【GAME24-7】その怒り、絶対零度!!
――ここはゲームワールドの氷山。アイスバーンマウンテンの中腹の白銀世界。
そこで繰り広げるは槍の魂を持つゲーム戦士・天野槍一郎と、その行く手を阻む雪女ユニット・ブリザードクイーン。
前回、凍結されて一気に劣勢となった槍一郎。何とかその凍結も解けていざリベンジを仕掛けようとしたその時、雪女の凍てつく感じで身震いするようで、意味深な言葉を掛けてきた。
「僕が『まだ勝てる』と思っているとしても……どうしてそんな事を聞く、ブリザードクイーン」
まだ決闘の決着は付いてはいない。反撃するにも何らおかしな盤面では無いにしても、気になる雪女の囁きに槍一郎は問い質す。
「あら、坊やには分かりにくかったかしら? 要するに―――私を出し向けた鳳凰堂孔雀は、貴方を倒すのに生死は問わないって宣言したのよ。つまりは貴方を殺しても構わないって事」
「何……!?」
何という横暴なやり方か、仮にもWGCの副管理者を名乗っている鳳凰堂孔雀が、オフィシャルに再び志願しようとする槍一郎を殺してでも始末しろとは。幾ら何でもやり過ぎでしょう!?
「それは僕が……いや、WGCにいた僕の父さんが、君たちユニットを討伐するハンターだからか?」
「まぁねぇ……貴方にはあの狩人と同じ匂いがするもの、憎々しい程に……!!」
ブリザードクイーンの目元にドス黒い陰が籠もる程に殺気立ってる所ですが……我々側にしては情報量が多すぎる。
槍一郎の父がWGCの役員だった? ユニットを狩るハンターの息子? 入れるものが多いと混乱します。なので私が整理して説明しましょう。
――そもそも槍一郎の父・真槍は、WGC黎明期から腕利きのゲーム戦士として雇われた派生社員でありまして、オフィシャルプレイヤーの型枠を創った男でありました。
というのも、出来たばかりで無法の地であったゲームワールドを安全に提供させる為に、まずはそこに蔓延るユニット達の統制と、プレイヤーとの共有を拒むユニットの討伐を命じられた。
お父さんも槍一郎同様に槍に覚えのある達人であり、アクションゲームに長けた彼は腕の良さでゲームワールドの8割は統制させる事が出来た。
だがルールの概念もほとんど知らないユニット側にしてみれば、その強さに恐れられた反面彼に自由を奪われたと恨みを買われる事になり、その因果で時折プレイヤー達を襲うユニットも未だに存在する。ブリザードクイーンもその一人だったのです。
――それから数年経って、真槍はオフィシャルプレイヤーのトップに立ち、ゲームワールドの治安を統制してきたが、ゲームワールド発展の為に海外へ留学する為に当時12歳だった槍一郎に、その座を譲る事になった。
親の意志を継いでオフィシャルになった槍一郎だったが、歳的にも青かった槍一郎の就任に良く思わないプレイヤーも多数いた他、父を恨みに持っていたユニットに襲われたりと、最初は散々だったと彼は陰で語っていました。
……とこんな感じが槍一郎の一部の過去。
聞いてるとちょっと可哀想な感じがしますが、雪女が彼に恨みを持つのは別の理由があるそうです。
「確かに可哀想な見方もあるけど、逆もあるわ。天野真槍の息子の貴方は謙遜しつつも、ユニットハンターの血筋で強くなって慢心した坊やに成り下がってしまった。ユニットの私からしてみれば甘ったれも良い所よ。
――プレイヤーもユニットも自分らしく生きる為に死力を尽くすゲームワールドに、貴方みたいな存在は目障りな程に好ましくないの。そう思わない?」
「……僕はそんなつもりで父さんの跡を継いだ訳じゃない」
「あらそう。じゃあもう一つ聞くけど、何故貴方は四年前に起きた“ゲームワールドの大凍結”を解決できなかったのかしら?」
「! そ、それは……」
……まーた新しいワードが出て来ちゃった。【ゲームワールドの大凍結】、当然皆さんはそんな事件の名称も初耳ですからまたまた私が説明を。
――実はゲームワールドでは、今から四年前に異世界全体が氷河期のように凍てつき、この世界のネット管理機能をも凍結させ、利用したプレイヤー達は監禁状態。
更には氷点下並みの寒さで、人々を危険に晒す程の大事件が起きていました。
ゲームワールドは電脳空間で維持する異世界である為、謂わば巨大なスーパーコンピューターが予期せぬ事態でフリーズしてしまった事に等しい出来事だったのです。
プレイヤーのみならず、ユニットの生態にも脅かす凍結にWGCも復帰へと最善を尽くしましたが、解決は予想よりも遥かに遅れてしまった。
そこで京都の遊戯団体『鳳凰堂』の技術でゲームワールドは無事復帰し、プレイヤー達も助かったのですが、この世界の生態系や地理には大きな打撃を受けたのでした。
だってお日様は全然顔を見せず、一年中吹雪の続く冬のまま過ごしていたら、誰だって恐怖するでしょう……?
