないけど、そんなにオフィシャルの座に返り咲きたいのかしら? 理解に苦しむわ私には!」
粘り強い槍一郎に半ば嫌悪するブリザードクイーンの応戦詠唱!
「アクションカード……【ツール・ブレイク】!!」
◎――――――――――――――――――◎
〈アクションカード〉
【ツール・ブレイク】
属性:黄 EG:②
・効果:フィールド上のツールカードを1つ選択し、
それを破壊する。
◎――――――――――――――――――◎
「なっ……ツール破壊カード!?」
「当然対象は霧氷輝龍に付いた《時間稼ぎの鎖》。貴方へのロスタイムはもう終わりよ!」
霧氷輝龍の動きを封じた鎖は、閃光と共に引き千切られて、再び災厄の龍が動き出そうとしていた!
「そのまま霧氷輝龍の攻撃コマンド! 槍のゲーム戦士に絶対零度の吐息を!!」
氷結の凍てつく白いレーザーのような吐息が槍一郎を襲う。得意の瞬発力で再び『氷塊』の陰でブロックしようとするが、タイミングがあと一歩遅かった!!
「ぐああああああッッッ!!!!」
〔ゲイル(槍一郎) HP900→400〕
触れたが最後、一瞬にして痛さも消し飛んで感覚を殺す絶対零度のレーザーが槍一郎の胴体に直撃した!
……だがここで再び、槍一郎の脳裏にまた過去の記憶が甦ってくる。人間死ぬ間際に思い出が回想される走馬灯を観ると言うが、彼もまたそれに近い状態にまで陥っていたのだ――!!
▶▶▶ RECOLLECTION...▽
――幼少期から時が過ぎ、槍一郎が小学5年生の時の頃……
『やっべぇ……強すぎらぁ。コールド勝ちどころかフリーズ勝ちって言っていいくらいのボロ負け、しかも二回も……幾ら俺でも凹むわ』
再び地元のゲームセンターにて今度はアクションゲームで槍一郎に挑んでいるのは、何と当時小学4年生の池谷倭刀であった。
『……あ? おふぃしゃる?? もしかしてアンタ、ゲームワールドの最強ゲーム戦士で有名なあのオフィシャルか!! すげーー!!!』
過去の出来事と違い、槍一郎がオフィシャルプレイヤーの息子と聞いた倭刀はこの上なく喜んでいた。
それでもいつものように、相手をボロ負けさせた事に謝る槍一郎だったが……
『何で謝るねんな? 俺だってな、ゲームワールドで穂香姉ちゃんと一緒にゲーム修行して結構有名なんだぜ? ハンティングじゃ知れた顔や』
等と負けじと穂香姉ちゃんとの武勇伝で自慢する倭刀。今と全然変わってません。
『っしゃ決めた! 俺アンタに絶対勝ちてぇからアンタの友達になる!! 俺、池谷倭刀ってんだ宜しく!! ――――へー、名前は槍一郎って言うんだ………え、小5? 俺の一つ年上……すんません、槍一郎先輩って事に改め直して―――』
こんな些細な事から槍一郎と倭刀の出会いは始まったのでした。
――それから一年が経ち、中学進級と共にオフィシャルプレイヤー就任した直後でそれに備えた身支度を槍一郎の家でしていた時の事。
『……じゃオフィシャル入ったらあんま遊べなくなるんで?』
『まぁね、これも仕事だし。一ヶ月の研修期間の間までに雑なプレイは直しておけよ』
『んなストレートに言われても……まぁ有り難く拝聴しますぜ』
『―――倭刀。話変わるけど、君は僕に負けて悔しくはないのかい? 毎日ゲーム挑んで全部完敗だけど』
『……ったり前っすよ。負けたら悔しい、いつも完敗なら尚更』
『いや全般的な話じゃなくて……』
『でも俺がルーキーなのは自分が良く知ってますわ。今は負け続けても、積み重ねてちょっとずつ強くなるのも目標。そんな努力が自分の力になって、色んなプレイヤーを超えた時の達成感を味わうのって、俺大好きなんすよ』
『…………そうか。お前ゲームしてる時ホントに楽しそうにやるものな』
『でも槍一郎先輩も良いじゃないすか。ガキの頃からゲーム得意だなんて憧れますよ、俺らからしたら。先輩もゲーム好きなんでしょ?』
『……あぁ、ゲームは僕も好きだ。――――でも勝ち負けで味わう気持ちは、まだ分からないよ』
―――更に時進んで一年後、忌まわしき『ゲームワールドの大凍結』事件直後の事。
オフィシャルプレイヤーの先頭に立ち、その原因を探るべく出動した槍一郎であったが、その健闘は結果的には大きな損失を負う事となった。
その当時の現場、雪積もるゲームワールドの和の屋敷に、槍一郎と佇んでいた女剣士の姿。
彼女こそあの小娘……いや、大凍結によって心に大きな傷を持った羽生優佳だったのです。
『……この行為は逆恨みだって事は分かっています。これは私達が起こした自業自得、貴方は上のルールに従って動いただけ……何も悪くないんです。分かっているんです! だけど……!!』
――その刹那、抑えきれない怒り、やるせなさが衝動として駆り立てられるように、槍一郎の胸ぐらを力一杯掴んで強張った形相で彼を睨みつけ叫ぶ優佳。
『――――何で負けたんだ!! ゲームワールドの脅威を圧する力を持って解決するのがお前が先頭に立つオフィシャルの役割では無かったのか!!?