「あの四年前の冬は長すぎたわ。そのせいで私は月日が経つうちに抑えきれない程の魔力を得てしまったの。―――こんな風に………!!」
―――ビュウウウゥゥゥゥウウウウウウ!!!
するとブリザードクイーン、さっきまで吹雪も止んで白く静かであった中腹の空から再び凄まじい冷気と吹雪を呼んで、槍一郎にうんと浴びさせた!! てか私にも当たってる寒ッッ!!!
「く……何て凄まじい吹雪だ……!」
こりゃ耐えられない! 私も釈台ホバーのボタンをポチッと押して、釈台転じて自動コタツで温々と……ってこれでも間に合わないよ〜!!
「……ゲームワールドの常夏をも凍りつかせる魔力は最早私の制御域を超えた。だから私は寒さに唯一適応するエリアであるアイスバーンマウンテンに追われる形で移住する事になった。
あの大凍結の悪夢から消え、冷気の過剰な力が衰えるまで……」
先程までクールで平然を保っていたブリザードクイーンの冷気からは、長い年月を掛けて蓄積されたプレイヤーへの怨念が立ち込めていた。
「……それで、君は僕や僕の父さんの事を恨んでいるのか?」
「いいえ……失望したの。歴戦の槍の魂を持ったゲーム戦士の子が余りにも無様過ぎて」
心なしか、ブリザードクイーンの怨念の意が吹雪の強さに比例して増していく……
「お前は四年前と何も成長していない。刃こぼれしたような槍持って、お遊びみたいなヌルい戦いを繰り返すような面白味の無い奴。
いずれまた大凍結のような同じ過ちをも繰り返すでしょうよ……!」
「悪いが僕も反論させて貰うけど、僕はこれでも真剣に戦っている。そういう話は勝負の決着を付けてから言うべきだ!」
「決着? 何を言っているのかしら。氷塊で動きを封じられた時点でお前はお終いなんだよ!!!!」
ついに怒りの頂点に達したか雪女、滑らかな白い肌に青筋を立ててカード1枚を詠唱する!
「ユニットカード、【霧氷輝龍・グレイシャー・ホワイトドラゴン】!!」
吹雪と霧で埋もれた白い空に、氷柱が弾けるような音と共に現れたアイスブルーの翼、いや翼だけではなく全身氷のボディで覆われた氷の龍が召喚された!!
――――キュルルォォォオオオオ!!!!
(な、何だこの龍に帯びた冷気は……!? 触れただけで神経が凍りそうだ!!)
槍一郎と霧氷輝龍の距離は50メートル、それでも押し寄せる龍からの氷河冷気は彼の肌をも悴ませる。
「もう私も力を抑えるのは辞めたわ。この地が氷河期の災厄に見舞われようと構うものか。私は鳳凰堂の新しい歴史を創る考えに従い戦うまで。
古い風習と歴史に縛られた者など老廃物にも等しい。そんな意志を持つお前など私が絶対零度の冷気を持って、凍結させてくれるわ!!!」
――遂に招来した氷河の牙! 霧氷輝龍の出現はこのゲームに何を意味するのでありましょうか!?
そして、槍一郎の祈願は凍てつく冷気に阻まれてしまうのか……?
全ては次のゲームで明かされる事となります。これから益々面白くなるわけですが一先ずはこれまで!
【GAME24】は『槍一郎VS雪女 前半戦』を持ちまして、読み終わりで御座いますッッ!!
▶▶▶ SEE YOU NEXT GAME...!!▽
▶▶▶▶ NEXT GAME WARRIORS ▽
天野槍一郎VSブリザードクイーン・後半戦!!
絶対零度の氷の罠に槍一郎、万事休すか!?
その時、氷山の山彦に乗せて叫ぶ一声が槍一郎の耳に届く……!!
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