中途半端に責任を受けようとするお前が、私の大事な人まで奪った結果になったんだ!!!!
―――お前なんかがオフィシャルプレイヤーなど……私は認めないッッッ!!!!!!!』
▶▶▶ NEXT▽
――我々の知らない所で、槍一郎は“強者”という肩書きに縛られながら時に尊敬され、時に恨まれてと希薄な感情表現の中で自分を押し込んでいた。
だが長い年月を掛けて嫌な思い出を吐き出せずに生きていく事は、決して容易な事ではない。
槍一郎とて、この負の記憶が自分の心を蝕み、苦しむ事もあった。親友の剣たちでも言えない事が余りにも多すぎたからである。
しかも先程の霧氷輝龍の受けたダメージは予想以上に槍一郎の心身を抉る程、危険な域に達していた。
「あらあら可哀想に……さっきの攻撃でPASの嵐バリアも弱まってきてるわね。一応もう一度聞くけど、まだゲーム続けるの?」
「………ま、だ……続けるつもりだ……!」
息切れ切れながらに気力で応答した槍一郎、既に体力は限界を超えたか。
「強情っぱり。意地とかプライドに引っ張られないでさっさと諦めれば良いのに」
「……これは僕一人の問題じゃない。僕がオフィシャルに戻った時に、一緒に喜んでくれる仲間が6人も待ってるんだ。早々に諦めたらそれでこそ彼らを裏切る事になる。それだけは……死んでもゴメンだ―――!!」
「たった6人の為に命賭けるのも馬鹿馬鹿しくないの? その仲間はこの氷山には何処にも居ないし、この盤面でも守ってくれるユニットもなし。結局貴方を守ろうとする奴なんて何処にも居ないじゃない」
「氷河期してる方が馬鹿馬鹿しいと思うけど。そんな所に大事な仲間を連れていけるもんか。これは僕自身が選んだ修羅だ、最後まで戦う意地くらい見せないと」
剣も、倭刀も、そして槍一郎も、思い込んだら最後までやり通す刃の魂を持ったゲーム戦士の意志。
たとえ地獄に落とされようとも希望を捨てない心が槍一郎の力となっていくのだ。……だがしかし。
「……私の冷気魔力は最早制御不能、まだまだ強くなる。もし貴方が敗北した瞬間、PASの力はゼロとなって嵐のバリアも消える。その時を待たずに貴方は凍死するわよ」
「―――それなら、僕が勝てば良い話だろう?」
「…………そう。それじゃその小さなプライドに縛られながら凍死させてあげるわ!!!!」
これが雪女ブリザードクイーンの最終通告となった。義務に縛られた槍一郎を哀れに思いながら、冷酷にも霧氷輝龍の攻撃コマンドが再び下された。
(そうだ、勝てば良い。勝てばこの寒さも開放されて僕は試練に行ける。勝てば良し、僕にとって勝つ事は当たり前でなければいけないんだ。………でも……助けてくれる仲間がもう居ないのなら………負けても……許し、て……く、れるか、な…………)
遂に槍一郎のPASの維持が限界に達し、心に暗示を掛けながら必死で意識を保とうとしたその時。
ネガティブに押され負けた反動から、急激にPASの力が消えて嵐のバリアが一瞬だけ消滅した――!!
霧氷輝龍の絶対零度レーザーが口から放たれると同時に、槍一郎の周囲からは微かな音すらも聞こえなくなった、その時………!!!
―――――負けんなァァァァァァァッッ、槍ちゃあああああああああああああああああああああああああんんッッッ!!!!!!!!!!
アイスバーンマウンテンの木霊に乗って、猛吹雪の暴風をも遮断する程の爆音が、槍一郎の耳に伝わった――!!
(……………剣――――!?)
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




